2013年04月13日
下北沢Ｘ新聞(2299)〜都市時間論、渋谷・下北沢・雪が谷２〜
（一）
都市時間はその場所によって微妙に違ってくる。たまたま渋谷・下北沢・雪が谷と並べてみたが、なるほどこれらの土地に流れ行く秒数はコンマで違っている。
その地域それぞれに流れている時間がある。その固有性に慣れ親しんでいた。ところが、東横線渋谷駅が地下化して、渋谷時間については大きく変わった。これが著しく評判がよくない。「私はもう渋谷と縁を切ったから！」という過激な声すら聞こえてくる。なぜだろう？。
はっきり言えることは、ためがなくなったことである。
「こういう頭端式ホームを失うことは大きな痛手ですよ」
確か、この東急地下化を追っていたテレビ番組で会社の運行部長が言っていたと記憶している。頭から入って来て、それがまた後ろ向きに出て行く。通常運行の姿だった。「俺様が渋谷駅だ」と言わんばかりの存在感があった。なにしろ一つの鉄道会社が駅の全ての終点と始発とを独り占めにしていた。
この東横線には、渋谷時間がしっかりとあった。頭端式ホームに降りて、乗り換える。刻み目のある時間だった。
時間とは何か？、それは流れそのものにある。この経過を通して子どもは成長し、青年から中年、老年へと変わっていき。やがて、死を迎える。
時間とて同じだ。これもプロセスゆえにファィナルがある。この間何気なく、BS「コズミックフロント」を見てしまった。恐ろしいことを淡々と言っていた。時間の流れの結末は、三通りほどあるという。いずれも怖い結末だ。「宇宙は永久に膨張し続け、やがてエネルギーや物質の密度が低下して絶対零度にまで凍りついてしまう」とか、「宇宙が急激に膨張し、素粒子レベルにまで引き裂かれて破裂してしまう」とかだ。
「それは何億年も先のことでそれまでは十分に余裕があります」
そんなことが解説にあったが、何の慰めにもならないと思った。終われば終わる。
渋谷駅頭端駅ホームは終わってしまった。今考えると、着いてみな降りるというのは大したものだったと思う。これが消失したことは、終末の何れに当てはまるのだろうか。計画では氷漬けにされないで壊されるようだ。渋谷駅は「素粒子レベルまでに引き裂かれて破裂」してしまうということになろうか。
（二）
地下化した部分の乗車時間が長くなったと皆言う。代官山渋谷駅間である。しかし、従来線の地下を通っているから距離も、時間も変わりがないはずだ。なぜ長く感じるのだろうか。
簡単である。車窓が闇だからだ。地下ゆえに閉じこめられた意識がある。かつての渋谷高架橋では回りの景色が見られた。どこを走っているか、見当がついた。渋谷C曲線音楽が聞こえると並木橋を過ぎたのだと分かった。
この渋谷C曲線楽曲、地下になってもやはり演奏している。ところがこの音は、磨り硝子の裏を強く引っ掻くような音がして、音楽性にはほど遠い。耳うるさい音だ。
（三）
時間の中に自分が実在している。必要なことだ。が、地表ならばこそ自分の位置は確認できるが地下では分からない。渋谷で乗り換えているときに自分がどこにいるのかわからなくなる。とくには井の頭線への乗り換えのときである。
ともあれ、渋谷駅が殺伐としている。各所に警備員がいて、あっちだ、こっちだと言う。この案内、ビックバンが到来するまで永遠に続くのだろうか。
警備員の案内なしにはどこにも行けなくなる。
「地獄はこちらです」
「天国へ行かれる方は、こちらです。地獄方面の方は、あらかじめ舌を出して置いてください。閻魔様がひっこぬいてくれますから……」
そんな妄想を抱いた。
〇参考情報（渋谷駅がどのように変わったかということについて読者からメールでの情報が寄せられた。それを次に掲げる。）
・代官山−渋谷が地下になって以前よりも乗車時間が長くなったように感じられる。
実際にはあまり距離は変わっていないし、地上時代よりも速度が出せるはずだから時間はそんなに変わっていないはず。車窓風景が見えないから長く感じられる。錯覚だと思う。
・地下駅は通路が狭い。通路や階段の幅が、東横線の利用者数を想定して作られていないから混雑がひどい。階段の配置の関係で、階上へ上がるのに遠回りさせられる。
地下の空気の循環をよくするため、卵型の空洞を作って地上の空気を取り入れられる
ようにしたというが、そのために動線がややこしくなっている。
設計したえらい建築家さんは、地下の空気の流れは読めたかもしれないが、そこを利用する人たちの空気までは読めなかったようである（みなイライラしながら階段を上がっている）。
・東横線から渋谷の街の表情が見えなくなった。
街の変遷が見えない。渋谷の街に着くなあ、終着に着くなあという感じがしない。
・東横のれん街と、その付近の店舗（スターバックスや銀行ＡＴＭ、定期券売り場）
が閉鎖され、東横線とＪＲの乗り換え通路は廃墟のようになった。怖いくらいに寂しい。
・新しい東横のれん街は通路が広くなって行き来しやすくなったという。
昔の東横のれん街はたしかに通路が狭かったが、それが特徴だった。
人とぶつかりながら行き交う。両方の店がよく見える。いつもお祭りのように賑わっ
ている。ごちゃごちゃした感じがのれん街の特徴だった。フードショーやヒカリエ地下の食料品街と何ら変わりがなくなった。
・新宿まで通勤しているが、渋谷からは絶対ＪＲ。
緑多き車窓を見ず、地下の闇を見つめて通勤するのは気が狂いそうだから。
宮下公園の雑木、神宮通公園の桜、キリン本社前のハナミズキ、水無橋たもとの桜、国立代々木競技場のイチョウ並木、原宿駅臨時ホームのツツジ、ハナダイコン、紫陽花、サザンカ、原宿駅宮廷ホームの桜、明治神宮の杜の緑、北参道のイチョウ並木、山手貨物線青山街道踏切の菜の花、それらを見ずには新宿に行けない。
地下化した部分の乗車時間が長くなったと皆言う。代官山渋谷駅間である。しかし、従来線の地下を通っているから距離も、時間も変わりがないはずだ。なぜ長く感じるのだろうか。
簡単である。車窓が闇だからだ。地下ゆえに閉じこめられた意識がある。かつての渋谷高架橋では回りの景色が見られた。どこを走っているか、見当がついた。渋谷C曲線音楽が聞こえると並木橋を過ぎたのだと分かった。
この渋谷C曲線楽曲、地下になってもやはり演奏している。ところがこの音は、磨り硝子の裏を強く引っ掻くような音がして、音楽性にはほど遠い。耳うるさい音だ。
（三）
時間の中に自分が実在している。必要なことだ。が、地表ならばこそ自分の位置は確認できるが地下では分からない。渋谷で乗り換えているときに自分がどこにいるのかわからなくなる。とくには井の頭線への乗り換えのときである。
ともあれ、渋谷駅が殺伐としている。各所に警備員がいて、あっちだ、こっちだと言う。この案内、ビックバンが到来するまで永遠に続くのだろうか。
警備員の案内なしにはどこにも行けなくなる。
「地獄はこちらです」
「天国へ行かれる方は、こちらです。地獄方面の方は、あらかじめ舌を出して置いてください。閻魔様がひっこぬいてくれますから……」
そんな妄想を抱いた。
〇参考情報（渋谷駅がどのように変わったかということについて読者からメールでの情報が寄せられた。それを次に掲げる。）
・代官山−渋谷が地下になって以前よりも乗車時間が長くなったように感じられる。
実際にはあまり距離は変わっていないし、地上時代よりも速度が出せるはずだから時間はそんなに変わっていないはず。車窓風景が見えないから長く感じられる。錯覚だと思う。
・地下駅は通路が狭い。通路や階段の幅が、東横線の利用者数を想定して作られていないから混雑がひどい。階段の配置の関係で、階上へ上がるのに遠回りさせられる。
地下の空気の循環をよくするため、卵型の空洞を作って地上の空気を取り入れられる
ようにしたというが、そのために動線がややこしくなっている。
設計したえらい建築家さんは、地下の空気の流れは読めたかもしれないが、そこを利用する人たちの空気までは読めなかったようである（みなイライラしながら階段を上がっている）。
・東横線から渋谷の街の表情が見えなくなった。
街の変遷が見えない。渋谷の街に着くなあ、終着に着くなあという感じがしない。
・東横のれん街と、その付近の店舗（スターバックスや銀行ＡＴＭ、定期券売り場）
が閉鎖され、東横線とＪＲの乗り換え通路は廃墟のようになった。怖いくらいに寂しい。
・新しい東横のれん街は通路が広くなって行き来しやすくなったという。
昔の東横のれん街はたしかに通路が狭かったが、それが特徴だった。
人とぶつかりながら行き交う。両方の店がよく見える。いつもお祭りのように賑わっ
ている。ごちゃごちゃした感じがのれん街の特徴だった。フードショーやヒカリエ地下の食料品街と何ら変わりがなくなった。
・新宿まで通勤しているが、渋谷からは絶対ＪＲ。
緑多き車窓を見ず、地下の闇を見つめて通勤するのは気が狂いそうだから。
宮下公園の雑木、神宮通公園の桜、キリン本社前のハナミズキ、水無橋たもとの桜、国立代々木競技場のイチョウ並木、原宿駅臨時ホームのツツジ、ハナダイコン、紫陽花、サザンカ、原宿駅宮廷ホームの桜、明治神宮の杜の緑、北参道のイチョウ並木、山手貨物線青山街道踏切の菜の花、それらを見ずには新宿に行けない。
