2012年12月21日
下北沢Ｘ新聞(2224)〜改訂五版刊行：文士町文化地図〜
（一）
文化とはよじくれであり、ねじくれである。その土地固有のにおいでもある。下北沢一帯にはそこここに沢という地形の溜があって、それぞれに異なった色あいがある。
特徴的なのは線形だ。古代と近代とが合わさってできている。前者は今も道に地形に生きている。後者は鉄道だ。この絡みが文化を引き寄せた。
「あそこは、渋谷と新宿から離れている。その距離っていうのが案外に大事なんだ」
先だって淺間温泉に行った。このネットブログを発端として知り合った仲間と夜遅くまで飲んだ。そのときに目之湯の主人が下北沢の文化を語った。新宿や渋谷との関係においての位置取りがポイントだと。鋭い交点文化批評だ。
東京中心との距離ということはある。この離れ具合を具体的な線が現しているのも興味深い。それは高圧鉄塔駒沢線である。鉄道交点の西側をこれは南北に縦貫している。東京内輪線と言われる。東京の外縁部をぐるりと取り巻いているものだ。
私は、「代田の丘の鉄塔文学論」でこのラインこそ国木田独歩が『武蔵野』で述べている主調音だと述べた。つまりは都鄙境界だ。ここには密やかな物語が数知れぬほど眠っている。
かねてから校正に入っていた『下北沢文士町文化地図』改訂五版が刷り上がり、昨日、米澤邦頼さんが目黒の自宅に届けてくれた。
千部など軽いものだと思っていたがとんでもない。２５０部で一束、それが四束だ。今回印刷したのは一万部だ。全体では相当に嵩張るものだと知った。
（二）
近代とは何か。はっきり言って虚飾だ。嘘のオンパレードだ。あたかもそれらしく言って、人をだまくらかそうとしている。テレビなどは典型例だ。化粧で塗りたくり、言葉で飾り立て、飽きることなくがなりたてる。その嘘に辟易しているから商品などは買わない。デフレの原因は虚飾合戦にもある。
『下北沢文士町文化地図』、これははったりではない。質実的なものである。
「これはいいですよ、ぜひみなさんお買い求めください。一枚千円です」
こんなことは言わない。無料である。
この発行費用についても明示しておこう。世田谷区の「地域の絆推進事業」の助成、および市民から寄せられた寄付によって作ったものである。
地図は、これまで改版を重ねてきて、今回のものが出来上がった。苦労してきただけのことはある。主としてフィールドワークの賜物である。もちろん資料に基づいての調べというのも大きい。が、一番誇れるのは隈無く歩いているということだ。
私たちの街歩きは間もなく八十回に達する。鉄道交点一帯も何度も巡ってきた。その過程で手に入れた情報も少なくない。聞き込みも大きい。地元人脈がものをいう。例えば、三好達治、安岡章太郎、中村汀女の旧居情報もこれによって手に入れたものだ。そういう情報の集積の上にこれは出来上がったものだ。
（三）
今回の地図からは青丸マークがついた。芸術家の旧居跡を示すマークだ。これが全体に散らばってある。画家、彫刻家などである。
「山口逢春も代田に住んでいたんですよ」
これは米澤さんが聞き込みで得た情報だ。これも地図には載っている。
私たちは、下北沢文士町と呼称している。文士村とは呼ばない。文化人を集めたのは人ではない。機械近代だ。つまりは、小田急線と井の頭線のクロスだ。四方向から来られる、逃げられる。言ってみれば漂泊者の集まる町だ。文学とは転変、さすらい、漂泊である。
男たちもここを目指した。小田原で、吉祥寺で、新宿で、渋谷で、欲情したときに、即電車に乗る。どこからでも囲っている女のところに行ける。
色気も、教会も、医院も、クロスには、クリスも、クロイツも、なんでもかんでも集まって来る。
下北沢の酒場「ふるさと」で話していたとき、その一人がすぐ側が彼女の「ふるさと」だったと言う。６０年も前のことだが、やはり、貸している部屋の上にも、下にも囲われている女性がいたという。
近代の文士町、アートタウンは、多種多様な価値を集めた。それが地図を見て了解できる。ふきだまり文化地図である。
〇下北沢文士町文化地図改訂五版。
近隣の学校に配布するつもりだが終業式２５日は配布物が多く、それに紛れると見てもらえなくなるということで新年になって配布することにした。
2012/12/21、今日から代田「邪宗門」で配布する。例年どおり、桜まつりのとき、安吾文学碑前で配布するつもりだ。
なお、旧居跡はピンポイントでは示していない。個々人のプライバシーに配慮してのことだ。この地図に基づいて散歩される方は、居住者への配慮をしてほしいことだ。これは是非お願いしたい。
地図寄金をされた方はその旨を伝えて多く持って行ってください。
遠方の方でぜひ欲しいという場合は、郵送で対応したい。当方にメールを。
近代とは何か。はっきり言って虚飾だ。嘘のオンパレードだ。あたかもそれらしく言って、人をだまくらかそうとしている。テレビなどは典型例だ。化粧で塗りたくり、言葉で飾り立て、飽きることなくがなりたてる。その嘘に辟易しているから商品などは買わない。デフレの原因は虚飾合戦にもある。
『下北沢文士町文化地図』、これははったりではない。質実的なものである。
「これはいいですよ、ぜひみなさんお買い求めください。一枚千円です」
こんなことは言わない。無料である。
この発行費用についても明示しておこう。世田谷区の「地域の絆推進事業」の助成、および市民から寄せられた寄付によって作ったものである。
地図は、これまで改版を重ねてきて、今回のものが出来上がった。苦労してきただけのことはある。主としてフィールドワークの賜物である。もちろん資料に基づいての調べというのも大きい。が、一番誇れるのは隈無く歩いているということだ。
私たちの街歩きは間もなく八十回に達する。鉄道交点一帯も何度も巡ってきた。その過程で手に入れた情報も少なくない。聞き込みも大きい。地元人脈がものをいう。例えば、三好達治、安岡章太郎、中村汀女の旧居情報もこれによって手に入れたものだ。そういう情報の集積の上にこれは出来上がったものだ。
（三）
今回の地図からは青丸マークがついた。芸術家の旧居跡を示すマークだ。これが全体に散らばってある。画家、彫刻家などである。
「山口逢春も代田に住んでいたんですよ」
これは米澤さんが聞き込みで得た情報だ。これも地図には載っている。
私たちは、下北沢文士町と呼称している。文士村とは呼ばない。文化人を集めたのは人ではない。機械近代だ。つまりは、小田急線と井の頭線のクロスだ。四方向から来られる、逃げられる。言ってみれば漂泊者の集まる町だ。文学とは転変、さすらい、漂泊である。
男たちもここを目指した。小田原で、吉祥寺で、新宿で、渋谷で、欲情したときに、即電車に乗る。どこからでも囲っている女のところに行ける。
色気も、教会も、医院も、クロスには、クリスも、クロイツも、なんでもかんでも集まって来る。
下北沢の酒場「ふるさと」で話していたとき、その一人がすぐ側が彼女の「ふるさと」だったと言う。６０年も前のことだが、やはり、貸している部屋の上にも、下にも囲われている女性がいたという。
近代の文士町、アートタウンは、多種多様な価値を集めた。それが地図を見て了解できる。ふきだまり文化地図である。
〇下北沢文士町文化地図改訂五版。
近隣の学校に配布するつもりだが終業式２５日は配布物が多く、それに紛れると見てもらえなくなるということで新年になって配布することにした。
2012/12/21、今日から代田「邪宗門」で配布する。例年どおり、桜まつりのとき、安吾文学碑前で配布するつもりだ。
なお、旧居跡はピンポイントでは示していない。個々人のプライバシーに配慮してのことだ。この地図に基づいて散歩される方は、居住者への配慮をしてほしいことだ。これは是非お願いしたい。
地図寄金をされた方はその旨を伝えて多く持って行ってください。
遠方の方でぜひ欲しいという場合は、郵送で対応したい。当方にメールを。
