2013年10月26日
下北沢X新聞（2430)〜文士町三大猫文学伝説２〜
（一）
犬的か、猫的かという観点での文学論は興味深い。比較すれば前者は人なつっこく、友好的だ。後者は、警戒性が強く、誰彼と寄ってはいかない。孤高的だ。
下北沢文士町は、その質や性向においては猫的である。分かってみると多くの文学者や芸術家がひっそりと集まって、書いたり、描いたり、彫っていたりした。また交友も同じである。路地奥のアパートに、例えば無頼派がやってきていて文学論を交わしていた。
先だっての街歩きで横光利一に関係する森敦、北沢旧居を訊ねた。曲がりくねった路地の奥に、そことおぼしき地はあった。壇一雄や太宰治が来ていたという。森敦が当地になぜ住んだか、一高に入学したことと雨過山房に近いからであろう。旧居跡は、学生向けアパートがいかにもありましたという感じの路地風情があった。
年来、下北沢文士町の底流を調べている。このことは街の文化と深く関わる問題だけに面白い。様々な要素が複雑に入り組んでいる。
七年来続けている調べである。最近見逃せない思っているのは知である。具体的に言えば学校だ。森敦のように一高が隣りにあったからここに住んだ。世田谷カトリック教会も初めは、航空研の教授の家の二階で発足している。知の集結、そして文化の集散、これは学校と結び付いている。
昨日、家に手紙が舞い込んできた。青森県居住の人だ。本とともに手紙が入っていた。読んでいくうちに、驚き、等々力、山椒の木、木が五十本あっても足りない位の驚きを覚えた。
人一人の運命の軌跡が偶然的に私とクロスした。なんとまあ、私が書いた「鉛筆部隊と特攻隊」に彼女に宛てた手紙が載っていて、それを本で読んで、天地がひっくり返るほどの驚きを覚えたという。彼女に宛てられた手紙だったが、それは届かず、読んでいた本の中に自分宛の手紙があった。
彼女はかつては代沢小の生徒だった。父親が獣医学校の先生になったことから下北沢に住むようになったという。これも知と学との結びつきの一例だ。
しかし、事実は、小説よりも奇なり。昨日は偶然にこの手紙を骨董市で購入して、私に知らせてきてくれた矢花克己さんにこれを知らせた。メールするのももどかしく電話をしたことだ。
「そんなことを言えば、『鉛筆部隊と特攻隊』は全部が偶然から生まれていますからねえ」
彼はいう。そうだったか？。言われればそうだ。
「しかしね、今回のは未着の手紙だったんですよ。それが本に載っていて、初めてそれを彼女は眼にして驚いたんですから…」
「えっ、そうなんですか？」
矢花さんようやっと気づいて驚いてくれた。
（二）
くだんの手紙は、天内みどりさんだ。昭和二十年のとき、彼女は代沢国民学校五年生だった。同学年にいたのは元鉛筆部隊の田中幸子さんだ。彼女にも電話をした。
「この人、旧姓は木村みどりさん、覚えていませんか？」
「覚えていないわね」
「そういえば、田中さん太子堂の疎開学童を知っていましたね」
今抱えている大事な調査項目があった。
太子堂小学校まで行って、副校長先生に往時の疎開学童とコンタクトを取りたいとお願いしてある。調査は難渋しているようだ。
「その人に電話して、宿屋で兵隊たちとの交流がなかったか聞いてみてください」
「わかりました。すぐ電話します」
数分経ってすぐに返事がきた。彼女、いつも反応が早い。
「彼女は、坂本の湯だったんですって、記憶のいい人なんだけど、兵隊さんと接触はしなかったというの」
「そうですか？」
私の目論見は外れた。太子堂国民学校は少し特殊で、十一の旅館に別れて疎開している。兵士との交流が「坂本の湯」ではなかった。これも情報である。可能性は後十の旅館である。
（三）
残るは、太子堂小学校のみだ。淺間に疎開していた３年、４年、５年の人がいれば覚えているはずだ。
皆さん、太子堂小学校の知り合いはいませんか？。疎開経験のある人がいればなおいい。
地本湯、富士の湯、枇杷の湯、御殿湯、飯田屋別館、御座の湯、林屋、北大湯、油湯、おもとの湯、二葉湯、ここに疎開していた人である。
「私は、昭和十五年生まれで、昔のことは少しは覚えています。家には九十数名の疎開学童が居ました。しかし、ぎりぎりいましたから余地がなかったと思うのです。だから航空兵が泊まったなんてことはありませんね。四月に安曇野へ再疎開した後に、五十連隊の将校が来て、半長靴履いたまま部屋に入っていったと母から聞いています。」
今朝、淺間温泉飯田屋別館に電話を掛けて聞いてみた。多くの旅館が廃業したり、経営者が変わったりしているがここはそうではない。昔を覚えていた女将さんが丁寧に答えてくださった。残るは九館となったが、可能性は低くなった。
「多分、大所帯の小柳の湯とか、そういうところに行ったのですよね」
おかみさんの推測だが、それが合っているように思えた。太子堂は中小旅館に振り分けられている。
聞き始めると停まらない。今度は北大湯に電話を掛けてみた。
「ああ、無かったですね。」
これは元女将さんの話だ。しかし、彼女からは意外な話を聞いた。とうとう一時間ほど話し込んでしまった。太子堂疎開逸話ストーリー探査から新たなエピソードが発掘された。残るは八館となった。
（四）
猫によく効くお稲荷さんの話をする積もりだったが。これは次にしよう。
（淺間温泉飯田屋別館、太子堂校の疎開先。）
くだんの手紙は、天内みどりさんだ。昭和二十年のとき、彼女は代沢国民学校五年生だった。同学年にいたのは元鉛筆部隊の田中幸子さんだ。彼女にも電話をした。
「この人、旧姓は木村みどりさん、覚えていませんか？」
「覚えていないわね」
「そういえば、田中さん太子堂の疎開学童を知っていましたね」
今抱えている大事な調査項目があった。
太子堂小学校まで行って、副校長先生に往時の疎開学童とコンタクトを取りたいとお願いしてある。調査は難渋しているようだ。
「その人に電話して、宿屋で兵隊たちとの交流がなかったか聞いてみてください」
「わかりました。すぐ電話します」
数分経ってすぐに返事がきた。彼女、いつも反応が早い。
「彼女は、坂本の湯だったんですって、記憶のいい人なんだけど、兵隊さんと接触はしなかったというの」
「そうですか？」
私の目論見は外れた。太子堂国民学校は少し特殊で、十一の旅館に別れて疎開している。兵士との交流が「坂本の湯」ではなかった。これも情報である。可能性は後十の旅館である。
（三）
残るは、太子堂小学校のみだ。淺間に疎開していた３年、４年、５年の人がいれば覚えているはずだ。
皆さん、太子堂小学校の知り合いはいませんか？。疎開経験のある人がいればなおいい。
地本湯、富士の湯、枇杷の湯、御殿湯、飯田屋別館、御座の湯、林屋、北大湯、油湯、おもとの湯、二葉湯、ここに疎開していた人である。
「私は、昭和十五年生まれで、昔のことは少しは覚えています。家には九十数名の疎開学童が居ました。しかし、ぎりぎりいましたから余地がなかったと思うのです。だから航空兵が泊まったなんてことはありませんね。四月に安曇野へ再疎開した後に、五十連隊の将校が来て、半長靴履いたまま部屋に入っていったと母から聞いています。」
今朝、淺間温泉飯田屋別館に電話を掛けて聞いてみた。多くの旅館が廃業したり、経営者が変わったりしているがここはそうではない。昔を覚えていた女将さんが丁寧に答えてくださった。残るは九館となったが、可能性は低くなった。
「多分、大所帯の小柳の湯とか、そういうところに行ったのですよね」
おかみさんの推測だが、それが合っているように思えた。太子堂は中小旅館に振り分けられている。
聞き始めると停まらない。今度は北大湯に電話を掛けてみた。
「ああ、無かったですね。」
これは元女将さんの話だ。しかし、彼女からは意外な話を聞いた。とうとう一時間ほど話し込んでしまった。太子堂疎開逸話ストーリー探査から新たなエピソードが発掘された。残るは八館となった。
（四）
猫によく効くお稲荷さんの話をする積もりだったが。これは次にしよう。
（淺間温泉飯田屋別館、太子堂校の疎開先。）
