2013年12月26日
下北沢X新聞（2470)〜代田散歩：地形と街並と人間３〜
（一）
森茉莉が好きだという人に、私は話した。
「目に見える現実の街並みは干からびていて、あまり面白くありませんね。でも、その場所に行って、彼女というか、森茉莉がそこを通っていたと想像します。その場合、何かの手掛かり、『恋人たちの森』に出てくる『小さな砂利置き場』の在った場所、これは今の北沢八幡神社の前にありました、に実際行ってみて彼女を想像します。するとにわかに森茉莉が現実に歩いているように感じられます…」
昨日、クリスマスの日に会報を事務局の代田「邪宗門」に届けた。すると若いカップルが来ていた。初めての来店だ。彼女の方は森茉莉ファンらしい。神戸からやってきたという。
「昨日もね、森茉莉のことで訪ねて来た人がいたのですよ。ところがこれがね、北海道からの日帰りなんですよ。羽田から直行して、そしてまた羽田にとんぼ返り、その日のうちに札幌に帰っていったんですよ。感激して帰って行きましたよ。三月に、『森茉莉を歩く』あるでしょう、ぜひ参加したいと言っていました」
邪宗門のマスターの話である。
印刷して持っていった会報は、第９０号である。トップ記事が、「北沢川文化遺産保存の会」創立十周年である。来年は、十年という節目を迎える。
「十年経つのですか、信じられませんね！。」
発足は２００４年１２月だ。ブログで下北沢のことを書き始めたのが２００４年９月１３日である。
言葉をこの土地に絞ったところから一帯のポイントポイントが見えてきた。しゃにむに文化を掘りまくってきた。そのときのツールは自転車だった。機動力を駆使して一帯を走り回った。その途中でこの「邪宗門」に行き着いた。
（二）
代田散歩は、ダイダラボッチ川の源流探査から始まった。その源に旧家がある。しばらく振りに行ったら、「大原一丁目柳澤の杜」となっていて、内部を見学できるようになっていた。「旧柳澤邸（国登録有形文化財）」として「世田谷トラストまちづくり」が委託管理者となって公開しているようだった。
この庭の裏手に回ると、お社があった。
「あれってもしかしたら弁天様？」
そうであれば面白い。
「ここに池があったという話は聞いていますから、あったかもしれません」
米沢さんの話だ。
ここから湧いた水がダイダラボッチ川に流れ込んでいた。それは考えられる。家の南手に怪しい路地がある。見るからに水路跡だ。下るとダイダラボッチの足跡に行き着く。
「何か、この辺りのどっかに弁天様はあるという話を聞いたのですよ」
彼は興味深いことを言う。
今は消えてなくなったダイダラボッチである。ここはかつては湧水池になっていて、真ん中に小島があって、そこに弁天様が祀られていた。笹塚の櫻護謨から出た石炭ガラによって埋め立てられ、祀られていた弁天様は行方知れずとなった。
「ダイダラボッチを守っていた弁天様が今も残っているすれば大変な発見だ」
私はそう言った。
（三）
「このダイダラボッチ跡はなんのこともないところですね。しかし、ここに柳田国男が調べに来ているのですよ」
彼がわざわざ調べに来ているところに意味がある。
「まさにこの場所ですよ。ここに来て、調査してまとめたのが『ダイダラ坊の足跡』なんですよ。興味本位で来たわけではないのですよ……」
「ダイダラ坊の足跡」は、単純な問題ではない。ついさっき、街歩きの最初では、代田橋の跡に架かっている「ダイダラボッチ歩道橋」を見学してきた。
「この歩道橋の上から見ると、この橋が背尾根にかかっていることがよく分かります。ちょうどここに代田橋が架かっていました。柳田国男はこの橋のことを批評しています。『巨人の業績としては甚だふるはぬものである』と言っています。そうです、みみっちいのです。その大きさもありますが、時代が新しすぎるのですね」
彼の頭の中には、古代からの歴史が思い描かれていた。
「それはね、日本人起源説と繋がってくる壮大な話なんですよ！」
自分でも興奮してきたことだ。
（ちょうど尾根上に架かっているダイダラボッチ歩道橋）
代田散歩は、ダイダラボッチ川の源流探査から始まった。その源に旧家がある。しばらく振りに行ったら、「大原一丁目柳澤の杜」となっていて、内部を見学できるようになっていた。「旧柳澤邸（国登録有形文化財）」として「世田谷トラストまちづくり」が委託管理者となって公開しているようだった。
この庭の裏手に回ると、お社があった。
「あれってもしかしたら弁天様？」
そうであれば面白い。
「ここに池があったという話は聞いていますから、あったかもしれません」
米沢さんの話だ。
ここから湧いた水がダイダラボッチ川に流れ込んでいた。それは考えられる。家の南手に怪しい路地がある。見るからに水路跡だ。下るとダイダラボッチの足跡に行き着く。
「何か、この辺りのどっかに弁天様はあるという話を聞いたのですよ」
彼は興味深いことを言う。
今は消えてなくなったダイダラボッチである。ここはかつては湧水池になっていて、真ん中に小島があって、そこに弁天様が祀られていた。笹塚の櫻護謨から出た石炭ガラによって埋め立てられ、祀られていた弁天様は行方知れずとなった。
「ダイダラボッチを守っていた弁天様が今も残っているすれば大変な発見だ」
私はそう言った。
（三）
「このダイダラボッチ跡はなんのこともないところですね。しかし、ここに柳田国男が調べに来ているのですよ」
彼がわざわざ調べに来ているところに意味がある。
「まさにこの場所ですよ。ここに来て、調査してまとめたのが『ダイダラ坊の足跡』なんですよ。興味本位で来たわけではないのですよ……」
「ダイダラ坊の足跡」は、単純な問題ではない。ついさっき、街歩きの最初では、代田橋の跡に架かっている「ダイダラボッチ歩道橋」を見学してきた。
「この歩道橋の上から見ると、この橋が背尾根にかかっていることがよく分かります。ちょうどここに代田橋が架かっていました。柳田国男はこの橋のことを批評しています。『巨人の業績としては甚だふるはぬものである』と言っています。そうです、みみっちいのです。その大きさもありますが、時代が新しすぎるのですね」
彼の頭の中には、古代からの歴史が思い描かれていた。
「それはね、日本人起源説と繋がってくる壮大な話なんですよ！」
自分でも興奮してきたことだ。
（ちょうど尾根上に架かっているダイダラボッチ歩道橋）
