2013年05月
2013年05月30日
下北沢Ｘ新聞(2330)〜あの戦争は忘れるまい４〜
（一）
「あのな、こっそり教えてあげるけど、陸軍には桜弾という秘密兵器があるんだ、これで敵を粉みじんにしてしまうから大丈夫だ」
淺間温泉に疎開していた学童は、教えられた。恐らく航空兵からの情報だったと思われる。秘密裏に作られていたゆえに、そのことを知っていたのだったろう。
しかし、陸軍最後の切り札として特攻用に作られた桜弾機は、戦果を挙げることはできなかった。
「六機か七機、戦果を挙げることはできなかった。三機か二機は、沖縄の戦場近くまで行っているんですけど、戦果が挙がっていない。あとの三機か四機はだめだった。東松山ににいた一機は、事故でひっくりかえった。そして、次の飛行機は大刀洗で田圃に墜落している。そして、その次の飛行機は海に墜落している。その次の飛行機は、私達がと号機で沖縄に行くときに、私の飛行機の後ろについていたが、これもどこいったか分からない。帰ってこなかった。これに搭乗している者は戦友で同志なんですけどみんな妙な事故に遭ってもどってこなかった。」
「いつも思うのですが、今、沖縄で米軍の飛行機、あのみょうな飛行機、ヘリコプターのエンジンみたいなのを積んでいる。新しいのが飛んできているそうですが、あれは地上を滑走するときはこうゆれるのじゃないかと思います。この飛行機桜弾機も地上を滑走するときは横に動くんですよ。大きな爆弾を積んでいるから絶えず左右に揺れるのです。それの失敗があるんじゃないかと思ってた…」
「莫大なお金をかけて作った桜弾機は、戦争にはちっとも役立ちませんでした。却って搭乗員だけを殺しただけだった……」
桜弾は２、９トン、対艦用の大型爆弾は重い。それで運動性能の低下が著しく。これを操縦するのも大変だった。
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2013年05月29日
下北沢Ｘ新聞(2329)〜あの戦争は忘れるまい３〜
（一）
地形や風土はそこに住まう人間の精神を決定づけている。固有性である。ノンキ度が高い、かつ諦めも早い。我々の特徴ではあるまいか？。
「米にならうならコストをともないます。そこまでやる切迫性を、日本の事業者にどう説明するか。彼我の違いがあります」
新聞連載記事、「プロメテウスの罠」、今朝の末尾にあった言葉だ。原子力安全委員担当者が０６年に渡米し、原発へのテロの危険性の説明を受けた。ところが島国日本の場合の反応は鈍い。この説明の中には「全電源喪失などの対策も盛り込まれて」もいた。
ノンキ度が高い点は、それこそ彼我の違いがある。独りよがりに陥りやすい。金が無くても精神力で乗り切れる、という考え方もそうである。戦争への突入は島国特有の思考法も一因だと言ってよい。特攻という作戦はその典型だ。
「戦争経験を聴く会、語る会」に参加されたお一人がメールを下さった。
ベニヤ板で機関砲一門も備えていなかったという桜弾機の前村さんの話は、愕然とし怒りを覚えつつ伺いました。
前村弘さんのこの話、私達は、聴いて唖然としたことだ。陸軍の秘密兵器「桜弾機」について前村さんは説明された。
ところが面白い。前村さん緊張しておられたせいか、この話をされなかった。
「松本飛行場を飛び発って、各務原に着きましたね。そしてここで新鋭機の受領をしますね。一番の聞き所なんですが、これが何時出てくるのかと思って待っていたのですが、これが出てきませんでした。肝腎なところでは？……」
司会を務めていた私が言った。
「あは、あいすみません…」
ここで聴き手からの笑い声がどっと起こった。
「各務原について翌日のことです。これを受け取ることにしました。それで格納庫の前にいくと、一機妙な飛行機がおいてある。ええっ、これはえらい飛行機だ。ぎょっとしました。この飛行機です」
前村さんはその絵を出して説明された。桜弾機である。続きを読む
2013年05月27日
下北沢Ｘ新聞(2328)〜あの戦争は忘れるまい２〜
（一）
重爆特攻は、機体も重いが、搭乗員の思いも重い。前村さんは、たんたんと話をされる。
しかし、その一つ一つのエピソードの裏には、戦争近代の真相が断片が転がっている。上っ面だけを聴いていただけでは分からない。
このところ日々、あの当時の戦争について考えたり、書いたり、調べたりというのがずっと続いている。分かってくればくるほど難しい問題にぶつかる。
戦争当時の空気をどのように理解するかという問題がある。この点が一番難しい。はっきり分かるのは精神力で戦っていたことだ。客観的な分析とかではない。死にものぐるいだったということが言える。
先だっての取材先で「あの時代が日本人全体が一番まとまっていた時期だった」と言われた。この言葉も、一つの評価づけである。しかし、これを現今の人に理解してもらうのは難しい。当時の時代の空気は今とはまるで違う。
特攻というのは危うい問題をはらんでいる。自身の命を武器として敵に突っこんでいった。ここに現今でもそうだが「国思う余り……」という説明がなされる。当時は、個々の隊員は確かにそうだった。しかし、これを為政者たちが言い始めると、私は、感覚的には拒絶反応を起こしてしまう。彼らが美化し、これを利用としようとしていると即座に思う。
戦争逸話を探して行って、行き着くところは戦争指導者の問題だ。個々の兵士は行けと言われていった。しかし、この戦争をどうして始めたのか、そしてどう終結したのかということについてはけじめがつけられていない。このことは未だに尾を引いている。
先だって、会の後に、喫茶店で皆さんと歓談した。前村さんの同期の人とも話した。一人の方が言われた。
「先だって国会議員が大挙して靖国に詣でたがどう考えてもおかしい。あれは選挙目当てだ」と言われたことが強烈な印象として残っている。続きを読む
2013年05月26日
下北沢Ｘ新聞(2328)〜あの戦争は忘れるまい〜
（一）
昨日、2013/05/25、戦争経験を聴く会は、午後一時前にもう下北沢駅南口で始まった。
私は、講演者の前村弘さんを迎えに、駅に行った。すると前村さんと同期の特別幹部候補生の人達がすでに三四人集まっていた。一人の方が浜松にいたというので訊ねた。
「地震のときはどうだったのですか？」
「三方原飛行場にそのときはいて、駐機していた戦闘機がぴょんぴょん跳ねていたね、その近くの発動機工場の三角屋根がみるみる潰れていくんだ…」
戦争中に起こった地震のことを私は質問していた。それは昭和１９年(1944)１２月７日に紀伊半島南東沖を震源として発生した東南海地震のことである。
戦争中であったことから情報統制がされた。とくに軍部は、軍需工場の被害の情報が漏れることを恐れた。この浜松には多数の軍需工場が稼働していた。その被害の一端を示すものだ。
この地震による被害は、名古屋地区に集中している飛行機工場にも及んだ。この地震に続いて、Ｂ２９がこの名古屋地区の工場群に飛来し、これによって大きな損傷を受けた。
下北沢駅南口で聞いた情報は、今調べている戦争のことと関連してくるだけに私は耳を立てて聴いたことだ。
「戦争経験を聴く会、語る会」は、北沢タウンホール３階ミーティングルームで行われた。この会は、２００８年から始めている。今年でもう六回目となった。
私は、このあいだうちからここタウンホール詣でを続けている。最初は、原発問題、次は、憲法問題に関する集会だった。今回は我らが開催する会である。前、二つの問題に比べると地味である。出席者は３９名だった。しかし、このテーマは人数の多寡で、どうだった、こうだったというような問題ではない、うっちゃっておけない問題である。
高齢化による戦争経験の風化が進行している。
「お年寄り一人が亡くなると、街並みの記憶がごそっと抜け、そして戦争史の一端も知られないままに消えてしまいます」と私はこの会で話した。続きを読む
2013年05月24日
下北沢Ｘ新聞(2327)〜萩原朔太郎と小田原急行電車４〜
荏原逍遙は欠くことはない。帽子、Ｔシャツ、ジーンズ短パンで軽いジョギング、すると深沢中学脇を通ったときに、「おじさんかっこいい」という男子生徒の声、若葉が陽を浴びて輝いていた、いい天気だった。
（一）
駅の建物構造がかつてはどうであったか？。幻影の猫町をイメージするときのポイントであるだけに気にかかる。このシリーズの始まりで朔太郎が下北沢駅の跨線橋を降りて来ると書いた、これはどうなんだろうか？。
私は、今鉄道交点の戦時中の歴史を追っている。が、歴史真実は自らが「ここにありますよ」と表明しない。人が口を開いてこそそれが解明される。しかし、六十八年も経った今、その記憶は薄れかけ消えようとしている。何とか繋ぎ留めようと必死だ。
糸口が見つかれば、それがほどけてくる。先だってはかねてから願望していた山崎国民学校の元疎開学童だった人から話を聞いた。これで終わりだと思った。ところが、時の神は、私を休ませない。この歴史を追う話は、もともとは代沢国民学校の疎開から始まった。
振り返ってみると世田谷区の国民学校の疎開学童を追う旅だった。東大原小、駒繋小、山崎小ときた。もうフィナーレに差し掛かったと思った。ところがあろうことかまた振り出し、なんと代沢国民学校に戻ってしまった。
正直、その話は聞かなかったことにしようと思った。が、性分からそれはできない。昨日、急遽池の上まで行ってその証言者と出会った。その話を聞いて、また謎が深まった。彼から頂いた資料に目を通した。昭和十九年八月十二日のことが記されていた。代沢国民学校の疎開学童が下北沢駅を発ったときのことが記されていた。
下北沢駅は現在の南口はなく今の小田急トラベルの所より地下を通って今のピーコックの前に改札口があり、ホームは現在の下りホームが一つだけで上り下りの両方を兼ねていた。ホームへは地下道を通った。
先だって解体中の駅ホームが露わになった。この記述は、当時は島式ホームだけだったことを間接的に証明している。問題は乗り場のホームへどう行くかだ。跨線橋ではなく地下道を通ってホームに出たとある。
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2013年05月23日
下北沢Ｘ新聞(2326)〜萩原朔太郎と小田原急行電車３〜
（一）
電車の音は、都会の片鱗である。
「大当たり三色娘」の冒頭場面、「下北原マーケット」の看板が映し出される。これは今壊されつつある下北沢駅前市場である。この初手に、ツゥゥゥンとタイホンが鳴ってクトツッツという走行音が響く、小田原急行電車の音だ、効果音係はこれを意図的に入れている。舞台が都会近郊の駅の側にあることを仄めかしている。
思い出すのは、都会の片鱗の音と文学を書き上げるモチベーションだ。代々木山谷で懸命に筆を走らせていたのは田山花袋だ。彼の場合は、遠く甲州街道をゆくガタクリ馬車の音や新宿の街の響きを遠くに聞いていた。
時代は転変する。馬車は電車になり、地表を走っていたこれも、地下を走るようになった。下北沢一帯、小田急電車が地下化してこの音が一切聞こえなくなった。
「おさみしゅうございますねぇ」
代田二丁目で交わされる挨拶だという。電車の響きや、警笛がすっかりなくなって時間にメリハリがなくなったことからこう言われるようだ。
長年聞いて来た音である。当初は、のどかだった。ぷぅううわんと鳴って、やがて、カタトントンと走行音が響く。しかし、これが繋がりを想起させた。繁華な街、新宿である。ここと繋がっている。その実感を持てたものだ。
「踏切があったときは、人通りがあったが、これが無くなって音がしなくなった。すっかり淋しくなったね……」
下北沢２号踏切脇の古老佐山一雄さんに久し振りに出会った。
踏切は溜であった。これが降りて通行を遮断し、電車が通ると、人の塊が通っていった。それなりの人の気配である。ところが踏切がなくなったことでのべつまくなしに人が通る。塊でないゆえに音がしない。
人の足音が街のリズムを刻んでいた。一番街もそうである。東北沢４号で止められていた車が、遮断機が上がったとたんに通りを一斉に通過した。四五台通って、そしてそれが消えた。ところが、今はのべつまくなしに通る。
下北沢３号踏切は無くなったことで車はそのままのスピードで走って、むしろ加速をつけるらしい。北沢川へ下るところは一層にスピードがついて、ずしんずしんと音が響くらしい。「寝られないよ」ともらしている人もいるようだ。続きを読む
2013年05月21日
下北沢Ｘ新聞(2325)〜萩原朔太郎と小田原急行電車２〜
（一）
小田原急行電車の「度速高最」は人を惹き付ける魅力があった。沿線には瀟洒な白い住宅が建ち、赤い屋根の家も次々に出来ていった。高須光治の「下北沢風景」も小田原急行電車が開拓したものだ。赤い屋根の文化住宅と、武蔵野の木々の緑と青い空、間違いなく鉄道開通によって作られた風景だ。
「萩原朔太郎は下北沢に来る前に市ヶ谷台町に住んでいました。新宿には市電で行っていたように思います。通い慣れた新宿に流れていたのは『東京行進曲』（日活映画主題歌）ですね、これは昭和四年のヒット曲です。」
市ヶ谷台町は昭和五年、下北沢には昭和六年に越してくる。「シネマ見ましょか お茶のみましょか いっそ小田急で 逃げましょか」は歌詞四番、二人連れの新宿でのためらいである。この歌今聞いても、情緒を誘うものがある。度速高最に釣られて、小田原急行電車で下北沢に来た。詩人のいう「文化的感情」を刺激されたと考えてよい。
我々の猫町散歩は、駅から歩き始めて下北沢の旧居を目ざす。駅からは五六分程度のところにある。「下北沢新屋敷一〇〇八番地」だ。
「『氷島』の中に『新年』という詩があります『新年来たり／門松は白く光れり』と始まります。イメージをするとこれは今の一番街ですね。商店街が往事はここにありましたから。前に自転車で通勤していたころ朝よく通りました。西から東へ行くとき、ちょうど朝日が路面に輝いていて黄金色に光っていました。私は、即座にこの『門松白く光れり』を思い出したものです……」
この詩には自ら記した注がある。「昭和七年一月一日。これを新しき日記に記す」とある。この新屋敷在住時に詠まれたものだ。
馬込から下北沢へ、何が違うのか、後者ではほとんど地域の文化が見えないことだ。肥だめの匂いや水車の響きなどは全く出てこない。これもまた面白い。
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2013年05月20日
下北沢Ｘ新聞(2324)〜告知「第６回戦争経験を聴く会、語る会」〜
戦争とは何か、人間が人間であることを止めるものである。命はゴミにし、紙屑にし土塊にするものである。
後でもって、命を邪険に扱っておきながら英霊だったと言って、おだててもちあげる。そして戦争を正当化しようともする。戦争はとんでもない代物である。
戦争になれば、人一人の言い分はない、声は抹殺される。何も言えなくなる、その挙げ句、戦争を煽る側は、「神風が今に吹くから大丈夫だ」と言う。
現今、私たちは、「神風が吹く」とはあり得ないと思う。しかし、これは時間のマジックだ。この頃、その時代の空気の中であり得たことだと思うようになった。
私は、戦争のことについて調べている。書籍からよりも人からを中心としている。つまりは市民の戦争経験だ。数はカウントしていない。しかし、もう千人は超えたろうと思う。
広島原爆の被害者からもつぶさに話を聴いた。凄まじいものである。兵器は平気で、あっさりと、なんとも思わず、こっぴどく、人を殺してしまう。原爆という兵器の恐ろしさだ。
私は取材過程で一つのエピソードをたまたま拾い上げた。代沢国民学校の疎開学童からである。
「いいか、このことは秘密なんだけども、日本はとんでもない兵器を開発したんだ。さくら弾機といって一発の爆弾で、敵をこっぱみじんにするやつなんだ。だからこれを使えば勝つ、大丈夫だ」
淺間温泉に泊まっていた兵士からこの話を聴いたという。ところが、この試験機は、ことごく失敗に終わる。
今回は、そのさくら弾機に搭乗したたった一人の生き証人がお話をされる。前村弘さんである。
継続的に行っているこの会では、一つのエピソードが生まれ、書籍化した。「鉛筆部隊と特攻隊」だ。この出版を契機として陸続と情報が集まっている。他の旅館での特攻隊と学童の触れ合いも、思いがけず発見された。時間があればそのあらましを伝えたい。
「せたがや区報」で、今回の案内をして、十五名ほどの参加が申し込みがあった。十分余裕があるのでぜひおいでください。
第６回「戦争経験を聴く会、語る会」（2013年）
〜今、聞いて置こう、薄れゆく戦争の記憶を残すために！〜
テーマ「元特攻兵前村弘さんの話を聴く」
日時 ５月２５日（土）１時３０分から４時３０分まで（１３時開場）
場所 北沢タウンホール ３Ｆ 集会室 定員６０名 参加費無料
主催 「北沢川文化遺産保存の会」 会長 長井 邦雄
後援 北沢３、４丁目まちづくり協議会
戦争は遠い過去のものとなりつつあります。けれども太平洋戦争はわれわれの歴史の中ではもっとも大きなできごとでした。戦争に負けて日本は無条件降伏しました。この敗戦は一からの出直しでした。そこから出発して、長い苦難の道を歩いた末に、今日の生活が築かれました。ところがあの惨たらしい戦争は、戦争体験者の高齢化、時間の経過によって人々の記憶から次第に消えつつあります。戦争は二度と起こしてはなりません。この薄れ行く記憶を次代に繋げて平和を持続させていく、そのための活動です。
「戦争経験を聴く会、語る会」は、２００８年から始めました。この一帯が大空襲に襲われたのが１９４５年５月２４日、２５日です。その山手空襲から６８年目を迎えます。風化する戦争の記憶を今のうちに、しっかりと聞いてそれを次代に繋げたいという思いから五年前からこの会を５月に開催してきました。今年は、その六回目に当たります。
2011年は、出陣学徒、海軍第十四期飛行予備学生お話を伺いました。2012年、去年は、「疎開学童と特攻隊」ということで関係者に話をしていただきました。今年２０１３年は特攻に行かれた前村弘さんにお話を伺います。
前村弘さんはと号機「飛龍」の乗り組員でした。二度特攻に行かれた方で、三度目に「さくら弾機」に乗って行こうとされていました。いわゆる陸軍の秘密兵器とされた機です。ところがそれが各務原での試験飛行で墜落してしまいました。乗機を失って特攻には行かなかったそうです。他に類例をみない極めて特殊な話です。その経緯、経過などを今回は話してくださいます。
前村さんは、試験飛行のときに、この「さくら弾機」に乗ったと言われる。これに搭乗した人で今生きている人はもういないそうです。
◎参考文献 前村弘・飛龍特攻の記 http://kakutokuhatsu.katakura.net/maemura2.html
昨年は、代沢小の疎開学童の人達に、お話を伺いました。ここで伺った話は『鉛筆部隊と特攻隊』という本に記述しまとめました。
この本の発刊によって多くの情報が寄せられています。今現在、この続編として『特攻隊と褶曲山脈』〜鉛筆部隊の軌跡〜（仮題）にまとめています。時間があればこの話の中間報告もしたいと思います。
参加申し込み先 電話 世田谷邪宗門 ０３−３４１０−７８５８
メール aoisigunal@hotmail.com きむらけん
当日、予約なしでも大丈夫のように思います。
(写真は、昨年の戦争経験を聴く会、語る会）
2013年05月19日
下北沢Ｘ新聞(2323)〜萩原朔太郎と小田原急行電車〜
「幻影の下北沢猫町散歩」
昨日、街歩きをした、これを終えて、お茶を飲んだときの話だ。
「普段見慣れている景色の裏側に、別の景色が眠っていることに気づきました。若い人たちもきっかけさえあれば、こういう文化を探る歩く会にきっと参加するようになりますよ」
いつもの街歩きでは比較的年齢が高い人が多い。その中に若い二人の女性が参加した。彼女らの感想をまとめるとこのようになる。一人は鎌倉からの参加だ。
「私らの会も多少よそに知られるようになったのでしょう。今回は鎌倉から、横浜から、川崎から、県外から三名、都下からも一名の参加がありました…」
これは私の話だ。
「In nekomachi the hole of the dimension is everywhere vacant……」
雑貨屋のある面白い街として外国人の観光客が増えていると聴いた。それで、外人向けの猫町ツアーというのも面白いかなどとも.。これは冗談である。
（一）
「幻影の下北沢猫町散歩」は恒例行事だ。萩原朔太郎が世田谷代田の自宅で亡くなったのは、５月１１日だ。そのことからこの月に行っている。定番であるだけに、ガイド説明が同じになってしまう。古参会員はあらかた知っている。
今回は趣向を変えた。下北沢駅が地下化して、雰囲気がだいぶ違ってきた。「至る所に次元の穴が空いている」とさる筋に評されるこの街も詩的緊張が欠けてきて、ぴりりとしなくなった。
「エスカレーターのベルトに手を置いて地上へと登ってくる朔太郎がイメージできないのです。やはり島式ホームの跨線橋を渡り、木造の階段をこそっと下りてくる彼でないと猫町と詩人とが結びつかないのです…」
冒頭、下北沢駅北口で私はそう言った。この際と思って、今回のテーマを「朔太郎と小田原急行鉄道」にした。詩人の居住とこの鉄道とは深い関係がある。続きを読む
2013年05月18日
下北沢Ｘ新聞(2322)〜梅ヶ丘駅への小さな旅〜
（一）
「旅はつねに遠くて同時につねに近いものである。」
三木清が言ったことばだ。旅は距離に関係しない、「遠さの感情」に他ならないと彼は言う。
昨日、１７日、山崎小の疎開学童だったお二人に話を伺うために梅ヶ丘を訪れた。今年２月１１日、同じコースをたどって梅ヶ丘まで行った。このときは文学散歩の案内をするためである。
「旅は過程である故に漂泊である。」と三木清は言う、あの二月とこの五月ではその過程が全く違う、激変してしまった。乗り換え駅の渋谷駅も下北沢駅も地下化している。梅ヶ丘駅がひどく遠くに感じられた。
自宅最寄り駅は東横線都立大学駅だ。渋谷まで行って、井の頭線に乗り換える。これがとても不便になった。道順もいまだに慣れないでいる。穴蔵のような地下通路を通っていく。「巨大迷路」と評されているが本当だ。あっちいって、こっちいって、途中で「あれ、これでよかったか？」と考える。
前は、井の頭線頭端式ホームへ行くコンコースでは、ハチ公前の広場がガラス窓の向こうに見られた。が、地下風景にはメリハリがない。覚えの溜がないので、いつまで経っても道が分からない。
新地下駅の渋谷には１２０名の警備員がいるという。この人たちが、「あっちだ」、「こっちだ」と方向を指示する。
ふと思ったことは、この人たちは永遠に必要なのではないかと思った。ビックバンまでこれを継続するのだろうか？。
私のつきあいは中高年ばかりだ、この誰もが新渋谷駅には失望し、そして落胆している。
「ねえ、ねえ、あそこに行った？」
二ヶ月経った今でも、話題になる。消滅した渋谷駅のことである。頭端式のあの駅はどこへ行った？。
（写真は、下北沢駅、下りホームで）続きを読む
2013年05月16日
下北沢Ｘ新聞(2321)〜梅ヶ丘駅に響いた「勝利の日まで」３〜
人が激烈なショックを受けたときにどうであったか？時代の変わり目に深い興味を持っている。
一つは明治維新である。これをきっかけに産業革命が到来した。とくに関心が深いのは、汽車ぽっぽの出現である。これを人はどう捉えたかというところだ。「時間と空間」の抹殺に出会って、人はどうしたのか？。
人は驚いたのなんのって、汽車の窓に見える筋は、気づいてみると、それが景色だった。
二つ目は敗戦を迎えたことによる価値激変だ。米英撃滅から米英親和へ。信じられないほどの変化だった。しかし、人の思いとか願いは急には止まれない。過去を引き摺っていた。
山崎国民学校の疎開学童は昭和二十年十一月七日、南松本駅を発って東京に引き揚げた。翌、八日早朝に新宿駅に辿り着いた。
二十年十一月、出発と同じ梅ヶ丘駅に一年と三ヶ月振りに戻ってきた時には、新宿から四つ目位の駅付近は焼け野原になっていたように思います。
山崎小学校PTA会報『ひかりとりどりに』「集団疎開の思い出」 三木健一
彼等は小田急線で下った、下北沢駅近辺は焼けていなかったが、次の世田谷中原駅一帯は「焼け野原」だった。帰り着いた東京の様子を疎開学童が窓から食い入るように見つめていたことが思われる。
世田谷中原駅を出ると、電車は下りにかかって、カタタン、トタトンと梅ヶ丘駅へまっしぐらに坂を駆け下っていく。「家に帰り着く！」、胸がつぅんとしてくる。車窓進行右手に緑が見えた。
「おい、みんな、根津山だぜ！」
「ああ、懐かしい」
「なんかはげちょろになってないか？」
学童たちは口々に叫んだ。
この根津山思いがけないところで発見した。仲間の米澤邦頼さんから『銀座カンカン娘』の冒頭で出てくることを教えてくれた。この映画は昭和二十四年(1949)八月十六日に公開されている。YouTube「オープニング 銀座カンカン娘」で見られる。
映画は、主題歌とともに始まる、「あの娘可愛いや カンカン娘 赤いブラウス サンダルはいて……」、敗戦の傷を癒やすように、曲は明るい。オープニングクレジットが終わって最初に出てくるのが何と根津山だ。二両編成の小田急電車が軽快に走っていくさまが映し出される。山はあらかた草に覆われている。戦争中雑木林は伐られてしまったのだろうか？。
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2013年05月15日
下北沢Ｘ新聞(2320)〜梅ヶ丘駅に響いた「勝利の日まで」２〜
時代には空気がある。ところがその時代の匂いや色は掴み取ることができない。戦争中の空気はとくに難しい。「神風なんか吹くわけはない」と今は誰もが思う。ところが、「今に神風が吹くのだ」と本当に思っていた者も少なからずいた。これは時代の空気を感じなければ分からないことだ。
この問題は実は今日に生きている。私たちは、流れや体制の空気に染まり易いということだ。人の言動に躍りやすい。煽られて冷静さを失ってしまう傾向はある。一気に右傾化してしまうこともある。
（一）
世田谷山崎小学校でいえば面白い写真がある。「１９４５年−５４」写真で見る戦後復興期の世田谷という図録だ。世田谷区立郷土資料館が出したものの表紙である。
山崎小学校の校門に十四五名の学童が並んでいてそれを写したものだ。三四年ぐらいの男児である。左の校門に英語で書かれた看板がかかっている。
Allied personnel not offichal business must have pass from TOKYO Mil(miltary) Govt(goverment)Team
連合軍の担当者は占領軍のパスなしに立ち入れる。そんなことだろうか。東京が占領軍の管理下にあったことを物語る写真資料である。
この原文解釈について、きむらたかし氏から早速の指摘があった。「公用外の連合国関係者は、（ここへの立ち入りに）連合国東京司令部の許可状が必要である」 という意味だとのことだ。記録としては大事なことなので本文に付け加えておきたい。
この写真の背後に校舎が映っている。興味深いのはすべての窓ガラスに「山小」と書かれていることである。なぜだろう？。
終戦後は物資が欠乏していた。燃料がない。それで北沢川の橋の欄干がつぎつぎに持ち去られた。橋が痩せ細っていったと代田に住んだ、斎藤茂太さんが書いている。根津山の雑木林も狙われた。
窓ガラスの一枚一枚に「山小」とペンキで書いた。一階も二階も全部だ。窓ガラスを全部外して描いている。執念深い仕事だ。
子供たちは長袖を着ている。段々に寒くなる季節だ。家のガラス窓からは容赦なく冷たい風が入ってくる。なんとかガラスは調達しないといけない。山小は狙い目だったのだろう。
当時、山小の近辺はさびしい、それで狙われたのだろう。度々持ち去られた。それで、一枚一枚に名前を書いたのだろう。これも戦後に漂っていた空気である。
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2013年05月13日
下北沢Ｘ新聞(2319)〜「美しい国」はどこにあるのか？〜
（一）
政党や企業が「美しい国」という言葉を惹句にしてポスターを作っている。日々荏原を徒歩で渉猟している私は、いつもこれに出会うと違和感を感じる。かつて美しかった国はもうあらかた消滅しまったと思うからだ。
仲間の、きむらたかし氏が『関東の中世水田の研究』−絵図と地図に見る村落の歴史と景観−明治大学人文科学研究所叢書を送って下さった。私が毎日歩いて日々接している水路跡がふんだんに出てくるものである。この第三章は、「荏原郡の水利と摘田」というものだ。タイトルからして文化の匂いがただよってくる。
この論考の全体結びの言葉にはぐさりと突き刺されるような思いを持った。
東京の象徴ともいうべき日本橋の上に高速道路を架け、玉川上水や千川上水を潰して自動車優先の道路に拡幅し、北斎が洋風版画で描いた新宿十二社の池を、山手通りの拡幅で埋めてしまうような行政では、溜池や用水路は、ものの数ではない。しかし、国や自治体によるそのような行政と大資本による乱暴な開発が、耐えがたい、都市公害をもたらしたことは疑いない。
著者の高島緑雄氏は痛烈に行政側の施策を批判している。自身、薄々思っていたことが意見としてずばりと言い表されていて痛快と思ったほどだ。
日本文学の源流は流離いから始まっている。しゃ、しゅ、しょ、と草履音を道に響かせて人は歩いていった。その過程で、日本各地の景勝地が発見され、歌に、俳句に詠まれた。西行法師や芭蕉翁などの名が具体的には浮かんでくる。流離いこそが文学の源流だ。
往事、全く手つかずの自然が全国各地、処々方々にあった。そこからここへと人が行き来するようになって道が次第に整備されていった。そして、慶長９年（1604）に日本橋が五街道の起点として定められる。この道の起点がお江戸日本橋だった。美しい国への起点であり、終点でもあった。
そういう地点を、平気で無視してその上に高速道をぶったてる。気づいてみるとそれが今日普通の日常になっている。それが進歩だと我々は思っている、思い込まされている。美しい国などあったものではない。
続きを読む
2013年05月12日
下北沢Ｘ新聞(2318)〜梅ヶ丘駅に響いた「勝利の日まで」〜
（一）
戦時疎開も遠い話となった。ところが、この疎開という言葉は、とあるアクシデントによって復活した。３，１１の原発苛酷事故である。これによって大量の放射能がばらまかれた。これによる健康被害が強く懸念された。とくに母体や子どもへの影響が憂慮されたことから、福島から県外への避難者が続出した。これが「母子疎開」という言い方で伝えられている。
実は、疎開という言葉には国策の歴史が潜んでいる。意味は、疎らにして滞りなくすることである。例えば建物疎開というのがあった。建物を壊して防火帯を作るというものである。建物の場合はよく分かる。が、これを人間に使った。
都会地に多く住んでいる子どもを疎らにすることという意味になる。もってまわった言い方だ。ここにこそ裏が潜む。
学童疎開は、都会地に住む学童を空襲の危難から遠ざけるために地方に避難させることを言う。避難とか、退避を使えばいいのに使わなかった。なぜか、これだとマイナスイメージが強まるからだ。戦争中、敵に攻め込まれ分が悪くなって撤退や退却する場合、「転進」と表現した。それと同じだ。疎開も軍事作戦の一つであり決して逃げるのではない。体面を取り繕った言葉だ。
作戦が失敗して全滅しても決してそうは言わない、玉砕という。玉のように砕け散って死んだと美的に形容することで本質をごまかしていた。泥砕だ。本土から見捨てられ、援軍を送られることなく兵士は泥のように死んだ。
「疎開に行ったのよね、旅行に行けるというのでうきうきだったわね。でもね、帰らないのよね、そして、お父さんもお母さんもいないのよ…」
国民学校三年生で疎開に行った人が言っていた。
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2013年05月10日
下北沢Ｘ新聞(2317)〜記憶から読み解く戦争史２〜
（一）
戦時の記憶を意識的に欠落させている人もいる。「語りたくもない」、「思い出したくもない」という人がいることも事実だ。飢え、不衛生、いじめ、虐待、その真実はあまり語られない。
最近知ったことで言えば、担任に徹底的に虐待を受けたという例だ。A担任はその当人をもともと好んでいなかったようだ。淺間温泉での出来事だ。風呂場でAという先生と別の女とセックスをする場面をみたそうだ。それから徹底的に虐められた。同窓会のときに何年か経って集まったときその話が出たそうだ。彼は「殺したい」と思い続けていたという。その先生も、学童も亡くなってしまった。
先生は聖職となっているが疑わしい。地元の文集には、疎開学童を世話した寮母が先生達がお盛んだったことが露わに描かれている。酒に酔った先生におっかけられて寮母さんがよく学童の部屋に逃げこんできたという。
手癖の悪い引率教師も少なくなかった。寮母や女中に手をかける。語られないことだが預かっている学童もその被害に遭っていることは明白だ。
原発苛酷事故で学童疎開という話があったが、戦争当時の疎開経験からそれは決してすべきではないと強く言っていた人がいた。人間は善人ばかりではない。父母のもとを離れて生活するときにいじめや虐待からどう逃れるのかという問題は常につきまとうことだ。
昨今、手に入れた疎開学童が残した日記を分析している。分かってみると、これも書き手の自己規制がある。
表面的には、日々を日記に書いて整理させ、併せて国語力を高めるという点はあった。が、別の意味があった。教師による点検である。
「本当のことなんか書けるわけないじゃない。だから上っ面だけよ」
日記についてそのように論評する女性がいた。事実はそうだろう。
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2013年05月09日
下北沢Ｘ新聞(2316)〜記憶から読み解く戦争史〜
（一）
あの戦争は何だったのか？。私は興味深く思ってこれを追い続けている。が、この頃思うことは、この歴史の中心は、ある意味で一つの方向で意義づけられていると思う。資料的な意味での戦争は、ある種オーソライズされていて、それが真実だとされている。
特には特攻物に関してはそうである。一つのポールポジションで物語化されているようにこの頃では思うようになった。従来の価値付け以外のものが出てきたときに、私たちはその価値付けをうまくできない。自分自身がそうである。あれはあれだと思い込んでいる場合が多い。
私自身、特攻を意図して調べたわけではない。たまたま調べていたら、これに行き会った。調べていくうちに突撃したしともいるが、突撃しなかった人も多くいる。後者は、世を忍んで生きて来た。逝った人に申し訳ないという思いからである。
戦争のドラマの通例は、ドラマを生きた人にスポットを当てて作る。特攻などはその典型的な例だろう。人間の心は英雄を好む思いが潜んでいる。それで彼等を主人公とした映画や書籍は多く出される。しかし、戦争に参加ひとたちのほとんどは非英雄である。泥のように、糞のように、ゴミのように死んでしまった。
取材したり、調べたりすると市民が遭遇した戦争に行き当たる。ちょっとした些細なことに深い興味を覚える。昨日だった。電話で取材をした。
「戦後、放置された飛行機から車輪を外してそれをリヤカーに改造して使っていました。私も引いてみたことがあるのですが。これが重いのですよ」
こういう話には深い興味が湧く。
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2013年05月07日
下北沢Ｘ新聞(2315)〜映画監督の語る日本国憲法３〜
（一）
映画人の伊丹万作が『戦争責任者の問題』という文章を、「映画春秋 創刊号」1946（昭和21）年8月に載せている。戦争後一年経ってのことだ。
一度だまされたら、二度とだまされまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない。この意味から戦犯者の追求ということもむろん重要ではあるが、それ以上に現在の日本に必要なことは、まず国民全体がだまされたということの意味を本当に理解し、だまされるような脆弱な自分というものを解剖し、分析し、徹底的に自己を改造する努力を始めることである。
彼は言うあの戦争の期間を通じて誰が一番直接に、我々を圧迫してきたかというと、「あらゆるみじかな人だった」、「親愛なる同胞諸君」という。
では騙していたというのは誰かということになる。突きつめていくと戦争指導者だ。が、伊丹万作は、「だましていた人間の数は、一般に考えられているよりもはるかに多かつたにちがいない」という。回り近辺にいる同胞が互いに騙していた。
この島国という基盤は、すべてを染め上げてしまうことだ。桜の時節になると、ピンク、ピンクとなってすべてが桜に浮かれ出てしまう傾向がある。桜の季節に桜を愛でにいかないものは桜国民ではない。というふうになってしまう。
当時の少年たちも、日本が勝つと信じていた。８月１５日、終戦を迎えたとき、疎開先の本堂では女の子が人形を出して、このお人形どうなるのかしらと涙しているとき、高学年の男子の一部は、みんな一塊になった米英への復讐を誓った。
私たちの社会には、今でも、人を一色に染め上げるシステムが残存している。社会共同体である。異色を排除する思想は今でも濃厚に残っている。批評とか論評が成り立ちにくい。ムラのしきたり、おきてが優先される。
騙されやすいという点はある。その点を見込んで、オレオレ詐欺が横行する、これが一向に無くならない。騙す方は国民性をよく知っている。
戦後六十八年目、伊丹がいうように「だまされるような脆弱な自分というものを解剖し、分析し、徹底的に自己を改造する努力を始めること」はなされたろうか。が、どうもこれはなされていない、あの戦争の総括もないままに今日にきている。
島国ゆえに、他で戦争があっても対岸の火事としてただ眺めているだけだ。
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2013年05月06日
下北沢Ｘ新聞(2314)〜映画監督の語る日本国憲法２〜
（一）
「アメリカも島国なんです」
ジャン・ユンカーマン監督が参加者の質問に答える形で発言した言葉だ。なるほどそうだった。世界一強大な軍隊を持った国家は耳を貸そうとしない。一衣帯水、大陸と離れて洋上に浮かぶ孤島日本もまた耳を貸そうとしない。共通性はある。
ここ数年ずっと戦争について取材を続けている。これを調べていけば行くほど孤絶性という問題にぶつかる。それは戦争をどう捉えるかということと関連してくる。
例えば、代沢国民学校は「淺間学園の歌」を作って、疎開先で学童たちは歌った。
「歌詞の中に、『撃ちてしやまん』というところがあって、こう気持ちがぐっと盛り上がってくるところです……」
この歌を歌った人が言っていた。共に戦って米英を撃ち滅ぼすのだという気概である。
「今言っても通じませんけどね……」
この事実というのが私には段々と重くなっている。
戦争の事実を知れば知るほど、あんなもの二度としてはいけない、痛切に思うようになった。しかし、当時、人びとは戦争一色に染まっていた。
「私はね、日本が勝つと信じていましたよ。だから、戦後になって、『きけわだつみのこえ』が出て評判になったでしょう、あれには違和感を覚えました」
松本で取材した折江戸時代から続く老舗、ここの会長横沢徳人さんはそう言われた。
このことも事実である。私たちは、今という時代において、「神風なんか吹くわけもない」と思っている。しかし、当時の人びとが信じていたことも事実だ。
『きけわだつみのこえ』も真実である。が、これはプライベートな真実である。出陣学徒の手記が戦後次々に見つかった。これ読んで、当時の、学鷲は戦争には反対だったんだと人びとは知った。その部分が強調されてしまったという点はある。が、これはパブリックなものではない。
「あの本は私に取って聖書です」
聞き書きの過程でとある女の人から聞いた。反戦部分だけを拾っていくと聖書になる。しかし、実情は戦争は嫌だと思っていても口には出せなかった。
私たちは、時間を旅している。後時間が有利だ。が、この頃思うことは、戦争に染まっていた人びとを、とんでもない考え違いだとは思わなくなってきた。このことを後からは、どうにでも批判できる。問題なのは戦争色に塗り込めて、どうにもならなくなってしまった人の責任である。先の横沢さんもエリートが責任を取らなくてはいけないと言っていた。同感である。
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2013年05月04日
下北沢Ｘ新聞(2313)〜映画監督の語る日本国憲法〜
憲法を語るとき背後からころころと転がり出てくるのは文化観だ。日本の風土に設えられた武器放棄を旨とする憲法は日本列島の歴史と文化とをあぶり出す。
昨日、憲法の日、北沢タウンホールにおいて【ジャン・ユンカーマン監督と｢日本国憲法の今」を語ろう】が開かれた。梁田貴之さん主催の会だ。
監督の語りがあって、その後に参加者が考えを述べる、ここには市民意識の自由がある。気安さであり、和やかさであり、そしてまた知的でもあった。
このところシモキタ詣でが続いている。鉄道交点はシンボライズされたXだった。小田急の地下化によってこれは喪失した。しかし、ここへ行くと、教会の神父は人間の欲得を語り、映画監督は鋭い戦争批評をする、今なお文化が濃厚だ。鉄道交点の思考的自由解放区というのは変わらずに存在し続けている。都市論という観点からも興味深いことだ。
（一）
人間は思い込みの動物だ。あるはずだと思っていくとない。シモキタへの足だ。
私が愛用している路線は下６１である。家から野沢龍雲寺まで歩いて行って、北沢タウンホール行きのバスに乗る。あの忌まわしい渋谷地下駅を通らずに済む。ところがバス停に着いて時刻表を見ると、発着時刻がまっさらになっている。
『なんだ、三茶のほこてんか！』
愛用路線は祝日は休業だ。
これまで何度かこれに出くわしている。こういう場合は、代替路線は、森９１新代田行きだ。が、いかんせん本数が少ない。残る選択肢は、タクシーだった。
「そうですね、三宿経由が速いかもしれません。」
停めたタクシーの運転手は、多聞峠を越えていくルートを言った。
「乗客ですか、景気は多少はよくはなりましたかね…ああ、しかし、このあたり一帯の町はみんな寂れてきましたね。とくに商店街はみな寂れてしまって、そう三茶なんか昔は人出は多かったですね」
街の様子をよく知っているのはタクシーの運転手だ。
「私の場合は、流しですね、駅待ち専門っていうのもありますね。ずっと渋谷駅専門という人もいますね、稼ぎ方に性格っていうのが出ますね」
「そうか、駅待ちの場合は、基本的な稼ぎというのはあるけど、宝は拾えないわけですね？」
私も知ったかぶりをして聞いてみる。
「そうそう、宝は落ちていませんね、やっぱり流しですよ。結構、このところ拾うことが多くなってきましたね。それで銀座へ…」
「えっ、銀座ですか？」
「そうそう、まあ、そう山の手ですね、この一円ハイソな人はみな銀座ですよ。ところがね、あそこは交通規制が厳しくて面倒なんですよ。でもいきますね、結構こっちから行っていますよ。吉祥寺あたりからきているのもいましたから……」
新聞でミニバブルの再来だと書いてあったが、運転手の証言はそれを裏付けていた。それはいけいけどんどが始まったことをも物語る。あぶない、あぶない。
タウンホールには開始五分前に着いた。間に合った！。
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2013年05月03日
下北沢Ｘ新聞(2312)〜ルルドの庭で自由と文化を語る２〜
人間の時間というのは袋にパッケージされた草加煎餅のようなものだ。言ってみれば一枚一枚が人間が所有している時間である。その繋がりは仮のもので、押さえが取れるとばらばらになってしまう。
私たちは、本当は、時間断面を生きている。時間と時間とが繋がっているのはそう見えるだけである。時間もまた虚構である。例えば、パッケージされた二三枚が鼠に囓られるとその部分の記憶は欠落してしまう。
私たちは仮構時間を生きている。その世界を支配するのは本人自身に他ならない。が、吾々は錯覚しやすい動物である。恣意的になりがちである。勝手きままなものだ。ゆえにゆるがせにできないものはこれを縛っておくことも必要だ。言えば、現今憲法は、恣意的に陥りやすい吾々に歯止めをかけるものだ。
ところがこの憲法を９６条を改正して、もっと気ままに憲法を変えられるようにしよう。その動きが高まっている。取り敢えずここを改めて、本丸の憲法９条を後に攻めようという魂胆だ。この落ち着き先が目に見える。
「なんかこのところ外国の脅威が強いね」
「うん、そうですね、銃を持ちましょうか」
「うん、そうしよう。」
吾々が辿ってきた道をまた逆戻りしつつある。
あの戦争を、みな忘れかけている。思い出せ！、泥のように、糞のように死んでいった人びとを、国家は、戦争になれば人を単なる員数としかみなさない。
戦争なれば、人はゴミになる。枯れ葉一枚よりも価値は軽くなる。みじめなものだ。
…………このところ、よく耳にするのは憲法は押しつけられたものだという言い分だ。
９条の主張のポイントは武力放棄だ。このことは当時の人が言っている。終戦を迎えてすぐに、長野県に疎開していた学童に一人の人が手紙を書いている。「一等無武装国」になろうと。市民が言っている。
終戦二ヶ月後に市民が戦争は懲り懲りだ。武器を捨てようと言っていた。戦争を生で体験した人の実感だ。誰もが戦争は嫌だと思っていた。続きを読む
2013年05月01日
下北沢Ｘ新聞(2311)〜会報第82号「北沢川文化遺産保存の会」〜
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「北沢川文化遺産保存の会」会報 第８２号
２０１３年５月１日発行（毎月1回発行） WEB版
会長 長井 邦雄（信濃屋食品）
事務局:世田谷「邪宗門」（木曜定休） 155-0033世田谷区代田1-31-1 03-3410-7858
会報編集・発行人 きむらけん
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１、また再び戦争経験を語る会〜第六回の開催お知らせ
戦争史を追って、多くの資料を漁っている。つい最近見た手紙がある。昭和二十年十月二十七日に出された手紙だ。長野県広丘村郷福寺に疎開している鉛筆部隊の学童に向けたものである。渡部徹さんは手紙の一節にこう書いている。
君達も僕も日本の國民全部が、この苦を押しのけて、一等無武装國を作り上げませう。
戦争は終わった。辛く、そして苦しい戦いだった。分かってみるととんでもなく大勢の国民が犠牲になっていた。ポツダム宣言の受諾が遅れ、ついには広島・長崎に原爆が投下されてしまって。これまた悲惨な結果を生んだ。
もう戦争は懲り懲りだ。もう武器は必要ない、これを捨てて、「一等無武装国」になろうと述べている。悲惨な戦争を経験してきての率直な思いだ。
この市民の思いは、現在憲法九条に生きている。今これを変えようという動きがある。その理由は外国から押しつけられたものであるからだという。しかし、戦後の早い時期に、一市民が武器を捨てようと言っていた事実があることは知って置くべきことだ。
人間は何かをせずにはおれない者だ。武器を持てば武器を使う。他人に銃口向ける。そして人を殺す。敵意はコントロールできない。戦後、無武装国になったことは正しい。武器を捨てて平和な国家を築こうというというのは究極的な人類の、市民の願いである。
先だって新聞投書に、「現行憲法により戦後の平和と繁栄があったことは、多くの人が認めるところだ。とくに第９条は人類の到達目標を示す『北極星』のような存在で、放棄して『普通の国』になることは大海で海図を失うようなものである」とあったが、わたしもこの意見には同感だ。
私たちは、二度と戦争は起こしてはならないという考えから毎年戦争経験を聴く会を開いてきた。もう今回で六回目を迎える。つまりは六年目ということだ。
戦争を起こさないためには戦争を知る。そのためには体験者から話を聴くことが大事だということでずっとこれを催してきた。
今年は戦後六十八年目迎える。戦争は年々遠ざかるばかりだ。記憶もまた失われつつある。私は、戦争史を資料からよりも証言から追っている。もう千人と言ってもいいほどの人びとから話を聞いてきた。この戦争の実態が分かってくればくるほど、日本は、とくには末期において全く見通しのない戦いをしていた。とんでもなく愚かな戦争だった。
ところが、終戦末期において大多数が日本が勝つと信じていた。信じ込まされていた。我等の文化の特異性は、一つの色に染まってしまう危険性があることだ。ゆえに場合によってはまた再び戦争への道を歩いてしまう危険性は常にある。これは心しておくべきことだ。
今回、話してくださる方は、前村弘さん、陸軍特別幹部候補生、重爆撃機「飛龍」の乗り組み員で、これの特攻要員として沖縄戦に二度出撃された方である。三度目の正直、陸軍秘密兵器「さくら弾機」で三度目の出撃を予定していた。ところが、各務原でこれを受け取る段で試験飛行をしたところこれが墜落してしまった。乗機を失った前村さんは三度目の特攻に行けなかった。数奇な運命を辿った方である。この秘密兵器に前村さんは試験飛行前に中に乗ったと言われる。これに乗った人で生きて居られる人は彼一人となってしまった。そういう貴重な話を今回はしてくださる。
皆さんぜひおいで下さい。北沢タウンホールで、５月２５日、３Fで午後一時半から開催します。時間があれば、自身が今執筆している戦争ドキュメント『特攻隊と褶曲山脈−鉛筆部隊の軌跡』の進行状況、『鉛筆部隊と特攻隊』の後反響について話をした。参加される場合にはいつもの手順で申し込みください。「邪宗門」でも受け付けている。
２、世田谷代田を応援する！
世田谷代田は歴史的に文化的にも意義のある地域である。ところが近代の交通革命によって衰退しつつある。まず一番大きな変化は、環七ができたことで町が分断されたことである。代田八幡宮のある代田半島先端部あたりも深い切り通しになってしまった。「あれでうちの井戸が出なくなったんだよ」という人もいた。
一番大きいのはやはり町が分断され、たちまちにあの賑やかだった中原商店街が衰退したことである。この三月、小田急線が地下化し世田谷代田駅は大深度地下駅になってしまった。ホームに辿り着くまで五分もかかるようになった。地下穴蔵ホームへの階段も評判はよくない。また交通革命によって世田谷代田が沈みそうだ。
我等は、民俗学的にも由緒あるこの代田の応援歌を作って、準会歌にしているほどだ。「だいだらぼっち だいだらぼっち だいだいだいだい でっかい巨人はだいたい 代田のだいだらぼっち…だいだらぼっち だいだらぼっち だいだいだいだい あっというまに架けた橋は 代田の代田橋」と。
大深度地下駅を盛り返すには大高度伝説駅がよい。駅を出たとたん、広場に、おおと思うようなダイダラボッチ像があればベストだ。ところが、その予算の調達は難しい。それで、現今、ダイダラボッチの足跡が駅前広場に計画されている。
東京府巨人伝説の一箇の中心地、つまりは、ダイダラボッチの本山、本拠地がここにほかならない。民俗学的にも極めて重要な地域である。
民俗学者の柳田国男は「巨人来往の衝」ということを言っている。巨人がこの東京の空をのっしのっしと歩いていたということへの衝撃だ。その中心地がこの世田谷代田にほかならない。会として世田谷代田を応援したい。毎年、代田半島探検を毎年行っている。今年も、これをぜひ実施し、ダイダラボッチの重要性を広めたい。
３、「北沢川文化遺産保存の会」の活動〜地方での芽生え〜
埼玉県比企郡ときがわ町在住の松原征男さんから「有史芳」第一号が送られてきた。土地の古老から話を聞き、それを印刷物にしたものである。
松原さん何回か私たち「北沢川文化遺産保存の会」の活動に参加された。地元でも我等のような活動を始めたいと言っておられた。言えば「ときがわ町文化遺産保存の会」ができて活動を始めたようなものである。
だいぶ前に、別の方から「北沢川文化遺産保存の会」を先駆けとしてこのような会ができるといいと提案されておられた方がいた。
松原さんの活動は、具体的な活動である。それが第一号として始まった。お手紙には、「貴会に刺激を受けて会誌作りとなりましたのでご報告に併せ、ご指導を頂きたくよろしくお願いします」とあった。
私たちは、先がけではあるが、俺が俺がと誇ることはない。文化とは地域の匂いである。それを大事にする活動は、その人びとの主体性に他ならない。それでも我等の会に影響を受けて、地方でこのような活動が始まることは嬉しいことだ。このネットワークが広がれば面白い。
文化とはその土地に住む人がその土地の風や匂いや色を楽しむことだ。
そう言えば、我等の会に声が掛かっている。「塩山近辺の文化を歩きませんか」と、これは会友の矢花克己さんから誘い、「有史芳」を読むと、ときがわ町にも面白い文化が眠っている。機会があったら訪ねていきたいものである。生きる楽しみがまた増えた。
（注記、この項目は、アナログ版にはありません）
４、都市物語を旅する会
私たちは、毎月、歩く会を実施しています。個々の土地を実際に歩き、その土地の文化を発見して楽しみながらぶらぶら歩いています。参加自由です。 基本原則は、第三土曜日午後としています。第二週には、会員の希望によって特番を設けることがあります。
・第８４回 ５月１８日（土）午後１時 「幻影の下北沢猫町散歩」
恒例行事。萩原朔太郎が亡くなった五月には毎年、彼が居住した下北沢、そして代田。彼の小説『猫町』の舞台を訪ねながら行く定番コースだ。最終地点は、世田谷区地域風景資産となっている「代田の丘の６１号」鉄塔だ。ここには念願の「鉄塔由来碑」を昨年建立した。これの見学も兼ねている。今回のテーマは、「萩原朔太郎と小田急」だ。小田急が地下化しての猫町を初めて散策する。どう変わったのか？を探検する。
・第８５回 ６月１５日（土）午前１０時 代田橋駅改札前
下北沢地形学入門 外縁の水路を巡って下北沢へ 去年、笹塚「福寿」でラーメンを食べようと行ったがお休みだった。ところが、ここが営業していることを知った。再チャレンジしたい。食べられなかったら昨年と同じ中華レストランで昼食。
・第８６回 ７月２０日（土）午後一時 田園都市線三軒茶屋駅改札前（中央）
恒例「駒沢練兵場を巡る」
最後は、つい最近完成した大橋ジャンクションの上の天空庭園で各自買ってきたジュースなりお茶なりを飲む、二転三転して申し訳ございません。集合が三茶になりました。
九月
・特番行事 日時：９月１４日（土）
国分寺崖線古墳をゆく 喜多見駅改札口 １３：００ ナビゲーター 天羽大器さん
〇コース＊喜多見駅→野川沿いを歩く→念仏車と庚申塚→筏道→喜多見氷川神社→慶元寺→稲荷塚古墳→第六天塚古墳→須賀神社→荒玉水道道路→次大夫堀公園→砧中学校古墳群→仙川沿いを歩く→カトリック成城教会(今井兼次設計)→成城学園前駅
・第８７回 ９月２１日（土）午後一時 下高井戸駅集合
下高井戸鉄道Ｔ点一帯をめぐる
夢二旧居、高井戸宿、松原宿など ナビゲーター 岡本克彦さん
案内者は、昨年、明大前鉄道交点を案内してくださった岡本克行さん。
・第８８回 １０月１９日（土）午後一時 東北沢駅改札前集合
下北沢アートタウンを巡る（�供� ナビゲーター きむらけん
改訂地図五版には、芸術家も加えたことからこれらも巡る。
昨年は、南部を巡るこれを実施した。今度は北部を巡るこれを実施したい。
１１月
・特番行事 日時：１１月９日（土） 午後一時 日暮里駅北改札口
谷中墓地（三度目） ナビゲーター原敏彦さん
・第８９回 １１月１６日（土）午後一時 東急線多摩川駅改札前
国分寺崖線の古墳群を歩く ナビゲーター 木村康伸さん
多摩川駅→浅間神社→亀甲山古墳→宝来山古墳→宇佐神社（八幡塚古墳）→野毛大塚古墳（玉川野毛町公園）→上野毛自然公園 →二子玉川駅（駅周辺の喫茶で歓談）
・第９０回 １２月２１日（土）午後一時 代田橋駅改札前集合
代田半島を巡る ダイダラボッチ、代田連絡線、朔太郎、三大伝説を巡る旅
◎申し込み方法、参加希望、費用について 参加費は各回とも３００円
参加申し込みについて（必ず参加連絡をお願いします。資料部数と関連します）
電話の場合、 米澤邦頼 ０９０−３５０１−７２７８
メールの場合 きむらけん aoisigunal@hotmail.com FAX3718-6498
■ 編集後記
▲『鉛筆部隊と特攻隊』については昨年出版した。これについては多くの反響があった。全く知られていない情報が数多く寄せられた。そのことからこれをまとめたいと思い、これを執筆中だ。今回「下北沢文士町」の意義付けを深く掘り下げた話を載せた。本ののタイトルを仮題として『特攻隊と褶曲山脈−鉛筆部隊の軌跡』（仮題）としている。今夏に刊行する予定である。これらの話は、我等「北沢川文化遺産保存の会」の活動なくしてはありえなかった。活動があったらばこそ近代戦争史の秘話は発掘された。
▲NHKラジオ深夜便で「疎開児童が見た特攻隊」が放送された。戦争体験を募集したが全国から多くの情報が寄せられた。放送内容については『ラジオ深夜便』七月号（６月１８日発売）に掲載されることになった。
▲第６回戦争経験を聴く会は５月２５日（土）午後一時半から北沢タウンホール３階で開催します。例年の通り開場受け付け、開場設定、整理などのボランティアをお願いします。
▲歩く会の参加申し込みについて先だって混乱があったことから原則を作った。三日前までに必ず連絡すること。資料が不足することがこのところ続いている。それと参加者が多過ぎると混乱する。歩く会についてのリミットを２０名としたい。一つの方法だがネットを使っている人も多いので「北沢川文化遺産保存の会」専用掲示板というのもありうる。
どなたかがこれを開設し、管理してもらえないか？。一つの提案である。
▲夏の納涼会は、７月２７日（土）北沢タウンホールで５時３０分から。北沢タウンホールは八月から工事に入る。それで一週間開催を繰り上げた。出版記念会を予定。
▲会費納入のお願い。一応年単位の会費ですので期限がきれることになりますので未納の方、１０００円を納めてください。よろしくお願いします。会友は無料です。
・当会への連絡、お問い合わせは、編集、発行者のきむらけんへ aoisigunal@hotmail.com
会報のメール配信もしている。「北沢川文化遺産保存の会」は、年会費千円、入会金なし。会員へは会報を郵送している。事務局の世田谷「邪宗門」で入会を受け付けている。
「北沢川文化遺産保存の会」会報 第８２号
２０１３年５月１日発行（毎月1回発行） WEB版
会長 長井 邦雄（信濃屋食品）
事務局:世田谷「邪宗門」（木曜定休） 155-0033世田谷区代田1-31-1 03-3410-7858
会報編集・発行人 きむらけん
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１、また再び戦争経験を語る会〜第六回の開催お知らせ
戦争史を追って、多くの資料を漁っている。つい最近見た手紙がある。昭和二十年十月二十七日に出された手紙だ。長野県広丘村郷福寺に疎開している鉛筆部隊の学童に向けたものである。渡部徹さんは手紙の一節にこう書いている。
君達も僕も日本の國民全部が、この苦を押しのけて、一等無武装國を作り上げませう。
戦争は終わった。辛く、そして苦しい戦いだった。分かってみるととんでもなく大勢の国民が犠牲になっていた。ポツダム宣言の受諾が遅れ、ついには広島・長崎に原爆が投下されてしまって。これまた悲惨な結果を生んだ。
もう戦争は懲り懲りだ。もう武器は必要ない、これを捨てて、「一等無武装国」になろうと述べている。悲惨な戦争を経験してきての率直な思いだ。
この市民の思いは、現在憲法九条に生きている。今これを変えようという動きがある。その理由は外国から押しつけられたものであるからだという。しかし、戦後の早い時期に、一市民が武器を捨てようと言っていた事実があることは知って置くべきことだ。
人間は何かをせずにはおれない者だ。武器を持てば武器を使う。他人に銃口向ける。そして人を殺す。敵意はコントロールできない。戦後、無武装国になったことは正しい。武器を捨てて平和な国家を築こうというというのは究極的な人類の、市民の願いである。
先だって新聞投書に、「現行憲法により戦後の平和と繁栄があったことは、多くの人が認めるところだ。とくに第９条は人類の到達目標を示す『北極星』のような存在で、放棄して『普通の国』になることは大海で海図を失うようなものである」とあったが、わたしもこの意見には同感だ。
私たちは、二度と戦争は起こしてはならないという考えから毎年戦争経験を聴く会を開いてきた。もう今回で六回目を迎える。つまりは六年目ということだ。
戦争を起こさないためには戦争を知る。そのためには体験者から話を聴くことが大事だということでずっとこれを催してきた。
今年は戦後六十八年目迎える。戦争は年々遠ざかるばかりだ。記憶もまた失われつつある。私は、戦争史を資料からよりも証言から追っている。もう千人と言ってもいいほどの人びとから話を聞いてきた。この戦争の実態が分かってくればくるほど、日本は、とくには末期において全く見通しのない戦いをしていた。とんでもなく愚かな戦争だった。
ところが、終戦末期において大多数が日本が勝つと信じていた。信じ込まされていた。我等の文化の特異性は、一つの色に染まってしまう危険性があることだ。ゆえに場合によってはまた再び戦争への道を歩いてしまう危険性は常にある。これは心しておくべきことだ。
今回、話してくださる方は、前村弘さん、陸軍特別幹部候補生、重爆撃機「飛龍」の乗り組み員で、これの特攻要員として沖縄戦に二度出撃された方である。三度目の正直、陸軍秘密兵器「さくら弾機」で三度目の出撃を予定していた。ところが、各務原でこれを受け取る段で試験飛行をしたところこれが墜落してしまった。乗機を失った前村さんは三度目の特攻に行けなかった。数奇な運命を辿った方である。この秘密兵器に前村さんは試験飛行前に中に乗ったと言われる。これに乗った人で生きて居られる人は彼一人となってしまった。そういう貴重な話を今回はしてくださる。
皆さんぜひおいで下さい。北沢タウンホールで、５月２５日、３Fで午後一時半から開催します。時間があれば、自身が今執筆している戦争ドキュメント『特攻隊と褶曲山脈−鉛筆部隊の軌跡』の進行状況、『鉛筆部隊と特攻隊』の後反響について話をした。参加される場合にはいつもの手順で申し込みください。「邪宗門」でも受け付けている。
２、世田谷代田を応援する！
世田谷代田は歴史的に文化的にも意義のある地域である。ところが近代の交通革命によって衰退しつつある。まず一番大きな変化は、環七ができたことで町が分断されたことである。代田八幡宮のある代田半島先端部あたりも深い切り通しになってしまった。「あれでうちの井戸が出なくなったんだよ」という人もいた。
一番大きいのはやはり町が分断され、たちまちにあの賑やかだった中原商店街が衰退したことである。この三月、小田急線が地下化し世田谷代田駅は大深度地下駅になってしまった。ホームに辿り着くまで五分もかかるようになった。地下穴蔵ホームへの階段も評判はよくない。また交通革命によって世田谷代田が沈みそうだ。
我等は、民俗学的にも由緒あるこの代田の応援歌を作って、準会歌にしているほどだ。「だいだらぼっち だいだらぼっち だいだいだいだい でっかい巨人はだいたい 代田のだいだらぼっち…だいだらぼっち だいだらぼっち だいだいだいだい あっというまに架けた橋は 代田の代田橋」と。
大深度地下駅を盛り返すには大高度伝説駅がよい。駅を出たとたん、広場に、おおと思うようなダイダラボッチ像があればベストだ。ところが、その予算の調達は難しい。それで、現今、ダイダラボッチの足跡が駅前広場に計画されている。
東京府巨人伝説の一箇の中心地、つまりは、ダイダラボッチの本山、本拠地がここにほかならない。民俗学的にも極めて重要な地域である。
民俗学者の柳田国男は「巨人来往の衝」ということを言っている。巨人がこの東京の空をのっしのっしと歩いていたということへの衝撃だ。その中心地がこの世田谷代田にほかならない。会として世田谷代田を応援したい。毎年、代田半島探検を毎年行っている。今年も、これをぜひ実施し、ダイダラボッチの重要性を広めたい。
３、「北沢川文化遺産保存の会」の活動〜地方での芽生え〜
埼玉県比企郡ときがわ町在住の松原征男さんから「有史芳」第一号が送られてきた。土地の古老から話を聞き、それを印刷物にしたものである。
松原さん何回か私たち「北沢川文化遺産保存の会」の活動に参加された。地元でも我等のような活動を始めたいと言っておられた。言えば「ときがわ町文化遺産保存の会」ができて活動を始めたようなものである。
だいぶ前に、別の方から「北沢川文化遺産保存の会」を先駆けとしてこのような会ができるといいと提案されておられた方がいた。
松原さんの活動は、具体的な活動である。それが第一号として始まった。お手紙には、「貴会に刺激を受けて会誌作りとなりましたのでご報告に併せ、ご指導を頂きたくよろしくお願いします」とあった。
私たちは、先がけではあるが、俺が俺がと誇ることはない。文化とは地域の匂いである。それを大事にする活動は、その人びとの主体性に他ならない。それでも我等の会に影響を受けて、地方でこのような活動が始まることは嬉しいことだ。このネットワークが広がれば面白い。
文化とはその土地に住む人がその土地の風や匂いや色を楽しむことだ。
そう言えば、我等の会に声が掛かっている。「塩山近辺の文化を歩きませんか」と、これは会友の矢花克己さんから誘い、「有史芳」を読むと、ときがわ町にも面白い文化が眠っている。機会があったら訪ねていきたいものである。生きる楽しみがまた増えた。
（注記、この項目は、アナログ版にはありません）
４、都市物語を旅する会
私たちは、毎月、歩く会を実施しています。個々の土地を実際に歩き、その土地の文化を発見して楽しみながらぶらぶら歩いています。参加自由です。 基本原則は、第三土曜日午後としています。第二週には、会員の希望によって特番を設けることがあります。
・第８４回 ５月１８日（土）午後１時 「幻影の下北沢猫町散歩」
恒例行事。萩原朔太郎が亡くなった五月には毎年、彼が居住した下北沢、そして代田。彼の小説『猫町』の舞台を訪ねながら行く定番コースだ。最終地点は、世田谷区地域風景資産となっている「代田の丘の６１号」鉄塔だ。ここには念願の「鉄塔由来碑」を昨年建立した。これの見学も兼ねている。今回のテーマは、「萩原朔太郎と小田急」だ。小田急が地下化しての猫町を初めて散策する。どう変わったのか？を探検する。
・第８５回 ６月１５日（土）午前１０時 代田橋駅改札前
下北沢地形学入門 外縁の水路を巡って下北沢へ 去年、笹塚「福寿」でラーメンを食べようと行ったがお休みだった。ところが、ここが営業していることを知った。再チャレンジしたい。食べられなかったら昨年と同じ中華レストランで昼食。
・第８６回 ７月２０日（土）午後一時 田園都市線三軒茶屋駅改札前（中央）
恒例「駒沢練兵場を巡る」
最後は、つい最近完成した大橋ジャンクションの上の天空庭園で各自買ってきたジュースなりお茶なりを飲む、二転三転して申し訳ございません。集合が三茶になりました。
九月
・特番行事 日時：９月１４日（土）
国分寺崖線古墳をゆく 喜多見駅改札口 １３：００ ナビゲーター 天羽大器さん
〇コース＊喜多見駅→野川沿いを歩く→念仏車と庚申塚→筏道→喜多見氷川神社→慶元寺→稲荷塚古墳→第六天塚古墳→須賀神社→荒玉水道道路→次大夫堀公園→砧中学校古墳群→仙川沿いを歩く→カトリック成城教会(今井兼次設計)→成城学園前駅
・第８７回 ９月２１日（土）午後一時 下高井戸駅集合
下高井戸鉄道Ｔ点一帯をめぐる
夢二旧居、高井戸宿、松原宿など ナビゲーター 岡本克彦さん
案内者は、昨年、明大前鉄道交点を案内してくださった岡本克行さん。
・第８８回 １０月１９日（土）午後一時 東北沢駅改札前集合
下北沢アートタウンを巡る（�供� ナビゲーター きむらけん
改訂地図五版には、芸術家も加えたことからこれらも巡る。
昨年は、南部を巡るこれを実施した。今度は北部を巡るこれを実施したい。
１１月
・特番行事 日時：１１月９日（土） 午後一時 日暮里駅北改札口
谷中墓地（三度目） ナビゲーター原敏彦さん
・第８９回 １１月１６日（土）午後一時 東急線多摩川駅改札前
国分寺崖線の古墳群を歩く ナビゲーター 木村康伸さん
多摩川駅→浅間神社→亀甲山古墳→宝来山古墳→宇佐神社（八幡塚古墳）→野毛大塚古墳（玉川野毛町公園）→上野毛自然公園 →二子玉川駅（駅周辺の喫茶で歓談）
・第９０回 １２月２１日（土）午後一時 代田橋駅改札前集合
代田半島を巡る ダイダラボッチ、代田連絡線、朔太郎、三大伝説を巡る旅
◎申し込み方法、参加希望、費用について 参加費は各回とも３００円
参加申し込みについて（必ず参加連絡をお願いします。資料部数と関連します）
電話の場合、 米澤邦頼 ０９０−３５０１−７２７８
メールの場合 きむらけん aoisigunal@hotmail.com FAX3718-6498
■ 編集後記
▲『鉛筆部隊と特攻隊』については昨年出版した。これについては多くの反響があった。全く知られていない情報が数多く寄せられた。そのことからこれをまとめたいと思い、これを執筆中だ。今回「下北沢文士町」の意義付けを深く掘り下げた話を載せた。本ののタイトルを仮題として『特攻隊と褶曲山脈−鉛筆部隊の軌跡』（仮題）としている。今夏に刊行する予定である。これらの話は、我等「北沢川文化遺産保存の会」の活動なくしてはありえなかった。活動があったらばこそ近代戦争史の秘話は発掘された。
▲NHKラジオ深夜便で「疎開児童が見た特攻隊」が放送された。戦争体験を募集したが全国から多くの情報が寄せられた。放送内容については『ラジオ深夜便』七月号（６月１８日発売）に掲載されることになった。
▲第６回戦争経験を聴く会は５月２５日（土）午後一時半から北沢タウンホール３階で開催します。例年の通り開場受け付け、開場設定、整理などのボランティアをお願いします。
▲歩く会の参加申し込みについて先だって混乱があったことから原則を作った。三日前までに必ず連絡すること。資料が不足することがこのところ続いている。それと参加者が多過ぎると混乱する。歩く会についてのリミットを２０名としたい。一つの方法だがネットを使っている人も多いので「北沢川文化遺産保存の会」専用掲示板というのもありうる。
どなたかがこれを開設し、管理してもらえないか？。一つの提案である。
▲夏の納涼会は、７月２７日（土）北沢タウンホールで５時３０分から。北沢タウンホールは八月から工事に入る。それで一週間開催を繰り上げた。出版記念会を予定。
▲会費納入のお願い。一応年単位の会費ですので期限がきれることになりますので未納の方、１０００円を納めてください。よろしくお願いします。会友は無料です。
・当会への連絡、お問い合わせは、編集、発行者のきむらけんへ aoisigunal@hotmail.com
会報のメール配信もしている。「北沢川文化遺産保存の会」は、年会費千円、入会金なし。会員へは会報を郵送している。事務局の世田谷「邪宗門」で入会を受け付けている。
