2012年12月10日
下北沢Ｘ新聞(2217)〜再び鉛筆部隊のクリスマスコンサート２〜
（一）
ひそやかな価値参集だ。鉄道交点には文学も色気も集まっていた。一番興味深い点は偶然性である。示し合わせて集まろうとはしていなかったことだ。今にして分かってみるとあの人もこの人も住んでいた。後者の囲われた女性ももちろんそうである。
「下北沢文士町文化地図」が間もなく出来上がる。今度のは五版目である。版を重ねていくことはプロセスであった。つまりは情報収集活動であった。聞き取りや調べから新手の情報が得られた。それは文学者や芸術家の居住を中心としている。しかしそのことだけが入ってくるわけではない。人びとの暮らし向きの片片も同時に入ってくる。
「うちで防空壕を掘ったときに水が出たのですよ」
田中幸子さんが言う。二子道に面した家の庭のことだ。この道、古道である。段丘の縁を通っている。これを一段下ったところを通っているのが新道の茶沢通りだ。こちらは森厳川沿いでよく水が出た。地盤が固いはずなのに二子道沿いで水が出たというのは不思議だ。
古地図を見てみた。一つ納得のいくことがある。この道、淀橋台から分岐してきた台地の末端だ。微傾斜に当たる部分の水脈は表面が薄いのだろう。一尺も掘ると水が出たようだ。
これはささいなことだ。しかし面白い。何時だったか、下北沢駅前市場のお茶屋のご主人が現小田急の線路の縁に沿って小川が流れていたと言っていた。傾斜からするとこれは東に向かって流れていたにちがいない。暮らし向きと言ったが何やら水向きの話になった。
防空壕の話がどうして出てきたか。連想が連想を生んでのことだ。下北沢静泉閣の話を田中さんにしたことから彼女の家の防空壕の話になった。
昭和二十年一月一日、空襲警報が出て防空壕に入った。「ひえびえとした壕の中に、ドキンとする香りが匂った。それは長い間忘れていた」（『日本空襲記』）と記したのは下北沢静泉閣の住人だった一色次郎である。新年のおめかしをした女性ばかりだった。囲われた者たちの色香が匂った。戦時ドラマとしては私にも強烈なものだった。
（二）
文士町には、あちこちに「寓居」と名札が下がっていた。幼い子どもが不思議に思って母親に訳を聞いたらたしなめられたという。この話をしたことから田中幸子さんが思い出した。
鉛筆部隊の元隊員鳴瀬さんのハーモニカコンサートがはねた後に祝宴をしようと飲み屋「ふるさと」に行った。なんのことはないその側が彼女のふるさとだった。
彼女の家では部屋を貸していたという。その家に二号さんが二人も住んでいたという。その話を聞いたとき、簡単にメモをしていた。ところが、それがみつからない。そんなときに折良く彼女から電話があった。
「下の人が杵屋なんとかさんという三味線のお師匠さんの二号さんで、上が議員さんの二号さんでした。それで今も私は三味線の方の人からもらったイヤリングを持っているのです。まがいものじゃなくて翡翠なんです。もうあれから六十年になりますね……」
鳴瀬さん、田中さん、疎開当時は国民学校五年生だった。もう間もなく八十歳を迎える。戦争を契機としていろいろな人生があった。
戦中の下北沢のアパートに二号さんが多くいた。それは戦後も変わりがない。戦後復興で議員の鼻息も荒かった。三味線のお師匠さんも娯楽を求める人で懐が潤沢なったようだ。
（三）
女性を囲う。今もあるのだろうか。もう亡くなった方で、会社の会長をやっておられた方から聞いたことがある。
会社幹部で麻雀をするときに世話をするのが皆二号さんだったと。囲うことがステータスだったとも……。（先だって京都行ったときに撮った写真、京の紅葉だ）
文士町には、あちこちに「寓居」と名札が下がっていた。幼い子どもが不思議に思って母親に訳を聞いたらたしなめられたという。この話をしたことから田中幸子さんが思い出した。
鉛筆部隊の元隊員鳴瀬さんのハーモニカコンサートがはねた後に祝宴をしようと飲み屋「ふるさと」に行った。なんのことはないその側が彼女のふるさとだった。
彼女の家では部屋を貸していたという。その家に二号さんが二人も住んでいたという。その話を聞いたとき、簡単にメモをしていた。ところが、それがみつからない。そんなときに折良く彼女から電話があった。
「下の人が杵屋なんとかさんという三味線のお師匠さんの二号さんで、上が議員さんの二号さんでした。それで今も私は三味線の方の人からもらったイヤリングを持っているのです。まがいものじゃなくて翡翠なんです。もうあれから六十年になりますね……」
鳴瀬さん、田中さん、疎開当時は国民学校五年生だった。もう間もなく八十歳を迎える。戦争を契機としていろいろな人生があった。
戦中の下北沢のアパートに二号さんが多くいた。それは戦後も変わりがない。戦後復興で議員の鼻息も荒かった。三味線のお師匠さんも娯楽を求める人で懐が潤沢なったようだ。
（三）
女性を囲う。今もあるのだろうか。もう亡くなった方で、会社の会長をやっておられた方から聞いたことがある。
会社幹部で麻雀をするときに世話をするのが皆二号さんだったと。囲うことがステータスだったとも……。（先だって京都行ったときに撮った写真、京の紅葉だ）
