2012年12月04日
下北沢Ｘ新聞(2213)〜鉛筆部隊にダイダラボッチに信濃の歌２〜
（一）
近代文明は当座しのぎだ。今がよければ後は野となれ山となれで、後の世への思いがない。多くが先送りされる。原発もその一つだ。現実、除染された放射能の持って行き場がどこにもない。いわんや高レベル放射能廃棄物の置き場は全く決まっていない。恐らくどこも、誰も、引き受けようとしないだろう。
中央高速笹子トンネルの天井落下事故も、文明への危惧を感じる。これも当座しのぎだったのではないかとの疑念が湧いてきた。
作った道路設備は数十年は持つだろう。具合が悪くなれば改修は後の人がやってくれるに違いないと先々の人にメンテナンスを任せた。３５年経ってこつ然と天井が落下し走行中の車を押しつぶし、多数の死者が出た。吊り金具のボルトが経年劣化して天井から抜け落ちたらしい。同様構造のトンネルは全国各地にある。トンネルを潜る度に､天井落下の恐怖を思わなくてはいけなくなった。
一トンもある天井板を金具でつり下げているという構造にそもそも無理があるのではないか。素人である私はそう思う。
この一つの事故が起こっことで問題があぶり出された。トンネルだけの問題ではない。橋梁、橋桁、高架橋、鉄材が腐食したり、コンクリートが劣化したりしてきている。高度経済成長時代にどんどんで作ってきたものがもう耐用年数を迎えている。
だからいつ橋梁が落ちるか分からない。高架部もごっそりと落下する怖れだってある。本当は危険個所の補修に手をつけなくてはならないのだが、地味なものゆえに、金を費やしたくない。修理個所は増え続ける一方なのに、それには目をつぶり、新しいものに手を出す。人間の業だ。
ついこの間、九州まで旅をした。縦横に張りめぐらされた道路がよく見えた。かつては踏切だったところも高架で抜けている。橋とて同じだ。便利だから作るのだろうが、やみくもに道路を作っているように思えた。
資源の払底、経済の停滞、人口の減衰、それらを考えると、何をするかではなく、何をしないかという時代になった。
しかし、現今の政治の主張は、する、するばかりだ。極めて危ない。特に危険だと思うのは、力には力で対抗しようという考えだ。これこそが戦争の原因だった。懲りもせず軍隊を作ろうと言い始めた。
日本の国力は弱くなった。それで発破をかけようと威勢のいい言葉ばかりが飛び交う。戦争は煽られることで始まる。危ない､危ない……。
（二）
一日に、一年の締めくくりの会を行った。歓談したり、雑談したり、また近況報告したりと。が、それぞれの話が面白い。
「代沢から縁故疎開で郡山に行ったのですよ。あそこには海軍の航空隊の基地がありました。空襲を受けまして、疎開先は焼けてしまったんですよ。ところが東京のうちは焼けていないのですね…よく艦載機が飛んできて機銃掃射されたんですよ……それから松の根を掘りにいかされまたね。ガソリンがないから松根油をこれから取るのですね」
これは田村さんの話。
「機銃掃射されたときに逃げると撃たれるのですよ。だからそこに止まっていればいいのですよ……うちの親父が府中の燃料廠にいましたが、松根油は作るのに経費がかかって実用的ではなかったと言っていました」
きむらたかしさんがそんなことを話された。機銃掃射を受けたとき人間心理としてはやっぱり逃げていくだろうなと思った。
「千歳が丘高校の高射砲陣地はあそこは私の遊び場でした。父はよく見ていたそうです。当たってもそこに落ちてくることはないので安全だとか言っていました。結構あそこは命中率がよくてＢ２９に当てていました」
なんと彼は、赤堤に墜ちたGame Cook Charleeの話をしている。
（三）
地形的な谷とか澤とか、我々はその溜に暮らしてきた。それぞれがどういう体験をそこでしてきたか、そんな語り合いになっていた。皆人生の手練れだ。
考えてみるとほとんどの人が街歩きの先導をできる人ばかりだった。そういう点では船頭が多い。船頭多くして船山に登るという諺がある。
疎開、空襲、勤労奉仕、模型飛行機作り、建築論、文学論、文化論、多くの山に登っては笑った。そして、飲んで食っておしまいだ。
我らはおかしな集団だ。全体の最後のしめとなって、
「それでは、ダイダラボッチ三唱します」
米澤さんが言い出す。
「ダイダラボッチ！、ダイダラボッチ！、ダイダラボッチ！」
（矢花克己さんが挨拶をされた。家に届いていた一升瓶のワイン、これを会場に持ってきて開けてみると、驚いたことにラベルが鉛筆部隊と特攻隊になっていた。）
一日に、一年の締めくくりの会を行った。歓談したり、雑談したり、また近況報告したりと。が、それぞれの話が面白い。
「代沢から縁故疎開で郡山に行ったのですよ。あそこには海軍の航空隊の基地がありました。空襲を受けまして、疎開先は焼けてしまったんですよ。ところが東京のうちは焼けていないのですね…よく艦載機が飛んできて機銃掃射されたんですよ……それから松の根を掘りにいかされまたね。ガソリンがないから松根油をこれから取るのですね」
これは田村さんの話。
「機銃掃射されたときに逃げると撃たれるのですよ。だからそこに止まっていればいいのですよ……うちの親父が府中の燃料廠にいましたが、松根油は作るのに経費がかかって実用的ではなかったと言っていました」
きむらたかしさんがそんなことを話された。機銃掃射を受けたとき人間心理としてはやっぱり逃げていくだろうなと思った。
「千歳が丘高校の高射砲陣地はあそこは私の遊び場でした。父はよく見ていたそうです。当たってもそこに落ちてくることはないので安全だとか言っていました。結構あそこは命中率がよくてＢ２９に当てていました」
なんと彼は、赤堤に墜ちたGame Cook Charleeの話をしている。
（三）
地形的な谷とか澤とか、我々はその溜に暮らしてきた。それぞれがどういう体験をそこでしてきたか、そんな語り合いになっていた。皆人生の手練れだ。
考えてみるとほとんどの人が街歩きの先導をできる人ばかりだった。そういう点では船頭が多い。船頭多くして船山に登るという諺がある。
疎開、空襲、勤労奉仕、模型飛行機作り、建築論、文学論、文化論、多くの山に登っては笑った。そして、飲んで食っておしまいだ。
我らはおかしな集団だ。全体の最後のしめとなって、
「それでは、ダイダラボッチ三唱します」
米澤さんが言い出す。
「ダイダラボッチ！、ダイダラボッチ！、ダイダラボッチ！」
（矢花克己さんが挨拶をされた。家に届いていた一升瓶のワイン、これを会場に持ってきて開けてみると、驚いたことにラベルが鉛筆部隊と特攻隊になっていた。）
トラックバックURL
この記事へのコメント
2. Posted by きむらけん 2012年12月05日 17:47
［矢花克己さんから］
１２月１日の忘年会の記録写真、並びに、音声記録などが今日届きました。当日、皆さん、語り部となって貴重なことを話しておれれました。自分でメモを取っていなかったのでやや当てずっぽうで書いております。
田村さんの艦載機の襲撃、原さんの千歳が丘高校の高射砲陣地、上田さんの竹ひごヒコーキの話などが思い出されます。
加藤景さん、淺間学園の歌の中で、撃ちてしやまんというところで一番盛り上がったのだがという話をされていました。
確かどこかにあったと思って、この歌探しているところです。
１２月１日の忘年会の記録写真、並びに、音声記録などが今日届きました。当日、皆さん、語り部となって貴重なことを話しておれれました。自分でメモを取っていなかったのでやや当てずっぽうで書いております。
田村さんの艦載機の襲撃、原さんの千歳が丘高校の高射砲陣地、上田さんの竹ひごヒコーキの話などが思い出されます。
加藤景さん、淺間学園の歌の中で、撃ちてしやまんというところで一番盛り上がったのだがという話をされていました。
確かどこかにあったと思って、この歌探しているところです。
1. Posted by きむらたかし＠三田用水 2012年12月04日 21:47
［機銃掃射されたときに逃げると撃たれるのですよ。］
念のため出典
島田甲一郎「ガキ大将のほとりごと」文芸社・２００６年１月１５日／刊
「…鉄道輸送を警護するということで、機関車の石炭を積んである炭車に重機関銃を据え付けて列車を走らせたところ、グラマンの襲撃に遭い、それこそアツという間に三名とも戦死してしまったそうです。
あとで軍犬班の班長をしていた松山に聞いた話では、空襲に際して犬は絶対に動かないそうです。そのように訓練もするそうですが本能的にそうするようです。飛行機から見ると、ネズミが動くのもわかるといいます。とにかく、空襲となったら木の下、動かない、これが要諦のようです。」pp.223・224
念のため出典
島田甲一郎「ガキ大将のほとりごと」文芸社・２００６年１月１５日／刊
「…鉄道輸送を警護するということで、機関車の石炭を積んである炭車に重機関銃を据え付けて列車を走らせたところ、グラマンの襲撃に遭い、それこそアツという間に三名とも戦死してしまったそうです。
あとで軍犬班の班長をしていた松山に聞いた話では、空襲に際して犬は絶対に動かないそうです。そのように訓練もするそうですが本能的にそうするようです。飛行機から見ると、ネズミが動くのもわかるといいます。とにかく、空襲となったら木の下、動かない、これが要諦のようです。」pp.223・224
