2014年02月19日
下北沢X新聞(2506)〜駒沢高射砲陣地跡４〜
（一）
もう戦争は懲り懲りだ。二度とこれはやってはならぬ。しかし、人間の欲望は冷静さを欠くものだ。偶然をきっかけに敵意が暴発することはある。危ないのは全体主義の台頭である。「美しい国」というのは自然に対しての賞賛であればいいが、これに民族の優位性が加味されると危ない。いぎたない言葉で他国を排斥する、嫌な空気が漂ってきたと思う。
昭和二十年五月、二十四日、二十五日、山の手大空襲で荏原一帯は大きな被害を受けた。Ｂ２９がこのとき荏原上空に数珠つなぎになって侵入してきた。日本軍の応戦はもうたいしたことはないと踏んでこのときは３０００メートルの低空で帝都に攻撃をかけてきた。ここぞとばかりに付近一帯の高射砲陣地も応戦した。
一つの推理である、駒沢高射砲陣地も応戦し、ここの高射砲が一機に当てたのではないか？そのことをうかがわせる記録があるからだ。
それは、一色次郎の『東京空襲』である。彼は下北沢３号踏切そばの静泉閣に居住していた。ところが建物が小田急沿線にあることから第六次建物疎開に該当し、立ち退きを宣告された。それで、「代田二ノ八二三、西の丸荘に移転」した。
それから暫く経って、５月２４日が巡って来た。当夜、２４日、彼は「すぐ目の下に小田急線の線路と小さな梅ヶ丘が見える」ところでこの日の空襲を観察した。現在の羽根木公園である、代田半島羽根木岬、眺めは良い。山の手大空襲観望台である。
（二）
当夜、爆撃機の進入コースは四通りあった。綿密な計画のもとに敵機は帝都に侵入してきた。この晩、いくつもの機が高射砲で被弾している。そのうちの一つだ。
北北西に四本目のコースができた。この爆撃機の列はやはり市街地の上空を通過しながら東の海上へ出て行くのだが、その途中で私達の真上を飛んでいくのである。東京の最後の夜になりそうな気がした。この長い列は何度も途切れながら、いつまでも続いた。二度目に真上にきたうちの一機に高射砲が当たった。
『東京空襲』 河出書房 昭和四十二年刊
根津山上空に差し掛かったＢ２９は高射砲の弾を食らった。機は南南西へ向いている。高度や角度からしても駒沢高射砲には都合のよい位置ではなかったかと思う、この機はその後どうしたか。
火の玉が出来たが小さかった。一度大きく広がった火の形がちぢまると、爆撃機はそれをくっつけたままやはり飛んでいるのであった。そのまま海の上へ出ていくのだろうと思われたが、燃えさかっている市街の上空までくると、音もたてないで不意に粉々になり花火のように消えてしまった。この方面の火災が一番近い。（同上）
進路はそのまま南南西へ向かへば東京湾上に出る。ところがその前に市街地上空で爆発してしまった。この日、その方面で墜落した飛行機は記録にある。
（三）
墜落Ｂ２９の一機一機の調査を米軍が行っている。「アメリカ戦略爆撃調査団報告第６６号”B29部隊の対日戦略爆撃作戦（第２０空軍）”」がネット上に公開されている。これによるとこの機は「B29-#42-63486」である。
墜落期日は、昭和２０年（1945）５月２４日である。その墜落位置は「東京都芝区白金台町今里町９０」で、機は、「第２０空軍第７３爆撃団第４９８爆撃群第５７４爆撃隊」である。
解説記録にはこうある。
東京都市地域に対する夜間焼夷攻撃で当時白金台にあった厚生省本屋に墜落。３人が今里町、１人が五反田で拘束。東部憲兵隊に送られ、戦後解放された。
この機を捕捉し、当てたのが駒沢高射砲陣地の一門ではないか？方角、角度が当てるにはもっとも具合よかったからだ。が、他の高射砲陣地のが火を噴いたという可能性もある。
（写真は現在の陣地跡。駒沢二丁目、１９番地から２４番地まで、そこがかつての高射砲陣地跡だった。それ以前は畑だったようだ）
当夜、爆撃機の進入コースは四通りあった。綿密な計画のもとに敵機は帝都に侵入してきた。この晩、いくつもの機が高射砲で被弾している。そのうちの一つだ。
北北西に四本目のコースができた。この爆撃機の列はやはり市街地の上空を通過しながら東の海上へ出て行くのだが、その途中で私達の真上を飛んでいくのである。東京の最後の夜になりそうな気がした。この長い列は何度も途切れながら、いつまでも続いた。二度目に真上にきたうちの一機に高射砲が当たった。
『東京空襲』 河出書房 昭和四十二年刊
根津山上空に差し掛かったＢ２９は高射砲の弾を食らった。機は南南西へ向いている。高度や角度からしても駒沢高射砲には都合のよい位置ではなかったかと思う、この機はその後どうしたか。
火の玉が出来たが小さかった。一度大きく広がった火の形がちぢまると、爆撃機はそれをくっつけたままやはり飛んでいるのであった。そのまま海の上へ出ていくのだろうと思われたが、燃えさかっている市街の上空までくると、音もたてないで不意に粉々になり花火のように消えてしまった。この方面の火災が一番近い。（同上）
進路はそのまま南南西へ向かへば東京湾上に出る。ところがその前に市街地上空で爆発してしまった。この日、その方面で墜落した飛行機は記録にある。
（三）
墜落Ｂ２９の一機一機の調査を米軍が行っている。「アメリカ戦略爆撃調査団報告第６６号”B29部隊の対日戦略爆撃作戦（第２０空軍）”」がネット上に公開されている。これによるとこの機は「B29-#42-63486」である。
墜落期日は、昭和２０年（1945）５月２４日である。その墜落位置は「東京都芝区白金台町今里町９０」で、機は、「第２０空軍第７３爆撃団第４９８爆撃群第５７４爆撃隊」である。
解説記録にはこうある。
東京都市地域に対する夜間焼夷攻撃で当時白金台にあった厚生省本屋に墜落。３人が今里町、１人が五反田で拘束。東部憲兵隊に送られ、戦後解放された。
この機を捕捉し、当てたのが駒沢高射砲陣地の一門ではないか？方角、角度が当てるにはもっとも具合よかったからだ。が、他の高射砲陣地のが火を噴いたという可能性もある。
（写真は現在の陣地跡。駒沢二丁目、１９番地から２４番地まで、そこがかつての高射砲陣地跡だった。それ以前は畑だったようだ）
