2012年10月20日
下北沢Ｘ新聞(2186)〜生きている本『鉛筆部隊と特攻隊』２〜
（一）
多くの市民から証言を得てまとめたものだ。「その数ゆうに百人を超える」と書いた。その実数は自分にもよく分からない、そしてまたその数は今さらに増えつつある。既知の人、未知の人が情報を寄せてくる。
重版の校正などは本来は著者本人が行うべきである。が、実際的な階級だとか、年月などは確かめようがない場合もある。ところが関係された方が、本を読み、誤植や間違いを一つ一つこちらに知らせて来られている。もうその数は五六名ほどにもなる。記録として違っていてはいけないという市民意識が働いているのではないか？。
特攻隊が淺間温泉に滞在していたことははるか昔のことだ。が、本による発信が過去への関心を深めさせた。一人の人、かつての疎開学童だった太田幸子さんは保存しておいた手紙を点検された。するとその中に謎を解く鍵があった。
例えば、富貴之湯の庭で撮った特攻兵と疎開学童の写真の出所だ。富貴之湯で寮母をされていた人が送ってくれていたようだ。またその手紙の中には武揚隊五来末義軍曹のことが記されてあったという。
代沢国民学校の学童と特攻兵とのふれ合いについては新聞や書物に記録があった。が、東大原国民学校学童と彼らとのふれ合いは記録はない。この発見の端緒を作ったのが太田幸子さんであり、秋元佳子さんである。
秋元さんとはつい先だってお目にかかって話を聞くことができた。富貴之湯で行われた壮行会については彼女はよく覚えていた。印象としては兵と学童相互の交歓があったように思った。これについても余白にエピソードとして書き記したことだ。
（二）
『朝日新聞』書評では「六十七年前のこの交流を現代の目で再現、活字にしておこうというのが本書の狙いだ」と切り込んでいた。眠っていた過去の記憶を今日と関連づけて書いたことは確かだ。人びとの中に今も生きている話である。
読んだ人が記憶を呼び覚ましたということはある。代沢国民学校の小貫雅子さんは、疎開当日の夕暮れのことがありありと浮かんできたと言われた。
「八月十二日、土曜日！」
日付と曜日が分かっていっそう鮮明にその場面が思い起こされて筆を取って感想を書いたという。お別れに来た彼女のシルエットが浮かんで見えた。その場所が代田二丁目の丘上と分かってみると私にはなお印象深い。赤い夕日が滴るように射し込んでくる所だ。
鎌倉の林節子さんは、この八月十二日に下北沢駅から発って行った人だ。そのときのことが書き記されていることに驚かれたようだ。
雅子さん、そして節子さんは互いに見知っているのかどうかは分からない。が、今にして思うと、この二人、どうも至近距離に住んでいたようだ。
（三）
今なお、情報が集まりつつある。不明だったことが分かってもきた。反対にまたいっそう分からなくもなってもきた。そういう意味でいうと生きている本だ。発掘された事実が、新たに継ぎ足され、補われていく。そうすれば壮大な市民記録の物語なっていくのではないか？。
特記しておくべきことがある、先だって秋元佳子さん会った。彼女は特攻隊が歌った「淺間温泉望郷歌」の曲を覚えていると聞いていた。それで歌ってもらい、録音をした。楽譜に落として記録し残しておくべきものだと私は思う。
特攻兵が強く平和を希求している歌である。恐らくこういう例は他にないのではないか。残念ながら音を楽譜に落とす技量が私にはない。
〇第７７回都市物語を歩く
本日2012/10/20「松原の杜夫、代田の茂吉を歩く」を実施した。１７名の参加があった。
文学と地形という切り口で凹凸を中心に見ていった。歩けば歩くほど地の傾きが分かってくる。西松原半島、東松原半島、そして代田半島というふうな捉え方をしてみた。その沢なり、谷なりで書かれた小説、詠まれた歌としてみていくと面白い。
これまでにないコース設定で歩く度に発見がある。来年も実施したい。（下北沢駅）
『朝日新聞』書評では「六十七年前のこの交流を現代の目で再現、活字にしておこうというのが本書の狙いだ」と切り込んでいた。眠っていた過去の記憶を今日と関連づけて書いたことは確かだ。人びとの中に今も生きている話である。
読んだ人が記憶を呼び覚ましたということはある。代沢国民学校の小貫雅子さんは、疎開当日の夕暮れのことがありありと浮かんできたと言われた。
「八月十二日、土曜日！」
日付と曜日が分かっていっそう鮮明にその場面が思い起こされて筆を取って感想を書いたという。お別れに来た彼女のシルエットが浮かんで見えた。その場所が代田二丁目の丘上と分かってみると私にはなお印象深い。赤い夕日が滴るように射し込んでくる所だ。
鎌倉の林節子さんは、この八月十二日に下北沢駅から発って行った人だ。そのときのことが書き記されていることに驚かれたようだ。
雅子さん、そして節子さんは互いに見知っているのかどうかは分からない。が、今にして思うと、この二人、どうも至近距離に住んでいたようだ。
（三）
今なお、情報が集まりつつある。不明だったことが分かってもきた。反対にまたいっそう分からなくもなってもきた。そういう意味でいうと生きている本だ。発掘された事実が、新たに継ぎ足され、補われていく。そうすれば壮大な市民記録の物語なっていくのではないか？。
特記しておくべきことがある、先だって秋元佳子さん会った。彼女は特攻隊が歌った「淺間温泉望郷歌」の曲を覚えていると聞いていた。それで歌ってもらい、録音をした。楽譜に落として記録し残しておくべきものだと私は思う。
特攻兵が強く平和を希求している歌である。恐らくこういう例は他にないのではないか。残念ながら音を楽譜に落とす技量が私にはない。
〇第７７回都市物語を歩く
本日2012/10/20「松原の杜夫、代田の茂吉を歩く」を実施した。１７名の参加があった。
文学と地形という切り口で凹凸を中心に見ていった。歩けば歩くほど地の傾きが分かってくる。西松原半島、東松原半島、そして代田半島というふうな捉え方をしてみた。その沢なり、谷なりで書かれた小説、詠まれた歌としてみていくと面白い。
これまでにないコース設定で歩く度に発見がある。来年も実施したい。（下北沢駅）
