2014年02月16日
下北沢X新聞(2504)〜駒沢高射砲陣地跡２〜
（一）
高射砲陣地跡は意外なところにあった。
常日頃の荏原逍遙で一つの見当をつけていることがある。道が、区画を無視して斜めの北東方向に向かっているときは注意せよ、これは品川道である可能性が高い。このことは地形と関連するだけに興味深い。
我等の仲間で話題になっている道路がある。駒沢二丁目で品川用水に沿った道が、これと別れて急に北東に向かって行く。品川道の可能性が大きい。
この沿道で何回か聞いたことがある。
「これは古い道で品川道ではありませんか？」
「いや、そんなことはない」
あるときに親父さんににらまれたことがある。が、品川道に間違いないだろうと思って居る。
その品川道は坂を下る。やがて西から来た道と交わる。ここによく警察官が立っている。一時停止線を止まらないで通過して行く車が多いからだと思う。この道の左手が、高射砲陣地跡だという。大槻統さんはつぎのように記しておられる。
戦争が始まって間もなくだった昭和十七年だと思いますが、家から１５０ｍほど北側にあった一面の畑が高射砲陣地に様変わりしました。高射砲陣地（地図の黄色に塗った一角）の直ぐ南側の道は野沢の方へ流れる蛇崩川の支流がありましたが、既にどぶ川の様な淀んだ汚い川でした。（この川は埋め立てられ今では舗装された道となっています）
この蛇崩川支流の源流は駒沢給水場近くにある。現在の駒沢緑泉公園だと思われる。この公園には往時のハケを模した流れが再現されている。
（二）
駒沢高射砲陣地の場所を知って思い出したのは、「海野十三敗戦日記」である。彼の居宅は若林である。この陣地に近い。もしかしたらこの高射砲陣地のことが描かれているのではないかと思って調べてみた。が、これを特定する記述はない。しかし、近隣にあったと思われる高射砲のことは頻度高く記述されている。例えば一例だ。
一月十一日
◯昨夜と今晩の二回の敵空襲では、ちょうど我家上空を飛んだ。今までにないことである。しかも両回とも同じコースを通った。
この日高射砲を盛んに射ったが、多くは後過ぎて駄目。たいへん冷える夜だった。敵機が照空灯につきさされながらも、わが砲弾と六百万都民を尻目に悠々と帰って行くので、さらに寒さを感ずる。夜間戦闘機の武勲もほとんど新聞に出ない。 中公文庫 ２００５年刊
世田谷上空を照空灯に照らされたＢ２９が飛んで行く。若林上空は、駒沢高射砲陣地からすると狙うのにちょうどいい、多分、ここの砲も火を噴いたろうが、全く手応えがなかった。
昭和二十年一月一日には、「高射砲うなる」とある。至近距離でこれが鳴っていたようだ。駒沢高射砲陣地の砲だと思われる。
（三）
高射砲の記憶を大槻さんはつぎのように書いておられる。
この陣地で高射砲を撃つと家のガラス戸がびりびりと震えるくらいの震動がありました。この高射砲陣地の正式名称や部隊名などは未だ知りません。
私は、分かりやすいので駒沢高射砲陣地としたが、正式名称はなんと言うのだろう？今は、駒沢と呼称している。が、もともとこれは合成地名である。上馬引沢、下馬引沢＋深沢、野沢から一字ずつ取って駒沢となった。
ウィキでは、「1932年（昭和7年）東京市世田谷区成立時に「駒沢」という町名はいったん消え、旧村名の上馬町・下馬町・野沢町・三軒茶屋町・深沢町・新町・弦巻町が新区の町名となった。」とある。
この場所、当時は、弦巻か上馬だ。弦巻高射砲陣地、上馬高射砲陣地などと呼ばれていたのかもしれない。（写真は、現駒沢小の北西角、像の向こうの敷地が高射砲陣地跡になる）
駒沢高射砲陣地の場所を知って思い出したのは、「海野十三敗戦日記」である。彼の居宅は若林である。この陣地に近い。もしかしたらこの高射砲陣地のことが描かれているのではないかと思って調べてみた。が、これを特定する記述はない。しかし、近隣にあったと思われる高射砲のことは頻度高く記述されている。例えば一例だ。
一月十一日
◯昨夜と今晩の二回の敵空襲では、ちょうど我家上空を飛んだ。今までにないことである。しかも両回とも同じコースを通った。
この日高射砲を盛んに射ったが、多くは後過ぎて駄目。たいへん冷える夜だった。敵機が照空灯につきさされながらも、わが砲弾と六百万都民を尻目に悠々と帰って行くので、さらに寒さを感ずる。夜間戦闘機の武勲もほとんど新聞に出ない。 中公文庫 ２００５年刊
世田谷上空を照空灯に照らされたＢ２９が飛んで行く。若林上空は、駒沢高射砲陣地からすると狙うのにちょうどいい、多分、ここの砲も火を噴いたろうが、全く手応えがなかった。
昭和二十年一月一日には、「高射砲うなる」とある。至近距離でこれが鳴っていたようだ。駒沢高射砲陣地の砲だと思われる。
（三）
高射砲の記憶を大槻さんはつぎのように書いておられる。
この陣地で高射砲を撃つと家のガラス戸がびりびりと震えるくらいの震動がありました。この高射砲陣地の正式名称や部隊名などは未だ知りません。
私は、分かりやすいので駒沢高射砲陣地としたが、正式名称はなんと言うのだろう？今は、駒沢と呼称している。が、もともとこれは合成地名である。上馬引沢、下馬引沢＋深沢、野沢から一字ずつ取って駒沢となった。
ウィキでは、「1932年（昭和7年）東京市世田谷区成立時に「駒沢」という町名はいったん消え、旧村名の上馬町・下馬町・野沢町・三軒茶屋町・深沢町・新町・弦巻町が新区の町名となった。」とある。
この場所、当時は、弦巻か上馬だ。弦巻高射砲陣地、上馬高射砲陣地などと呼ばれていたのかもしれない。（写真は、現駒沢小の北西角、像の向こうの敷地が高射砲陣地跡になる）
この記事へのコメント
2. Posted by きむらけん 2014年02月18日 18:23
[高射砲陣地がなぜ北斜面に立地するか]
移動式のものは確かにあったようです。これだと跡は残りませんね。
なぜ北傾斜に高射砲陣地があったか、照準との関連はあるかもしれませんね。
祖師谷に高射砲の隊があったとの記録があります。荏原地域のどこに高射砲があったのか、分かるといいですね。
移動式のものは確かにあったようです。これだと跡は残りませんね。
なぜ北傾斜に高射砲陣地があったか、照準との関連はあるかもしれませんね。
祖師谷に高射砲の隊があったとの記録があります。荏原地域のどこに高射砲があったのか、分かるといいですね。
1. Posted by 桜上水confidential 2014年02月18日 09:34
[高射砲陣地がなぜ北斜面に立地するか]
経堂赤堤通り団地交差点の東京電力変電所付近にも、高射「機関砲」陣地があったというお話を聞いたことがあります。この場所は北沢川北岸で、南側が高くなっています。
たぶん、「高射砲」といっても、いくつか種類があって、堅牢な本格的高射砲のほかに、比較簡易な高射機関砲陣地が各所に設けられていたのではないか？
陣地の多くが残っていないのは、小規模な機関砲陣地は、さして堅牢な構造でなかったため、撤去が簡単だったように思うのですが...
マリアナから飛んでくるB29は、大規模編隊の夜間離発着を避けるためでしょうか、日本への襲来は、夜間になるわけですが、艦載機は昼でもやってきます。
B29は、特に東京大空襲以前の場合、高硬度でしたが、艦載機は比較的低空で侵入してきます。向かってくる方向に撃ったのだろうと最初は簡単に考えたものの、実は向かってくる敵を撃つのは、的が小さく、距離もわからず、当てるのは難しい。特に南は太陽の方向なので、目視で撃つのは難しい。
こういった事情で、機関砲陣地は、丘が太陽光を遮る、北斜面に位置したのではないか。
そんなことを考えたのですが。
経堂赤堤通り団地交差点の東京電力変電所付近にも、高射「機関砲」陣地があったというお話を聞いたことがあります。この場所は北沢川北岸で、南側が高くなっています。
たぶん、「高射砲」といっても、いくつか種類があって、堅牢な本格的高射砲のほかに、比較簡易な高射機関砲陣地が各所に設けられていたのではないか？
陣地の多くが残っていないのは、小規模な機関砲陣地は、さして堅牢な構造でなかったため、撤去が簡単だったように思うのですが...
マリアナから飛んでくるB29は、大規模編隊の夜間離発着を避けるためでしょうか、日本への襲来は、夜間になるわけですが、艦載機は昼でもやってきます。
B29は、特に東京大空襲以前の場合、高硬度でしたが、艦載機は比較的低空で侵入してきます。向かってくる方向に撃ったのだろうと最初は簡単に考えたものの、実は向かってくる敵を撃つのは、的が小さく、距離もわからず、当てるのは難しい。特に南は太陽の方向なので、目視で撃つのは難しい。
こういった事情で、機関砲陣地は、丘が太陽光を遮る、北斜面に位置したのではないか。
そんなことを考えたのですが。
