2004年12月16日

下北沢Ｘ物語（９６）〜浮遊的下北沢西方見聞録（２）〜

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   下北西方見聞録である。したがって朝は下北沢西端の鎌倉道を北上する。仕事が終わっての帰りはそこを南下する。それがこのところ続いている。道が違うと味も違う。その道その道の味わいがあることを知った。自転車ならではのことである。
  帰り道は笹塚から観音通りに入る。赤字に白の「大売り出し」の旗がにぎにぎしく交差している通りだ。南に下るとすぐに道は右へカーブする。すると玉川用水の上を渡る笹塚橋に出る。今日はその近くにある和菓子屋「亀泉堂」に寄った。今日はこの間と違ってご主人が出てきた。丁寧な菓子作りをしているのはこの人だ。温厚な顔である。この間買ったお菓子は口に含んで食べた。お菓子にちゃんと味がある。今日は最中に饅頭、それに芋羊羹を買った。
　「自転車どちらへ帰られるのですか」と主人が聞いてきた。「この先の鎌倉道を通って淡島の方へ」と言うと。「ああ、そこの鎌倉道ね」とご主人。南から来た鎌倉道はこの先のセブンイレブンのところで急に細い路地になってしまう。東へ行く道があってそれが観音通りにつながっている。それでこのところ思っていた疑問を口にしてみた。
「この脇の、観音通りに通じる道を鎌倉道って言いませんか」
「いや、言わないですね」
　軽くいなされてしまった。鎌倉道はどこへいったのか。代田村と下北沢村を分けていた鎌倉道は途中ははっきりしている。南は淡島通りに端を発して、そして、北は北沢中学の先のセブンイレブンのところで終わっている。けれども南も北も果ては今のところ自分には不明である。本当はちゃんとあるはずだが、自分の勝手カシミールの中ではもやもやとして曖昧に消えている。
  しかし、焦ることはない。とりあえず鎌倉道と言われているところを遊んでみればいい。なにか分かるはずだ。実際、通るうちに分かってきたことがある。
　道が違うと、文化も違ってくるから面白い。いつもは「あづま通り」を通る。昭和２年頃の下北沢略図を見ると、このあづま通りは「二子道」と言われていた。その時にはまだ「茶沢通り」はない。二子道の方が古いわけである。二子とは二子玉川に通じる道のことであろう。
  下北沢南口庚申塔の脇を下北交番の方に向かう道、それを二子道と言った。いつもはその道を通っている。こちらはまず最初に井の頭線がある。ところが幸いなことにそこには踏切はない。頭上を電車は通る。そこをレインボーゲートと称している。なぜレインボーなのかよく分からない。帝都線には七色にマスクを被った電車が走っているそこから名づけたのだろうか。
　神殿を思わせるゲートを、軽くペダル踏んで通る。するとすぐに左は本多劇場だ。そして右手、自転車やさんのおじさんがなぜかタバコのセブンスターを販売機に入れている。ちょうどそのときにいつも通りかかるから不思議だ。じつは三年前にこのおじさんに泣きを入れて、パンクの修理を頼んだことがある。
　ともあれ、ずっと向こうに見える踏切めざして走る。そして交番前の踏切を抜けていく。関門関所は交番前の４号踏切だけだ。そこを巧くくぐり抜ければ，ラッキーだ。
　けれども鎌倉道で行くと。小田急が先にある。そこを渡ると今度は井の頭線である。下北沢で二つの線がクロスしているから当然そうなる。が、小田急が先に来るというのがなんとも新鮮である。いっそ小田急で逃げましょうかが最初に来る、それが自分にはカルチャーショックだ。


カルチャーとは耕すことだ。自分の自転車で新しい道を耕す。するとその道の文化が見えてくる。新しい発見は二つの踏切に行く手を阻まれることだ。おまけに古道であるゆえに割引きがない。ねちねち坂を上って下りになる。すると小田急下北沢３号を踏切がある。踏切を渡って右に折れた道は下りるだけ下る。貯金がゼロになる。そこからこんどは左に折れてぐびりと登って坂貯金が始まる。貯まりかけたところに井の頭線下北沢駅一号踏切がある。下北沢西口だ。
　この下北沢一号踏切は難関だ。矢印が両方点灯している。上りが新代田からの勾配を登ってくる。踏切を過ぎる。と，今度は駅に止まっていた緑のマスクの電車が踏切を通る。かててんと過ぎる。すると下りの矢印は消えるかと思うと消えない。渋谷方向を見ると，もうホームの向こうに水色での化粧した電車が待っている。その電車が下北沢に着く。止まっている間に今度は上りが点灯する。待ちきれない通行人はすぐ側の階段を下りる。下を潜って向こう側に出られるようだ。
　編成が五両と短い故に，つぎつぎに電車が来る。井の頭線は大繁盛だ。七色カラーの電車はみんな出払ってフル稼働だ。
　前後したが、小田急踏切も触れておく。
小田急の編成は長い。各停は八両，急行は十両だ。けれども運転間隔は短い。各停が行くと急行，それに準急だ。こちらも待つ方はたまらない。上りの急行が過ぎる。が，踏切は上がらない。つぎの電車が来ているからだ。ところが視界に見える隣の２号踏切は急行が過ぎると遮断機がぱぁんとはねる。ああ無情だ，こちらは留め置かれて，あちらにいたやつは楽々と通行出来る。狡いではないか。不公平ではないか。人間故に恨み辛みは重なるものである。
　踏切もみんなで渡れば怖くない。３号にはそういう伝統がある。まず左右を確認する。駅員のように指差しまではしない。安全確認をして、踏切のバーを婆さんが持ち上げる。そして潜り抜けて、つぎのスーツにバトンを渡す。その側にいたら自分の順番が回ってきた。スーツがバーをおれにくれるのだ。順番だから仕方ない。というのはいかにも浮遊的ないいわけだ。が、厳かに棒を受け取って、左右を見て踏切を渡る。渡りきったところで下り急行が警笛をぶわんぶわんと鳴らした。交番前で警笛は鳴らさないのにこの西方ではしきりに警笛を鳴らす。踏切を乗り越えて渡るやからが多い。西方文化見聞録である。




rail777 at 22:05│Comments(2)│TrackBack(0)│
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この記事へのコメント

2. Posted by レィルセブン   2004年12月17日 20:24
コメントをありがとうございます。今日は行きも帰りも下北沢３号踏切
通りました。まだまだ知られないエピソードがあるように思えます。物語の
鉱脈があるように思います。ご指摘いただいたページ、丁寧に下北沢の空襲
のことを書いておられますね。一色次郎が生きています。
エズサズのクリスマスイルミネーションを入れて小田急電車を撮ろうと試み
ましたがうまくいきませんでした＾＾。
1. Posted by 33   2004年12月17日 10:26
いつも楽しく読んでおります。下北沢３号踏切のすぐそばに住んでいます。
こんなページを見つけましたのでお知らせまで。
http://homepage3.nifty.com/kusyu/index.html

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