2012年12月29日
下北沢Ｘ新聞(2228)〜2012年歳末雑感〜
（一）
性と戦争というのはあるだろう。
「学徒出陣式の演出というのはとてもよくできています。特には女学生の存在は大きいですよ」
暮れに松本淺間温泉で小人数で忘年会をした。そのときに目之湯旅館の主人がそんな話をした。なるほどと思った。
昭和十八年十月二十一日、明治神宮外苑競技場で「出陣学徒壮行会」が行われた。そのときに中学生や女学生などが五万名ほども動員されている。雨の降る中を出陣学徒が粛粛と行進していく。悲壮な思いでそれを見守っている女性というのも場を盛り上げた。
女性は出陣式の色を添えた。若い雄に若い雌を配置することで動物的本能に訴えるということはあったように思う。
ネット動画で壮行会は見られる。とくには「海ゆかば」を全員で合唱する場面は今見ても壮観だ。合唱の歌の質についてはよく分からない。男性の声が主には聞こえるがこの響きは女性の歌声によって色づけられているのではないかと思った。
戦争では性愛は隠される。女々しいこととして秘匿される。勇者は、女性に後ろ髪惹かれることはなかった。女よりも国家を愛したとされる。
学徒出陣式のことから思い出したことがある。このとき答辞に立ったのは江橋慎四郎氏である。読み上げられた一節「生等、もとより生還を期せず」はよく知られたことばだ。
常日頃接していたときは、さしたる感懐もなかったが、今になって思うと、「へぇ、そうだったのか」と改めて感慨を持つ。自身、勤務していた学校の校長を彼は務めていた。
学徒出陣式のことは話題にはなったが、それ以上突っこんで聞いたことはなかった。
（二）
希望を捨てることなく持つことで状況は変わる。
一つの考えとしては言えることだ。が、テレビを見ていて、こんなことばがほとんど通用しない、そんな状況に陥っている人の言葉を二つ覚えている。
一つは、ツバル共和国の現住民のことばだ。
「海水面が高くなってきていて自分の島はいずれ沈む、これは自分の力ではどうにもならない」
彼らの主食はタロイモだったが、海水が畑を襲い、ほとんどこれはとれなくなって、外国産のもので凌いでいると言う。
もう一つは、福島県浪江町の住民だ。彼は漁師である。地震の後、船を沖合に出したことで彼は助かった。が、肉親はなくなり、かつまた原発により避難民となった。
「前も、困ったことはあった。それはそれで努力すればなんとかなった。が、今度ばかりはどうにもならない。全く夢も希望もない…」
地球温暖化が原因で自分の住む場が奪われつつある。放射能汚染によって故郷に戻れずに、避難生活を余儀なくさせられている。
どうにもならないことの一例だ。が、こんなことにとどまらない。にっちもさっちもいかなくなっていることが身近なところでも増えている。
（三）
｢私が天皇陛下のために、天皇陛下を信じ、大和魂を信じていき続けていたということだけはお伝えしたい。｣
横井庄一さんのこの言葉はよく知られている。彼は戦争後２８年間もグアムに隠れ潜んでいた。なぜなのかに対する返答だ。これについてたまたま読んでいた『安曇野』の中で臼井吉見が批評していた。
おそらくは当人の口から、いたって自然に出た、本能的な嘘と僕はみる。こんな場合、世間にむかって、どんな表情と、どんな挨拶とを用意しなければ、仲間に入れてもらえないかを、日本人なら誰でも知っている。日本人特有の本能的な保護色の操作といっていいだろう。「天皇のため」というのがそれである。
『安曇野』第五部 筑摩書房
臼井は横井さんの例を挙げて述べているが、今日我々が持っている文化でもある。それを彼は鋭く批評している。確かに、うさんくさい言動を普通の人だけでなく公人もしている。多くは思想は持っていず感覚的に生きている。
〇雑感
ノロウイルスに直撃された。これまでの疲れが一気に出たようだ。ブログものんびりとやることにしたい。
希望を捨てることなく持つことで状況は変わる。
一つの考えとしては言えることだ。が、テレビを見ていて、こんなことばがほとんど通用しない、そんな状況に陥っている人の言葉を二つ覚えている。
一つは、ツバル共和国の現住民のことばだ。
「海水面が高くなってきていて自分の島はいずれ沈む、これは自分の力ではどうにもならない」
彼らの主食はタロイモだったが、海水が畑を襲い、ほとんどこれはとれなくなって、外国産のもので凌いでいると言う。
もう一つは、福島県浪江町の住民だ。彼は漁師である。地震の後、船を沖合に出したことで彼は助かった。が、肉親はなくなり、かつまた原発により避難民となった。
「前も、困ったことはあった。それはそれで努力すればなんとかなった。が、今度ばかりはどうにもならない。全く夢も希望もない…」
地球温暖化が原因で自分の住む場が奪われつつある。放射能汚染によって故郷に戻れずに、避難生活を余儀なくさせられている。
どうにもならないことの一例だ。が、こんなことにとどまらない。にっちもさっちもいかなくなっていることが身近なところでも増えている。
（三）
｢私が天皇陛下のために、天皇陛下を信じ、大和魂を信じていき続けていたということだけはお伝えしたい。｣
横井庄一さんのこの言葉はよく知られている。彼は戦争後２８年間もグアムに隠れ潜んでいた。なぜなのかに対する返答だ。これについてたまたま読んでいた『安曇野』の中で臼井吉見が批評していた。
おそらくは当人の口から、いたって自然に出た、本能的な嘘と僕はみる。こんな場合、世間にむかって、どんな表情と、どんな挨拶とを用意しなければ、仲間に入れてもらえないかを、日本人なら誰でも知っている。日本人特有の本能的な保護色の操作といっていいだろう。「天皇のため」というのがそれである。
『安曇野』第五部 筑摩書房
臼井は横井さんの例を挙げて述べているが、今日我々が持っている文化でもある。それを彼は鋭く批評している。確かに、うさんくさい言動を普通の人だけでなく公人もしている。多くは思想は持っていず感覚的に生きている。
〇雑感
ノロウイルスに直撃された。これまでの疲れが一気に出たようだ。ブログものんびりとやることにしたい。
