2011年12月20日
下北沢Ｘ新聞(1980) 〜代田半島地形学入門２〜
（一）
「きむらさんの説明を聞いていると、風景というのは頭の中にイメージされているものでそれがどんどん動いているように思うのです」
歩きに参加した上田暁さんがそのような感想を述べておられた。個々の風景だけを見て終わりというのではなく、その裏の背景に潜むものを考えることが楽しい。
まずは駅の側の大原稲荷に向かう。ここは代田村字大原で、かつては代田村村域だった。代田八幡神社の分社だが、ここでは京都伏見稲荷を勧進し建立した。本社は戦の神様の応神天皇を祀ったが、ここでは、倉稲魂命を祀って稲荷社とした。天明二年(1782)のことである。農業の神様である。これも地形交通に関係する。江戸の人口が増えて、近郊農業が盛んになった。
もともとは畑作が中心だった、陸稲、大麦、小麦などが主生産品だったが、江戸の台所の材料を扱うことによって野菜、蔬菜などに変わった。つつがなく作物が採れますようにと建立したのだろう。
つぎには、甲州街道の代田橋跡に行った。
「ここのところは地形上おもしろいところです。腰をかがめてみるとよく分かります。道のところにうっすらと尾根筋道が見えています。玉川上水はここでわれわれがいる方の南側に流れを変えるわけですね。すると間にある道とぶつかる。それでここに代田橋を架けたのですね。伝説として、この橋を架けたのは『ダイダラボッチ』と言われている。が、たかだか数十メートルの橋を架けたに過ぎない。柳田国男は『巨人の偉績としては甚だ振はぬ』といっていますが、せこい、みみっちいものです」
江戸期の承応３年(1654)に通水しているが伝説の根源はそんな程度で終わるものではない。民俗学者は遙かな太古を想像しているゆえにこの伝説は買わなかった。
（二）
わたしたちは、開渠となっている玉川上水の跡を辿った。京王線と十字クロスで交差する。玉川上水は尾根を求めての苦難、苦行だったようだ。羽村から四ッ谷までの標高差は１００メートルだったという。台地上の尾根をひたすら探し回って、杭を打っていった。水準測量は原始的だ。近いところは人夫に線香を、遠いところは提灯を持たせて測ったという。が、か細い光が、花のお江戸の水を支える礎になっていた。
あの和田堀給水所は、近代のものですね。高さが約６０メートルですね。水をくみ上げてここから流せば、丸ビルの上まで届くという話でした。
「東京行進曲にありましたね。『恋の丸ビル あの窓あたり 泣いて文書く 人もある』……
和田堀給水所から流れてきた水で墨をこすって手紙を書いたのだろうか？。
（三）
羽根木に入った。世田谷の飛び地だ。他の地名は、土地の形状を表しているが、この地名はよくわからない。
「代田半島地形学入門は、字名を巡る旅で、この字名で大体見当がつきます。上手は、荻久保、荻の生えた湿地帯。つぎが大原。これで台地の構造が推測できますね。北は土地が凹んでいて荻、登って大原、そして中原、すこし下って吹上げ、砂利場、地名だけを辿ると半島の様子が見えてきます。」
羽根木はよく分からない。「羽根」は「埴」ではないかと「埴木」、赤土に樹木が生い茂っている。半島西のり面でよく樹木が繁茂したのだろうか。（代田教会で平野牧師の話を聞く）
わたしたちは、開渠となっている玉川上水の跡を辿った。京王線と十字クロスで交差する。玉川上水は尾根を求めての苦難、苦行だったようだ。羽村から四ッ谷までの標高差は１００メートルだったという。台地上の尾根をひたすら探し回って、杭を打っていった。水準測量は原始的だ。近いところは人夫に線香を、遠いところは提灯を持たせて測ったという。が、か細い光が、花のお江戸の水を支える礎になっていた。
あの和田堀給水所は、近代のものですね。高さが約６０メートルですね。水をくみ上げてここから流せば、丸ビルの上まで届くという話でした。
「東京行進曲にありましたね。『恋の丸ビル あの窓あたり 泣いて文書く 人もある』……
和田堀給水所から流れてきた水で墨をこすって手紙を書いたのだろうか？。
（三）
羽根木に入った。世田谷の飛び地だ。他の地名は、土地の形状を表しているが、この地名はよくわからない。
「代田半島地形学入門は、字名を巡る旅で、この字名で大体見当がつきます。上手は、荻久保、荻の生えた湿地帯。つぎが大原。これで台地の構造が推測できますね。北は土地が凹んでいて荻、登って大原、そして中原、すこし下って吹上げ、砂利場、地名だけを辿ると半島の様子が見えてきます。」
羽根木はよく分からない。「羽根」は「埴」ではないかと「埴木」、赤土に樹木が生い茂っている。半島西のり面でよく樹木が繁茂したのだろうか。（代田教会で平野牧師の話を聞く）
