2012年12月18日

下北沢X新聞(2222)〜代田半島をフィールドワークする〜

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(一)
「代田に名所が三つある。鶴塚に、ダイダラボッチ、花見堂、代田三大伝説です。が、鶴塚と花見堂はほとんど痕跡がありません。それで今日の代田三大伝説、ダイダラボッチに代田連絡線に、代田の丘の鉄塔61号を巡っていきます。これら三つに共通することは地形です。地の傾きが関係してきます。土地がどのように傾斜していくかをぜじょ見て行きましょう」
 一昨日代田橋駅に皆集まった。私を入れて九名である。

 私は井の頭線を経由して代田橋へは行った。明大前で京王線に乗り換えた。上りをホームで待っていると思っていた方向とは逆から電車がくる。いつもは下りで感じていたが、上りでも同じことが起こった。明大前ミステリーである。

 明大前には人間の感覚を狂わせる何かが埋まっている。この駅は東西を貫く淀橋台を巧みに使った二層構造になっている。そこを下から上へと登っていくときに感覚が狂わされるのかもしれない。

 代田橋駅は地形的には面白い。淀橋台の背尾根を南へと進路を変えていくところにあるここを流れている玉川上水も屈曲していく。
「一時、玉川上水は通船を許可しましたね。ここの部分を曲がっていくときは苦労したでしょうね。『おい、おい、右に棹させよ』というような響きが聞こえたかもしれません」
「船頭が、告げていたのかもしれません。つぎは代田橋です…」
 これは米澤さんがいう。当時、お客ではなく載せていたのは荷物だ。いわゆる農産物である。ところがこの通船によって水が汚れた。明治初頭の試みはたちどころに廃止された。これによる代替輸送の需要もあって甲武鉄道は早くに開通したようだ。



(二)
 代田半島南への探訪は微傾斜をみつけてのフィールドワークだ。辻、辻で、立ち止まっては傾斜をチェックする。「あっち!」、「こっち!」だといいあう。我らは地形ウオッチャーはかたむきにかたよる。

 代田半島の背尾根道を行って宇田川湯に辿り着く。この前の道が分水嶺だ。東に流れるのが宇田川湯支流だ。この風呂屋の裏から流れた小川が東に下っていって沢を拡げていった。守山小学校の裏手ではここに水の溜となる池ができた。こここそがダイダラボッチだ。

 小学校の裏手の崖は杉林だった。反対北側の出頭山も木々が生えていた。水は宇田川支流からの流れだる。地形を観察していると守山や出頭山からの湧水があったと想像できる。前者の崖は残っているが後者の山のふくらみはない。出る山は、打たれる、これは削平されたように思われた。

「このダイダラボッチの右足は地形形成上重要ですよね。ダイダラボッチのこの右足をさけるために古道はこの縁を回りこんでる。そして下北沢へ斜めに道が突入しています。この道が基準のとなって住宅街の道路が作られました。町が奇妙にゆがんでいますよね」

「ほら、鎌倉通りと一番街の道が交差するところ、奇妙な交差をしていますね。清水博子は『私立学園の前のよじれた四つ角』(「街の座標」)で言っているところです。これもダイダラボッチの右足のいたずらですよね」

(三)
 私たちは、はるかな昔に形成された地形の上に住んでいる。その因縁因果の影響を受けて生活をしてきた。代田なり、北沢、それぞれの沢の溜でくらしてきた。

 沢は小さなサラダボールである。実はそれぞれには固有性がある。富士が見えたり、日当たりがよかったり、黒ぼくの土だったりということはある。

 沢なり、谷なり、小川なり、私たちは、かつてはこれによって形成される。地形と相談しながら働いてきた。が、我ら、近代人は、もう地形とは相談しなくなった。地形なんか何するものぞ、そんな驕りが見える。

(四)
 この夕暮れ、特急あずさで中央高速を眺めながら通ってきた。松本淺間温泉からの帰りだ。谷に沿っているこの道には一台の車も通っていなかった。

 松本でタクシーに乗ったとき、運転手は、スキー場や温泉などのキャンセルが相次いでいるとい教えてくれた。
「私は、昔は、高速がなかった時代、十何時間もかけて国道を東京まで行っていましたけど、高速になってしまったから、慣れてしまって、もうあんな苦労はしたくありませんね…電車なんかでも一昼夜かけて新宿までいっていましたよ。だけどもう今じゃ三時間でしょう。不便になるとよけいつらいですね」
 
甲府や松本などは大きな影響を受けているようだ。
 中央高速の笹子トンネルの天井落下事故は、近代の脆さをさらけだした事故だ。

 強力な工作機械ができたことで、今はどこでもかしこでもトンネルを掘ってしまう。あちこちにもぐらの穴ができている。これも年月が経てば風化していく。

 後先考えないで遮二無二国土に穴を空けている。どんどんどんどんと穴蔵をあけて、それが終わるとまた、穴を掘る。

「前え、進め」
 号令を掛けると軍隊は、行進していく。機械も同じで、スイッチを押すと、停まらない。前へ前へと進んで、人を踏みつぶし、自然を壊していく。(世田谷代田駅、代田連絡線への分岐カーブが今でも残っている)

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