2012年12月16日
下北沢Ｘ新聞(2221)〜荏原の小さな歴史を記録する２〜
機械文明がもたらす速度に人間は追いつけなくなっている。心の準備もないままに機械はおかまいしに速度を上げる。我々はおたおたしながら取り敢えずそれについていっている。が、速度上昇は情報の過多でもある。エスカレーターですら速度を上げている。
長いエスカレーターで階段を登った。これは文学にはならない。長い階段を息を切らしながら登ったところに彼女は待っていた。これは物語になる。
鉄道は風雅の敵だと言ったのは正岡子規だが、高速度も風流の敵だ。新幹線に乗っていて、全山赤く彩られた紅葉が見えた。が、それは一瞬ですぐに消えた。近代人は抒情的ではあり得なくなっている。人間の不幸である。
（一）
戦中において多摩川園が少国民教育の場として使われていた。まず、そこへ行くための行軍がある。そして、園に到着すると、敵の飛行機や武器などがここに展示してあった。これは歴史記録に見られないものである。
日記には、「敵のノースアメリカンＢ２５の日本を空しうして来た時の残骸があった」と書かれている。この飛行機は昭和１７年（1942）４月１８日にあったドーリットル空襲で使われた機種である。
航空母艦ホーネットに搭載された陸軍の爆撃機が１６機が飛び立ち、東京から神戸までの数個所を空襲した。突然の奇襲攻撃で国民は震撼した。
記録を調べてみると撃墜された機はない。が、着陸先の中国本土では捕らえられた飛行機もある。多摩川園に展示されてあったのはそれであろうか。
東京では、陸軍造兵廠東京工廠を爆撃するつもりだったが、全く無関係の場所を爆撃してしまう早稲田中学である。たまたまここに通っていた潮田高雄さんに話を聞いたことがある。
「わたしは早実に行っていたんですよ。あれ、ほら、日本で始めての空襲に遭っているんですよ。なぜか学校のあった早稲田鶴巻がＢ２５による空襲を受けたんですよ。空襲警報が鳴っていましたね。空を見ると一機変な飛行機が飛んできたんですよ。それで焼夷弾を落っことしたんですよ。先輩なんかがそれをひっぱり出して消しましたね。近くの岡崎病院は直撃受けたと聞いています。早実に入学してすぐの頃でした。」
（二）
当時の、軍国少年たちにとってもこの空襲は忘れがたいことだった。
四月十八日（火）天気 曇
今日のちやうど今日の二年前、米機にくいにくい米機がわが神せいなる国土をけがした。思ひ出してもくやしいくやしい日だ。みんなの遊んでゐるのを見てもいつもとはちがつてゐるやうだ。
日記の記述はこうなっているが、本人が二年前のことを思い出してこれを書いたとは思えない。学校の先生が、朝の朝礼のときなどに言ったことを書いたのではないかと思われる。
言葉を使って日記を書く。戦争に対する思いについては恐らく書くように仕向けられていたように思われる。戦争になって軍事一色である。子どももそれに染まらざるを得なかった。
段々に分かってきた鉛筆部隊は軍隊式だった。統率する長は、教師ではあるがもっと権威や力を持ったようだ。挨拶、敬礼などが軍隊調だった。
（三）
一人の少年の精神形成史を追っているが、感受性が繊細なこの時期、文面から心の有り様が目に見えてきもする。
太平洋上の空母ホーネットから昭和１７年（1942）４月１８日、１６機のＢ２５が飛び立って、ドーリットル率いる戦闘隊が本土を襲った。この日本初空襲は人々を震撼させた攻撃だった。
当時の、軍国少年たちにとってもこの空襲は忘れがたいことだった。
四月十八日（火）天気 曇
今日のちやうど今日の二年前、米機にくいにくい米機がわが神せいなる国土をけがした。思ひ出してもくやしいくやしい日だ。みんなの遊んでゐるのを見てもいつもとはちがつてゐるやうだ。
日記の記述はこうなっているが、本人が二年前のことを思い出してこれを書いたとは思えない。学校の先生が、朝の朝礼のときなどに言ったことを書いたのではないかと思われる。
言葉を使って日記を書く。戦争に対する思いについては恐らく書くように仕向けられていたように思われる。戦争になって軍事一色である。子どももそれに染まらざるを得なかった。
段々に分かってきた鉛筆部隊は軍隊式だった。統率する長は、教師ではあるがもっと権威や力を持ったようだ。挨拶、敬礼などが軍隊調だった。
（三）
一人の少年の精神形成史を追っているが、感受性が繊細なこの時期、文面から心の有り様が目に見えてきもする。
太平洋上の空母ホーネットから昭和１７年（1942）４月１８日、１６機のＢ２５が飛び立って、ドーリットル率いる戦闘隊が本土を襲った。この日本初空襲は人々を震撼させた攻撃だった。
