2012年12月03日
下北沢Ｘ新聞(2212)〜鉛筆部隊にダイダラボッチに信濃の歌〜
（一）
おもしろがればおもしろくなる。
数日間九州を旅してきた。帰ってきて深い問題意識が生まれてきた。「地理地形の溜めの中で、我々がどう生きてきたか？」ということである。
福島原発の苛酷事故をきっかけに高レベル放射能廃棄物をどうするのかが大きな問題となっている。この毒性が減衰するまでに十万年もかかるという。途方もない時間である。ところが地形形成までの時間はもっと長い。アルプスなどの山岳地帯の地殻形成は十億年前に遡る。衝立や屏風の形成だ。
山と山との間にできた盆地なり平野なりを「平」と呼ぶ。もっとも顕著なのは信州信濃である。そのことが端的に表れているのが長野県歌、「信濃の国」である。
昨日、一日、下北沢タウンホールで「北沢川文化遺産保存の会」の暮れの祝宴を催した。名目は、『鉛筆部隊と特攻隊』出版記念会、『代田の丘の６１号鉄塔』由来碑完成記念会である。この締めは、なんと「信濃の国」である。我らの会の米澤邦頼さんは伊那が故郷だ。出版記念会に長野県安曇野から出てこられたのは丸山修さんだ。この二人がこの歌を唄った。その一番だ。
信濃の国は 十州に 境連ぬる 国にして
聳ゆる山は いや高く 流るる川は いや遠し
松本 伊那 佐久 善光寺 四つの平は 肥沃の地
海こそなけれ 物さわに 万ず足らわぬ 事ぞなき
信州信濃の住民の誇りを歌っている。言えば地形賛歌だ。衝立で仕切られたところに独自の文化がある。
「信州信濃は辺境ですよ」と諏訪出身の人がいう。
「辺境は偏屈なんじゃないですか」と私。
「そうそうそのとおり」と彼。
（二）
『鉛筆部隊と特攻隊』、この物語は、ネットを通して拾われた物語だ。記念会にはゆかりの人が参加された。武揚隊遺墨の存在を知らせてこられた安曇野の丸山修さん、鉛筆部隊と押印された古手紙を骨董市で見つけた矢花克己さん、特攻兵と特攻兵とを繋いだ元鉛筆部隊の田中幸子さんである。
出版以後、興味深い出来事が起こっている。読者からの具体的な情報の伝えである。もう何人からあったのか分からない。一日も、家に帰ってみると一通の手紙が来ていた。出版社から転送されてきたものだ。末尾には、「私にとりまして『鉛筆部隊と特攻隊』は貴重な一冊でした。」とあった。ご自身の過去経験と結びつくものであったからであろう。
この方は、かつて駒繋国民学校の疎開学童だった人だった。私が知らない情報が書き添えられていた。例えば、「昭和２０年２月、三年生まで後二ヶ月の夜、私たちの乗った中央線は各車両ともカーテンを閉め外も見られない状態で松本に向かいました。」とあった。
特攻隊と学童とのふれ合いは、五、四、三年生に限られると思っていた。ところが、昭和２０年２月に新三年生は疎開してきて、兵士たちとふれ合っていた。「兵隊さん達と大騒ぎして楽しんだ」という。新たな証言である。
先だっては、東大原国民学校の四年生から、今度は駒繋国民学校の三年生から、共に男子である。
（三）
この頃、ジェンダーと戦争という問題意識を持ち始めている。あの時代の男の子には男の子特有の景色があったのだと思いはじめた。男子が見ていたものは女子とは違っていたと。
一つは、性という点がある。発達過程においてこの存在を薄々知っていて、疎開先で大人の男女の仲に何か特別なものがあると感づいていく。つまりは性への戦きだ。滞在中の兵士と女性との間に流れている特別な何かを嗅ぎ分けていたのだと思うようになった。
もう一つは景色の見方だ。男子は航跡を追う。景色の中に彼らは飛んでいく飛行機をみている。形式などについては女子よりも敏感だ。「あれはロクナナだぜ」という。「キ６７だな」と仲間が応ずる。
機種、機影、だけでなくその背景にある地形までも彼らは見ている。どんな具合の谷からそれは降下してきたかということだ。この観察が細かい。
松本平という地形の中で、戦争がどのように行われていたのか？。男子はその片鱗を知っている。
〇一日の会に参加された梁田貴之さんは、フェィスブックに、当日の感想を「郷土史、文学、歴史などに関心をお持ちの大人の方々が、次々に自由にスピーチする、下北沢の『古層』の文化の厚みを感じさせるとても雰囲気の良い、楽しい会でした。」と。
なるほど、下北沢の古層文化を確かにみんな語っていた。
『鉛筆部隊と特攻隊』、この物語は、ネットを通して拾われた物語だ。記念会にはゆかりの人が参加された。武揚隊遺墨の存在を知らせてこられた安曇野の丸山修さん、鉛筆部隊と押印された古手紙を骨董市で見つけた矢花克己さん、特攻兵と特攻兵とを繋いだ元鉛筆部隊の田中幸子さんである。
出版以後、興味深い出来事が起こっている。読者からの具体的な情報の伝えである。もう何人からあったのか分からない。一日も、家に帰ってみると一通の手紙が来ていた。出版社から転送されてきたものだ。末尾には、「私にとりまして『鉛筆部隊と特攻隊』は貴重な一冊でした。」とあった。ご自身の過去経験と結びつくものであったからであろう。
この方は、かつて駒繋国民学校の疎開学童だった人だった。私が知らない情報が書き添えられていた。例えば、「昭和２０年２月、三年生まで後二ヶ月の夜、私たちの乗った中央線は各車両ともカーテンを閉め外も見られない状態で松本に向かいました。」とあった。
特攻隊と学童とのふれ合いは、五、四、三年生に限られると思っていた。ところが、昭和２０年２月に新三年生は疎開してきて、兵士たちとふれ合っていた。「兵隊さん達と大騒ぎして楽しんだ」という。新たな証言である。
先だっては、東大原国民学校の四年生から、今度は駒繋国民学校の三年生から、共に男子である。
（三）
この頃、ジェンダーと戦争という問題意識を持ち始めている。あの時代の男の子には男の子特有の景色があったのだと思いはじめた。男子が見ていたものは女子とは違っていたと。
一つは、性という点がある。発達過程においてこの存在を薄々知っていて、疎開先で大人の男女の仲に何か特別なものがあると感づいていく。つまりは性への戦きだ。滞在中の兵士と女性との間に流れている特別な何かを嗅ぎ分けていたのだと思うようになった。
もう一つは景色の見方だ。男子は航跡を追う。景色の中に彼らは飛んでいく飛行機をみている。形式などについては女子よりも敏感だ。「あれはロクナナだぜ」という。「キ６７だな」と仲間が応ずる。
機種、機影、だけでなくその背景にある地形までも彼らは見ている。どんな具合の谷からそれは降下してきたかということだ。この観察が細かい。
松本平という地形の中で、戦争がどのように行われていたのか？。男子はその片鱗を知っている。
〇一日の会に参加された梁田貴之さんは、フェィスブックに、当日の感想を「郷土史、文学、歴史などに関心をお持ちの大人の方々が、次々に自由にスピーチする、下北沢の『古層』の文化の厚みを感じさせるとても雰囲気の良い、楽しい会でした。」と。
なるほど、下北沢の古層文化を確かにみんな語っていた。
