2011年12月22日
下北沢Ｘ新聞(1981) 〜代田半島地形学入門３〜
（一）
「先日の代田半島地形学、どこまでが本当のお話で、どこからが小説の中のお話で・・・と、空間と時間をめぐりながら実際の３�勸幣紊領垢鬚靴燭茲Δ糞な�で、とても楽しませていただきました。」
取材で同行された区の担当の方からメールをいただいた。確かにそうだ。自身では説明しながら地形物語世界に入り込んでいた。
が、思うに、代田にはすばらしいと思えるほどに物語が潜んでいる。あっちにもこっちにもある。きりがない。代田橋駅近くの表札だけの「御下宿 代田荘」なども物語の宝庫だ。想像を刺激する。へんてこなやつの一人や二人は住んでいたはずだ。
この「代田半島地形学の入門」のあった翌日、元鉛筆部隊の鳴瀬速夫さんの、クリスマス恒例のコンサートがあった。場所は代田五丁目にある東京都民教会だ。もっともこちらは一本筋が違って東隣の下北沢半島になる。
「場所は、七島学生寮跡がいいんですけどね…」
亀田牧師が言われた。
「ど、どうしてそれを知っておられるのですか？」
驚きだった。これはとおに廃止された寮だ。この名が記された古びた表札にはべったりとガムテープが貼られている。こっそりと剥がしてこの名前を見て、へぇっと思った。
「老若男女が集えるスペースを探しておられるんですよ。」
一人の方を紹介してくださった。名刺には企画音楽プロデューサーとあった。教会の音楽担当もされている。ボランティアの活動の拠点となる地を探しておられるとのこと。が、それにしてもこの名前を知っておられることには驚いた。
「七島学生寮」は、かつてのマモリヤマ公園の跡に建った寮である。ネットで検索するとあらましが分かる。平成１６年３月３１日で廃止された。「七島学生寮は、村外の学校等に進学する際の宿舎として、伊豆・小笠原諸島の９町村が共同で設置、運営している学生寮です。」とある。
日焼け、潮焼けした若者が「東京の夏は油っこい暑さだな」などと言いながら下北沢へと向かう急坂を上っていったのではないか。
（二）
代田半島羽根木岬の自然を映像によく残しているのは「牛乳屋フランキー」である。ホームレス同然の当地にある掘っ立て小屋にフランキー堺が牛乳を届けに行く場面が出てくる。
つぎの場面が高級アパート「秀峰荘」だ。代田近辺でのロケのようだ。そのボロアパート１５号室には、「映画助監督 松原善吉」という表札がかっている。届けようとするところにガチンコとメガホンを抱えた助監督がやってくる。代田二丁目のドクトルチエコの実際の家がでてきたりもする。この辺り都会縁辺の代田が見事に描かれている。
荘のつくアパートは軒並みごっそりとなくなった。木造アパートまでビラ、メゾンがつく今日である。が、面白いことを知った。「木暮荘物語」だ。この小説現代作家三浦しおん作によるものだ。ＢＯＯＫデーターベースによるとこうある。
小田急線・世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年。空き室あります!安譜請ですが、人肌のぬくもりと、心地よいつながりがあるアパートです。うまい、深い、面白い。三拍子揃った会心作。
この舞台設定が見事だ。世田谷代田にはなんでもある。徒歩五分というのがまたよい。一帯は丘上は邸宅だ。駅から五分で安普請というのは駒沢線が想定できなくもない。このローカルポジションは都会のエッジを見事に衝いている。
「下北沢と代田」〜現代文学の舞台としての比較文学〜というテーマは面白そうだ。
（三）
われらは代田半島尾根筋をゆき、帝都線切り通し、宇田雫雨旧邸柿緑園、世田谷代田２号踏切跡、代田八幡宮と辿った。そして、代田教会へ行って平野牧師からお話を伺った。
昭和６年(1931)に現在の世田谷代田の地に伝道を開始したという。この地一帯には数多くの教会があるが、草分的な教会である。小田急線との関連を質問すると、信者は分け隔てなく受け入れているが、背景には「世田谷知性」を対象とした点はあると言われた。やはり小田急の開通が大きいように思われる。
代田半島先端にある教会は下から入って上に抜けた。すると円乗院裏手に出て、富士を遠望したことだ。この半島からは大きく見える。このこととダイダラボッチというのはイマジネーションを喚起するという意味では無関係ではない。
最後は、代田の丘の６１号鉄塔を眺め遣って鑑賞して旅を終わった。坂を下ったところで、最初に出した課題を聞いてみた。「代田半島はどんな形をしていましたか？」、二名の方が答えた。
わたしは、代田半島が浮き上がった地図を提示した。「たとえてみると、これは、巨人のどた靴、しかも、右足ですよね。」と。みな地形の迷路物語に声を上げていた。（了）
〇写真は、円乗院裏手からの富士遠望だ。今回、地元に詳しい谷亀さんがお父さんの不幸に遭遇して参加されなかった。最後の代田八幡では、少し説明をしてもらった。「代田半島地形学入門」は面白い。谷亀さんに来年もやりましょうと言った。彼は、「生きていればね」と言った。生きていよう。
代田半島羽根木岬の自然を映像によく残しているのは「牛乳屋フランキー」である。ホームレス同然の当地にある掘っ立て小屋にフランキー堺が牛乳を届けに行く場面が出てくる。
つぎの場面が高級アパート「秀峰荘」だ。代田近辺でのロケのようだ。そのボロアパート１５号室には、「映画助監督 松原善吉」という表札がかっている。届けようとするところにガチンコとメガホンを抱えた助監督がやってくる。代田二丁目のドクトルチエコの実際の家がでてきたりもする。この辺り都会縁辺の代田が見事に描かれている。
荘のつくアパートは軒並みごっそりとなくなった。木造アパートまでビラ、メゾンがつく今日である。が、面白いことを知った。「木暮荘物語」だ。この小説現代作家三浦しおん作によるものだ。ＢＯＯＫデーターベースによるとこうある。
小田急線・世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年。空き室あります!安譜請ですが、人肌のぬくもりと、心地よいつながりがあるアパートです。うまい、深い、面白い。三拍子揃った会心作。
この舞台設定が見事だ。世田谷代田にはなんでもある。徒歩五分というのがまたよい。一帯は丘上は邸宅だ。駅から五分で安普請というのは駒沢線が想定できなくもない。このローカルポジションは都会のエッジを見事に衝いている。
「下北沢と代田」〜現代文学の舞台としての比較文学〜というテーマは面白そうだ。
（三）
われらは代田半島尾根筋をゆき、帝都線切り通し、宇田雫雨旧邸柿緑園、世田谷代田２号踏切跡、代田八幡宮と辿った。そして、代田教会へ行って平野牧師からお話を伺った。
昭和６年(1931)に現在の世田谷代田の地に伝道を開始したという。この地一帯には数多くの教会があるが、草分的な教会である。小田急線との関連を質問すると、信者は分け隔てなく受け入れているが、背景には「世田谷知性」を対象とした点はあると言われた。やはり小田急の開通が大きいように思われる。
代田半島先端にある教会は下から入って上に抜けた。すると円乗院裏手に出て、富士を遠望したことだ。この半島からは大きく見える。このこととダイダラボッチというのはイマジネーションを喚起するという意味では無関係ではない。
最後は、代田の丘の６１号鉄塔を眺め遣って鑑賞して旅を終わった。坂を下ったところで、最初に出した課題を聞いてみた。「代田半島はどんな形をしていましたか？」、二名の方が答えた。
わたしは、代田半島が浮き上がった地図を提示した。「たとえてみると、これは、巨人のどた靴、しかも、右足ですよね。」と。みな地形の迷路物語に声を上げていた。（了）
〇写真は、円乗院裏手からの富士遠望だ。今回、地元に詳しい谷亀さんがお父さんの不幸に遭遇して参加されなかった。最後の代田八幡では、少し説明をしてもらった。「代田半島地形学入門」は面白い。谷亀さんに来年もやりましょうと言った。彼は、「生きていればね」と言った。生きていよう。
