2013年03月25日
下北沢Ｘ新聞(2286)〜東京西郊鉄道ネットワーク異変〜
都市はますます人工化していく。その中に住んでいると自然とは無縁になっていく。ところが、この緑の宇宙船地球号はますます荒廃しつつある。危機的な状況だ。北極の氷の急激な減少、海岸線の浸食、海水面の上昇、砂漠化の進行など例を挙げればきりがないほどだ。地球の緑の開発が温暖化を一層に拡大させている、ところが、これらへの対策はほとんどなおざりにされたままだ。
CO2の２５パーセント削減を鳩山総理大臣が宣言したのはついこの間だった。が、これも原発シビアアクシデントでたちまちに頓挫してしまった。
下６１、北沢タウンホール行き小田急バスにはよく乗る。「地球温暖化防止のためにアイドリングストップをしています」というアナウンスが流れる。この注意喚起はよく分かる。が、実態はアイドリングストップでは間に合わないほどに温暖化は急速に進行している。オゾンホールの拡大は停まらない。しかし、それでも都市ではビルを建てたり、地下を掘ったりと人工化の勢いは全く衰えない。
寺田寅彦は、『天災と国防』というエッセイの中でこう述べている。
文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じた。そうして、重力に逆らい、風圧水力に抗するようないろいろの造営物を作った。そうしてあっぱれ自然の暴威を封じ込めたつもりになっている…
全くそうである。都市に住んでいると我々が基盤としている自然が全く見えない。わずかに目を凝らしてみると地形の起伏があって武蔵野自然が見える。ところが、この凹凸はいとも簡単に壊される。私の住んでいる辺りをぐるりと散歩しただけで、関東ローム層の赤土がむき出しになっている工事現場が至る所で見られる。「自然征服の野心」は地形粉砕にまで及んでいる。
我々は、自然との調和的な生活を本当は求められている。が、都市人は、人工化された場こそが自然だと錯覚してきている。根本的なところは、人口の偏在だ。
首都圏人口が３千４００万にもなると聞いて恐ろしくなったことがある。しかし、それは日常的に目にすることだ。十両編成の電車がここでは頻繁に行き交っている。
「満員時に、一車両に３００人乗っていると、一編成で、３千人、一つの町の人口を乗せた電車が行き来していると考えると、これはとんでもない数ですね」
街歩きで言ったことがある。都会の電車は増結に増結を重ねてゆく、反対に、田舎の電車は両数が減って一両でとことこと走っている。
都会はますます肥え太り、地方はますます痩せ細って潰れかかっている。地球温暖化ということからすると都市の進歩発展は、これを促すことになる。人口の分散は、避けて通れない課題である。
（一）
桜の花が咲いた。しかし、これが早過ぎて皆、その気分になっていない。季節だけではないようだ。都市の交通革命の速度が速すぎて、それに追いつけないということもある。
「中目黒で日比谷線から東横線に乗り換えたのよ。ちょうど帰宅ラッシュの時間だったの。東横線への直通運転がなくなったせいでホームが人であふれていたのね、それでやってきた急行は満員、次にやってきた各停も満員、私は都立大学駅で降りるから前の方の車両に乗ったの。出口に近いからね、次は祐天寺、ここは出入り口が真ん中にあるから、誰も降りない、誰も乗らない、だからドアのところに黙って立っていればよかったのね。ところが妙なことがあって、もこもこって後ろから人が押してくるのよ。なんとまあ、降りる人が何人もいたのよ。これって一体何？おかしなことね？」
うちの近所の奥さんの話だ。それは渋谷駅地下化の影響らしい。地上からホームに降りてくると自然に前の方に行くように構造的になっている。乗客は勝手が分からないからそのまま前の方に乗ってしまうらしい。
駅が地下化すると全体を見渡せないから、自分がどこにいるか分からない。
「渋谷に初めていったんだけど、どこに自分がいるのか分からないでしょう。あれ、ホームに矢印を持った警備員の人が立っているでしょう、もうあの矢印辿るしかないようね。ようやっと地上に出られてホッとしたのよ」
これも近所の奥さんの話だ。
（二）
私も東横線利用者だ。地下化した渋谷新駅の評判はよくない。昨日の「朝日新聞」朝刊の投書欄にも意見が載っていた。
新ホームの第一印象は「狭い」。エスカレーターはすぐに長蛇の列ができ、利用するには延々と続く列の最後尾へ移動する必要がある。しかも並んで待っていると、エスカレーターに乗らないうちに別の電車が到着、ホームは人であふれかえった。平日の午前１０時半でこれでは、週末やラッシュ時はどうなるのだろう。
この投稿者は、「東横線と東京メトロ副都心線の乗り入れで、利便性はアップしたが、元々の利用者にとって、新駅の使い勝手はかなり悪いと感じた」と結んでいる。
陸軍と海軍は仲が悪い。終戦を巡っての対立は戦争終結を遅らせた。渋谷駅では、守旧勢力は旧国鉄のJR、これが陸軍、新規勢力は浜の港から来た東急海軍だと比喩的に言える。前者は湘南新宿ライン、後者は東横線、乗客獲得競争の始まりだ。
海軍側は、わざと乗り換えを不便にさせて、新宿への直行客を奪うつもりか。乗客の利便性よりもそれぞれの我の強さ。利用する人間のことを考えてはいないのではないかと考える。乗客はあたふたするばかりだ。JRとの連絡乗り換えが著しく不便になった。
（三）
もっと不便になったのは帝都線への乗り換えである。まさにウナギの寝床のような地下通路を延々と歩いていく。井の頭線は、帝都線、これは陸軍系か？。邪険に扱っているように思える。
地下駅となった下北沢でも同じで乗り換え時間が五分だというが「五分では行かない」との話だ。
これも勘ぐりだが、もともと井の頭線は小田急系列の会社だった。戦後の、いわゆる大東急分離劇において、京王に組み入れられた。帝都線を不便にして意趣返しをしているわけではないと思うが。（地下化した翌日の下北沢駅構内。下の写真は米澤邦頼さんが送ってくれた画像）
桜の花が咲いた。しかし、これが早過ぎて皆、その気分になっていない。季節だけではないようだ。都市の交通革命の速度が速すぎて、それに追いつけないということもある。
「中目黒で日比谷線から東横線に乗り換えたのよ。ちょうど帰宅ラッシュの時間だったの。東横線への直通運転がなくなったせいでホームが人であふれていたのね、それでやってきた急行は満員、次にやってきた各停も満員、私は都立大学駅で降りるから前の方の車両に乗ったの。出口に近いからね、次は祐天寺、ここは出入り口が真ん中にあるから、誰も降りない、誰も乗らない、だからドアのところに黙って立っていればよかったのね。ところが妙なことがあって、もこもこって後ろから人が押してくるのよ。なんとまあ、降りる人が何人もいたのよ。これって一体何？おかしなことね？」
うちの近所の奥さんの話だ。それは渋谷駅地下化の影響らしい。地上からホームに降りてくると自然に前の方に行くように構造的になっている。乗客は勝手が分からないからそのまま前の方に乗ってしまうらしい。
駅が地下化すると全体を見渡せないから、自分がどこにいるか分からない。
「渋谷に初めていったんだけど、どこに自分がいるのか分からないでしょう。あれ、ホームに矢印を持った警備員の人が立っているでしょう、もうあの矢印辿るしかないようね。ようやっと地上に出られてホッとしたのよ」
これも近所の奥さんの話だ。
（二）
私も東横線利用者だ。地下化した渋谷新駅の評判はよくない。昨日の「朝日新聞」朝刊の投書欄にも意見が載っていた。
新ホームの第一印象は「狭い」。エスカレーターはすぐに長蛇の列ができ、利用するには延々と続く列の最後尾へ移動する必要がある。しかも並んで待っていると、エスカレーターに乗らないうちに別の電車が到着、ホームは人であふれかえった。平日の午前１０時半でこれでは、週末やラッシュ時はどうなるのだろう。
この投稿者は、「東横線と東京メトロ副都心線の乗り入れで、利便性はアップしたが、元々の利用者にとって、新駅の使い勝手はかなり悪いと感じた」と結んでいる。
陸軍と海軍は仲が悪い。終戦を巡っての対立は戦争終結を遅らせた。渋谷駅では、守旧勢力は旧国鉄のJR、これが陸軍、新規勢力は浜の港から来た東急海軍だと比喩的に言える。前者は湘南新宿ライン、後者は東横線、乗客獲得競争の始まりだ。
海軍側は、わざと乗り換えを不便にさせて、新宿への直行客を奪うつもりか。乗客の利便性よりもそれぞれの我の強さ。利用する人間のことを考えてはいないのではないかと考える。乗客はあたふたするばかりだ。JRとの連絡乗り換えが著しく不便になった。
（三）
もっと不便になったのは帝都線への乗り換えである。まさにウナギの寝床のような地下通路を延々と歩いていく。井の頭線は、帝都線、これは陸軍系か？。邪険に扱っているように思える。
地下駅となった下北沢でも同じで乗り換え時間が五分だというが「五分では行かない」との話だ。
これも勘ぐりだが、もともと井の頭線は小田急系列の会社だった。戦後の、いわゆる大東急分離劇において、京王に組み入れられた。帝都線を不便にして意趣返しをしているわけではないと思うが。（地下化した翌日の下北沢駅構内。下の写真は米澤邦頼さんが送ってくれた画像）
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この記事へのコメント
2. Posted by きむらたかし＠三田用水 2013年03月28日 19:01
［一夜城・現代版］
昨日夕刻、お初で、下北沢駅に降り立ちました。
供用開始された、後の急行線専用ホームが、断面図で見ていたよりイメージよりも深い（それでも、奈落の底に落ちてゆくような、千代田線・新御茶ノ水駅とか、東京駅の横須賀・総武線ホームほどではない）。
しかし、びっくりしたのは、仮通路、とくに南口ので（井の頭線線方向も、少し驚きましたが）、よくもまぁ、終電・始発間で、ここまで作ってしまったものです。まさに、現代版の一夜城。
山本・米澤両氏が、その超絶技巧の工事経過を観察されていたようですので、ここへのコメントを期待いたします。
昨日夕刻、お初で、下北沢駅に降り立ちました。
供用開始された、後の急行線専用ホームが、断面図で見ていたよりイメージよりも深い（それでも、奈落の底に落ちてゆくような、千代田線・新御茶ノ水駅とか、東京駅の横須賀・総武線ホームほどではない）。
しかし、びっくりしたのは、仮通路、とくに南口ので（井の頭線線方向も、少し驚きましたが）、よくもまぁ、終電・始発間で、ここまで作ってしまったものです。まさに、現代版の一夜城。
山本・米澤両氏が、その超絶技巧の工事経過を観察されていたようですので、ここへのコメントを期待いたします。
1. Posted by きむらたかし＠三田用水 2013年03月26日 10:55
［東横線・新渋谷駅］
昨日初めて利用しました。
副都心線専用駅時代は、川越に行くのによく使ってましたが、あのころの閑散とした景色がウソのよう。こうなってみると確かに「狭い」ですよねぇ。
ある程度は慣れていた帝都線や半蔵門線への乗り換えはともかく、ちょっとほかの場所に行こうとすると確かに訳がわからなくなりますが、「委細構わず、とにかく一刻も早く地上に出る」というのがコツかもしれません。
ところで、帝都線ですが、予測通り、地表の信号機が消滅しました。だいぶ前に東横線のもいつの間にか無くなっていましたし、これも絶滅危惧種。今や小田急のそれは貴重です。
昨日初めて利用しました。
副都心線専用駅時代は、川越に行くのによく使ってましたが、あのころの閑散とした景色がウソのよう。こうなってみると確かに「狭い」ですよねぇ。
ある程度は慣れていた帝都線や半蔵門線への乗り換えはともかく、ちょっとほかの場所に行こうとすると確かに訳がわからなくなりますが、「委細構わず、とにかく一刻も早く地上に出る」というのがコツかもしれません。
ところで、帝都線ですが、予測通り、地表の信号機が消滅しました。だいぶ前に東横線のもいつの間にか無くなっていましたし、これも絶滅危惧種。今や小田急のそれは貴重です。
