2014年02月21日
下北沢X新聞(2507)〜駒沢高射砲陣地跡５〜
（一）
ここ数日ずっと高射砲陣地跡について書いている。このネット発信がきっかけとなって意外な情報がもたらされた。論より、証拠、空撮写真情報である。これは昨日のことだ。
「えっ！」
びっくりして、指摘のあった画像を見ると、陣地跡が明瞭に、くっきりと写っていた。その配置や、数までが分かった。 北沢川文化遺産保存の会の仲間、米澤邦頼さんからのメールである。
弦巻の高射砲『goo』の古地図、昭和22年の空撮で確認出来ますね。時計の文字盤の9時 10時 11時 12時 1時の位置に５門見えます。
急いでチェックすると、「なんとまあ、あった、あった！」、丸い構造物が五つ、時計の文字盤と同じように配置されている。１２時はほぼ真北だ。３時がないことからすると西北方向を重視していたことが分かる。
この情報に続いて、今日もあった。仲間の別宮通孝さんからだ。往時の居住者Yさんからの聞き込みだ。陣地跡は、当方が指摘していたものよりもワンブロック北とのことだ。駒沢２の２０辺りだという。確かに布陣痕跡はそこになる。砲の口径だろうと思うが三十センチほどだったという。
昭和２４年５月２４日に根津山上空で被弾したＢ２９があった。高射砲陣地のほぼ真北に位置するのがここだ。その機は北西方向から飛来してきた。高度三千、目標物まで一千、この高射砲陣地にとってはまたとない獲物だったのかもしれない。砲手は、狙いを定めて放った。
「当たった！」。
港区白金今里町に墜落したＢ２９はここの高射砲が火を噴いて当たった。そう考える私の推理も現実味を帯びてきた。が、別宮さん情報では、「東京に残っていた、Ｙさんの父さんの話では、その高射砲は、Ｂ２９には全く命中しなかったそうです」とあった。真実はいかに？
『goo』の古地図、昭和22は、惚れ惚れするほどに往時を写し残している。図をずらしていって根津山上空から下界を見る。小田急線も見える、踏切跡もくっきりだ。世田谷中原２号はもちろんだ。この土手筋に３号、４号と見える。梅ヶ丘逆１踏切は、どうやら５号踏切だったようだ。
山手空襲当夜、一色次郎はアパートを出て根津山にやってくる。空撮映像ではその「代田二ノ八二三、西の丸荘」の屋根が見える。画面では白く見える大きな屋根がある。これがそうだと思われる。
（二）
駒沢高射砲陣地には五門の砲があった。これはどのように動かしていたのか？一門を動かすのにどれだけの人数が要ったのか。興味を持って調べてみると、これに従事した人が「高射砲兵として」（浜田文哉）という題で記録を書き残している。
当時の高射砲隊には、レーダーの備えはむろんなく、すべてが目測による操作であった。高射砲一門を単位に一個分隊を構成していたが、砲の操作は、転把を握って砲身を左右に回転させる者、上下に動かす者、刻々移動する目標の高度、航速に照準の目盛管をあわせる者、さらにそれに加えて航路角という単元の目盛りにあわせて照準を完了する者、弾丸の信管着る者その信管の時度を合わせる者、弾丸をこめる砲手、拉縄をひいて発射する兵など、一番から十番までの砲手によって行われた。
『帝国軍隊の従軍記』現代史の証言 汐文社 １９７５年刊
一門につき十名を要した。せいぜい二三名だと思っていたがそうではなかった。駒沢高射砲陣地、弦巻高射砲陣地と呼ぶべきかもしれないが、ここには五門あった。とするなら砲を扱うものだけでも五十人はいたことになる。
このことに関して、大槻さんが調べて情報を送ってくださっていた。ネットで調べられたようである。
（１）世田谷区の高射砲部隊編成名の変遷
東京防空隊高射砲第２連隊（１９４１．７）
防空隊第２連隊（１９４１．１１）
高射砲第１１２連隊（１９４４．４．）
（２）旧陸軍高射砲部隊は、
1個中隊 は 高射砲を 4門
大隊は2個中隊からなるので 8門
連隊は4大隊からなるので 32門
帝都の空の守りに就いていたのが調布の飛行第２４４戦隊である。世田谷区域上空でこの基地所属の飛燕がＢ２９に体当たりしたのを目撃した人もいる。
帝都を守る、高射砲部隊が駒沢に展開していた事実が明確になったことは記録としても貴重である。ここには一個中隊程度の防空隊がいたことになる。
（三）
指摘のあった高射砲第１１２連隊は、高射砲第一師団として本部が祖師谷にあったようだ。
ネットに公開されている『goo』の古地図は、戦跡探しに大いに役立つものだ。
（写真はその空撮画像。赤はマジックでなぞったもの。興味ある方はぜひ『goo』の古地図をご覧あれ）
◎明日は、大雪で中止になった「世田谷線の勾配を歩く」は予定通り実施する。
集合午後一時、京王線下高井戸駅改札前 三軒茶屋まで世田谷線沿いを歩く。
駒沢高射砲陣地には五門の砲があった。これはどのように動かしていたのか？一門を動かすのにどれだけの人数が要ったのか。興味を持って調べてみると、これに従事した人が「高射砲兵として」（浜田文哉）という題で記録を書き残している。
当時の高射砲隊には、レーダーの備えはむろんなく、すべてが目測による操作であった。高射砲一門を単位に一個分隊を構成していたが、砲の操作は、転把を握って砲身を左右に回転させる者、上下に動かす者、刻々移動する目標の高度、航速に照準の目盛管をあわせる者、さらにそれに加えて航路角という単元の目盛りにあわせて照準を完了する者、弾丸の信管着る者その信管の時度を合わせる者、弾丸をこめる砲手、拉縄をひいて発射する兵など、一番から十番までの砲手によって行われた。
『帝国軍隊の従軍記』現代史の証言 汐文社 １９７５年刊
一門につき十名を要した。せいぜい二三名だと思っていたがそうではなかった。駒沢高射砲陣地、弦巻高射砲陣地と呼ぶべきかもしれないが、ここには五門あった。とするなら砲を扱うものだけでも五十人はいたことになる。
このことに関して、大槻さんが調べて情報を送ってくださっていた。ネットで調べられたようである。
（１）世田谷区の高射砲部隊編成名の変遷
東京防空隊高射砲第２連隊（１９４１．７）
防空隊第２連隊（１９４１．１１）
高射砲第１１２連隊（１９４４．４．）
（２）旧陸軍高射砲部隊は、
1個中隊 は 高射砲を 4門
大隊は2個中隊からなるので 8門
連隊は4大隊からなるので 32門
帝都の空の守りに就いていたのが調布の飛行第２４４戦隊である。世田谷区域上空でこの基地所属の飛燕がＢ２９に体当たりしたのを目撃した人もいる。
帝都を守る、高射砲部隊が駒沢に展開していた事実が明確になったことは記録としても貴重である。ここには一個中隊程度の防空隊がいたことになる。
（三）
指摘のあった高射砲第１１２連隊は、高射砲第一師団として本部が祖師谷にあったようだ。
ネットに公開されている『goo』の古地図は、戦跡探しに大いに役立つものだ。
（写真はその空撮画像。赤はマジックでなぞったもの。興味ある方はぜひ『goo』の古地図をご覧あれ）
◎明日は、大雪で中止になった「世田谷線の勾配を歩く」は予定通り実施する。
集合午後一時、京王線下高井戸駅改札前 三軒茶屋まで世田谷線沿いを歩く。
この記事へのコメント
2. Posted by きむらけん 2015年10月14日 17:25
[貴重な証言を…]
貴重な情報をありがとうございます。陣地の配置図については当陣地の中隊長から得ております。確かにあの丸い構造物はコンクリートの土台です。この写真を撮ったときは高射砲はありませんから。
赤堤に墜ちたB29を御覧になったのですね。これも貴重な情報です。千歳ヶ丘の高射砲が撃った弾が当たったと。代田の古老はそれが代田上空まできて焼夷弾を捨てて、そして回り込んで経堂まで行って墜ちたとのこと。
古い話なので事実と違う場合があります。往時の目撃談などぜひコメントしてください。記録として大事だと思っております。
貴重な情報をありがとうございます。陣地の配置図については当陣地の中隊長から得ております。確かにあの丸い構造物はコンクリートの土台です。この写真を撮ったときは高射砲はありませんから。
赤堤に墜ちたB29を御覧になったのですね。これも貴重な情報です。千歳ヶ丘の高射砲が撃った弾が当たったと。代田の古老はそれが代田上空まできて焼夷弾を捨てて、そして回り込んで経堂まで行って墜ちたとのこと。
古い話なので事実と違う場合があります。往時の目撃談などぜひコメントしてください。記録として大事だと思っております。
1. Posted by 匿名 2015年10月14日 15:08
私はこの高射砲陣地から１キロ程の所に住んでいましたので、発砲音もよく覚えています、砲弾の破片も畠にめり込んでおり沢山拾いました。＜弦巻の高射砲『goo』の古地図、昭和22年の空撮で確認・・・＞＜丸い構造物が五つ＞。これは高射砲の本体ではなく、高射砲を取り囲むように配置されたコンクリートの砲兵の待避壕または弾薬一時集積場と思われます。戦後も残っていました。あのような短い間隔で高射砲を配置することはあり得ません。
＜砲の口径だろうと思うが三十センチほどだったという＞これはありえません、最大で15センチです。それも久我山に配置された数門だけです。
＜昭和２４？年５月２４日に根津山上空で被弾したＢ２９があった＞当夜、私も防空壕から飛び出して目撃しました。すでに西の方から火を吹きながら降下してきて、爆発炎上しました。翌朝小田急線経堂駅の北側の現場に駆け付けると、残骸が散乱していました。＜根津山上空で被弾＞はありえません。高射砲は周囲１〜２キロの上空の敵機にしか発砲できません。
＜砲の口径だろうと思うが三十センチほどだったという＞これはありえません、最大で15センチです。それも久我山に配置された数門だけです。
＜昭和２４？年５月２４日に根津山上空で被弾したＢ２９があった＞当夜、私も防空壕から飛び出して目撃しました。すでに西の方から火を吹きながら降下してきて、爆発炎上しました。翌朝小田急線経堂駅の北側の現場に駆け付けると、残骸が散乱していました。＜根津山上空で被弾＞はありえません。高射砲は周囲１〜２キロの上空の敵機にしか発砲できません。
