2012年12月06日
下北沢Ｘ新聞(2214)〜鉛筆部隊にダイダラボッチに信濃の歌３〜
（一）
八月十五日は嫌でも思い出すが、十二月八日は忘れがちだ。開戦記念日である。アメリカに奇襲攻撃を仕掛けて、三年と六ヶ月に及ぶ太平洋戦争が勃発した。戦に勝って幸せを招くはずだったがもくろみは外れ、敵にこてんぱんに打ちのめされて、戦には負け、人びとは不幸のどん底に追い込まれた。
最近、何かの本を読んでいて、敗戦後三、四十年は幸せを感じることができるというフレーズに出会った。意外に思ったが振り返ってみると確かにそうはいえる。
私自身、戦後の真っ只中を生きて来た。生活がよりよく変わっていく中を過ごしてきた。
希望とか夢が未来に描けた。実際、徐々に世の中は豊かになった。しかし、豊かになってしまうと後はあまり幸せとは感じなくなる。
戦争は不幸なものだった。が、戦後のどん底から這い上がった経験のある人は、幸せを感じることができた。
私たち、北沢川文化遺産保存の会の暮れの祝宴も、多くが戦中、戦後を生きてきた人だけにその証言には重みがあった。飲み会なのに時代を語る会を開いていた。一人一人が忘れ去られた歴史を語っていた。
「ああ、記録を取っておけばよかった」
そんな反省を持っていたところ、昨日、なんと当日の映像が送られてきた。山梨から参加された矢花克己さんが写真とこれとを送ってこられた。
改めてこれを見た。代沢国民学校の加藤景さんが疎開先で歌っていた「淺間学園の歌」をＤＶＤに収録されたという話をしている場面があった。
「鬼畜米英撃ちてしやまん。これを上手に歌うとこの歌が生きるのだけども、あの元気が出てくるのですけれども、まさか今の子ども達に歌わせるわけにはいかない。でも、これができたことを報告します……」
そう当時は、誰もがみな軍国少年だった。しかし、飢餓少年、望郷少年でもあった。食いたい、帰りたい。が、それも適わない。この子どもらを助けたのは実は歌だった。歌を唄っているときは苦しさ、辛さを忘れることができた。記録に留めておきたいことだ。
（二）
先月、出版社に情報を寄せられた人に出会った。その方は、他に娯楽がなかったせいか、何かというと歌っていたと言われた。拍子を何で取るか。そろばんだったという。各自が持っているそれを片手でもって、かしゃ、かしゃと鳴らしたと。
疎開時代の話は確かに辛い話だ。しかし、この時の経験が原点となっていることは確かである。何もかも不足していた時代だ。その中で、何とか、工夫して、ひもじさをそらしていた。
今は飽食の時代だ。我らの会は、会費３０００円だ。一人一品何かを持ってきて、それをネタに話をするということになっている。今回も多くのものが集まった。これを全部食べていると健康によくないと思いもする。
しかし、今回ほど、文化遺産の、文化を語ったことはなかったことだ。語ることによって自由を得ているとも思う。
（三）
疎開時代の別の記録が見つかりそうだ。これも「鉛筆部隊と特攻隊」を読んで、その情報を知らせて来られた。淺間温泉千代の湯、広丘郷福寺での日記である。亡くなられたご主人が鉛筆部隊の一員であったという。その方が、明日そのノートを貸してくださることになった。「鉛筆部隊と特攻隊」の話は際限がない。
（四）
今日、散歩途中に一台の選挙カーが通った。
「あの戦争を侵略戦争だったと考えるのは間違いです…」
日本人の誇りなるものを言い始めている。が、これを聞いてふっと思い出した歌がある。
やまとは くにのまほろば たたなづく あをかき やまこもれる やまとしうるはし
麗しい自然を保っているのならまだしも誇りは持てる。が、すっかりこの自然は壊してしまった。私たちは魂が還っていく場を失ってしまっている。
（矢花克己さんが当日の様子をアルバムにして送ってくださった。その三枚を順次アップしていくことにしたい。）
先月、出版社に情報を寄せられた人に出会った。その方は、他に娯楽がなかったせいか、何かというと歌っていたと言われた。拍子を何で取るか。そろばんだったという。各自が持っているそれを片手でもって、かしゃ、かしゃと鳴らしたと。
疎開時代の話は確かに辛い話だ。しかし、この時の経験が原点となっていることは確かである。何もかも不足していた時代だ。その中で、何とか、工夫して、ひもじさをそらしていた。
今は飽食の時代だ。我らの会は、会費３０００円だ。一人一品何かを持ってきて、それをネタに話をするということになっている。今回も多くのものが集まった。これを全部食べていると健康によくないと思いもする。
しかし、今回ほど、文化遺産の、文化を語ったことはなかったことだ。語ることによって自由を得ているとも思う。
（三）
疎開時代の別の記録が見つかりそうだ。これも「鉛筆部隊と特攻隊」を読んで、その情報を知らせて来られた。淺間温泉千代の湯、広丘郷福寺での日記である。亡くなられたご主人が鉛筆部隊の一員であったという。その方が、明日そのノートを貸してくださることになった。「鉛筆部隊と特攻隊」の話は際限がない。
（四）
今日、散歩途中に一台の選挙カーが通った。
「あの戦争を侵略戦争だったと考えるのは間違いです…」
日本人の誇りなるものを言い始めている。が、これを聞いてふっと思い出した歌がある。
やまとは くにのまほろば たたなづく あをかき やまこもれる やまとしうるはし
麗しい自然を保っているのならまだしも誇りは持てる。が、すっかりこの自然は壊してしまった。私たちは魂が還っていく場を失ってしまっている。
（矢花克己さんが当日の様子をアルバムにして送ってくださった。その三枚を順次アップしていくことにしたい。）
