2014年02月07日
下北沢X新聞(2498)〜赤い屋根の『小さいおうち』はどこ７〜
（一）
「昭和十九年八月十二日夜、この下北沢駅から代沢国民学校の疎開学童は松本に向けて旅立って行ったのですよ。電車が発車したとたん、周りにいた父母が火の点くような声で、自分の子どもの名前を呼んだのです。もうそれも聞こえませんが…」
昨日、「下北沢文士町入門編」で受講者に説明をした。東北沢六号踏切だ。
「私もその中にいたのですよ」
カルチャースクールの受講生の中に当事者が一人参加されていた。彼女は「淺間学園の歌」の歌詞を思い出して、これを書いて私に持って来てくれた。
『小さなおうち』の女主人公も、東京から疎開してきた子どもの寮母にと請われ、その職に就く。年明け開けて二十年六年生は受験準備ののために帰京する。彼女も六年生を引率して上京する。三月六日、「八時に田舎の駅を発」ち、翌朝上野に着いた。
疎開学童を届け終えた彼女は、東京の奥様の家に向かう。『小さなおうち』へだ。「省線と私鉄を乗り継いで平井家に向か」う。その途中の描写にはこうある。
新宿を出て、畑や防風林のある郊外が見えてくると、ようやく落ち着いて深呼吸がしたくなった。
新宿から出る私鉄だ。すると西武新宿、京王線、小田急線だ。記述に「新宿から西へ延びる」とあることから、京王か小田急だ。が、これはもう小田急に間違いない。
「車窓から見る東京の風景は、なんだか乱杭歯の口を思わせる」ともある。鉄道沿線の建物疎開が行われたことを言っている。東北沢駅から世田谷中原までこれは行われている。この場合は、三月十日の大空襲前だ。
小田急沿線は、東京大空襲での被害を受けて、三月二十日に線路沿いの沿線住民は立ち退きを宣告されている。これが第六次強制疎開だ。
（二）
彼女は駅に辿り着いて懐かしいあの家へと急ぐが、どうしても後方の風景が気になる。「平井家と反対側の遠方を見れば、かつてなかった高射砲陣地が広い土地を占有していた」からだ。
これによってイメージがより掴めてきた。家は山側の丘上にある。駅からは北に向かって坂になる。反対側の向こうの斜面、これは北のり面だと考えてよい。砲身の筒先は、北に向いている。
「高射砲陣地」があったというのは非常に興味深かった。この高射砲陣地跡を探してどれほど走り回ったことか、思い出したことだ。「駒場高射砲陣地」、「豪徳寺高射砲陣地」は分からなかった。「千歳ヶ丘高校高射砲陣地跡」だけはみつかった。これは北のり面にあって西から侵入してくるＢ２９を見張っていた。赤堤に墜ちた重爆撃機はここの砲が捉えたものだ。
（三）
「小さおうち」がどんな地形にあったのか、それが見えてきた。小田急線は最寄り駅では川沿いに走っている。これに並行して丘陵がある。北の丘にはこのおうちがある。南の丘は背付近に雑木林で覆われている。それに隠れるように高射砲陣地があって、その砲身は北向きに傾いでいる。
先に、「新宿を出て、畑や防風林のある郊外が見えてくる」とあった。これだけだと狛江あたりまで行きそうだが、実はそうではない、「新宿からそう遠くない」とある。
「えっ、そうなのか！」
なにやら我等のフィールドワークしている場に極めて近いのかもしれない。面白くなってきた。
〇写真は、世田谷カトリック教会のかまぼこ型兵舎を見るＮＨＫ学園オープンスクールの受講生。初回は、聖三一教会の会堂を見せていただいた。受講生には好評だった。それで今回二回目は、世田谷カトリック教会、東京都民教会をコースに入れたことだ。第三回目は、下北沢文士町入門講座は終わる。このときは地形学習を行う。教会の都合がよければ、頌栄教会、富士見丘教会も見せていただこうと考えている。
彼女は駅に辿り着いて懐かしいあの家へと急ぐが、どうしても後方の風景が気になる。「平井家と反対側の遠方を見れば、かつてなかった高射砲陣地が広い土地を占有していた」からだ。
これによってイメージがより掴めてきた。家は山側の丘上にある。駅からは北に向かって坂になる。反対側の向こうの斜面、これは北のり面だと考えてよい。砲身の筒先は、北に向いている。
「高射砲陣地」があったというのは非常に興味深かった。この高射砲陣地跡を探してどれほど走り回ったことか、思い出したことだ。「駒場高射砲陣地」、「豪徳寺高射砲陣地」は分からなかった。「千歳ヶ丘高校高射砲陣地跡」だけはみつかった。これは北のり面にあって西から侵入してくるＢ２９を見張っていた。赤堤に墜ちた重爆撃機はここの砲が捉えたものだ。
（三）
「小さおうち」がどんな地形にあったのか、それが見えてきた。小田急線は最寄り駅では川沿いに走っている。これに並行して丘陵がある。北の丘にはこのおうちがある。南の丘は背付近に雑木林で覆われている。それに隠れるように高射砲陣地があって、その砲身は北向きに傾いでいる。
先に、「新宿を出て、畑や防風林のある郊外が見えてくる」とあった。これだけだと狛江あたりまで行きそうだが、実はそうではない、「新宿からそう遠くない」とある。
「えっ、そうなのか！」
なにやら我等のフィールドワークしている場に極めて近いのかもしれない。面白くなってきた。
〇写真は、世田谷カトリック教会のかまぼこ型兵舎を見るＮＨＫ学園オープンスクールの受講生。初回は、聖三一教会の会堂を見せていただいた。受講生には好評だった。それで今回二回目は、世田谷カトリック教会、東京都民教会をコースに入れたことだ。第三回目は、下北沢文士町入門講座は終わる。このときは地形学習を行う。教会の都合がよければ、頌栄教会、富士見丘教会も見せていただこうと考えている。
