2011年12月29日
下北沢Ｘ新聞(1986) 〜下北沢の芸術文化と疎開学童５〜
（一）
昨日は、荏原徒歩巡行で西南部を歩いた。この途中で気づいたのは池上線は久が原半島の裂け目を走っていたことだ。歩きながらこの意味を考えていて、思いついたのは、呑川左岸崖線を乗り越えるための一手法ではなかったか？ということだ。回り込んで高度を稼ぎ、右岸最高部に達したところで真っ正面から左岸に挑んだ。それが石川台の大切り通しではないかと。創成期の鉄道敷設は地形とのにらめっこだった。
帰途、池上からは東急線で帰った。旗の台、大岡山、自由が丘、いずれも鉄道交点だ。形状もＸ形である。鉄道が交わるところには他とは違う文化がある。
「自由が丘も色んな人が系統的な関係で住んでいると思うのですが、調べられないのですか？」
先月、「幻影の下北沢『猫町』小路を歩く」を二回実施した。後の方に出席していた一言庸夫さんから質問された。自由が丘の側の緑が丘に彼は住んでいた。
「自身の家は自由が丘鉄道交点域内ですけど、ほとんど興味ないですね」
耕せば文化が眠っている、ところが魅力を感じない。東急線の交点全般について言える。
「京王さんの方は協力してくれると言っておられるんですか？」
小田急電鉄広報部に「下北沢Ｘ惜別物語」を書くに当たって協力を申し入れたことがある。そのときの担当から質問をされた。ここの部分は大事だ。一方の私鉄は、もう一方の私鉄の動向が気にかかる。
鉄道交点がどこにあるか、地理的な場所も関係はする。が、異なった色合いの線が交差するところに濃厚な文化が生まれる。下北沢鉄道交点の面白さはここにある。
文化が醸成されてきた地に、戦後になって演劇文化が勃興する。疎開地でさんざん演芸会の催しを体験してきた子どもが関係してくる。
（二）
「その時代に芝居を見せようというのはどういうことでそういうことになったのですか」
「小さな旅」、「青春の杜 わたしの舞台を求めて〜東京・下北沢〜」では、アナウンサーが質問をする。
「食べることだけではないということですね。やっぱり文化的な飢えというんですか、そういう子どもの専門の本もなかったですからね。やっぱりそれを補うものとして舞台をやってもらう。子どもが舞台に出てやることは、子どもを解放したり、表現力をつけるのにいい効果がある。それを知りまして、児童演劇をやっていくということはなかなか意義のあることじゃないかなと思い始めたのですね」
劇団の主宰者多田徹さんが答えた。
調べると、この劇作家は、「2011年5月18日、死去。83歳だった。」とネットにはあった。
疎開から帰って来たこどもたちは、「文化的な飢え」を持っていた。疎開地ではさんざんに楽しんだ。人の目を意識して演ずることの面白さを味わっていた学童も少なからずいた。鉄道交点にはそういう需要があったと言っていい。
戦後、交点一帯には出版文化が勃興した。根底的には演劇文化と通ずるものがある。
（三）
ナレーションは続く。
風の子は昭和二十六年から公演を行うようになりました。北海道から九州まで、自分の力で未来を切り開くことの大切さを子どもたちに伝えました。芝居では子どもたちの友情で差別を乗り越えていく物語や炭鉱で強く生きる子どもたちを取り上げました。公演先ではいつも透き通るような真剣な眼差しがまっていました。
全体に靡かないで、自立すること、そして「自分の力で未来を切り開くこと」、これは代沢小や東大原小の子どもらは持っていた。鉄道交点領域の北小も付け加えていいのかもしれない。今よりも遥かに高い自治意識まで持っていた。例えば、石川栄耀は戦後代沢小で都市計画を巡る討論会を催している。各自がはっきりと自分の意見を表明している。
「東大原小の卒業生仲間で同人を作りましてね」
今井兼介さんが言っていた。メンバーには詩人の子弟もいた。ませている、芸術的、文化的感性すぐれているものだった。
劇団「風の子」が持った発想は、鉄道交点文化の延長上にある。ここでの思想、考え、は、全国に波及していった。
下北沢における疎開学童文化論は、成り立ちうる論題だ。（了）
〇写真について
裏には「学芸会」とある。１９年、井筒の湯の広間。松本明美さんを通していただいた浜館菊雄先生資料の一部を活用したものだ。
〇「北沢川文化遺産保存の会」は、「日本水大賞」に応募した。
第１４回 日本水大賞応募活動一覧
〇「下北沢の芸術文化と疎開学童」については今日で記事は終わる。が、鉄道交点文化を捉える上で、この問題は重要であるように思う。ブログコメントには記せないが、何かの考えだったり、感想だったりは多くの方が持っておられるはずだ。意見や感想をぜひわたしのメール宛にください。
「その時代に芝居を見せようというのはどういうことでそういうことになったのですか」
「小さな旅」、「青春の杜 わたしの舞台を求めて〜東京・下北沢〜」では、アナウンサーが質問をする。
「食べることだけではないということですね。やっぱり文化的な飢えというんですか、そういう子どもの専門の本もなかったですからね。やっぱりそれを補うものとして舞台をやってもらう。子どもが舞台に出てやることは、子どもを解放したり、表現力をつけるのにいい効果がある。それを知りまして、児童演劇をやっていくということはなかなか意義のあることじゃないかなと思い始めたのですね」
劇団の主宰者多田徹さんが答えた。
調べると、この劇作家は、「2011年5月18日、死去。83歳だった。」とネットにはあった。
疎開から帰って来たこどもたちは、「文化的な飢え」を持っていた。疎開地ではさんざんに楽しんだ。人の目を意識して演ずることの面白さを味わっていた学童も少なからずいた。鉄道交点にはそういう需要があったと言っていい。
戦後、交点一帯には出版文化が勃興した。根底的には演劇文化と通ずるものがある。
（三）
ナレーションは続く。
風の子は昭和二十六年から公演を行うようになりました。北海道から九州まで、自分の力で未来を切り開くことの大切さを子どもたちに伝えました。芝居では子どもたちの友情で差別を乗り越えていく物語や炭鉱で強く生きる子どもたちを取り上げました。公演先ではいつも透き通るような真剣な眼差しがまっていました。
全体に靡かないで、自立すること、そして「自分の力で未来を切り開くこと」、これは代沢小や東大原小の子どもらは持っていた。鉄道交点領域の北小も付け加えていいのかもしれない。今よりも遥かに高い自治意識まで持っていた。例えば、石川栄耀は戦後代沢小で都市計画を巡る討論会を催している。各自がはっきりと自分の意見を表明している。
「東大原小の卒業生仲間で同人を作りましてね」
今井兼介さんが言っていた。メンバーには詩人の子弟もいた。ませている、芸術的、文化的感性すぐれているものだった。
劇団「風の子」が持った発想は、鉄道交点文化の延長上にある。ここでの思想、考え、は、全国に波及していった。
下北沢における疎開学童文化論は、成り立ちうる論題だ。（了）
〇写真について
裏には「学芸会」とある。１９年、井筒の湯の広間。松本明美さんを通していただいた浜館菊雄先生資料の一部を活用したものだ。
〇「北沢川文化遺産保存の会」は、「日本水大賞」に応募した。
第１４回 日本水大賞応募活動一覧
〇「下北沢の芸術文化と疎開学童」については今日で記事は終わる。が、鉄道交点文化を捉える上で、この問題は重要であるように思う。ブログコメントには記せないが、何かの考えだったり、感想だったりは多くの方が持っておられるはずだ。意見や感想をぜひわたしのメール宛にください。
