2012年12月15日
下北沢Ｘ新聞(2220)〜荏原の小さな歴史を記録する〜
（一）
自然の命は永遠、人間の命は一瞬、が、後者は我が物顔だ。あたかも前者を征服したように振る舞っている。思い上がっているように思えてならない。
人間の記憶容量は小さい。三日前のことすら忘れている。記録された歴史なども危ういものだ。とくには市民の歴史などはもうことごとく忘れ去ってしまっている。
市民の歴史、ささやかなものであっても残しておくべきだと私は思う。つい最近になって戦争を境としたとある子どもの日記が見つかった。
代沢国民学校は戦時に疎開する。その一部の学童が引率担当によって鉛筆部隊と名づけられていた。これに所属していた小学五年生の日記だ。四、五冊に及ぶこれは戦時の市民の記録だと価値づけられる。これの分析を進めているが、浮かび上がってきたのは戦時下における一人の男子の精神形成史である。彼の名は、鹿子木幹雄さんである。
自著『鉛筆部隊と特攻隊』、これを読まれた一人の方からの連絡があって、ノートの存在が分かった。「主人が話題にしていた『鉛筆部隊』の名が新聞に出ていたものですから、びっくりしました。」と奥さんの真理子さんが言われた。ご主人は亡くなっておられる。
その一冊目の、とある一日の記録だ。「今日は朝からきれいに空が晴れてゐる」と始まる。その日付と､曜日と天候は「五月十三日（土）天気 晴」である。昭和十九年のことだ。この日、代沢国民学校の学童は遠足に出かけた。
まづ、三げん茶屋に出た。それから第一しはんの駅まで歩いた。ずいぶんつかれたでも落ごしたものは一人もゐなかつた。
学校を出た後、三軒茶屋を経由して、第一師範駅まで歩いた。現在の、東急東横線学芸大学駅である。一里ほどもあろうか。今であればバスだ。電車なら下北沢駅へ出て、渋谷で乗り換えていくだろう。が、当時、そんなヤワなことはしない。児童といえども将来の兵隊である。
（二）
代沢国民学校から第一師範駅まで歩いた。児童の足を鍛えるためだ。が、そればかりではない。経済であることだ。帝都線経由東横線だと運賃が二倍かかる。が、第一師範まで歩いていけば、目的地には同じ会社の電車で一本で行ける。この方が安くつく。
どこへ行ったのか興味深い。第一師範駅のホームで待っていると、
「あれはデハ三四五〇形だろう」
やって来た電車を見て、鉄道に詳しい男の子が言ったかもしれない。
多ま川園に着いてカーチスＰ４０マーチン……等を見た。両方とも日本のだん丸のあたつて防だんガラス入のこわれてゐるところもあつた。それから敵の機関銃とりさい戦車の後を見たら後ばかりに日本のたまがあたってゐた。みんなはきっとにげてばかりゐたからだろうといつてゐた。
行き先は遊園地多摩川園である。ここに敵の飛行機、戦車、機関銃などが展示されていた。少国民教育の場として使われていたようだ。
一機はカーチスＰ４０だ。これはアメリカの陸軍の戦闘機である。もう一機はマーチンだ。これはイギリス軍のマーチンベイカーだろうか？。
（三）
日記を書いた彼の担任は柳内達雄先生だ。すなわち鉛筆部隊の隊長である。前日の記述にはこうある。
明日は行軍である。柳内先生は明日から十六日までちょっとどこか（長野県らしい）にいらつしゃつて、十六日まではこの組の教だんにはすがたをみせないので、いろいろな行軍の時のちゅうい、並び方などをぼくたちにねんいりに教へてくださった。
やはり遠足は行軍訓練だった。ちょうどこのときに、先生が長野県に出張していたということも興味深い。疎開先の下見だったと推察される。
（大刀洗平和記念館ゼロ戦）
〇第７９回都市物語を歩く会
代田半島三大伝説を巡る 今年最後の歩く会だった。振り返ると今年は雨に多くたたられた。今日もまた雨だった。最後邪宗門でお茶を飲んだ。話題になったのは季節感がなくなったことだ。「秋がなくなった。」という話になった。確かに、季節のプロセスがなく、いきなり冬になっとのこと頷けることだ。
代沢国民学校から第一師範駅まで歩いた。児童の足を鍛えるためだ。が、そればかりではない。経済であることだ。帝都線経由東横線だと運賃が二倍かかる。が、第一師範まで歩いていけば、目的地には同じ会社の電車で一本で行ける。この方が安くつく。
どこへ行ったのか興味深い。第一師範駅のホームで待っていると、
「あれはデハ三四五〇形だろう」
やって来た電車を見て、鉄道に詳しい男の子が言ったかもしれない。
多ま川園に着いてカーチスＰ４０マーチン……等を見た。両方とも日本のだん丸のあたつて防だんガラス入のこわれてゐるところもあつた。それから敵の機関銃とりさい戦車の後を見たら後ばかりに日本のたまがあたってゐた。みんなはきっとにげてばかりゐたからだろうといつてゐた。
行き先は遊園地多摩川園である。ここに敵の飛行機、戦車、機関銃などが展示されていた。少国民教育の場として使われていたようだ。
一機はカーチスＰ４０だ。これはアメリカの陸軍の戦闘機である。もう一機はマーチンだ。これはイギリス軍のマーチンベイカーだろうか？。
（三）
日記を書いた彼の担任は柳内達雄先生だ。すなわち鉛筆部隊の隊長である。前日の記述にはこうある。
明日は行軍である。柳内先生は明日から十六日までちょっとどこか（長野県らしい）にいらつしゃつて、十六日まではこの組の教だんにはすがたをみせないので、いろいろな行軍の時のちゅうい、並び方などをぼくたちにねんいりに教へてくださった。
やはり遠足は行軍訓練だった。ちょうどこのときに、先生が長野県に出張していたということも興味深い。疎開先の下見だったと推察される。
（大刀洗平和記念館ゼロ戦）
〇第７９回都市物語を歩く会
代田半島三大伝説を巡る 今年最後の歩く会だった。振り返ると今年は雨に多くたたられた。今日もまた雨だった。最後邪宗門でお茶を飲んだ。話題になったのは季節感がなくなったことだ。「秋がなくなった。」という話になった。確かに、季節のプロセスがなく、いきなり冬になっとのこと頷けることだ。
