2011年12月04日
下北沢Ｘ新聞(1969) 〜2011年エピソード総集編２〜
（一）
文化とは、ためである。淀みであり、屈曲である。急流にながされてきた魚が、遮二無二働かされてきた人が、憩う場である。寄り掛かれる石、座れる椅子、そこに集って、なんやかんやと言って話を交わす。そうそうと相づちを打ったり、違う違うと言い合ったり、その間に、自分たちが作ってきたものを食べる。それは心地良い時間である。
及川園子さんのすいとん、作道慶子さん手作りの森茉莉レシピのデザートが出た。参加者が何かを持ってくる。その珍品が話題の種ともなる。
昨日、わたしたち、「北沢川文化遺産保存の会」は、北沢タウンホールで、年忘れ会を行った。食って、飲んで、しゃべった。
「五月に、海軍第十四期飛行予備学生の話を聴くというのをしましたね。あれは非常に興味深いものがありました。一人がおっしゃっていましたね。上官が手相を見て、生命線の強い人を特攻に選ぶ、飛行機という国家の財産を預けるわけだから、成功の確率が高い人を選ぶ、なんかあれはこうショックでしたね」
わたしらの会の若手女子の一人がそのようなことを発言していた。
「なんか今年は、下北沢を離れて、あちこちとそれぞれの地の文化を見てきましたが、成果の一つは、あっちとこっちとを比較してみることができたという点ですね。ここの一帯に眠っている文化、うち捨てられた文化の層の厚さというのがよけいにわかったという点はあります。」
これは自分で言っていた。とくには成城の北原白秋を居住痕跡を求めていったときに、下北沢とくらべると明るい、ほとんど迷わない、道がまっすぐなどということをつぶさに観察できた。
鉄道交点の、ため、迷路的、窮屈さ、どぶくささ、そういう溜にこそクリエーティブなものが宿ると思いもした。
（二）
「何か時代というものが現場にいて大きく変わったという気がします。これからは文化的なものが大事にされますね。それを大事にしなくてはならない時代になったように思います。財政的な余裕はないですよね。豊かさを補うには、人の心方面しかない……それともう一つ大事なことは、継承ですね。ここの会がやっていることは、確かに大事だし、大切なことなんですよ。だけど誰か一人の人がいるだけでそれが持っているというのは、継承に繋がらないですねよね。支える体制をどうつくるかではないでしょうか？」
わたしたちの会は、誰も公人として参加していない。個人として参加している。そう発言した人は、行政側の人だ。が、そういう人が参加してフリーに議論をしている。
参加した人、二十二人の皆が、しゃべった。人々の心の奥底には、あの東日本大震災が潜んでいた。忽然と大災害が起こって、ある日、人間は、いともあっさりと死んでしまう。そのことをつぶさに経験したり、また、テレビ視聴したりしている。
想像を絶する大津波が押し寄せてきて、町を、人を、すべてをがっぷりと呑み込んでしまう。そして、また、あの原発過酷事故だ。見えない放射能に怯えている。これは今もかわりがない。
「思うにね、町っていうのは、汚いところだったんですよ。表があれば、裏もある、そのところは臭かったり、汚かったり、空気が淀んでいたりしていたんですよ。ところが、いまはそいう裏まで綺麗にしてしまっている。」
メモをとっているわけではない。が、発言した人はそんな話をしていた。町の文化の本質である。汚いためこそが手がかりだったように思う。
（三）
近代化がどんどん進行し、便利にはなっていく。が、機械や設備は最新式になっていくが、人はそれらに置いて行かれてはいないか。
「みなさん、これ以上、便利になる必要ってあるんですか」
酔っ払って、わたしは、誰かに言ったように思う。扉の前に立てばドアが開く。階段は上らなくてエスカレーターがある。人はドアに手を掛けたり、足を持ち上げたりしなくてもよくなった。動かなくなり、考えなくてもよいようにしている。
どこか世の中、何かがおかしい。変だ。一つ一つの事象を、立ち止まって考えないといけない。そんな時代になってきた。（「下北沢猫町弁当」信濃屋特製）
〇２０１１年 北沢川文化遺産保存の会 年忘れ会 １２月３日
今年の会の活動の報告
１、東日本大震災への義援金を集めた。６３，７８７円が集まった。世田谷区の窓口に寄託した。
２．世田谷文学館で「萩原朔太郎展」が開かれ、これ関連の文学散歩を四回に亘って行い、約１００名の参加者を案内した。
３．今年は、他団体からの文学散歩申し入れが計七回あった。とくには、都外山梨県からバスを仕立ててこられて、「下北沢文士町」を愉しまれたというのは特筆に値する。問題はガイドが不足していることで大きな課題だ。
４．「北沢川文学の小路」についてのプレゼンを区に行った。みずとみどりの部長、教育委員会、都市計画課、文化部の課長さんが出席された。全体での支援は難しそうだ。が、小路沿い看板を建てたり、文学碑を建てたりすることについては、前向きに検討したいということだった。この六日には文化部に行くことにしている。
５．日本水大賞に応募した。各賞の一つ５０万でももらえれば文学碑を建てたい。
６．鉛筆部隊と特別攻撃隊〜あの歌が、言葉が、約束が、今も忘れられない〜
来年五月に公刊化される。 約四百枚の大作となった。「北沢川文化遺産保存の会」の発足についてや、活動内容についてもだいぶ触れた。
７．今年、墓巡り部が発足し、第一回雑司ヶ谷、第二回、来年四月に染井に行く。
８．会報「特攻」平成２３年１１月、第８９号に「海軍第１４期飛行予備学生に聴く〜聞いておこう薄れゆく戦争の記憶〜会の相談役である廣島文武氏が、今年五月に行われた当会主催の会の報告をされた。
「何か時代というものが現場にいて大きく変わったという気がします。これからは文化的なものが大事にされますね。それを大事にしなくてはならない時代になったように思います。財政的な余裕はないですよね。豊かさを補うには、人の心方面しかない……それともう一つ大事なことは、継承ですね。ここの会がやっていることは、確かに大事だし、大切なことなんですよ。だけど誰か一人の人がいるだけでそれが持っているというのは、継承に繋がらないですねよね。支える体制をどうつくるかではないでしょうか？」
わたしたちの会は、誰も公人として参加していない。個人として参加している。そう発言した人は、行政側の人だ。が、そういう人が参加してフリーに議論をしている。
参加した人、二十二人の皆が、しゃべった。人々の心の奥底には、あの東日本大震災が潜んでいた。忽然と大災害が起こって、ある日、人間は、いともあっさりと死んでしまう。そのことをつぶさに経験したり、また、テレビ視聴したりしている。
想像を絶する大津波が押し寄せてきて、町を、人を、すべてをがっぷりと呑み込んでしまう。そして、また、あの原発過酷事故だ。見えない放射能に怯えている。これは今もかわりがない。
「思うにね、町っていうのは、汚いところだったんですよ。表があれば、裏もある、そのところは臭かったり、汚かったり、空気が淀んでいたりしていたんですよ。ところが、いまはそいう裏まで綺麗にしてしまっている。」
メモをとっているわけではない。が、発言した人はそんな話をしていた。町の文化の本質である。汚いためこそが手がかりだったように思う。
（三）
近代化がどんどん進行し、便利にはなっていく。が、機械や設備は最新式になっていくが、人はそれらに置いて行かれてはいないか。
「みなさん、これ以上、便利になる必要ってあるんですか」
酔っ払って、わたしは、誰かに言ったように思う。扉の前に立てばドアが開く。階段は上らなくてエスカレーターがある。人はドアに手を掛けたり、足を持ち上げたりしなくてもよくなった。動かなくなり、考えなくてもよいようにしている。
どこか世の中、何かがおかしい。変だ。一つ一つの事象を、立ち止まって考えないといけない。そんな時代になってきた。（「下北沢猫町弁当」信濃屋特製）
〇２０１１年 北沢川文化遺産保存の会 年忘れ会 １２月３日
今年の会の活動の報告
１、東日本大震災への義援金を集めた。６３，７８７円が集まった。世田谷区の窓口に寄託した。
２．世田谷文学館で「萩原朔太郎展」が開かれ、これ関連の文学散歩を四回に亘って行い、約１００名の参加者を案内した。
３．今年は、他団体からの文学散歩申し入れが計七回あった。とくには、都外山梨県からバスを仕立ててこられて、「下北沢文士町」を愉しまれたというのは特筆に値する。問題はガイドが不足していることで大きな課題だ。
４．「北沢川文学の小路」についてのプレゼンを区に行った。みずとみどりの部長、教育委員会、都市計画課、文化部の課長さんが出席された。全体での支援は難しそうだ。が、小路沿い看板を建てたり、文学碑を建てたりすることについては、前向きに検討したいということだった。この六日には文化部に行くことにしている。
５．日本水大賞に応募した。各賞の一つ５０万でももらえれば文学碑を建てたい。
６．鉛筆部隊と特別攻撃隊〜あの歌が、言葉が、約束が、今も忘れられない〜
来年五月に公刊化される。 約四百枚の大作となった。「北沢川文化遺産保存の会」の発足についてや、活動内容についてもだいぶ触れた。
７．今年、墓巡り部が発足し、第一回雑司ヶ谷、第二回、来年四月に染井に行く。
８．会報「特攻」平成２３年１１月、第８９号に「海軍第１４期飛行予備学生に聴く〜聞いておこう薄れゆく戦争の記憶〜会の相談役である廣島文武氏が、今年五月に行われた当会主催の会の報告をされた。
