2013年04月15日
下北沢Ｘ新聞(2300)〜小田急廃線跡の踏切をさすらう〜
（一）
戦中というのは踏切が生々しく生きていて、レール踏み面を絶えず電車の車輪が磨いているときだ。警護役のガードマンも必死であった。しかし、線路が廃線となると全くその緊張が無くなる。むしろ通行人としゃべる方が気晴らしになるようだ。
当然のことだが踏切のガードマンは、その踏切専属だ。ゆえにその踏切の固有性を知っている。こちらの認識では一番混み合う踏切は東北沢６号だと思っていたが彼らに言わせる違うという。数年間踏切に立っていた彼らのいうことの方が正しいようだ。
１３日、土曜日、小田急が地下化した後の踏切を九個所巡った。
線路空間には静寂という穴がすっぽりと空いていた。ついこの間まで漲っていた緊張がまるでなにもない。踏切跡には警備員がいるが彼らも手持ちぶさただった。ここに流れ始めた時間はいわく言い難いものだった。消失踏切九つを巡っての感想だ。
東北沢へ行くのに渋谷経由は避けた。電車で渋谷地下駅に行くことへの嫌悪感があったからだ。迷宮地下駅を避けてバスで行くことにした。自宅から野沢龍雲寺まで歩いていく、ここからバスだ。停留所に着くとあいにく「下６１北沢タウンホール行」は出ていくところだった。が、すぐに「森９１ 新代田行」が来た。これで代田四丁目で降りる。世田谷代田駅まではすぐである。最初は、世田谷代田１号踏切だ。が、もう踏切という風情はない。わずかに道路の真ん中に線路が通っていて踏切だったことが分かるだけだ。
電車が頻繁に通っていたときは、被写体はいくらもあった。が、踏切が踏切でなくなった瞬間から、ここの生気が失われた。踏切が生きていたときファィンダーはどこを向けても絵があった。おお、ロマンスカーがいい具合で踏切を渡っている、シャッターチャンスだ！なんて、ところが死んだ踏切にはこれがない。
（二）
旧世田谷代田１号踏切脇のお店の主人に声を掛けた。
「もう６０年も住んでいるけど、電車が通らなくなって拍子抜けしているよ。朝上りの始発が五時何分、これが身にしみていたんだ。一日のはじまりだったけどそれもなくてね」
電車が時計代わりをしていたようだ。
「静かになって、電車の音が聞こえなくなって、他の音が聞こえるんだよ。環七を通る車の音とかね…」
「電車に乗るのに不便になったな。下のホーム行くのに五分もかかるんだもの……」
世田谷代田駅の階段は降りていくまで１０６段もある。煩悩の数よりも多い、苛酷だ。地下深く降りて行く階段が急角度で続いている。ネットではこれが大きな評判になっている。「下を見ると頭がくらくらするほどである」という。「恐怖のジェットコースター階段だ！」とも。
好奇心から地底探検を試みるという手合いにはいいのかもしれない。店のおやじさん、通勤する人が大変になっちゃってねと言う。
地下化するに当たっては、前々から利点だけが宣伝されてきた。不便さは言わない。蓋を開けてみるとなんだとんでもない！ということんなっている。
東北沢、下北沢、世田谷代田の地下化は、この駅利用者の便利よりも、以遠の人達の利便を考えて作られたということができてみてはっきりした。
世田谷代田、環七で街は分断された。そして、また、大深度駅になって、通勤に不便になった。周辺地価の下落要因になる可能性がある。
（三）
世田谷代田駅を出て、線路の北側を旧下北沢５号踏切跡に架かっている跨線橋へと行った。通っていく住宅街も静かだ。絶え間なく電車の音が聞こえていたのに、静かすぎる。斎田家のお稲荷さんのところ、静寂に満ち満ちていた。樹木があってそしてお稲荷さん、とんでもない田舎に来てしまったような錯覚を覚えた。
（上、一号踏切から世田谷代田駅構内。下、梅ヶ丘方向）
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この記事へのコメント
1. Posted by きむらたかし＠三田用水 2013年05月22日 23:12
【東北沢駅：地上仮駅→地下仮駅への変遷】
この種のことは、すぐに忘れてしまうのが必定なので、今のうちに…
・プラットホーム
現在の地下仮ホームは、将来の各駅停車用ホーム（本ホーム）から、将来の急行線の位置までホームの幅を仮設の板で広げて作られている。
（本ホームの端には点字ブロック用の凹みがあり、今は、平らな蓋で塞がれている。）
従って、将来も、世田谷代田駅と違ってホームの深さに変化はなく、エレバーター・エスカレーターや階段も恒久仕様のものが設置されている。
但し、ホームの位置は、急行線の下北沢との間の急勾配の部分を避けて、将来のそれよりも、２両分（４０メートル）ほど、代々木上原寄りに設けられ、旧代々木上原３号踏切よりも新宿寄りの位置まで仮設ホームが設けられている。
（このことは、下北沢寄りの今はトンネル内の壁に、駅名表示版が設けられ、なぜか点灯していることからわかる。）
・信号機
（おそらく、下り線の下北沢方も同様と思われるが）
地上仮駅の時代までは、上り線、新宿方ホーム端の信号が、出発信号機だったのに対し、地下仮駅化された後は、信号が通常の閉塞信号機になっている。
従前、出発信号だったのは、かつて待避線があった名残りとも考えられる一方
通常の閉塞信号になったのは、将来、この線が通過線になるので、その場合には、出発信号が不要となるため
ではないかと思われる。
この種のことは、すぐに忘れてしまうのが必定なので、今のうちに…
・プラットホーム
現在の地下仮ホームは、将来の各駅停車用ホーム（本ホーム）から、将来の急行線の位置までホームの幅を仮設の板で広げて作られている。
（本ホームの端には点字ブロック用の凹みがあり、今は、平らな蓋で塞がれている。）
従って、将来も、世田谷代田駅と違ってホームの深さに変化はなく、エレバーター・エスカレーターや階段も恒久仕様のものが設置されている。
但し、ホームの位置は、急行線の下北沢との間の急勾配の部分を避けて、将来のそれよりも、２両分（４０メートル）ほど、代々木上原寄りに設けられ、旧代々木上原３号踏切よりも新宿寄りの位置まで仮設ホームが設けられている。
（このことは、下北沢寄りの今はトンネル内の壁に、駅名表示版が設けられ、なぜか点灯していることからわかる。）
・信号機
（おそらく、下り線の下北沢方も同様と思われるが）
地上仮駅の時代までは、上り線、新宿方ホーム端の信号が、出発信号機だったのに対し、地下仮駅化された後は、信号が通常の閉塞信号機になっている。
従前、出発信号だったのは、かつて待避線があった名残りとも考えられる一方
通常の閉塞信号になったのは、将来、この線が通過線になるので、その場合には、出発信号が不要となるため
ではないかと思われる。
