2009年05月
2009年05月31日
下北沢Ｘ物語(1335) 〜ネット時代の戦争物語５〜
今年度の「戦争経験を聴く会、語る会」は去年に続いて二度目となる。昨年は、個別の戦争経験が語られた。初めてだっただけに、全体として、どんなものだったかというのはまとめにくかった。二度目というのは分析的、批評的になるものだと思った。ただ聞くだけではなく、ここで生じたメッセージをどう伝えるかという課題意識を持つことができた。「疎開児童の体験談を聞く」ことにテーマを絞ったことも良かった。
今回の会を通して何を伝えて行くのか。疎開時代の辛い生活、それは食糧不足、しらみや蚤被害、そしていじめである。この最後の問題は大きなものであった。
「あの寒さというのも辛かったですね。本当に寒いんですよ。コタツがあるのですけどね、全員が入れないのですよ。そういう中でいじめって起こりましたね。口では言えないほどにひどいんですよ。一人一人を前にみんな欠点を言うのですよ。色が黒いとか、不細工だとか、頭が悪いとか、それで自分に番が回ってくるものだから、結局尻馬に乗って自分でも、その人の欠点を言うんですよね。あることないこと言っていじめるんですよね。それで袋だたきにあって仲間はずれにされた子は、コタツに入れないで、壁のところで泣いているんですよね」
松本明美さんは女子のいじめの陰湿さをしんみりと語っていた。
「わたしは松本明美さんのお話しを聞いてびっくりしましたね。同じ所にいたのに全く違う経験をしているのだと思いました。わたしなんか東京に帰ろうなどとは思いませんでしたね。食糧はないし、空襲はあるし、帰ってもいいことはないと‥‥しかし、いい先生に出会いましたね、国語の柳内達雄先生、音楽の浜館菊雄先生」
肋骨を折ってあまり話せないがと言いながらも力強く語られたのは鳴瀬速夫さんである。女子世界と男子世界が疎開生活ではだいぶ違っていたようだ。しかし、いじめは男子でもあったようだ。会場にいた疎開経験者が語った。
「わたしのところは部屋に縦割りの年齢集団を入れたんですよ。それで食事なんか六年生も下級学年も量は同じでしょう。いじめは起きますね。それで、先輩は上官にあたるわけですよ。部屋を出るのにも挨拶をするわけですよ。『田中は、これから厠に行ってまいります』とか言わなくてはいけなかったのですよ。」
いじめに関しては人によってだいぶ違うようだ。鳴瀬速夫さん、そして、田中幸子さんもそんなことはなかったという。人によって違いはある。が、いじめが横行していたことは確かである。いじめが見えないところで行われていたからでもある。
2009年05月30日
下北沢Ｘ物語(1334) 〜ネット時代の戦争物語４〜
代沢小、疎開児童生徒の分宿先は「長野県東筑摩郡広丘村郷福寺」だった。そこで歌われていた寮歌が歌声となって代沢小視聴覚教室に響いた。旭正章さん、そして、彼の九十四歳になるというお母さんも加わっての合唱だった。生きている物語を目の前にしている、現実であるようなないような不思議な思いがわたしの身を包んだことだ。歌い手のみんなにとっては六十四年ぶりに再会した歌曲である。
「戦争経験を聴く会、語る会」、その当日、旭正章さんが、この歌について話されたことを自分で思い返した。
「わたしたちは、広丘のうたと言っていたのですよ。代沢小の生徒たちが疎開していた郷福寺に、住職と親戚だったものですからわたしも疎開して寄留していたのですね。寺にある掘っ立て小屋とわたしたちは言っていましたけどそこに住んでいたのですよ。わたしが四歳のときですね。疎開児童の様子を遠くから見ながらわたしはいましたよ。歌は土地のみんなが知っていましたね。ここに今来ている母がよく歌ってもくれましたからね。広丘の歌はみんな歌っていましたよ。鼻歌ではだれもみな歌っていましたからね。懐かしいものですから、一体どんな歌だったのか調べ始めたんですよ。人に聞いたりしてやっと一番だけが不確かながら分かってきたんですね。だけど何番まであるのか分からない。それで、インターネットで調べたら、ここのブログに行き当たって、コメントを書いたのですよ」
インターネット上で発端を作られた旭正章さんが経緯をそう話された。ネット上で知り合った旭さんが生身の人間として目の前で話をされている。温厚そうなそのお顔、この方が旭さんだったのかとわたしは思った。９４歳になられたというお母さんのこともメールのやりとりで歌に深い関心を持っておられることを知っていた。
一つの事象として捉えておきたいことは、疎開児童生徒よりも、それから一歩退いた子どもや地元の人の歌に対する思いが一層に深いものであったということである。懐かしくてたまらないというのは旭正章さんだけではない。が、歌への思いの深さが、歌を発掘させたと言える。
2009年05月28日
下北沢Ｘ物語(1333) 〜ネット時代の戦争物語３〜
ネットの戦争物語には果てがない、「戦争経験を聴く会、語る会」からだいぶ遠ざかった。それでもなお、このときの写真や記録を見ては目を潤ませている。戦争物語での言葉の響き、その余韻の中にまだ浸かっている。
われわれが使っている言葉は意味の重みが希薄になっている。今という時代の言葉は当座を凌ぐ道具になっている。味がない、温もりや、温かみが薄い。言葉によって救われなくなった。
「戦争経験を聴く会、語る会」のトップで、疎開経験を話された松本明美さんは、彼女自身が言葉によって救われたと締めくくった。疎開先から三日に一度ぐらいの割合で手紙を出したという。それへの返事が親から来た。手紙の言葉がどんなにか自分を勇気づけたかということを言われた。彼女は往時の手紙を今も持っている。茶色く変色した手紙の束を見せてもらったことがある。彼女に取っては大切なものだ。
立川裕子さんは日赤医療センターに入院していた。その彼女を二月にお見舞いに行った。彼女も、往時の手紙を肌身離さず持っていた。ファイルに挟まれた手紙は疎開時に、父親から受け取った手紙だった。自分のものは家に置いてきて、父親から来た励ましの手紙は手元においていた。緊急に入院し、不安であったろう。明日とは知れない命を思われたのかもしれない。そんなときに疎開時代の父親の優しい言葉を読んでは、自分を励ましていたのだろう。
言葉が煌めきを失った今という時代になおも言葉が燦めいている。インターネット上の偶然的な繋がりに端を発したものだ。それは思いの詰まった言葉との再会、出会いである。その具体的な場面が今回の「戦争経験を聴く会、語る会」であった。昨日、会に参加しておられた旭正章さんから「御礼」とされたメールを頂いた。
2009年05月26日
下北沢Ｘ物語(1332) 〜ネット時代の戦争物語２〜
あれは何だったのか？、「ネット時代の戦争物語」、その切り口がまだ分からないでいる。が、考えているうちに時間という夾雑物が中に入ってきて問題から少し遠ざかった。離れることによって見えてくることもある。
昨日のことだった。吉祥寺で昔の仲間の会があるというので行った。ここで隣り合わせた人が面白い人だった。彼は、府立二中で学んだ。そのときに二年間、海音寺潮五郎に国語を習ったという。
「先生はね、教科書の授業をやらないんですよ。自分の書いて来た原稿を生徒に読ませるんです。ガリ版で刷られたものかって？、いやいやそんなものありませんよ。先生が書いた原稿用紙だけですよ。それを生徒が読み上げるんです。読み上げられたものが分かるかどうか、そればかりか内容についていちゃもんをつけろというんですよ。それで生徒のほうもちゃんとなんかここは分からないとか言っていましたね。ときに読めない漢字が出てくると黒板に書けといって書いて言葉の勉強をしましたね」
作家の年譜を見ると確かに府立二中で教鞭を執っている。本当のことであろう。面白いと思ったのは表現の根幹を捉えて授業をしていたことである。書かれたものが「伝わる」ということがもっとも大事だ。伝わったか伝わらなかったかを問題にして授業をしていたというところは作家の評伝のエピソードとしては納得がいく。ありそうな話だと思った。
この話を聞いて思ったことはその原稿用紙はペンで書かれていたろうなということである。書くための道具、それは鉛筆からペンへという階梯を辿っていたはずだ。
「ネット時代の戦争物語」のキーワードは「鉛筆部隊」である。児童たちは鉛筆で数字や言葉を書いた。親宛の手紙も鉛筆で書いた。当時、筆記用具としては鉛筆だ。繰り返しそれを使って、言葉が充分使えるようになるとペン、あるいは筆を使うようになる。成長過程にある子どもは鉛筆で文字を書いて頭をよくしていた。この呼称にも意味がある。
2009年05月25日
下北沢Ｘ物語(1332) 〜ネット時代の戦争物語１〜
新しく生まれたネット世界の中で、多くの人が不思議な漂流経験を味わい始めている。それはマスメディアではない、パーソナルメディアである。それはブログというネットツールを通しての出会い経験である。が、このツールの脆さもある。
「確かに、インターネットにおける記録というものは重要性がありますね。しかし、一般的にはそれを記録化するという価値体系は作られていないのです。大きなパニックが起こるとたちまちにネット上の記録なんて消えてしまいますね。だから、北半球と南半球にあるネットサーバーに分けて保存しておくというのも一つの手かもしれません。いまのところネットに出現しているものは価値づけられてはいません、体系的にネットでの資料を記録していくというシステムは出来ていないと思うのですよ。多くがゴミになっていますね」
ボランティアの一人、理系に詳しい山本さんが「戦争経験を聴く会、語る会」の後、雑談をしているときにそう言った。人々を結びつけつつあるパーソナルメディアとしてのネット、その記録は危ういものがある。この記録をどう残すのか。厖大な記録が集積されてきたこのブログには大きな課題である。
２１世紀、インターネット時代における戦争秘話の発掘はこのネット繋がりの中で始まった。５月２３日、その関係者が代沢小に一同に会した。第２回、「戦争経験を聴く会、語る会」が開かれた。三時間かかって話はとりあえずの結末をみた。が、この一連のネットでの物語は果てがなく続いて行きそうだ。
「わたしびっくりしたのですよ。山梨から来られた矢花さんが、立川さんのお手紙を持っていらしたでしょう。そのときに浅間温泉の富貴の湯の古いパンフレットも持っていらしたのね。あそこにも特攻隊員が泊まっておられて、後に出会った特攻の遺族の人がそこのことを調べておられるのですけどね、あの旅館はなくなってしまったのですよね。だからとても貴重なものですよね。２３日、あれをコピーしようと思って、矢花さんからお借りしてコピーできるところを捜したのですけどね、見つからなくて、出来なかったのですよ。でもね、家に帰って、やっぱりあれは貴重で、特攻の遺族の方に見せてあげたいので、矢花さんところの電話を教えていただけますか。」
田中幸子さんから昨日電話があった。
「ほんとふしぎだわよね」
このところ、この言葉は彼女の口癖となっている。機縁が機縁を生んでその機縁のふしぎさに中に彼女はずっと包まれているようだった。電話を切った。それからまただいぶ経ってから、電話が鳴った。
2009年05月23日
下北沢Ｘ物語(1331) 〜続武剋隊と鉛筆部隊２〜
言葉は時間を刻むものである。そのときそのときに書かれた言葉にはその瞬間の時間が刻まれている。が、時代が経つに連れ、言葉に含まれる情調、味わい、感情などが段々に薄くなってきている。言葉が代用する記号が本当に記号化しつつある。
鉛筆部隊、疎開児童だった立川裕子さんが昭和二十年五月二十一日、「東京都世田谷区北澤三五三番地」の父母宛に手紙を送った。これを読むと文面から色や匂い漂って来て、音まで聞こえてくる。黄金色に染まる一面の麦畑、黒い土、掘り起こすと泥が匂う。
「お〜い、でっかいミミズがいたぞ！」
掘り起こした土から蛇ほどにも大きいミミズが出て来た。
「臨時ニュースを申し上げます。誠第三十二飛行隊は軍偵九機をもって、嘉手納西方海上に展開している敵艦船群に突入し‥」
ラジオから流れ出るアナウンサーの声にじっと耳を傾けている鉛筆部隊の児童たちのようすなども目に浮かんでくる。その立川さんの手紙である。
お父様お母様お変りありませんか。私達も毎日元気で楽しく暮らしております。麦の穂ももう出てゐるのもあります。私達この間の日曜日は一日中畠をやりましたがとても楽しいでした。
川口さんがゐらっしゃらなくなって少し淋しくなったさうですね。でも大出さんがゐらっしゃるからおもしろでせうね。おさいほうは今かんたん服のかた紙をとってゐます。今日は朝のうちよいお天気でした。それでちゃうど今日は天皇陛下がかしこくも青少年学徒にお勅語をたまはった日なので午前中少年団の分列式がありました。午後は少し雨が降りました。
鳴瀬さんと小田のおば様がおいでになりました。それからまだ書くのをわすれましたが千代の湯にゐた時生活をともにした特攻隊武こく隊広林隊の今西さん出戸さん今野さん大平さんがかしこくも上聞に達したことを十七日の朝の六時のニュースで聞いた時とてもうれしくてたまらなくなるといっしょに日本をせおって立てるりっぱな少国民にならうと思ひました。今西さんのお書きになった歌は私のたから物として大平さんのお書になったものもとってあります。満州の皇帝陛下から今西さんがいただいた黄色名きれにりっぱな歌が書いてあります。
それは帰るまでとっておきます。とてもりっぱな歌です。お父様お母様もお体を大切にして下さい。
去年の今ごろことを思ふとお母様の病気のことが思ひ出されますが今年はお父様もお母様もどうぞお元気におくらしください。私はもちろん大元気です。このごろはお家のゆめをときどき見るのでうれしいです。よけい元気がつきます。今岡にはつつぢのお花が咲いてゐます。とてもきれいです。おにもつ本当にありがたうございました。
このごろ朝起床五時半ですぐ布とんをつみおそうじをすまして六時に点呼をやります。今私達が六年でおそはってゐる内山先生はよい先生です。馬場先生におしえかたがにたところがあります。お父様お母様私達は今ねるところです。さようなら
五月二十一日夜
長野県東筑摩郡広丘村郷福寺 立川裕子
2009年05月22日
下北沢Ｘ物語(1330) 〜続鉛筆部隊と武剋隊〜
何かの符合というものはよくある。機械的なものだろうか、あるいは偶然的なものだろうか。そんなことを考えることがある。昨日、五月二十一日という日の因縁である。わたしたちは言葉の因果の中に確かに生きているということは間違いのないことだ。
昨日、夜、電話が鳴った。
「もう八十一になりましてね、とりあえず元気ですよ。ええ、確かに広島電鉄家政女学校での経験は辛いものでした。でもね、我慢するということを教わったように思うのです。雨の日にポールが架線からよく外れるんですよ。窓から身を乗り出してロープを引っ張ってポールを線にはめ込むんですけどね、これがうまくいかないんですね。ロープを伝って油の混ざった雨水が流れてきて眼に入るんですよ。目が痛くてね、それでも懸命に努力しましたね。なにがなんでも頑張らなくてはいけなかったのですよ。今、ふり返ってみると我慢をするということを教わったように思えますね。」
福山市に住んでいる藤井照子さんだった。十四歳で広島電鉄家政女学校に入学し、車掌をし、十五歳で電車の運転をしていた。
「ああ、履く物がなくて素足で運転していたんですか。ハンドブレーキの鉄の爪はその素足で蹴っていたんですか、それは記録しておかなくてはいけませんね‥‥」
これはわたしが言った。
「いまだに電停の名前は皆覚えていますね。広島駅前、猿猴橋、的場町‥‥」
彼女は広島駅前で被爆した。青い火花が散ったので電車のブレーカーが落ちたと思ったようだ。
一昨年、彼女らに取材して、「皇国電車少女物語」を書いていた。それが途中で頓挫してしまった。「広島にチンチン電車の鐘が鳴る」がテレビ映画の候補となったことがきっかけとなった。
製作担当者は中国にセットを作って電車を動かすみたいなとてつもなく恐ろしい話をしていた。大きなスポットが当たることを自身は恐れている面がある。だから、テレビ映画化が実現しなくてよかったと思っている。が、このことをきっかけとして彼女たちのことはなるべく残しておきたいという思いが湧いてきた。そのことから「皇国電車少女物語」を書くつもりだった。半分まではまとめた。が、途中でくじけてしまっている。
「わたしが生きているうちに‥‥」
藤井さんにそう言われた。自身も生きているうちにまとめては置きたいと思う。藤井さんたち女性徒の戦時下における奮闘苦闘は事実としては分かっている。
「二日目広電本社にトラックでいったんじゃけど、道沿いに髑髏が並んでおって恐かった。今まで人にはよう話せんじゃった」
こう証言した新川さんも今は入院していると言う。人は自分を含めて老いていく。
2009年05月21日
第２回「戦争経験を聴く会、語る会」
第２回
「戦争経験を聴く会、語る会」
〜今、聞いて置こう、薄れゆく戦争の記憶を残すために！〜
元鉛筆部隊：疎開児童経験者の話を聴く
日時 ５月２３日（土）１時から 代沢小学校視聴覚教室
代沢小住所 東京都世田谷区代沢５丁目１番１０号
参加希望者は事務局「邪宗門」に申し込んでください。
０３−３４１０−７８５８
主催 「北沢川文化遺産保存の会」
会長 長井邦雄
後援 世田谷区教育委員会
わたしたちは、年々戦争の記憶から遠ざかっています。それを改めて記憶し、後世に伝えたいという思いからこの会を開くに至りました。ちょうどこの五月末日は山の手大空襲があって６４年目となります。近隣は５月２５日から翌２６日にかけて空襲を受けました。そのことからこの時期に会を設けたものです。
今年は、「北沢川文化遺産保存の会」の広報を担っている、「東京荏原都市物語資料館」を発端に偶然的に戦争中、疎開先で歌われていた歌詞がみつかりました。代沢小の疎開児童たちが疎開先の長野県広丘村の郷福寺で歌っていた寮歌です。
彼らを作詞者の柳内達雄氏が鉛筆部隊と名づけたようだ。この鉛筆部隊の疎開生徒は、疎開先の浅間温泉千代の湯で沖縄へ特攻攻撃をかける武剋隊の青年たちと交流します。が、彼らは慣れ親しんだ児童に別れを告げて、沖縄に向かい、敵艦隊に突っ込みました。そのことをラジオニュースで児童たちは知りました。惨たらしい戦争の事実です。武剋隊と鉛筆部隊の交流は戦争秘話の一つと言えます。これも話として出てくるものと思われます。
鉛筆部隊は、浅間温泉から再疎開します。その一つが郷福寺で、そこで歌われていたのが「聖丘寮歌」です。この寺には幼少時に旭正章さんがおられました。彼は懐かしい思いからこの歌詞を捜していました。今年になって偶然的にこの歌詞の全貌がわかりました。矢花克己さんが山梨の骨董市でたまたま手に入れた手紙の中にこれが入っておりました。
鉛筆部隊の元児童が病気になりやむにやまれず家の後片付けを古道具屋さんに託しました。立川裕子さんです。その彼女の手紙をたまたま骨董市で矢花克己さんが手に入れました。手紙に捺されたハンコ、「鉛筆部隊」を手がかりにしてネット検索したところ「東京荏原都市物語資料館」に行き当たったのです。
今回発見された「聖丘寮歌」を菅裕子さんにピアノ演奏していただきます。一度弾いていただいて、その後に、この歌に思いを持っておられる松本明美さんや、旭正章さんなどに歌って頂こうと思っております。６４年ぶりに日の目をみることになった寮歌ということになります。
以上のことから今年はこの逸話を中心に疎開児童の経験、苦難などを聞く会としました。時間があれば、疎開のことのみならず戦地での経験、空襲経験なども語っていただこうと思っております。
○当日のタイムスケジュール
ボランティア １１時集合 視聴覚教室の会場設営
椅子、机を並べる、展示物の展示スペースを作る
展示物 疎開児童の手紙類
松本明美さんのもの
立川裕子さんのもの
矢花克己さんのもの（Ｂ４ファイル十枚）
武剋隊が鉛筆部隊に残した揮毫
（せたがや平和資料室から貸与されたもの）
受付開始 １２時３０分 受付名簿に記入
１時 開会の挨拶 北沢川文化遺産保存の会 会長 長井邦雄
経緯説明 きむらけん
元鉛筆部隊、疎開児童経験者の話
松本明美さん
鳴瀬速夫さん
田中幸子さん
出席された方で疎開経験者
「聖丘寮歌」の発掘の発端となった旭正章さん
「聖丘寮歌」を見つけられた矢花克己さん
「聖丘寮歌」ピアノ演奏 菅裕子さん
歌える方は前に出てきて歌っていただく。
戦争経験者でお話しをされる方。
関係者への記念品贈呈 終わり
終了は４時
会場後片付け、４時半には全員撤収
○新型インフルエンザ対策
各人でマスクをされるなり、手洗いを励行されるなり、各自にお任せします。
○参加費無料 カンパ箱を置きますのでお気持ちのある方はカンパしてください。
○記録については代沢小の副校長先生がビデオで撮ってくださるとのことです。
＊なお、鉛筆部隊のことや武剋隊のことについてはグーグルのネット検索で各項目を検索してください東京荏原都市物語資料館の当該記事が出てくるはずです。
2009年05月20日
下北沢Ｘ物語(1329)〜小説「猫町」幻想行２〜
土地の樹木と文学、野屋敷の緑は文学に反映されている。今もここを突き抜けている御殿山小路には風趣がある。御殿山小路の近代建築とヒマラヤ杉というのは充分に風景資産としての価値がある。だいぶ伐られたとはいえ今も緑は多い。
昭和九年において野屋敷の東を南北に突き抜けるこの路地をなぜ御殿山小路とつけたのだろうか。突き当たりの右手にお屋敷があった。男爵や子爵の屋敷である。敷地はゆったりととってあって緑も多い。赤松が彩りを添えていたようだ。
昭和四年の地図を見ると、野屋敷の北の端にしか家はない。建築家今井兼次の家や大島家、そして、石井家の家と思われる家屋がこれには記入されている。環境と調和した家を考えて当地に家を建てたのは今井兼次である。その家は今もなお風格を漂わせて緑の木々の中に建っている。
「父が撮った昔の写真の中に松が多く写っていますね」
松林の中に映える瀟洒な洋風建築物である。そこに順次お屋敷が建っていった。昭和十四年の地図を見ると、この野屋敷はもうすっかり宅地で埋められている。昭和八年の帝都線の開通でいっそう便利になったことから宅地として売れたものだろう。住宅地にはなったが、特徴的なことは敷地が広いことである。それは庭が広いことを言い表している。自生の赤松を多くの家でそのまま残していた。緑豊かな地域であったことである。
中村草田男は昭和十三年夏に、今井兼次邸の斜め裏手に越してきている。この年の句に「坂の上の夏雲もなき一つ松」という作がある。当地野屋敷の光景を詠んだものかもしれない。一帯は松が多く松籟も響いていたはずである。「松籟や百日の夏来たりけり」というのもその後に出てくるものだ。野屋敷の土地の陰影が彼の作にも滲み出ているのではないだろうか。
2009年05月19日
下北沢Ｘ物語(1328)〜響け！若い心に〜
言葉とは何でしょうか？、そう聞いた。すると一人の男子学生が、「心になんらかの印象を残すもの」と答えた。「面白い答えだね、君は詩を書いたりするの」とつい聞いてしまった。「いえいえ、書きません」と彼は照れていた。
「言葉って何かというのは面白い問題ですね。普段は考えないものですが、言葉はどういうものなのかって考える必要はありますね。君たちにとって言葉は大事なものだと思います。長い人生をこれから生きていくわけですけど、言葉は生きていく上での杖なんだ、手がかりなんだと思っていい。多く言葉を知っていれば手がかりも多いということになるんだ。杖をついても確かな手応えが返ってきますよ」
「言葉というものは混沌としたものを形にするものなんだ。漠然とした世界の中から一つの現象を取り出して、それを理解する。だから言葉で捉えていない現象は他にも多くあるんだよ。そうだね、言ってみると言葉は物差しでもあるんだ。たまたま捉えられた現象が言葉になっている。それを手がかりにしてつぎの現象を探し出す。言ってみれば杖みたいなものなんだ。それをあてがったり、差し出したりしていくうちにすこしずつ未来が開けていく、成長もしていくのさ。」
「言葉というものは一部を表しているに過ぎないんだ。だからその一部を通して間に隠れている情報を読み取る。想像力だよね。大切なのは言葉を材料にして想像するということだよ。例えば、『炎天にレールまつすぐ』という短い作品があります。この十文字からどんなことが分かるか想像してみる。どうですか。そこの君？。『暑いときですね。それから、そこにレールがどこまでも続いています。』と。ああ、いいですね。そういうふうに考えるのです。すると色んなことが分かってきます。夏の暑い盛りですね。線路の側にいて向こうを眺めているわけですね。手前から向こうへずっとレールがどこまでも伸びています。そうすると周りの景色も浮かんできますね。空は？。うん、そうそう、白い雲に青い空、そして、線路の両脇に広がっている緑も見えてきます。すると匂いがしますね。草いきれ、あるいは牛の糞の匂いもする。ときに風も吹いてきます。」
2009年05月17日
下北沢Ｘ物語(1327)〜小説「猫町」幻想行１〜
小説「猫町」を現実の町に置き換える。そして、その町に物語の痕跡を求めて旅をする。小さな旅だが戦慄的である。それは現実と虚構のぎりぎりのところを行く旅でもある。嘘かも知れない、が、本当かも知れない、そういう境界ラインをさまよう旅である。
萩原朔太郎が残した唯一の小説が「猫町」である。清岡卓行は「近代日本文学においてあなたがもっとも強い影響を受けた小説はなにですか」という問いに対して、この本を推挙している。彼の著書、「萩原朔太郎 『猫町』私論」の冒頭にこのことが書かれている。彼は、「主人公の意識の屈折がいわばストーリーと」なっている点を類い希なものだと評価している。
詩人は、「猫町」で述べている。「私はもはや、どんな旅にも興味とロマンスをなくしていた」と言う。それで彼はつぎのような方法を編み出したという。
久しい以前から、私は私自身の独特な方法による、不思議な旅行ばかりを続けていた。その私の旅行というのは、人が時空と因果の外に飛翔し得る唯一の瞬間、即ちあの夢と現実との境界線を巧みに利用し、主観の構成する自由な世界に遊ぶのである。
「猫町」日本詩人全集１４ 萩原朔太郎 新潮社刊
小説「猫町」を歩くというコースはもう三度目である。五月の定番コースである。昭和１７年５月１１日、代田の自宅で亡くなっている。そんなことからも定番となった。下北沢駅北口に１時に参加者は集まった。「猫町」に惹かれてかいつもより参加者が多い。
駅前で「猫町」についてのおおよその説明をした。下北沢は詩人が住んでいたところであって慣れ親しんでいた町だということ。それゆえに「猫町」の第一ステージだということが大いに疑われることなどを話した。
2009年05月16日
下北沢Ｘ物語(1326)〜樹木から眺める都市の断面〜
「土地と樹木の因縁」は、都市化が進行すればするほど希薄になる。土地に根を張っていた樹木は次第に駆逐されて、植物の痕跡すら跡形もなく消えてしまう。
大谷石の上の土盛りに沈丁花が植えてある。そんな塀が、ある日ショベルカーによって壊される。庭にあったケヤキやマツなどもあっさりと切り倒される。更地になったところにはアスファルトが塗り込められ、そこに区分線が引かれる。そして、たちまちにコイン駐車場に衣装替えしてしまう。
このところ荏原一帯で顕著に見られる例である。住宅地ばかりではなく商店街でもそうである。長くシャッターが降ろしていたお店が壊されて、しばらくするとコイン駐車場ができている。
近隣一帯につぎつぎにできるコイン駐車場、そこは真っ黒なアスファルトで塗り固められる。日射しの強いときに通ると、熱が伝わってくる。都市の熱帯砂漠化はコイン駐車場によってもたらされている。今年の夏は一層暑くなりそうだ。皆、クーラーを入れる。するとまた空気が熱せられる。
庭のある宅地が更地になってコイン駐車場に変わる。緑がどんどん失われつつある。生け垣などもだいぶ少なくなった。東京も、昔の、いわゆる山の手でも生け垣は大切にされていた。柳田国男は「美しき村」でこう述べている。
四十年前の東京の山の手にも、幾つかの屋敷を連ねた一列の槙の生け垣がよく見られた。‥‥中略‥‥それが夙（はや）くからカナメになりカラタチになり、又板塀や土の塀にもなり、一方には古風な竹藪なども少し残って居て、統一は既に失われて居た上に、新たに出来るものはいかめしい煉瓦やコンクリート、後には更に表長屋が建て続けられて、もう捜しても赤い槙の実のなつて居るやうな生け垣はみられなくなってしまつた。
この論考の末尾には、「昭和十五年十一月」とある。旧山手での現象が、今度はまた都市の外縁の荏原地域でも繰り返されている。
2009年05月14日
下北沢Ｘ物語(1325)〜北沢の尾山篤二郎５〜
具象画、抽象画というが、言葉にもその傾向はある。尾山篤二郎の場合は前者に属する。彼の場合は体の動きが不自由だった。そのために身の回りに見えるものを愛おしんだようだ。ことに身近にある植物などはそうである。土地の匂いのするものを具体的に詠んでいる。
昭和十一年に北沢に転居してきたときに彼は「北澤」と題して七首を詠んだ。眼前に見える範囲の植物、柊、朴､山椒について詠んでいる。北沢の地に生えている植物である。彼はここに住み慣れるに従って、この「北澤」を歌枕としたようだ。
北澤の澤の小川のわかれ霜すすきは枯れてすでに残らず
「雲を描く」 題「春霜」
歌枕は､一つには音楽性がある。「きたざわのさわ」という語呂のよさからも使われている。彼が住んでいるところからは南に下った坂が見えて、それが転がり落ちた先に小川が流れていた。わたしたちは森厳寺川と呼んでいる。歌人の南隣りの安野さんの家はかつてそこで田圃を作っていた。
北澤の澤に落ち込む岡なだり木立は赤く青く芽ぐみぬ
歌人が居住していたのは丘上、すぐ北側に水道管が走っている井の頭街道がある。標高は４１メートルぐらいである。土地は南西に向かってなだれ落ちている。下はおおよそ３４メートルほどだ。五、六メートルの差がある。歌人のいる二階からだとその谷を俯瞰するかたちになる。
北澤の竹藪蔭やたつた四五日に見事に延びし笋（たかんな）の鉾
この近隣にも往時、昭和十二年当時、竹藪があって、筍を生産していたようだ。
北澤の澤邊の蛙田は無けど此所を瀬と鳴くこゑ天に満つ
2009年05月13日
下北沢Ｘ物語(1324)〜「土地と樹木との因縁」を求めて〜
言葉は物事を平均的に捉えている。世にある現象を言葉として取り敢えず基準的に理解しているに過ぎない。が、そのよく把握できないままい進行している現象なるものも無数に存在する。その現象を捉えていないだけだ。
「土地と樹木との因縁」（「美しき村」）というのも一つの現象把握である。忘れがちな観点だが、鋭い感性を持った人はそれを言葉として遺してくれている。柳田国男である。
民族学者は「風景の発端」ということばも遺している。これも現象を捉える一つのものさしである。武蔵野の風景の発端は樹木だったとも言える。
しかし、今日の都市風景は飾られたものだ。近隣の駒沢公園の植生、これも一つの虚飾、造園された森林である。園内の看板に記されていた樹種で一番多いのがモッコクだった。５５０本、これは意外であった。二番目が欅で５００本、土地と樹木の因縁でいえば妥当ではある、が、これも胡散臭い、園内に並木として意図的に植えられているからだ。
近隣の農家に欅が多いことは確かである。大地主の家には大概がある。が、自身の巡遊行によると多くが一本だけをシンボル的に遺している場合が多い。わたしの家はずっと前からある家なんだよということをアピールしているように思われる。
昨日、「土地と樹木のとの因縁」ということで気になったことがあったので久し振りに自転車で出かけた。目指すは、下北沢一番街の裏手の野屋敷である。この「野屋敷の土地と樹木との関係における文学」というのは楽しいタイトルだ。修士論文ぐらいはこれで充分持ち堪えそうだ。
2009年05月11日
下北沢Ｘ物語(1323)〜北沢の尾山篤二郎４〜
植生と文学という観点は素晴らしく面白い。鉄道交点文士町物語で一巡りすれば楽しい話ができそうである。加藤楸邨の欅、横光利一の松、中村汀女の梅、中村草田男の万緑、三好達治の柿など、エピソードが幾つも転がっている。
土地の文化と植生、これは密接に繋がっている。北沢の植生をよく知っている安野さんから面白い話を聞いた。
「農家には三つの樹木がありましたね。棕櫚、これは縄をなうためのものです。縄は色んなものに使えましたからね。樫、これは農具の柄ですね、欅、これは材として使えますから、例えば、臼などもこれを使いました。戦時の話なんですが、欅は船を作るのに供出されたと聞いています。棕櫚で編んだ網をかぶせて戦艦大和などは隠したとも聞きましたね。」
武蔵野一帯の緑は人為的なものであるということを彼は言っている。
森を形成する樹木がどのようにして育っていくのかは興味深い点である。
北海道の富良野には広大な大学演習林がある。かつてここでトドマツの倒木更新というものを見せてもらったことがある。樹木が朽ちて倒れる。横たわったまま腐って行く。そこに付近のトドマツから種が落ちてきて、芽が出る。それが等間隔に一列に並んでいる。天然自然の倒木更新である。なるほど樹木はこうして命を長らえていたのかと感銘を受けたものだ。が、これは原生林で営まれる樹木の命である。
武蔵野の樹林は原生林ではない。この一帯には古くから人が住んでいた。丘陵の根柄（ねがら）には縄文時代の古墳が至るところにある。木の実を食べていた彼らは雑木を伐って椎を植えたであろう。採集から農耕へ、古代から営農はずっと続いて来た。その過程で人為的に木は植えられて来た。
2009年05月10日
下北沢Ｘ物語(1322)〜都市の興隆、「根」から「気」へ〜
都市とは何か、「街道をゆく」の再放送、「仙台、石巻」を見ていたら「娘さんが晴れ着を着て歩くところが例え三百メートルでもあれば都市である」と解説が流れた。晴れ着を着て歩けるところが都市という視点が素晴らしく面白く思えた。若い女性がデモンストレーションをしていく繁華な場、それが都市だ。
居住区の近くには自由が丘がある。確かにおめかしをした女性が闊歩している。おしゃれな町である。が、この町も出発点は武蔵野の原野だ。
「駅一帯は湿地帯でずぶずぶで、馬捨て場には具合よくて、近隣の農民が捨てに来たものだよ」
そんな逸話を読んだことがある。そういうローカルな地域が都会の膨張によって次第に都市化していった。その原動力となったのが東から伸びてきた鉄道だ。昭和２年に開業した東横線である。
都市化の一端、その発展の一つのプロセスは「根」から「気」へと変わったと言える。自由が丘、かつての衾町一帯は筍の産地であった。筍の皮の毛が立っているうちに、これを二里ほど東にある都会の青果市場に出荷できた。その好ポジションから筍栽培が盛んだった。土に生えた根を大切にして生きてきた。
衾には「根」のつく地名が多い、「中根」、「東根」などである。かつて住民は「ねがら」という言葉を使った。これは地形を指すようだ。「根柄」と書く。「『ねがら』とは台地の縁（根）の下に広がる原（畑）を意味し、農家の呼称でした。」（「めぐろの昔を語る」目黒区教育委員会）
2009年05月08日
下北沢Ｘ物語(1321)〜北沢の尾山篤二郎３〜
言葉と土地と風景、興味深い問題である。土地と距離を置く場合もあるが、土地の環境と密に関係して作品を残す場合がある。尾山篤二郎の場合は後者のようだ。
歌人の居住地が分かったことで気づいたことがある。言葉と土地と風景、その関係がいっそうに濃厚だったことである。
「評伝」はつぎのように語る。
十一年には二・二六事件があった。代表作ともいうべき「曼珠沙華」二一首がある。十月末、東京市世田谷区北沢五ノ六八四に居を構えた。大正九年家族を金沢に帰して以来、しばらく名古屋の家族の許に暮らした期間はあったが、ほとんど本郷周辺を転々として下宿生活をつづけていた篤二郎は、十六年ぶりにようやく安住の地を得たのである。
「評伝 尾山篤二郎」（滝沢博夫著。短歌新聞社。平成元年刊）
「いつも窓のところにもたれかかって外の景色を見ておられましたね。」
安野弘道さんのその証言も、生活の穏やかさを言い表すものだろう。歌人の世界は居住地が中心となる。目に見えるものが歌となった。
十二年の歌は、この家での嘱目吟が大部分で、生活が安定したこともあって、歌境の澄み進んだ佳作が多い。（同前）
嘱目吟とは 俳諧などで、即興的に目に触れたものを吟ずることを言う。とするなら近隣の植生は大いに影響するはずだ。
昭和十一年尾山篤二郎は当地に越してくる。そのときのことを早速に詠んでいる。
「北澤」と題されて「十月移居」とあり、それが七首ある。うち一首。
2009年05月07日
下北沢Ｘ物語(1320)〜駒沢：新町風景物語〜
人は時間の中に生きている。風景のトンネルの中を潜って‥‥
�ゞ霏�写生会で感じたこと
食らいつこうとする景色は食らいつける。
連休の谷間、駒沢オリンピック公園に写生に来ていた中学生がいた。かなりの大人数でである。それが公園のあちこちにいて風景画を描いていた。どんな絵を描いているのか気になってそれとなくのぞき込みながら歩いた。
まず、木陰でというのが多かった。よく晴れた日で屋外では暑い。木陰に憩いながら絵を描くなどというのはしゃれている。彼らも机上での勉強ではないので楽しそうだった。グループで輪になった描いている子たちもいた。が、その彼らの絵には生気がない。
見ると、緩くカーブした道の両脇に木々がただ生えているだけの、取り敢えず課題はこなしましたというものだ。多くがそうだった。描かれた絵が色合いも構図も似ていた。
絵は彼らの日常を映すものでもある。社会的重圧としての学習、そんな中で写生は生き抜きだ。早く仕上げて鬼ごっこでもやる方が面白いのかもしれない。やや粗雑な絵は彼らが置かれている状況を反映していると思った。
ところが、駒沢公園の中心部にある広場の片隅で一列に並んだ男の子がいた。他の子とは孤立して絵を描いている。初夏の日射しをまともに受けて暑そうだった。そのグループはどんな絵を描いているのだろうか。気になってそれとなく近づいた。彼らはお喋りをすることもなく、目の前に広がる光景を懸命に写し取っていた。その絵を見て思わず立ち止まった。中央広場の向こうに見える体育館のドーム、そして、右端には「管制塔」と言われる塔がある。それが空を突き刺している。
「ああ、なかなかいいねえ、その管制塔がアクセントになっているよね」
つい誉めてしまった。食らいつこうとする景色は食らいつけると思った。彼らのポジション取りもなかなかいい。木陰で憩っていてはいい絵は描けないと思った。
2009年05月05日
下北沢Ｘ物語(1319)〜北沢の尾山篤二郎２〜
鉄道交点は人や物が離合集散する地点であった。設計図が造りだした地点ではあったが、そこには武蔵野という風景と固有の土地の文化があった。が、開発が進行するに連れ、それらは次第に侵食されて人工的な町になってしまった。それでも複雑に入り組んだ路地は今もなお残っていて、この町に古代の面影を残している。
文士の居住痕跡は一つの物差しである。居住地域をどう眺めていたかということが彼らが描いた言葉から浮かび上がってくる。その土地のにおいのする作品が大概は残っているものだ。俳句、短歌、詩、小説などにその痕跡が描かれている。それらを通して土地の様子を知ることができる。その点、今回の尾山篤二郎旧居の判明は一帯の文化を測る上でとても興味深いものがある。
この旧居が判明したことから鉄道交点風景論という視点、観点を持って、町の文化を考えることができるように思った。つまり都市変遷の具体的な経過を見ることができるということである。その場合は節目を想定する必要がある。
鉄道開通前は原風景である。これが基準点の第一期になるだろう。坂口安吾が「風と光と二十の私と」に書き表している。「四方はただ広漠かぎりもない田園」と、これは大正十四年頃の風景である。第二期のエポックは昭和二年の小田急開通である。この期の風景については横光利一、萩原朔太郎などが記している。第三期は昭和八年に井の頭線が開通してからのことである。これを終戦までとしよう。この期間には加藤楸邨、中村草田男、そして、尾山篤二郎も入る。この第三期を推量する手がかりとなるのがこの三人ではないかと思う。いずれも近隣の土地の匂いを作品に言い表している。彼らの文学にも影響を与えている。
とくに興味深いのは中村草田男と尾山篤二郎の距離である。分かってみるとなんだ、そんなに近かったのかと思う。俳人と歌人の直線距離では２２８メートルしか離れていないことである。居住時期もそう変わらない。中村草田男は昭和十三年八月「世田谷区下北沢に転居する」とある。俳人の場合も終戦まではここを家としていた。が、俳人と歌人との間には川があった。これが居住地の雰囲気を分けていた。俳人の場合は都会的で、歌人の場合は鄙びていた。
2009年05月04日
下北沢Ｘ物語(1318)〜北沢の尾山篤二郎１〜
詩歌人がひっそりと隠れて住んでいる町が下北沢鉄道交点一帯である。尾山篤二郎もその一人だと言ってよい。歌壇の大御所であった。郷里、金沢ではよく知られた歌人である。
金沢市のホームページには、こうある。
現在、犀川の下菊橋付近には尾山篤二郎生誕百年記念碑が、兼六園と本多の森の間、及び浅野川常磐橋詰には尾山篤二郎歌碑が建っています。
この尾山篤二郎は北沢に居住していた。「評伝 尾山篤二郎」（滝沢博夫著。短歌新聞社。平成元年刊）にはつぎのようにある。昭和十一年「１０月２４日、世田谷区北沢五ー六八四に転居。」昭和二十年「４月２９日、岩手に戦禍を避く、住むに家なく諸所彷徨す。（とふのすがごも）」
「とふのすがごも」は尾山篤二郎の第十歌集で、岩手疎開生活を中心にした作品である。北沢の家を出て行ってのことである。年譜からすると九年あまりを北沢の地で過ごしていたということになる。
この尾山篤二郎旧居を前から探していた。第八歌集「雲を描く」の奥附に「北澤五ノ六八四」とあって、これに基づいて旧番地は何度か尋ね回ったことがある。北沢小の西側あたりだろうと見当はつけていたが分からないでいた。
ついこの頃になって北沢小の同窓生、長谷川慎一氏と知り合った。事務局の「邪宗門」でお目に掛かったときにこの旧番地の尾山篤二郎旧居が分からないかと問い掛けをした。ところが驚いたことにその三日後に返答があった。これらのことから改めて北沢小一帯の歴史を聞くという機会を設けて戴いた。
2009年05月02日
下北沢Ｘ物語（1317）〜目黒の筍と音楽：荏原都市文化論〜
中心時間の辺境にある荏原には都市文化が埋もれている。その陰影が街角にほの見える。遠い旅よりも近間の旅が一層に面白い。
家の前には呑川が流れている。が、かつて一帯の住民は別の名で呼んでいた。「昔は大川といって呑川とは言いませんでした。」（「めぐろの昔を語る」）こういう碑衾的世界観が興味深い。近隣の川、立会川と比するとこちらが大きい、なるほど大川だったのだなあと、昔話を読んで感心した。
自身の居住区には目に綾な風景は何もない。が、探すと都市文化の光と影がある。この街の、この町の変転、変遷は都会の動向を反映している。中心時間から遅れた時間の中にあるからこそ文化が潜む。
今は竹の子がシーズンだ。かつて居住地はこの名産地だった。「目黒の筍」である。これも都会、中心地から一定の距離を置いたところにあったことで名産でありえた。土の臭いのする物語である。
「まあ、昔の話ですけどね、わしら子どもはよく働かされましたよ。朝早く起きて、竹山に行くんですよ。ゆっくりと歩きながらひびを探すのですね。竹の葉が積もったところに微かな割れ目を見つけるのです。そこに目印の竹の枝を折って立てていくのですね。それを親父たちが掘りました。まずひびのところの土をかき分けるのですね。筍の先端のとさか形の頭がのぞくと、その向きを見て穴を掘っていくんですよ。根を傷めてはいけないからそれは慎重にするんですね。」
「筍は新鮮さが命なんですよ。これはね、掘り取って三時間も経つと、目方が一割方減るんですよ。水分が蒸発するんですね。その分固くなるんです。すると味がどんどん落ちます。だから時間との競争ですよ。朝、明るくなるのを待ちかねて掘るんですよ。それを荏原分場市場に荷車とかリヤカーで運ぶんですよ。この朝掘りは上等で、普通の筍の倍の値段がつきました。都心近くの小売り業者がやってきて、先を争って、朝堀を買い求めていましたね。」
2009年05月01日
下北沢Ｘ物語（1316）〜「北沢川文化遺産保存の会」会報 第３４号〜
「北沢川文化遺産保存の会」 会報 第３４号
会長 長井 邦雄（信濃屋食品）
２００９年５月１日発行（毎月一回発行）
事務局:世田谷「邪宗門」（木曜定休）
155-0033世田谷区代田1-31-1 03-3410-7858
会報編集・発行人 きむらけん
１、第２回「戦争経験を聴く会、語る会」
〜今、聞いて置こう、薄れゆく戦争の記憶を残すために！〜
元鉛筆部隊：疎開児童経験者の話を聴く
日時 ５月２３日（土）１時から 代沢小学校視聴覚教室
主催 「北沢川文化遺産保存の会」 後援 世田谷区教育委員会
戦争は遠い過去のものとなりつつあります。けれども太平洋戦争はわれわれの歴史の中ではもっとも大きなできごとでした。戦争に負けて日本は無条件降伏しました。この敗戦は一からの出直しでした。そこから出発して、長い苦難の道を歩いた末に、今日の生活が築かれたと言えます。そういう意味では今日の生活の原点を見つめるものでもあります。ところが、戦争の記憶の風化、戦争体験者の高齢化によって戦争経験は人々の記憶から次第に消えつつあります。その薄れ行く記憶を記録して次代に繋げたい、そんな思いからこの会を開くに至りました。これは党派的なものの集まりではなく、記憶を次代に繋げたいと願って開くものであります。
会場は代沢小です。代沢小と戦争ということで言えば、疎開のことがあります。戦争の証言シリーズの一冊として「学童集団疎開」（浜館菊雄）という本があります。これは「代沢小の疎開」を克明に記録したものです。歌のふれ合い、特攻隊との別れなど多くの話が収められています。その話を今回は生で聴いていただきます。
驚くような話があります。代沢小の疎開生徒が歌っていた寮歌がありました。広丘村の郷福寺で歌われていたものです。ちょうどそのときにお寺の子どもだった旭正章さんが過去の思い出とともにこの歌を懐かしく思ってずっと歌詞を探していました。ところがひょんなことが起こりました。疎開児童だった一人が、この一月に病気になり救急車で運ばれました。自宅の整理をする間もなかったことです。結局は古道具屋さんに後事は託されました。彼女の家には書簡が多く残っていました。それが古道具屋さんを通して骨董市に出ました。その書簡類を買った骨董屋さんが資料の中に寮歌の歌詞が入っていることに気づき、インターネットを通して、その歌詞の全貌を知らせてくれました。矢花克己さんです。
疎開児童の一人だった松本明美さんは今もその歌を覚えています。松本さんには疎開時代の話をしてもらいます。疎開児童が宿泊していた浅間温泉に特攻隊の武剋隊が一月ほど逗留して沖縄へ旅立っていきます。この武剋隊と疎開児童である鉛筆部隊というのは戦争秘話となってもいます。その話などをしてもらった後に、６４年ぶりに日の目を見た「聖丘寮歌」を彼女らに歌ってもらいます。その他の鉛筆部隊の人にもお話しをして戴きます。
今回は、以上の経緯から、主には疎開経験を皆さんに話していただこうと考えております。これらの話もわれわれの記憶から次第に薄れつつあります。ぜひともいまのうちに聞いて、次代に語り継いでいきたいと思います。みなさんどうか戦争経験を聴く会、語る会に参加してください。
＊当日展示資料 疎開児童の手紙 立川裕子さんなど
武剋隊が児童に書き記した揮毫
当日は旭正章さん、矢花克己さんも出席されるとのことです。
○参加費無料 来場者に「下北沢文士町文化地図」を差し上げます。関係者に記念品の贈呈を考えています。カンパ箱を置きますのでお気持ちのある方はカンパしてください。
○参加希望者は事務局「邪宗門」に申し込んでください。０３−３４１０−７８５８
２、「下北沢文士町文化地図」改定４版基金
「下北沢文士町文化地図」については「大改訂３版」を出したばかりです。が、既に一千部以上がなくなりました。そこで４版改版をと考えております。今回の３版では初めて「戦災地域図」を地図に落とし込みました。このことがきっかけとなって随所で「焼けた」、「いや焼けていない」という議論も湧き起こっています。この地図の発行がきっかけで新たに焼けた箇所も分かりました。
戦争痕跡が身近なところに幾つもあった。このことは街の過去を知るきっかけとなっています。それは街の記憶の蘇りに繋がっています。地図がこのきっかけを作ったと言えます。
この地図は、名前の通り、下北沢鉄道交差部一円に大勢の文士たちが居住していたことを証すものです。そればかりか、かつて存在した諸施設、また、稲荷社、地蔵尊、庚申塔、神社仏閣、教会の所在をも記していて、文字通り文化を総合した地図となっています。
先だって、北沢小同窓生の協力によって歌人の大所、尾山篤二郎旧居が新たに判明しました。ところが、現在の地図では対応できません。
当初の地図は、北沢川沿岸地域を中心としていたものですが、調べていくうちに鉄道交差部を取り囲むように文士達が大勢住んでいたことが判明してきました。そのことから当初の位置取りではこれらを網羅的に記入することが困難になってきました。
そこからつぎの改変を思いつきました。地域、範囲を井の頭通り、北沢小ラインまで上げて作成しようということです。このようなことを考えている過程で鉄道交点を取り囲む小学校も文化の発展の道筋だったことに気づきました。鉄道が交差することによって多く人が集まるようになった、それに合わせて小学校もつぎつぎに開校されていたのでした。教会と同じように小学校も、鉄道の交差をきっかけ開校されていったということです。そして、その小学校の歴史の中にこそ地域の文化の歴史があると思い立ったことです。そのことから開校年月をそれぞれの学校に記すことにしました。
これらのことを踏まえて、改定４版を作ることにしました。これまでこの地図は市民の寄金や企業の協賛を得て作ってきました。その方針には変わりはありません。それで地図の印刷費用だけに当てる地図基金を募ることにしました。
給付金でもらった金は広く公共のために役立てたいという人もいてこの全額を寄せられた人もおります。これまでのところ、それを含めて２３０００円集まりました。目標は１０万円です。
寄せられたお金は、改定４版だけに使う資金として集めています。金額はいくらでもかまいません。ご協力ください。「地図改訂基金へ」と封筒に書き、あわせてそこにお名前と住所を記入して会員か事務局にお出しください。どうかよろしくお願いします。
３，「三田用水水路跡」を探訪する会（�掘�
６月６日（土）午後１時地下鉄高輪台駅改札口前
三田用水水路跡めぐりの第３回を開催します。
講師は、きむらたかし氏、および川口信氏です。
参加費用（５００円） 雨天決行とします。
＊道路を歩くことから事故の危険性があります。このことは充分に気をつけてください。主催者メンバーが注意を喚起しますが各人で気をつけてほしいと思います。
主催 北沢川文化遺産保存の会
◎申し込み方法、参加希望について
先着、３０名までとします。
参加申し込みについては当会の米澤邦頼まで必ず連絡をください。
米澤邦頼 ０９０−３５０１−７２７８
メールアドレスyonezawa-.-v1961@ezweb.ne.jp
４，納涼懇親会の計画
先だって、滝坂道を歩く会を催したときに納涼懇親会をやろうではないかという話が持ち上がりました。八月は歩く会はお休みです。それで今回は、歩かずにみんな集まっ懇親会をしようということになりました。期日は八月一日（土）、５時からです。会場は代田地区会館を予定しています。参加は自由です。誰でもおいでください。ちょっと軽い食事でもしながら文化交流会を行います。「花見堂夕涼み会」とでも名づけましょうか。
５、歩く会について
都市物語を旅する会
「北沢川文化遺産保存の会」は毎月テーマを決めて下北沢周辺の文化探査をしています。毎月、第３土曜日の午後１時に集まっています。集合地点はそのコースごとに多少違っています。基本的には少人数、10名程度ということにしていまます。それぞれがこの歩く会に参加して楽しむというものです。最後は世田谷「邪宗門」にたどり着いてお茶を飲みながら歓談します。参加費は徴収しておりません。歓談の際の飲み物は各自でお支払ください。なお、保険には加入しておりません。事故のないよう各自で責任を持ってください。
この会は参加の義務はまったくありません。ふらりと参加して、歩き、そして、歓談して終わりです。またいつかテーマで面白いなと思った時に参加する、そういう自由な会です。
これまで実施したコースはつぎの通りです。
・代田連絡線の跡を歩く（３回）・小説「猫町」を歩く（３回）・下北沢の大谷藤子を歩く・「森茉莉」足跡を歩く（５回）・下北沢の銭湯跡を歩く・下北沢の無頼派を歩く・下北沢の教会を歩く（３回）・坂口安吾の通勤ルートを歩く（２回）・駒沢線詩歌文学ラインを歩く（２回）・下北沢の映画痕跡を歩く・ダイダラボッチ川を歩く。・下北沢の稲荷社・庚申塔・地蔵尊を歩く。・代田のダイダラボッチ痕跡を訪ねる（３回）・代田の詩人師弟を歩く（萩原朔太郎・三好達治）・林芙美子から坂口安吾を歩く・.「下北沢店員道場を検証する」・池の上の古い町並を歩く ・下北沢の詩人痕跡を訪ねる・「森厳寺川の源流を探索する」（２回）・「代田の歴史を歩く」・駒沢練兵場を歩く・滝坂道を歩く（２回）・駒場の戦跡を歩く
・第３７回 ５月１６日（土） 午後一時 下北沢駅北口集合
「小説『猫町』を歩く」 恒例定番のコースです。
萩原朔太郎が書いた小説「猫町」の第一ステージは下北沢を舞台にしたものではないかと思われる。それを歩いて検証する。小説「猫町」は青空文庫に載ってます。参加される場合には読んでおくといいと思います。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/641_21647.html
・第３８回 ６月２０日（土）午後一時 代田橋駅南口
森厳寺川を歩く、下北沢という町を地形的に作り上げている水路を探検する
水路ですから雨天決行です。最近見つかった尾山篤二郎旧居にも行きます。
・第３９回 ７月１８日（土）午後一時 田園都市線池尻大橋駅改札口集合
駒沢練兵場跡、野砲兵兵舎跡を歩く
・第４０回 ９月１９日（土）午後一時 東北沢駅
下北沢の踏切文化を検証する（地下化する小田急線踏切を走破する：予定）
代々木上原３号踏切から世田谷代田１号踏切まで９つの踏切がなくなります。工事によって原形が崩れつつあります。いまのうちに見ておこうという企画です。
・第４１回 １０月１９日（土）午後一時 経堂駅改札前 案内者 別宮通孝氏
◎申し込み方法、参加希望について（実施一週間前までに）
参加申し込みについては当会の米澤邦頼まで必ず連絡をください。
米澤邦頼 ０９０−３５０１−７２７８
メールアドレスyonezawa-.-v1961@ezweb.ne.jp
■ 編集後記
インターネットでの伝わりというのは思いがけないものがあります。先だっても特攻隊にまつわるエピソードがこちらにメールで寄せられました。それによると、「日本最初の海軍航空隊のジェット機『橘花』隊の要員」として訓練の最中に終戦を迎えた方がおられるとのことでした。今度戦争経験を聴く会を開きます。が、戦争経験者の話は、ネットでも集められると思いました。
下北沢一番街の大月商店は三月末をもって閉店しました。北の情報ステーションとして使っていてここを通して多くの情報を集めることができました。今は北の情報ステーションがありません。人が集うということは文化も集うということです。その場がなくなったことは街の記憶が薄れて行くことだと思います。
シャッター街の一つのお店が場を提供してくれることになりました。毎週担当を決めてその人がそこに詰めています。人が来て寛いで行きます。話しているうちに過去が蘇り、壁に貼ってある地図にそれが書き込まれました。そんな新たな情報ステーションができるといいなあと思いました。これは夢です。
当会報への連絡、お問い合わせは、編集、発行者の きむらけん へ aoisigunal@hotmail.com
○「北沢川文化遺産保存の会」へご入会ください。年会費１０００円です。会員の方にはこの会報を自宅に郵送しています。入会は随時事務局の「邪宗門」で受け付けております。入会金はありません。年会費だけです。
