2019年04月
2019年04月29日
下北沢Ｘ物語(3752）―下北沢文士町と地域の活性化―
（一）今夏のSHIMOKITA VOICE 2019では下北沢の文化を基軸に討議が行われるとのこと。その説明の中に「萩原朔太郎を迷わせ、吉増剛造を不吉がらせた＜回遊の街、路地の街＞」とあった。素晴らしい批評だ、明日、明後日、平成から令和という時代の変わり目に８０名を案内して下北沢文士町を歩く。その文学散歩のテーマとぴったりと重なる。実際朔太郎下北沢旧居を確認した後に、吉増剛造いうところの次元の穴が至るところに開いている路地の街を回遊していく。そして途中の「一本松公園」では小説『猫町』の一節の朗読がある。ここに「樹木の多い屋敷町を、幾度かぐるぐる廻った」と出てくる。こここそは下北沢野屋敷ではないかと言ってきた。文士町文化の深さだ、が、VOICE 2019では「再開発の行方定まらない不安を抱えた街」とも評される。文士町を希望に繋げてもらえないものか？
平成から令和という境目に、下北沢文士町を歩いてみようという企画に大勢が応募してきた。３０日と１日、両日に亘って８０名がこの文学散歩に加わる。この手のイベントとしては最大級のものだ。が、いつも通りには行かない。
路地町を大勢で歩くには大変だ。かつて下北沢駅前に代沢小家庭学級の３０名が集まったことがある。これだけでも大変だった。今回はこのときより１０名も多い。どうしのぐのか、しかし、ピンチはチャンスでもある。文士町をアピールすることで他の地域から人が集まってくればまちに活力が生まれる。行方定まらない未来への希望にも繋がる。
大勢の人が来た場合、どう対処するか？以前山梨県河口湖町の図書館がツアー希望者を募って下北沢文士町をバスで訪れたことがある。このときに好評だったのは弁当である。
当方でこれを用意した。名前をいろいろ考えた「猫町弁当」も候補の一つだった。
やはり大事なのは、誰かが来た場合、土地ならではの食べ物を提供することだ。「北沢川弁当」もありうるがこの川に鮎が泳いでいるわけでもない。やはり人にちなんだ弁当を出す方がいい。「萩原朔太郎弁当」、「三好達治弁当」もあり得る。しかし、これはあまりおいしくなさそうだ。
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2019年04月28日
下北沢Ｘ物語(3751）―会報１５4号：北沢川文化遺産保存の会―
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「北沢川文化遺産保存の会」会報 第１５５号
２０１９年５月１日発行（毎月1回発行）
北沢川文化遺産保存の会 会長 長井 邦雄（信濃屋）
事務局:世田谷「邪宗門」（水木定休）
155-0033世田谷区代田1-31-1 03-3410-7858
会報編集・発行人 きむらけん
東京荏原都市物語資料館:http://blog.livedoor.jp/rail777/
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１、知覧特攻平和会館企画展「鉛筆部隊と特攻隊」
先だって『歌物語 鉛筆部隊と特攻隊』の練習を終えて家に帰った。すると知覧特攻平和会館から手紙が届いていた。何と、企画展が催され「鉛筆部隊と特攻隊」がテーマの一つとして取り上げられ関係する資料が展示されているという。
今年で当会は、発足十五年目を迎える、代田・北沢・代沢の文化歴史を記録して後世に伝えることを目的として発足した。
「鉛筆部隊」は、全くの偶然から発見された。
代沢国民学校は戦時中、松本浅間温泉に疎開した。六つの旅館に分かれての生活だ。その内の一つ、千代の湯は柳内達雄先生が受け持った。国語教育に力を入れていた先生は、自分が担当した４５名を「鉛筆部隊」と名付けた、学童らにひたすら書くように指導した。親への手紙、また兵隊への慰問状、そして日記を書かせた。鉛筆で文字を書くことで学童は精神的にも、学力的にも伸びるとの信念からだ。
１９４５年春２月、この鉛筆部隊のところへ本物の兵隊がやってきた。誠第３２飛行隊、武剋隊のメンバー六人がここにやってきて約一月あまりを生活を共にする。学童のお兄さんぐらいの彼らとはたちまちに仲良くなる。が、出撃が迫って彼らは子どもらと別れて沖縄に向かい敵艦船に突っ込み特攻戦死する。
出撃した彼らからは三通の手紙が届く、「もうこの手紙が届くころにはこの世の人ではありません」と。生徒達は悲しみにくれる、そんなときに「君たち鉛筆部隊の出番だ、君たちが悲しんだ以上に、ご遺族は悲嘆に暮れておられるはずだ、みんな手分けしたお悔やみの手紙を書こう」と指示をされた。それで鉛筆部隊の隊員はみな手紙を書いた。
「私は、時枝宏さんに書きたかったのですが、割り当てでは今野勝郎軍曹にということになって手紙を書きました。びっくりしたのはそのお礼にということで宮城の今野さんのお宅から北沢の実家にお米が送られてきました」
鉛筆部隊松本明美さんの証言だ。
知覧特攻平和会館では学童と先生とが時枝軍曹のお宅に送った三通の手紙が展示されている。高島千恵子さん、鳴瀬速夫さん、そして柳内達雄先生の手紙である。先生の手紙には「鉛筆部隊」のハンコがしっかりと捺してある。
なお、高島千恵子さんは田中幸子さんの妹さんだ、当会会員であった幸子さんは４月５日逝去された。家族葬で葬式を済まされた。鉛筆部隊ゆかりの山梨県の矢花克己さんと相模原の家に伺い、息子さんにお悔やみを申し上げ、遺骨に祈りを捧げてきた。
知覧特攻平和会館の企画展は、２０１９年６月３日まで開催されている。
２、第１２回戦争経験を伝承する会
５月は山手空襲があった月だ、戦争被害を忘れまいということで毎年、「戦争経験を聞く会、語る会」を開いてきた。ところが、戦争から遠ざかるにつれて経験者、語り手がいなくなってきた。それで何か方法はないかと考えていたが、もう戦争第二世代がやるしかない。それで劇を通して戦争を訴えることにした。当地域の戦争を題材とした劇を催すことにした。なお、先月号では入場を無料としていたが諸経費がかかることから有料とした。
期日 ５月１９日（日）
場所 カトリック世田谷教会
後援 世田谷区教育委員会 協賛 世田谷ワィズメンズ倶楽部
時間 開場１３時 開演１３時３０分
先着 ６０名
入場料 ５００円
テーマ 歌物語 鉛筆部隊と特攻隊
世田谷代沢小の疎開学童は浅間温泉に疎開中に偶然満州新京から飛来してきた特攻隊 と出会ってそして別れていく。戦争中のできごとを歌物語にして演ずるものである。 戦争経験の伝承が難しくなってきたことから劇として伝えることにしたものだ。
・監修 関根英雄 ・演出 若桑比織 ・音楽 内村真由美 ・演出補 山本裕
・出演 石坂いつか きむらけん 五十嵐日鞠 毬絵
・原作 「鉛筆部隊と特攻隊」（彩流社）きむらけん
〇世田谷区の広報には５月１日に案内が載る。「先着６０名」としている。杞憂しているのは人数が溢れることだ。公平を期すために予約を取ることはできないが、可能性と して再公演なども考えられる。観劇希望者の人数は把握できたらよい。それで ネットのメールアドレスに希望を伝えてもらえるとありがたいが……。
なお、当日、ボランティアで手伝ってくださる方は１１時に教会においでください。
●ゲネプロ（最終リハーサル公開）ネット版、メール版のみ告知
５月１８日（土）１０時より１２時ぐらいまで
本番当日の来場者の予測はできない。前日にゲネプロを行うことにした。
見学を希望される場合には事前申し込みを必ずメールで行うこと。時間厳守。
aoisigunal@hotmail.com
３、小さな戦争の記録
戦争の記憶が消えかかっている。往時の記録を少しでも記録しておきた。当会会員の今井明さんが保存しておいたハガキを紹介する。彼のお兄さんは代沢国民学校の疎開学童だった。浅間温泉井筒の湯いた今井孝雄さんのところに海軍に入っている親戚から手紙がきた。彼は、命がけで勉強せよと励ます。軍人もそして疎開学童もどちらも大変であった。その一端が見えるハガキだ。
孝雄君御手紙ありがとう
長野縣に疎開して一生懸命勉強して居る様ですね。なかなか寒い事だらうが身体に気をつけて病気にならぬ様にして下さい。
私は毎日海軍の猛訓練を受けて居ります。今日本は猛烈な戦争をして居ります。我々軍人は勿論日本国民全体が生命掛けで戦つて居るのですから君達生徒も生命掛けで勉強して将来立派な軍人になる様にしてください。さようなら
浜名海兵団第八〇一分隊 山川彊 十一月二十五日
大変寒くなりました。元気ですか、此頃東京は度々空襲されますが皆な頑張て防火活動も上手になり、あんまり被害はありません。家でも皆な元気です。緑も大きくなりました。體を大切にして下さいね。病気になったらすぐ知らせてなさい。
北沢一丁目 今井卯一 十二月四日
これはお父さんが北沢の家から疎開先の孝雄さんへ出した手紙だ。子への心遣いがよく分かる。これらも戦争の記録になる。戦時中の伝単とか、手紙や絵葉書や写真などありましたら連絡をしたり、送って下さったり、されるとここで生かしたい。
４、第五回「北沢川文化遺産保存の会研究大会」の開催
第５回北沢川文化遺産保存の会 研究大会
世田谷代田駅前広場開場記念行事（プレイベント）
後援 世田谷区 世田谷代田駅前 広場開場記念行事準備会
日時 ２０１９年７月２７日（土） １０時３０分より（予定）
場所 梅丘パークホール
会費 ５００円（資料代） 終了後懇親会 会費（３０００円）
研究会 テーマ「世田谷代田の歴史文化」
５、都市物語を旅する会
私たちは、毎月、歩く会を実施している。個々の土地を実際に歩き、その土地の文化を発見して楽しみながらぶらぶら歩く。会員外も参加は自由だ。 基本原則は、第三土曜日午後としている。１３時に始めて約３時間、終わり時間の目安を１６頃としている。
第１５０回 ５月１１日（土） １３時 田園都市線三軒茶屋駅中央改札前
案内人 上田暁さん 中世世田谷の海への動脈「芝道」を歩く。中世世田谷の領主、吉良氏の世田谷城と領地芝村(今の港区芝)を結ぶのが芝道と芝溝道だ。中世の世田谷で水運、漁業の重要地である芝村をつなぐ両道は、吉良氏にとって軍事的にも産業的にも重要であった。芝道は明治期に百メートルほど残して消えてしまったが、芝溝道が古道として残っている。今回芝溝道の途中にある歴史遺産にも立ち寄りながら三軒茶屋から代官山までを歩く。その後昨年大河ドラマ「西郷どん」にも出ていた西郷隆盛の弟、西郷従道のそのゆかりの西郷山公園と菅刈公園の西郷従道の資料館を見学する。菅刈公園には「東都一の名園」といわれた西郷邸の庭が一部復原されている。
コース：三軒茶屋→芝道確認→芝溝道→下馬の兵舎跡→陸軍境界標→西澄寺→寿福寺→目切坂→代官山→西郷山公園→菅刈公園和館→古道日向道→池尻大橋駅
第１５１回 ６月１５日（土） １３時 東急東横線代官山駅中央口前広場
キュレーター きむらたかし 「三田用水ツアー第2期最終回」
〜旧朝倉家住宅内水路と鉢山分水跡を歩く〜
コース：〔重文〕旧朝倉家住宅*−同庭園内水路**−（同住宅内見学 14：00まで）猿楽塚ー猿楽分水口跡―朝倉水車跡―西郷山水車跡−鉢山分水口跡−（鉢山交番）−鉢山分水路跡−並木橋（伝鉢山分水放流口）―渋谷駅
*入場料：60歳以上は身分証明書提示で無料、その他100円
**庭園内はハイヒール・サンダルは危険につき不可
第１５２回 ７月２０日（土）１３時 京王井の頭線新代田駅改札前
案内者 山本裕 ダイダラボッチ川を歩く
コース：新代田駅→ダイダラボッチ跡→地蔵尊→川に沿って下る→井の頭線下北沢２号踏 切→八代龍王の跡→旧守山田圃跡→踏切地蔵尊→下北沢王将（旧北沢湯）→代沢三差路→北沢川合流点→邪宗門、ダイダラボッチ談義（希望者）
◎申し込み方法、参加希望、費用について 参加費は各回とも５５０円（資料代保険代） 参加申し込みについて（必ず四日前まで連絡してください。資料部数と関連します）
電話の場合、 米澤邦頼 ０９０−３５０１−７２７８
メールでの申し込める人は きむらけんへk-tetudo@m09.itscom.net FAX3718-6498
■ 編集後記 ▲毎月の歩く会は、別宮通孝さんが主導して新しい手法で行っている。参加者も増えてきている。ところが困ったことが一つある。実施日の２日前に保険金の支払い手続きを行っている。３日前までに申し込むということになっているがこれが守られてていない。保険金の支払いだけでなく、案内者が資料を何部刷るかにも関係する。３日前原則をお願いしたい。ネットで申し込める人は、きむらけんに直接申し込んでほしい。
▲会員の訃報：５月には二人の会員が亡くなられた。一人は田中幸子さんだ、もう一人は川田明義さんである。二人共に代沢小の疎開学童だった。ご冥福をお祈りいたします。
▲特別企画の誘導案内；世田谷文学館友の会主催。「平成納めの散歩（4月30日)と新元号始めの散歩(5月1日)」である。下北沢文学散歩を二日、各回４０名、計８０名参加。
▲会員は、会費をよろしくお願いします。邪宗門で受け付けています。銀行振り込みもできます。芝信用金庫代沢支店「北沢川文化遺産保存の会」代表、作道明。店番号２２。口座番号９９８５５０６です。振り込み人の名前を忘れないように。
▲当、メール会報は会友に配信していますが、迷惑な場合連絡を。配信先から削除します。◎当会への連絡、問い合わせ、また会報のメール無料配信は編集、発行者のきむらけんへk-tetudo@m09.itscom.net「北沢川文化遺産保存の会」は年会費1200円、入会金なし。会員へは会報を郵送している。事務局の世田谷「邪宗門」で常時入会を受け付けている。
◎号数の訂正、本号を１５５号としていたが途中数え間違いがあり、１５４号と訂正した。2019/05/11
2019年04月26日
下北沢Ｘ物語(3750）―衝撃：下北沢文士町の令和効果―
（一）「開店以来のビックリビックイベントですよ」、今日邪宗門に行くと開口一番、マスターの作道さんが言う。自分でもそうだ、文士町を何度も案内してきたが、これほど大がかりなものはかつてなかった。平成から令和への改元効果である。タイトルは「平成納めの散歩（４月３０日）と新元号始めの散歩（５月１日）」である。二日間に亘る行事で各回４０名で、都合８０名が下北沢文士町を歩く。当初は３０名を予定していたという。が、時代への哀惜からか応募者が多かった。主催者は「世田谷文学館友の会」だ。時代の移り目に世田谷の文学の原点を探っておこうという意欲的な試みだ。そのコンセプトは「世田谷を愛して恋して生きた人−萩原朔太郎、森茉莉、三好達治らの暮らした北沢〜代田〜せせらぎの北沢川緑道を巡る」だ。
世田谷地区が近代文学に果たしてきた役割は大きい。閑静な武蔵野が書き手に心地良い空間を与えていたということはある。もっとも大事なのは区の位置である。都心と遠からず、近からずという点は大きい。世田谷区が江戸坂的な位置にあったことが大事だ。東京のドンが聞こえ、一拍遅れて横浜のドンが微かに響いてくる。中央文化一色に染まらないというところも素晴らしい。
今回は、「世田谷を愛して恋して生きた人−萩原朔太郎、森茉莉、三好達治」をメインに取り上げている。このフレーズは、私が言っていたことを活用したと会の役員の人が言っていた、調べると、下北沢Ｘ物語(3705）―まちを愛して恋した人の痕跡地図―があった。
文士町はふしぎなまちだ、道が入り組んでいてわかりにくい。路地を歩いていると自分がどこにいるか分からなくなる。漫歩を好んだ萩原朔太郎もふらふらと近隣をうろつき回っていた。彼の作品『猫町』にはこう書かれている。
私には、道を歩きながら瞑想に耽る癖があつた。途中で知人に挨拶されても、少しも知らずにいる私は、時々自分の家のすぐ近所で迷児になり、人に道をきいて笑われたりする。かつて私は、長く住んでいた家の廻りを、塀に添うて何十回もぐるぐると廻り歩いたことがあった。方角観念の錯誤から、すぐ目の前にある門の入口が、どうしても見つからなかつたのである。家人は私が、まさしく狐に化かされたのだと言った。
萩原朔太郎 日本詩人全集１４ 新潮社 昭和４１年
文士町案内をし始めた当初、道に迷ってしまうのはしょっちゅうであった。路地に迷い込むとたちまち方角が分からなくなる。しかしだ、だんだん分かってくると「狐に化かされた」かのようなことが起こることが却って面白い。そこが文士町のふしぎさだ。これがあるゆえに好んで、そして愛したとも言える。
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2019年04月25日
下北沢Ｘ物語(3749）―日米親善音樂會の記録（20.10.31)下―
（一）学徒動員兵の印象深い証言がある、「日本は精神力では絶対にアメリカには劣らない」と思っていたと。が、科学技術分野、それと人権観では相当な開きがあった。果敢なチャレンジではあったが、無謀だった。些細なことにそれを感じる、B29の搭乗員の救命バックには釣り針が入れられていた。漂着した無人島でも生き延びられるようにとの配慮だ。偶然見つかった終戦直後に開かれた「日米親善音樂會」のプログラムにも感じた。敗戦国の文化を評価して銃による支配を和らげようとする意図が読めたからだ。事前に周到な計画が立てられていたのだと思う、「日米親善音樂會」プログラムからは進駐軍の占領政策が読み取れる。
プログラムの構成も巧みだ、我々が考えると普通は最初に挨拶がある。が、この音楽会ではまず出し物から始まる。枕の振り方が見事だ。幕が開いたとたん、軽業師がぴょんとひっくり返って芸を見せた。英文では「Acrobat」とある。
まず、第一部の出し物が終わって挨拶となる
１７３０〜１９４５ 挨拶 日本學生文化聯盟 開催委員長 山内文雄
挨拶 聯合國進駐軍代表 将官
挨拶 責任者 笹川莨雄 通訳 吉川博明
タイムテーブルがきちんと決まっている。一人三分ほどで話を終える。観客を飽きさせない工夫だろう。
「笹川莨雄」は、責任者だ、誰で、何をしていた人か？ネット検索に掛けてもまったく引っ掛からない。
英文表記によるプログラムは、日本語のとは違う。「Part 2」の始まりは、「Opening speaches」となっている。山内文雄氏の挨拶から始まる。もう一つ注目すべき点は、「Part 2」
（on the air）とある。ここからオンエア、すなわち電波を通してラジオで放送された。全国放送だろう。進駐軍代表は将官だ、「新しき歴史が新しき手により書き初められようとしてゐる。」開催趣旨に書かれたことが彼によって生の声で流された。通訳つきでスピーチは日本語に訳されて人々の耳に届いた。
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2019年04月23日
下北沢Ｘ物語(3748）―日米親善音樂會の記録（20.10.31)上―
（一）人は時間を亘っていく動物だ、脳に記憶をすべて貯め込むことはできない。それで記録が意味を持つ、これは人の歩みの物差しだ、ささいな記録でもそれが歩みの解明に役立つものと信じている。偶然、一枚のガリ版刷りのプログラムが見つかった。時は昭和２０年１０月３１日である。終戦はこの年の８月１５日である。そして、米軍が東京に進駐してきたのは９月８日だ、それから二ヶ月しか経っていないのに「日米親善音樂會」が開催されている。日本人にとって敗戦は大きな精神的傷手だった。敵意さえも消えていない。そんな中で音楽会が開催されていた。
まず、開催日と時間だ、これは昭和２０年１０月３１日、午後５時３０分である。
場所は 「於 日比谷公會堂」となっている。
次は、開催主体についてだ。
主催 日本学生文化聯盟
後援 聯合国軍進駐軍司令部
協賛 日本放送局
協賛 日本芸能社
誰がどのような意図で会を開催し何をしようとしたのか。興味深い。
主催者は、「日本学生文化聯盟」である。英訳ではJapanese Students'Cultural Leagueとなっている。日本の学生の文化団体の集まりということになる。早くもこれが組織されていたのだろうか。このプログラム全体を見るといわゆる進駐軍、GHQが中心になって旗振り役をしていたと読める。
芸人、歌手、楽団などが大勢出演している。１０月３１日開催だが、前もって周到な準備をしてこれに臨んだようだ。
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2019年04月22日
下北沢Ｘ物語(3747）―第１４９回散歩：皇居を歩く―
（一）これまで都鄙文化を数多く取り上げてきた。都市と田園の境にこそ物語が潜む、そこに風情や趣、詩情がある。境界は、一方には中心があり、もう一方には辺境がある。我等は後者を好む。皇居を歩くでは集合場所は東京駅北口だ、「東京駅で集まるなんてことなかったね」と参加者の弁、そう我等は都市の外れを歩くこと多い、先月は、「九品仏川を歩く」今回は皇居、さすらいの我等がいきなり東京の中心地に来ると場違いな感じがする。「まあ、いい見てやろう」ということでお江戸東京の中心を歩いた、折からの改元ブームで人の多いこと、もう我等はお上りさんだ。
東京駅から皇居をめざす。２０日は好天だった。新緑が目に眩しい。すぐに皇居前広場だ、一枚の写真が記憶にある、ここで坐り込んだ人々が皇居に向かって深々と頭を下げている姿だ。８月１５日の新聞には「玉石を握りしめて」、力の至らなかった私たちがいけなかったのですと天皇に向かって謝っている姿だ、その痛々しさが思われる。が、今は平和だ、その人混みの大半は外国人だ。皇居へ向かう道に赤いたすきを掛けた人たち、「江戸城再建を目指す会」と書かれている。
連想したのはつい先頃焼け落ちたノートルダム大聖堂のことだ。焼失したとたんに再建の声、それでフランスの大富豪が相次いで巨額寄付を表明し、たちまちに１２００億円もの寄付が集まったそうだ。民間だけでなく国家としても援助すると表明しはじめている。
歴史的建造物への人々の思い入れはどこでも高い。ゆえに金に糸目はつけない。
再建については有権者の関心が高い、首脳なども先頭に立って「再建」をアピールしている。ところがフランスは格差が広がっている。たちまちに再建資金が集まってきたことに対しデモが起こった。「国内の貧困にも目を向けろ」と。
「焼け落ちた名古屋城は市民の努力によってやっと再建したものですよね、コンクリートづくりではあっても市民には思い入れがある、あれを壊して木造の本格的なものを再建するという話ですよね」と案内者の別宮さん、私も同感だ。
江戸城再建では 総ヒノキ造り を目指しているようだ。「再建されれば、東京の都市景観は一変し、日本を代表する 偉大なモニュメントになる」とのこと。また東京に名所が出来て東京に人が集まる。
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2019年04月20日
下北沢Ｘ物語(3746）―駒澤上馬眞井家の道標を巡って―
（一）道しるべは心遣いだ、旅人が迷わないように行き先を示して方向を案内する。単なる表示板ではなく居住人のレーゾンデートルをも示すものだ。分岐地点への誇り、そして共同体の団結を表しもする。が、カーナビ時代、これらは一切用事がない。しかし、これには大きな存在価値がある。これを見ると我等の祖先が、どこからどこへ辿ったかが分かるからだ。ところが今にこれが残っていてもほとんどが怪しい。右〇〇へ、左〇〇へ、方角が合わない。近代の都市は、道標を駆逐する、道角を占めていたしるべは道路造りに邪魔だということで移動させられる。道標はその場所にあって生きる、災厄がムラに入ってこないように守ってもいたものだ。駒沢上馬眞井家には重要な道標が保存してあった。
駒沢ガーデンテラスには昭和七年に建てられた門が保存されている。その前に道しるべがある。ちょうどそこは尾根筋道が通っている、背尾根には品川用水が流れていた。その向こうには家々が建っている。駒沢高射砲陣地があったところだ。
「陣地のあったところも私のところの地所でした。前は畑だったですね」と眞井さん。
土地は背尾根を境に全体が北に傾斜している。その途中に円弧を描くように六門の高射砲が据えられていた。敵機の侵入経路が明確に想定されていた。つまり、マリアナ諸島から北上してきた爆撃機は富士山を回り込んで東京を攻めて来と。砲門の配置がそれを物語っている。
その道標だ正面には「めぐろ 池がみ道」とある。この地名を指すとすれば碑はは向きが東を向いていなくてはならない。もう頭が混乱してくる。
「ここらの古道で言えば、すぐそこ北に六郷田無道がありますね。細いみちで入ったとたんに古道だとわかります。もう一つ知っているのはここの南の駒沢交差点のすぐ先から細い道がありますね、延々と続いて野沢交番のところへ行くのですよ。これは古老から聞いて知ったのですが、『下の道』と言っていたと、これに対置されるのが品川用水沿いの尾根筋道、これが『上の道』となると思います。このどこかにあったのではないでしょうか」
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2019年04月19日
下北沢Ｘ物語(3745）―駒澤上馬眞井家訪問―
（一）日々文章を書いてはネットにアップし、そして外に出ては歩きまくる。昨日は三軒茶屋方面だ、帰路、野沢下馬境にくると二人の女性がひなたぼっこしている。「あの坂はテコテン坂と言うそうですが知っています？」、「初めて聞いたわ」と二人、話していると二人とも新潟県出身、「碓氷峠の２６番目、あそこを出たとたん浅間が見えてくるとせつなくなったでしょう？」、「あんたよく知っているね！」。碓氷峠の記憶はあるがテコテン坂の覚えはない。近辺一帯では古老に会うと「ダイダラボッチは知りませんか？」、「駒沢高射砲陣地があったでしょう？」と聞くがほとんど反応はない。が、ネット時代は情報が密に行き交う、高射砲陣地の情報はすべてネットによってもたらされた。その一つ駒沢上馬眞井家を１７日訪問した。駒沢公園のすぐ近く、常々散歩している地域だ。
私の住むところで真中というのはよく知られていた。が、駒沢大学がこれを食ってしまった。「国道２４６を真っ直ぐ行って真中で左折」とタクシー運転手に言えば自宅に着いた。が、もう通じない。今は「駒沢大学駅前交差点」となっている。真中は玉電時代の電停名である。これをつけるときに「真中（まなか）」とした。理由としては渋谷と二子玉川の真ん中にあるからとの説、これは違う。真相は、この一帯の大地主が一つは眞井家であり、もう一つは中村家だ、この頭文字を取って真中とした。その眞井家を訪問した。
眞井家のあった場所は今は「ガーデンテラス駒沢」と名付けられ、洒落た西洋風の家々がここに建っている。眞井家の邸宅があった時代の木々が残され、敷地内は緑が豊かである。
この駒沢の地は、明治天皇が兎狩りをした場所である。「明治十四年二月七日兎狩御幸」をされたときに「駒澤町上馬九六三 眞井兵五郎家敷」が「行在所」となっている。
応対に出てこられたのは眞井斎壽さんである。眞井家の御曹司だ。彼とはネットで知り合った。当ブログにコメントを寄せられた。
眞井 壽一(さない としかず)は僕の祖父にあたります。子供の頃同居していた祖父母からは高射砲陣地ができる際、邪魔だからと庭の松の木の先端を切られてしまったとの事。後に松の木に登った際その切られた跡を確認しています。
なおこの松は今も「ガーデンテラス駒沢」の中に残っています。今後の開発でも真井家のこのシンボルツリーは残していくつもりです。
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2019年04月17日
下北沢Ｘ物語(3744）―戦争伝承「鉛筆部隊と特攻隊」―
（一）歌物語「鉛筆部隊と特攻隊」の練習は読み合わせから始めた。鉛筆部隊の松本明美さんが加わったので物語がリアルになった。劇では鉛筆部隊に送られてきた特攻兵の手紙は最大のヤマ場だ、突撃を敢行した後に送られてきたものだ、今西軍曹は手紙には「桜をひとひら同封しました」とある。「それは茶色くしなびた花びらでした」と松本さんが言う。７４年の前のことを彼女は鮮明に覚えていた。「あれは二階の大広間でした……」、手紙を読み上げた場所、そして花びらの色まで言われると鮮明に場面が浮かんでくる。学童たちは全神経を傾け手紙を読み上げる先生の動きを見つめていた。一通目は今野勝郎軍曹、二通目は今西修軍曹だった、この手紙を広げたとたんはらりと落ちたものがある、目はその一点に集中する。それが桜の花びらだった。誰もが哀れと思った。
演出を手がけるのは若桑比織さん、「ここに出てくる手紙はタイムカプセル」だと批評した。実際にその手紙を読み上げていくとその時が蘇ってくる。大広間で緊張している学童たちの目つき、顔つきまでが浮かんでくる。
手紙を通して特攻兵の身近な死を学童らは思った。一月に及ぶふれあいで子どもたちは彼らの肌を身近に感じていた。親のいない子どもたちは彼らを兄のように慕った。物故された前知覧特攻平和会館館長の板津忠正さんから「浅間温泉での子どもたちとのふれあいは彼らには命の洗濯になったでしょう」という手紙を頂いた。このときは意味は実感できなかった。が、今はよく分かる。子どもたちの笑顔や仕草などがどれほど彼らを慰めたことか。
死に対する思いや感じ方は歳を重ねると鈍感になっていく。自身の子ども時代、死ほど怖いものはなかった。私自身、小学校の低学年のとき父を亡くした。そのとき火葬場に入るのが怖くて怖くてたまらず頑強に抵抗してとうとう中には一歩も入らなかった。
特攻兵が出撃した後に彼らから手紙が来た。今野勝郎軍曹、今西修軍曹、時枝宏軍曹、みな深く慣れ親しんだ兵たちだ。手紙の一語一語は学童らの命をゆさぶった。
「よおし、復讐だ！」
高学年の学童は思った。
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2019年04月16日
下北沢Ｘ物語(3743）―知覧企画展「鉛筆部隊と特攻隊」―
（一）この５日に亡くなった鉛筆部隊田中幸子さんの口癖は「ふしぎね」だ、彼女は疎開時代に接した特攻兵の供養をずっと続けてきた。この過程で霊魂の仕業か次々に不思議な出来事に遭遇した。どうもこの「ふしぎ因縁」が自分にも取り憑いたようだ。１４日に「歌物語 鉛筆部隊と特攻隊」の練習をカトリック世田谷教会で行った。これに鉛筆部隊の松本明美さんが来てくれて、「じゃあお願い」と一つ頼んだところ、彼女は自分がもらった時枝宏軍曹の手紙を読んでくれた。公演では、松本明美さん、そして故田中幸子さんは映像出演してもらうことにした。練習を終えて家に帰ると知覧特攻平和会館から手紙が来ていた。「子どもたちが見た戦争」という企画展のお知らせだ、これを見て驚いた、何と「鉛筆部隊と特攻隊」がテーマとなっていた。
まずこの開催期間に因縁を感じた、それは「４月６日（土）〜６月３日（月）」だった、田中幸子さんが亡くなった翌日から開かれていた。
すでに開かれている企画展の会場風景の写真も同封されていた。知覧特攻平和会館の資料収集力の高さは別格だ。テーマ通り、「鉛筆部隊と特攻隊」、これを具体的な資料で展示している。手紙類だ、鉛筆部隊の高島千恵子さん（田中幸子さんの妹）、鳴瀬速夫さん、そして鉛筆部隊隊長の柳内達雄先生が書いたのものだ。これらは特攻戦死した時枝宏軍曹の家族に宛てられている。出撃する際に時枝さんは武揚隊の五来末義軍曹に言づてを託していた。
送られてきた資料を読んで目頭が熱くなった。一つの具体的な記録が当時をリアルに想像させた。やはり記録は大事だ。時枝宏軍曹の遺族が関係の手紙類をすべて知覧にすべて寄贈したようだ。この中に鉛筆部隊の面々が送ったものが含まれていた。私は、これを読んで場面が想像できた。鉛筆部隊の隊長が隊員に指示した言葉だ。
「君たちでさえこんなに悲しんでいるくらいだから、ご家族は何倍も辛い思いをされていることか。それで君たち、ここが鉛筆部隊の出番だ、いいかみんなで手分けしてご遺族に手紙を書くんだ。千代の湯での様子を書けば、きっと慰めになるはずだ」
一つの証拠事例が全体を想起させた。間違いなく先生は亡くなった特攻兵士のご遺族に手紙を書かせた。念のためと思って今朝、松本明美さんに電話を掛けた。
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2019年04月14日
下北沢Ｘ物語(3742）―代田はダイダラボッチで燃えている―
（一）旗幟鮮明という言葉がある、我等の会、文化遺産保存の会は文化に染まっている。が、幟の色が何色かは分からなかった。今回機会があって地元にできた会に組織として加わった。他の人と交わることで色合いがはっきりとしてきた。文化は何色か？……考えているときに牧水の歌が思い起こされた、「白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ 」ここから「白」を想像した。我等の会員の発言は純粋だと思った、長年物を調べているゆえに根拠、典拠を元に発言をする。青にも赤にも染まらない、言えばボランティア精神が染みこんでいる。儲けようという考えはあまりない、常には奉仕的に活動を続けてきた。歴史、文化は儲け筋ではない。良く言えば清廉で求道的ではないかと思った。
昨日は、代田小で「世田谷代田駅前広場開場記念準備会」が開催された。いくつかの懸案事項が話しあわれた。我等の会からは、きむらたかし、米澤邦頼、と私が参加した。
「足跡部会」は、ダイダラボッチの足跡のデザインを吟味する会だ。問題点は二つある。当初計画の図案について
１、足形はその時代時代では違っている。ダイダラボッチは古い伝承だ、根拠とすべきは古代人の足跡ではないか。
２、現行デザインは西を向いているが富士を向いているわけではない、４度ずれている。富士に合わせてもいいのではないか。
部会の責任者はきむらたかしだ、やはり根拠、典拠に基づいている。１についてはこの間から指摘していることでは異論はない。
２については、土地の形状との問題があるので議論を要した。
「ダイダラボッチ伝説はこの一帯では多くある。必ずと言っていいほど話の中に富士がでてくる。駅前にできるダイダラボッチは言い継いでいかねばならない、説明の人ととして足跡は富士の方を向いて作られているというのは説得材料なる、修正は大変かもしれないが後々のことを考えると富士基準はとてもいい案だ」
私は、賛成した。世田谷代田駅の名物は富士見窓だった。今でも地上の駅前広場から富士が遠望できる。
現行図面よりも４度ずらす必要があるが、区の係り担当からはできないことではない、ということで図面を引き直してみるということになった。
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2019年04月13日
下北沢Ｘ物語(3741）―人を狂わせる戦争は二度とするな―
（一）長年、戦争伝承に取り組んできた。あの戦争をどう伝えるか？毎年会を開いてきた。が、年々これが困難になっている。１、戦争を語る人がいなくなってきた。２、戦争から遠ざかりこれが実感できなくなってきた。３、戦争が抽象化してきた。来月「第１２回戦争経験を伝承する会」を開催する。今年は初めての試みとして戦争を知らない世代による「戦争劇」を演じることにした。戦争体験者のほとんどは、「二度と戦争はするな！」と言った。何があっても戦争はしてはならない。ところが、平和裡に生活している人にこれを伝えるのは難しい。が、現実には社会には戦争的雰囲気が醸成されてきている。戦争指導者の常套句は、「敵が攻めてきて危ない」と言って戦争を煽ってきた。思い起こすとついこの間まで「Jアラート」警報なるものが鳴り響いて、「空襲警報」に近い訓練までしていた。
近代戦争は抽象化している。我等文士町、この住民だった一人は近代戦争についてこのようなことを記述している。横光利一である、彼は池ノ上の家に帰るために帝都線のホームで電車を待っていた。そのときに空襲警報がなってB29が現れた、高射砲が鳴って弾が撃たれた。至近距離でこれが爆発したようだ。
すると、私の横にいた見知らぬ青年が、
「あッ、いい高度だな。」とひと声もらした。
話はそれだけのことだが、そのひと声が、晴れた空と調和をもった、一種奇妙な美しさをもっていた。敵愾心てきがいしんもなく、戦闘心もない、粋な観賞精神が、思わず弾と一緒に開いた響きである。私はこの世界を上げての戦争はもう戦争ではないと思った。批評精神が高度の空中で、淡淡と死闘を演じているだけだ。地上の公衆と心の繋がりは断たれている。それにも拘らず、観衆は連絡もなく不意にころころ死んでゆく今日明日。たしかに死ぬことだけは戦争だが、しかし、戦争の中核をなすものは、何といっても敵愾心だ。いったい、今度の長い戦争中で、敵と呼ぶべきものに対して敵愾心を抱いていたものは誰があっただろうか。
「夜の靴」 定本横光利一全集 第十一巻 河出書房新社 １９８２年
地上にいる者が、「おっ、いい高度で飛行機が飛んできた」と思った瞬間に撃たれ、殺される。が、飛行機には操縦者はいない。操作しているのはアメリカの砂漠の地下にいる者だ、彼がコントローラーを動かして敵を撃つ。高高度を飛ぶ飛行機と公衆と心の繋がりはない、が、現実には人はコロコロ死んでいく。
戦争中、指導者は敵愾心を煽って国民を鼓舞した。「米英撃滅！」と子どもから大人まで口をそろえて言っていた。が、戦争が終わるまでほとんどの国民は敵を目にしていない。
国民学校ではチャーチルやルーズベルトの絵を描き、これを足で踏みつけたり、壁に貼ったこの絵の目に画鋲を投げつけたりさせていた。
ついこの間、自衛隊の最新型戦闘機、F35Aが墜落した。一機 １４７億円もするそうだ。このステルス戦闘機多くはブラックボックスとなっており、これを使用している日本側は墜落原因を自国で徹底的に調べることができない。原因究明をしてどう運用するのか決められない。自国の防衛が自国によってどうにもならない。が、これらをトランプ政権に約束して百機も増備するらしい。日本国憲法と軍備増強、どこかで何かが掛け違っている。
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2019年04月11日
下北沢Ｘ物語(3740）―ネット機縁の鉛筆部隊物語―
（一）身近だった人が逝った。当人と知り合って以来の十年がしきりと思い出される。出会いは人が介在する、しかし、機械の普及なくしてこの機縁はあり得なかったと思う。ネットである、これが発端を切り開いた。ネットによって「世界はフラット化」した。容易に情報が手に入るようになって埋もれていた歴史がつぎつぎに明るみに出た。「鉛筆部隊」は歴史用語として定着してきた。これはネットが掘り起こした真実だと言える。この用語に対置される言葉は特攻隊だ。方や鉛筆で闘う疎開学童、方や敵艦に命もろとも戦闘機で体当たりした特攻兵、学童との浅間温泉での接触が明らかになって一つの事実が明らかになった。大戦末期相当数の特攻機が沖縄攻撃に備えて陸軍松本飛行場に飛来してきていた。彼らはこれからを生きていく命と出会って活力精気を得ていた。
今日の記事は第３７４０回目だ、第一回、０００１は、２００４年０９月１３日にアップしている。書き続けて１５年だ。ネットブログの重要な点は記述した情報がネット内で生き続けていることだ。この蓄積がどれほどに重要な意味を帯びるか当初は分からなかった。が、これら情報が積み重なることで大きな意味が生じてきた。
いつも空想するのは自身が発した情報がどのようにネットに浮遊しているのかということだ。どこかの国の砂漠のサーバーに眠っているのか、さもなくば情報の帯があって末尾辺りは北極圏あたりでひらひらと舞っているのか？
誰か見知らぬ人が情報を知ろうと検索に掛けてくる。自身はこれに始まった物語をノンフィクションとして五冊も書き上げていた。意図して書こうとしたわけではない、気づくと五冊も溜まっていた。著作ばかりではない。紀要や冊子など何冊書いたか分からない。この記事の多くもネットに典拠している。もう検索接触物語は数え切れない。
その一例だ、私の、居住地の隣町は駒沢だ、ここに高射砲陣地があった。幼い頃、側に住んでいたという大槻さんから情報は得ていた。が、彼の小さい頃の記憶で子細は分からない。それでもこのブログでは「駒沢高射砲陣地」のことは話題にしていた。
記述がきっかけを生む、典型例だ、これを長野県在住の内藤さんが検索で引っかけてきた。彼の叔父は駒沢高射砲陣地の中隊長をしていて今も健在だとの知らせ。これを聞いて私は、小海線の奥に住んでいる内藤悌三さんを訪ねた。これによってこの隊の全貌が分かった。その彼も昨年４月に亡くなってしった。歴史証人がつぎつぎに物故していく。
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2019年04月10日
下北沢Ｘ物語(3739）―田中幸子さん追悼:交点文化の残影―
（一）昨日、４月５日に他界した田中幸子さんの弔問に相模原まで行った。彼女は疎開学童、おしゃまな彼女に出会った特攻兵は恋心を持った。希望通り出棺時に長年飾っていた兵の写真は入れられたと聞いた。息子さん夫婦から臨終時の話を聞いた。家族に見守られて彼女は自宅で静かに息を引き取ったという。荼毘に付した７日は良い天気で霊柩車は満開の桜の下を駆けたという、「母は幸せだった」と御子息、「皆さんがいらっしゃるのに今日もいい天気です」、幸いをよろこぶことは母譲りだ、人生の総決算、一人の死は人生を際立たせる。彼女、人と人との輪を繋げて行った人だ、「鉛筆部隊と特攻隊」、この物語の幕開けとなる浅間温泉訪問は彼女の案内によるものだった。これを皮切りとして秘められた近代戦争史が紐解かれた。思うと彼女の存在は大きかった。
橋本駅で待ち合わせたのは山梨からきた矢花克己さん、長野からきたデレクターの河野梨奈さんだ。私は目黒から、田中幸子さん宅訪問は始めてだ。相模原は東京市外、遠いと思っていたら一時間ほどで着いた、いつも行っている下北沢へ行く時間と変わりが無い。折々に伺っていればよかったと思った。
昨日は本当に天気の良い日だった、電車が多摩川を渡るときに富士が見えた。桜は満開で散り始めていた。葬儀は家族葬として行われていた。
彼女と接してもう十年、取材や旅行などで彼女にはとても世話になった。弔問をして線香を上げないことには自分自身のけじめがつかない。矢花さんもそんな思いだった。それで急に弔問が決まった。
田中幸子さんと浅間温泉には何度も行った。私は新宿で「あずさ」に乗る、すると彼女は八王子から乗ってくる。帰りも同じだ、八王子でお別れだ。行きも帰りもよく話をした。矢花さんが甲府から乗ってきた。いつもブドウを買ってきてくれる、それを食べながら左窓に見える甲斐駒を見て粒をほおばる、楽しい一時だった。行をともにした旅の場面がつぎつぎに浮かんでは消えて行く。
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2019年04月08日
下北沢Ｘ物語(3738）―鉛筆部隊田中幸子さんの逝去を悼む―
（一）この間うちから心配していることがあった。田中幸子さんの病状だ、彼女が重い病気を患っていることは本人から知らされていた。危ういと思っていた矢先、昨日矢花克己さんから田中幸子さんの訃報を知らされた。ちょうど「歌劇 鉛筆部隊と特攻隊」の打ち合わせに行こうと北沢タウンホール行きのバスに乗り込もうとしているときだった。彼女との出会いと別れはすべてが奇遇、因縁に満ちていた。「ふしぎね」、彼女の口癖だ、特攻で亡くなった人と鉛筆部隊の学童との悲しい別れ。この発見がきっかけで鉛筆部隊同窓会は自然にできた。これを引っ張っていたのが田中幸子さんだ。彼女は彼らを偲ぶことで命を生かされた。特攻兵へ思いを馳せ、特攻兵の回向に生きた彼女、「ごくろうさま、安らかに、彼らとともに眠ってください」と祈った。
「私は８８歳ではなく８５歳です」
ついこの間、彼女から電話があった。
浅間温泉の関係者から火野葦平が長野に来る、ついては浅間に思い出を持った人に手紙を書いてもらったらどうかという電話があった。田中さんほど浅間に思い入れを持った人は居ない。それで彼女に書いてもらうといいのではないかと彼女に電話をした。が、手紙を書くのも難儀のよう、それで彼女からエピソードを聞き取り、「当人が８８歳の高齢で病弱なので代筆して送ります」とNHKと彼女の自宅に手紙を送った。
「先生、８８歳じゃないの、８５歳なのよ」
田中さんから早速に電話が掛かってきた。その声は若やいでいた。が、肉声を聞いたのはこれが最後だった。
田中幸子さんと出会ったのは何時か？『鉛筆部隊と特攻隊』を取り出してめくる、すると２００８年１２月２７日に会っていた。もうあれから十年が過ぎた。
中目黒GTホールでは鳴瀬速夫さんのハーモニカコンサートが行われた。ここで代沢小の卒業生に出会った。鉛筆部隊に所属していた人たちが大勢いた。
このときに田中幸子さんは彼女自身が疎開先の浅間温泉で接した特攻兵の資料を多く持ってきていた。別の人に渡すつもりだったのを私にくれた。
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2019年04月07日
下北沢Ｘ物語(3737）―ゲリラ的地図配り：鎌倉橋―
（一）春の陽気に誘われて単独で地図配りを行った。行き交う人と地図を通して話をする。これには知的興奮がある、・新情報が得られる。・考えのヒントが掴める。・地域の本質が掴めるなどのことがある。が、もっと深いことを思ったことだ。・人は各自が風景を持って生きていること。・人の多くはまちへの郷愁が強いこと、もう一つ、これは難しい。・文士町居住人に対する地方の関心は極めて希薄であること。昨日、桜の花びらが散り始めた鎌倉橋たもとで深く文化について思索したことだ。ゲリラ的地図配りを思いついたのは気まぐれだ。Facebookに「北沢川文化遺産保存の会」のページがある。紀要第７号を発刊したことから「公的図書館などで寄贈の要望があれば対応したい」と伝えた。するとすぐに一私大図書館から応答があった。これに必要であればバックナンバーも送ると伝えたところ、希望するとのこと。それで早速に保管してある紀要を点検した。ところが紀要２号『北沢の丘の石畳文学論』だけがなかった。事務局にはこれがある。ということで昨日「邪宗門」に取りに出かけた。
先だって３０日、３１日は「焼け残ったまち 戦後アルバム」を配った。このとき多くの人から地図はないのかと問われた。やはりこの方が簡便で見やすいらしい。そこで家に百部程度あったものを持参しこれを配ることにした。
いつも通り坂口安吾文学碑前で活動を開始した。が、反応が鈍い。そこでもう一つの文学碑「三好達治文学顕彰碑」に移動して配布を開始した。こちらは通路が狭い、そのために地図がよ目につく。文学人気は別にして地図がよく出たのは安吾よりも達治だった。
地図を通して他愛ない話をする。
「２６よ」と彼女は言う、碓氷峠のトンネルの数だ。
「そう２６番目に来るともう気持ちがうるうるしてくる。最後のトンネルを抜けた途端浅間山が目に入ってくるんだねぇ、ああ帰ってきた！」
信越本線の昔話、好きな話である。彼女の実家は軽井沢だという。続きを読む
2019年04月06日
下北沢Ｘ物語(3736）―疎開学童資料を読み解く１―
（一）間もなく新元号に変わる、あの戦争の昭和は遠くなって消えていく。中でも疎開のことはまっさきに忘れ去られていく。子どもの多くが親と離れて暮らした、その子たちは日々飢えていた、などという話は、戦争での殺戮の悲惨さよりも下位にくる、人々の記憶に留まることなく疎開の歴史が今急速に消えつつある。が、実態は悲惨だった、性虐待、虐め、暴力など被害者が児童だったゆえに記録されていない。「疎開のことは絶対に思い出したくない」、「受け持ちを殺したいほど憎い」、「空襲にやられた方がましだった」、疎開の実態を訴える声を聞いてきた。終戦から７４年、経験者は年老いて手紙や日記が紙反故として今やどんどんと捨てられつつある。
先だっての「桜祭り」のとき、会員の今井明さんが自宅にあったという疎開時の手紙を持ってきてくれた。お兄さんの孝雄さんのものだ。孝雄さんは代沢国民学校の五年生で浅間温泉の井筒の湯に疎開していた。
まず８月２４日に北沢一丁目から出されたお父さんの葉書だ。
孝雄ちやんおハガキたびたびありがたう。
今日は佐々木さんのしげ子さんからもお手紙をくださいました。今度「あさがや」のおじ様が兵隊さんになつて二十六日に入隊なさいます。
松本城を見学に行つたおしらせのハガキはよく書けて居りました。又はつきりと書いたおたよりをくださいね。書いてから一度よく読みなほしてごらんなさい。何かいるものがあればおくつてあげますよ。
代沢国民学校は昭和１９年８月１２日に学校を出発し、翌１３日に浅間温泉に到着した。ここでは六つの旅館に分宿した。井筒の湯はもっとも大きく、本部がここにあった。
疎開生活が始まって十日ほどしか経っていない。が、もうその間に子どもから複数の手紙が出されている。
六つの旅館のうち千代の湯は柳内達雄先生が受け持ち、手紙や日記を鉛筆でどんどん書けと指導されている。それで鉛筆部隊と名付けられた。が、このことは疎開学童全体への指導であったようで、さっそくに今井孝雄さんも手紙を親に送っている。
親元を離れて寂しかろうということで松本城の見学もあった。しかし、城の上から見えるのは松本駅でここから出ていく汽車を見てみんな泣き出した、「松本城に連れてくるのではなかった」と述懐している先生もいるほどだ。
戦争も末期になって元気な者はたちまちに兵に取られていく。この手紙はその一例だろう。
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2019年04月04日
下北沢Ｘ物語(3735）―戦争伝承「歌物語 鉛筆部隊と特攻隊」―
（一）毎年、戦争経験を聞く会・語る会を開いている。来月５月２０日、第１２回目を開催する。戦争は昭和に起こった、年号は変わり平成となり、また今度は令和となる。昭和は遠くなるばかりで忘れ去られていく。それでも多くの戦争体験者から聞いてきたのは「二度と戦争はするな！」という伝言だ。「天災は忘れたころに来る」、人災としての戦争も同じだ、「戦争は痛みを忘れた頃にまたしでかす」、彼らの伝言は伝えて行かねばならぬ。それで名を変更した「戦争経験を伝承する会」である。が、伝承は至難だ、もう現役が言い継いでいくしかない。歌や劇などだったら誰でもやれる。取り上げるのは地元の話だ、代沢小や東大原小の疎開学童が特攻隊と接触し、悲しい別れがあった。これを劇「歌物語 鉛筆部隊と特攻隊」として伝えようとするものである。
３月２９日、「歌物語 鉛筆部隊と特攻隊」の打ち合わせ会をカトリック世田谷教会で開いた。この催し、昨年９月に実験的に試みた、これには「手作りオペラ」との感想が寄せられた。が、オペラというには芸術系の人がいて用いるべきだと演出の若桑さん、それで「歌劇」と思ったが、落ち着いたのは「歌物語」だ。
芸術家の彼はシビアだ、個々人が努力して演じて見せる劇、対価を取るべきだと。十数年これを行ってきてはいたが入場料を取るという発想はなかった。戦争経験を聞きに来る人からはお金はもらいにくい、考えてもこなかったことだ。
演じ手の意識の問題として、彼はこれを提起している。無料であれば無料の演技をする。が、伝達を高めるには意識も高めねばならない。入場料を取ると聞いたときに気が引き締まったことは確かだ。
「金を取って演じるのなら自分のセリフの主要部分三つは覚えなくてね」
これもきつい言葉だ、セリフは長い、「ちょっとこれは勘弁してもらいたい」と思うが。
入場料の料金については考えた。が、千円は無理だ、それで５００円ということにした。
「無料というと見る方も気楽で気が向いたら来ない、が、５００円でも払えばもったいないと思って人は来る」と横田豊子さん。
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2019年04月03日
下北沢Ｘ物語(3734）―改元騒動と新時代のまち―
（一）改元セレモニーに巻き込まれてしまった。ドキュメンタリー制作者の要望で新しい年号になった瞬間を撮りたいとの申し入れ。それで世田谷カトリック教会で関根英雄神父と一緒にテレビで一部始終を見守った。印象としては国家が仕掛けた壮大なセレモニーを思った。麗々しく式は進行し「令和」が掲げられる、テレビカメラはその瞬間の反応がほしかったのだろうと思うが戸惑いを私は覚えた。
言葉は意味を伝えるもの、「昭和」は和を明るく照らす、「平成」は平和を成すとかの思いが読み取れた、が、「令和」からメッセージは読み取れない。小学生の一人が「平和を命令する」と思ったと。大事なことは子どもが理解できることだ。彼の理解は的を射ている、漢文では「令」は頻繁に出てくる。ほとんどが使役の助動詞だ、「さす、しむ」などだ。報道では「国書」万葉集典拠をしきりと述べ、「令和」の意味することを伝えている、「日本人が希望の花を開かせる」とかの意訳だ、が、この二字の意味は曖昧模糊としている。新元号を「令」（よし）とするのもいいが、違った見方をすることも大事だ、民主主義の根幹だ。
新元号になって時代は変わっていく。
「この間、代沢小の安吾文学碑前で地図配りをしました。多くの人と話しましたが、時代の閉塞を感じました。世の中今は、金銭優先で回っているでしょう、そういう時流に乗り遅れてドロップアウトしている人が多くなっているように感じました。引きこもりが増えているのを感じました。少子化といいますが家庭を持って子を育てていくというのが困難になっていますね、結婚しようにもできない……格差の広がりが大きくなっていますね」
「そう若者など精神的に病んで居る人が多くなっていますね。その救済が必要です……」
神父さんも言われる。
テレビ撮影が終わると昼食時になった。神父さんが教会近くの店に案内してくれた。
「シモキタも前と比べるとだいぶ人が減ってきましたね、前はもっと凄かったですよ」
女店主。彼女こう続ける
「お店が定着しないというのはありますね、できたかと思うと閉めちゃうということはあります」
今度はまち論だ。まちが活気を失いつつあると聞いた。
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2019年04月01日
下北沢Ｘ物語(3733）―桜祭り地図配り晴れ舞台―
（一）桜満開、恒例地図配りはドラマだ。まず一つ、９３歳の加賀さん、緑道の三好達治文学顕彰碑を通り掛かった、碑を占拠しての酒宴に「車椅子に乗った加賀さん、烈火のごとく怒ったのです、『お前達公徳心はないのか！』とね、もう怖くなって私は先に来てしまいました」と邪宗門のマスター作道さん。つぎ、やっと人前に出て来た女性、「地図配りデビューをしたら」と私、意を決した彼女おずおずと地図を手に取る、と彼女から地図を受け取った人がいた。笑顔がこぼれてデビュー完了、もう一つ、「桜を見に来たのではありません、フェイスブックで告知を見て資料をもらいにきたのです」と。そして、最後、「いつも地図をもらいにくるのが楽しみでね」という人もいた、嬉しい一言だった。
恒例の地図配りである、が、机椅子の運搬、飾り付けなど、人が居ないと活動はできない。何時も椅子を借りている代沢小は移転してない。学校から永久貸与された椅子・机は信濃屋に預けてある、これを運ぶことが難儀だ、しかし、邪宗門の作道敬子さん、すべての段取りを考えてくれた。ご主人に椅子を車で運んでもらい、若手の常連には机を運んでもらった。会の仲間も大勢来てくれて、舞台はできあがった。
時間にはハレとケとがある。地図配りは晴れ舞台である。「桜祭り」に加わっての活動だ。もう十年以上行っている。今回気づいたのは場がハレの舞台であることだ。
日頃の調査活動は地図や紀要などにまとめられている。それらは成果品だ、これらを提示して我らの活動を人々に伝える。
我らの会の会員はみな説明役にまわる。町の歴史を、土地の文化を、そのときのみんなの顔は楽しそうだ。
今回、ふと思いついた、「ダイダラボッチってなに？」という看板を作ってもらった。これに反応する人が多く出て来た。大人や子どもなどだ、これを積極的に説明していたのが作道敬子さんだ。
我らの会は、ダイダラボッチ伝道師の集まりだ、自身でも小学生や中学生、そして高校生に「ダイダラボッチ」とは何かを説明した。
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