2011年12月02日
下北沢Ｘ新聞(1968) 〜2011年エピソード総集編〜
2011年の暮れに突入した。このところ、行事がつぎつぎと重なって、その折々に見聞したことが充分にまとめることができなくなっている。未整理のまま発信して、中途半端に終わってしまうことが多かった。
とくには、萩原朔太郎展の余波が大きかった。これに関した文学散歩が四回ほどあって、およそ百名ほどを案内した。途中途中に出会った逸話もあったのだが、つぎつぎにめくられる時間に追いつかず、言葉が息切れしてしまった。
自身の頭の中では文学と戦争とがごっちゃになっている。日々、文学の下北沢から戦争の松本陸軍飛行場へとイマジネーションの往復旅行をしている。大混乱。
〇「青猫」から「黒猫ジュリエット」
十一月十五日に「幻影の下北沢『猫町』を歩く」を実施した。三十七名ほどだった。多くが女性だった。自身の認識では、朔太郎を好む人は男性の方が多いのではという先入観を持っていた。
散歩を終えて、代田「邪宗門」に着いて、話していて気づいたのは森茉莉が好きという人が多かったことだ。一人若い女性が参加していて、「若い朔太郎ファンもいるんだ」と思っていたら、その人も、聞いてみると熱烈な森茉莉ファンだった。
このタイトル、朔太郎から茉莉へという意味でつけただけに過ぎない。文学散歩は「邪宗門」でお茶飲んでお開きだったが、誰言うともなく森茉莉旧居に行きたいという話になって、毒を喰らわば、茉莉までもということなった。薄暗い中、二十数名参加しての、文学散歩の二次会となってしまった。
「森茉莉が古いセーターを棄てたという川はそのあたりですよ」
件の若い女性、「せせらぎ公園」の川の流れにしばし魅入っていた。下水処理水だということを言うのはためらわれて、それは黙っていた。
〇尾山篤二郎の孫弟子
この日の文学散歩のとき、野屋敷一本松公園で話をした。３７名での下北沢文学散歩というのは無理である。これだけの人数を留めておける場所がない。が、唯一、ここは大勢を入れられる場所だ。
この公園の南手を「庚申通り」が東へと通っている。下っていく向こうには沢がのぞきみえる。つまりは、高須光治描いた「下北沢風景」の一角である。
絵の複写を見せながら、この絵の中に越して来たのが萩原朔太郎だと説明した。年譜には、「昭和６年（１９３１）７月（推定）この頃府下世田谷町東北澤に移る。」とある。東北沢という地名はない、駅はある。駅だとすれば絵の中に来たということだ。その駅一帯の風光を描いたのが絵であるからだ。
「岸田劉生の弟子筋の高須光治が絵を描いた家には、歌人の尾山篤二郎が移ってきます。今度の世田谷文学館の展示にもありましたね。萩原朔太郎、北原白秋、尾山篤二郎が写っている写真が、この尾山篤二郎さんは、渋い歌人ですよね。ご存じのかたおられますか？」
一人の女性が手を上げた。
「わたしは、ずっと、尾山篤二郎さんの北沢の旧番地を探していたんですよ。あちこちにいって調べたのですけどね、わからなかったんですよ。それが今日分かるなんて感動ですね。」
北沢に住んでいて、尾山篤二郎という歌人を調べていた。そのことがわかってこちらもびっくりした。旧番地情報での調べは困難を極める。それはよく知っている。北沢五丁目六八四番地はわたしも長い間分からなかった。
体験上分かってきたのは、当人が住んでいたことを知っている人の情報が一番だと言うことだ。ここが分かったのは北沢小同窓会の人々のおかげである。同窓生ネットワークで、たちどころにここは見つかった。
画家は窓から見える下北沢風景を描いた。歌人は、同じ二階の窓から見える風景を三十一文字で描いていた。「北沢草堂」と称していた。これがすべてわかるまでは、本当に、われらにとっては、北沢騒動であった。その余韻がいまだに尾を引いている。
この日の文学散歩のとき、野屋敷一本松公園で話をした。３７名での下北沢文学散歩というのは無理である。これだけの人数を留めておける場所がない。が、唯一、ここは大勢を入れられる場所だ。
この公園の南手を「庚申通り」が東へと通っている。下っていく向こうには沢がのぞきみえる。つまりは、高須光治描いた「下北沢風景」の一角である。
絵の複写を見せながら、この絵の中に越して来たのが萩原朔太郎だと説明した。年譜には、「昭和６年（１９３１）７月（推定）この頃府下世田谷町東北澤に移る。」とある。東北沢という地名はない、駅はある。駅だとすれば絵の中に来たということだ。その駅一帯の風光を描いたのが絵であるからだ。
「岸田劉生の弟子筋の高須光治が絵を描いた家には、歌人の尾山篤二郎が移ってきます。今度の世田谷文学館の展示にもありましたね。萩原朔太郎、北原白秋、尾山篤二郎が写っている写真が、この尾山篤二郎さんは、渋い歌人ですよね。ご存じのかたおられますか？」
一人の女性が手を上げた。
「わたしは、ずっと、尾山篤二郎さんの北沢の旧番地を探していたんですよ。あちこちにいって調べたのですけどね、わからなかったんですよ。それが今日分かるなんて感動ですね。」
北沢に住んでいて、尾山篤二郎という歌人を調べていた。そのことがわかってこちらもびっくりした。旧番地情報での調べは困難を極める。それはよく知っている。北沢五丁目六八四番地はわたしも長い間分からなかった。
体験上分かってきたのは、当人が住んでいたことを知っている人の情報が一番だと言うことだ。ここが分かったのは北沢小同窓会の人々のおかげである。同窓生ネットワークで、たちどころにここは見つかった。
画家は窓から見える下北沢風景を描いた。歌人は、同じ二階の窓から見える風景を三十一文字で描いていた。「北沢草堂」と称していた。これがすべてわかるまでは、本当に、われらにとっては、北沢騒動であった。その余韻がいまだに尾を引いている。
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この記事へのコメント
3. Posted by Ｓ．Ｏ 2011年12月03日 10:41
前にお話しましたが、石川湯さんも山ノ湯さんも昭和２年開業です。山ノ湯さんは先代が、同じ故郷新潟の方から、譲り受けたとのことです。
2. Posted by きむらけん 2011年12月03日 08:52
［東北沢の銭湯］
これは前から気になっているところです。駅の南側だとすると、「山ノ湯」が一番だと思います。いつもこの銭湯をイメージして考えていました。
石川湯というのもありますが、「下北沢風景」にはいっているんですが、建物はありません。
「自伝 安藤昇」というのがあります。戦後の話です。
私は小田急線の東北沢駅近くにある野田のアパートに転がり込んだのである。
朝起きると、下北沢の外食券食堂まで、野田と歩いて食べに行った。
東北沢では確か妹と二人で住んでいるはずです。二人も連れだって一番街の食堂に食べに行ったのかなあ。その帰りに不動産の広告に、下北沢野屋敷、二階建て空き屋というのを見つけたのかなあなどと物語を想像します。
これは前から気になっているところです。駅の南側だとすると、「山ノ湯」が一番だと思います。いつもこの銭湯をイメージして考えていました。
石川湯というのもありますが、「下北沢風景」にはいっているんですが、建物はありません。
「自伝 安藤昇」というのがあります。戦後の話です。
私は小田急線の東北沢駅近くにある野田のアパートに転がり込んだのである。
朝起きると、下北沢の外食券食堂まで、野田と歩いて食べに行った。
東北沢では確か妹と二人で住んでいるはずです。二人も連れだって一番街の食堂に食べに行ったのかなあ。その帰りに不動産の広告に、下北沢野屋敷、二階建て空き屋というのを見つけたのかなあなどと物語を想像します。
1. Posted by 出穂山住人 2011年12月03日 08:24
＞年譜には、「昭和６年（１９３１）７月（推定）
＞この頃府下世田谷町東北澤に移る。」とある。東北沢という地名はない、
『父・萩原朔太郎』：萩原葉子著作・折にふれての思い出（二）より、
父は祖父の亡くなった翌年の夏に、しばらくの間祖母に私たちをあずけて、東北沢に叔母と住んだのだった。
そして夏休みに私が遊びに行った時のことだった。私は銭湯が何より嫌いで、叔母が入る間じゅういつも暑い外で待っていたのだが、ある時、父と一緒に男湯に入った。・・・・・
銭湯が何処だかわかると、場所が判別するのですが。
＞この頃府下世田谷町東北澤に移る。」とある。東北沢という地名はない、
『父・萩原朔太郎』：萩原葉子著作・折にふれての思い出（二）より、
父は祖父の亡くなった翌年の夏に、しばらくの間祖母に私たちをあずけて、東北沢に叔母と住んだのだった。
そして夏休みに私が遊びに行った時のことだった。私は銭湯が何より嫌いで、叔母が入る間じゅういつも暑い外で待っていたのだが、ある時、父と一緒に男湯に入った。・・・・・
銭湯が何処だかわかると、場所が判別するのですが。
