2014年02月23日
下北沢X新聞(2508)〜玉電砂利電高射砲〜
（一）
「B29が来ると、なんといったらいいのか、空中ショーみたいなものだね。高射砲がボンボン鳴るしね…えっ、それが駒沢にあったの？それは知らなかった」
これは昭和十年生まれの中田徳郎さんである。
一昨日は、呑川上流の新町に行った。ます、雪を砕いている人に声を掛けたらたちまちに昔話になった。
「私は駒沢にオリンピックを見に来たのです。ここがいいところだと思ったので土地を探してここに家を建てたのですよ」
そこに今度は中田さんが来た。話をしていると前に一度会って話を聞いた人だった。
「そうそう四月十五日の蒲田空襲でひどくやられてこちらに移ってきたんだよ」
「ここでの空襲は覚えているよ。いつか分からなかったけどね、一晩で七機も落ちたことがあったよ。それまでは全く高射砲が当たらないものだからイライラしていたんだね。次々に当たるものだからみんな興奮してね、『万歳』、『万歳』って口々に言っていたよ」
「それは多分、五月二十四日のことですね。近隣に多くB29が落ちていますから」
「一度見たのはここの空の上だよ。B29の後ろについて撃って行くんだね。のっかるようなかたちで小さな戦闘機が襲っていって、爆撃機が火を噴いたこともある…」
「おそらくそれは調布飛行場にいた帝都防衛の２４４戦隊ですね。飛行機の機種は、飛燕ですね…」
「そこまでわかるのか？」
「でもね、ここら辺も変わったね。みんな畑だったんだよ。家の側に洗い場があって農家の人はここで野菜を洗っていたよ。この先に池があって弁天池といっていてね、そこにつながる橋は弁天橋といっていたね」
呑川の上流部だ。少し北の尾根筋には玉電が走り、品川用水が流れていた。
（二）
昨日は、「世田谷線の勾配を歩く」、下高井戸から三軒茶屋まで線沿いに歩いた。実際に歩いてみるとよく分かる。鉄道は地形と相談しながら敷設されている。北沢川支流の浸食谷を上手く活用して敷設し、勾配という負担が電車に掛からないように作ってある。何度も下調べをしたというナビゲーターの木村康伸はそう説明していた。（写真）
下高井戸の標高は五十メートルだという。淀橋台のサミットから電車は一気に急カーブしながら五メートル下る。
世田谷線は、かつての玉川電気鉄道の下高井戸支線として大正１４年（1925）５月１日に開通した。本線との違いは、すべてが複線専用軌道である。このことが幸いして世田谷線として今日に残っている。
この線で特徴的なことは、線の交わりだ。小田急線と豪徳寺で交差しているが乗客の利便を考えて合体しようという考えは全くなかったということがよく分かる。小田急は豪徳寺といい、東急は山下という。対抗心が駅構造に見えている。
（三）
今回道中、話題の中心になったのは、駒沢高射砲陣地である。多くの人が調べてくれている。別宮通孝さんもその一人だ。当時を覚えている人にメールを出し、その応答があった。Yさんからの返事だ。貴重な記録となるので転載しておきたい。
昭和２２年の航空写真を拝見しました。
高射砲陣地、我が家、鳥山邸、向井潤吉邸も正確に写っています。
お尋ねの高射砲の周りの５つの半円状の白いものは砲を取り囲んでいる
コンクリート製のほぼ正四角形の壕です。 中心に向かて入口があります。
これは弾薬や食料の貯蔵、兵隊の避難に使われたと思います。
砲が撤去されてから子供の遊び場になっていたので私もよくここで遊びました。
この壕は４つだと思っていましたが写真で見ると５つ見えますね。
南に向かって半円状に配置されているのは敵が太平洋側から攻めてくる事を知っての
事でしょう。大きな爆弾は落されなかったものの、艦載機の機銃掃射、焼夷弾の落下は
度々あったと思います。
白く見えますがこのころはもう迷彩色も落され地肌の黒いコールタールの色だったと思います。
何せもう７０年近くの昔の話ですので少々の思い違いはあるかもしれません。
また駒小同窓会の折にでも先輩諸氏にお聞きし正確な情報をお知らせいたします。
駒沢高射砲陣地があった。このことの全貌が分かり掛けている。七十年という時間の経過はいかんともしがたいが、伝えて行くべき記録として残れば幸いだ。
goo古地図から戦跡を探そう。
昨日は、「世田谷線の勾配を歩く」、下高井戸から三軒茶屋まで線沿いに歩いた。実際に歩いてみるとよく分かる。鉄道は地形と相談しながら敷設されている。北沢川支流の浸食谷を上手く活用して敷設し、勾配という負担が電車に掛からないように作ってある。何度も下調べをしたというナビゲーターの木村康伸はそう説明していた。（写真）
下高井戸の標高は五十メートルだという。淀橋台のサミットから電車は一気に急カーブしながら五メートル下る。
世田谷線は、かつての玉川電気鉄道の下高井戸支線として大正１４年（1925）５月１日に開通した。本線との違いは、すべてが複線専用軌道である。このことが幸いして世田谷線として今日に残っている。
この線で特徴的なことは、線の交わりだ。小田急線と豪徳寺で交差しているが乗客の利便を考えて合体しようという考えは全くなかったということがよく分かる。小田急は豪徳寺といい、東急は山下という。対抗心が駅構造に見えている。
（三）
今回道中、話題の中心になったのは、駒沢高射砲陣地である。多くの人が調べてくれている。別宮通孝さんもその一人だ。当時を覚えている人にメールを出し、その応答があった。Yさんからの返事だ。貴重な記録となるので転載しておきたい。
昭和２２年の航空写真を拝見しました。
高射砲陣地、我が家、鳥山邸、向井潤吉邸も正確に写っています。
お尋ねの高射砲の周りの５つの半円状の白いものは砲を取り囲んでいる
コンクリート製のほぼ正四角形の壕です。 中心に向かて入口があります。
これは弾薬や食料の貯蔵、兵隊の避難に使われたと思います。
砲が撤去されてから子供の遊び場になっていたので私もよくここで遊びました。
この壕は４つだと思っていましたが写真で見ると５つ見えますね。
南に向かって半円状に配置されているのは敵が太平洋側から攻めてくる事を知っての
事でしょう。大きな爆弾は落されなかったものの、艦載機の機銃掃射、焼夷弾の落下は
度々あったと思います。
白く見えますがこのころはもう迷彩色も落され地肌の黒いコールタールの色だったと思います。
何せもう７０年近くの昔の話ですので少々の思い違いはあるかもしれません。
また駒小同窓会の折にでも先輩諸氏にお聞きし正確な情報をお知らせいたします。
駒沢高射砲陣地があった。このことの全貌が分かり掛けている。七十年という時間の経過はいかんともしがたいが、伝えて行くべき記録として残れば幸いだ。
goo古地図から戦跡を探そう。
この記事へのコメント
2. Posted by きむらたかし＠三田用水 2014年02月23日 22:17
［"豪徳寺"［"駅"｜"停留所"］］追記
東京都公文書館蔵の
大正１４年７月２９日付け「土地収用事業認定（鉄道敷設並附帯事業）」
請求番号３０５．Ｆ６．０６ , ３０５．Ｆ６．０７
の添付図面によると、
現 当時
略：南新宿駅 ＝千駄ヶ谷新田停留場
（廃止） ＝山谷停留場
参宮橋駅 ＝神宮北口停留場
代々木八幡駅 ＝八幡前停留場
略：代々木上原駅＝上原停留場
東北沢駅 ＝大山谷停留場 ＊「山谷」と紛らわしい
下北沢駅 ＝北澤停留場 ＊京王線・北澤：現・上北沢と紛らわしい
世田谷代田駅 ＝中原停留場
梅が丘駅 ＝（不存在）
豪徳寺駅 ＝豪徳寺裏停留場
経堂駅 ＝経堂停留場
と、小田急作成のこの図面が実際に作成された大正13年当時から、現・豪徳寺駅には、「豪徳寺」の名称が付されていたことがわかります。
東京都公文書館蔵の
大正１４年７月２９日付け「土地収用事業認定（鉄道敷設並附帯事業）」
請求番号３０５．Ｆ６．０６ , ３０５．Ｆ６．０７
の添付図面によると、
現 当時
略：南新宿駅 ＝千駄ヶ谷新田停留場
（廃止） ＝山谷停留場
参宮橋駅 ＝神宮北口停留場
代々木八幡駅 ＝八幡前停留場
略：代々木上原駅＝上原停留場
東北沢駅 ＝大山谷停留場 ＊「山谷」と紛らわしい
下北沢駅 ＝北澤停留場 ＊京王線・北澤：現・上北沢と紛らわしい
世田谷代田駅 ＝中原停留場
梅が丘駅 ＝（不存在）
豪徳寺駅 ＝豪徳寺裏停留場
経堂駅 ＝経堂停留場
と、小田急作成のこの図面が実際に作成された大正13年当時から、現・豪徳寺駅には、「豪徳寺」の名称が付されていたことがわかります。
1. Posted by きむらたかし＠三田用水 2014年02月23日 21:30
なんだか、関係者が「きむら」さんだらけになってきましたが…
その３名中の１名です。
［"豪徳寺"［"駅"｜"停留所"］］
たまでんの「山下」という停留所名は、別に何の不思議もなくて、大正１５年５月開通時には、現・宮の坂にちょっと南に「豪徳寺前」という停留所があり、ここは文字通り豪徳寺の南西直近ですので、山下の場所に「豪徳寺」との停留場名をつけられる道理がありません。
一方、３年ほど遅れて開通した小田急としては、その駅名に、著名な地名などを付けたいのが、一種の人情というもので、直近の名刹である「豪徳寺」を駅名にするのも無理からぬものがある（現ＪＲ・品川駅が、港区であるうえ京急・北品川駅おり北にあり、同じく目黒駅が品川区にあるのも、同様の理由でしょう）といえます。
と、ここまでは常識的な話で…
山下停留所・豪徳寺駅の一帯は、今でも、豪徳寺さんの貸地が多いようで、小田急線の開通当時はさらにその傾向が強かったと思います。
その豪徳寺さんが、小田急線用地の買収に応じるにあたり、駅名に「豪徳寺」の名称を使用することを条件とした可能性は結構高いと思います（ちょっと、パターンはちがい、また、ウラはまだ取れてませんが、東京メトロ方南町線が作られた経過も、これに近いようです）。
その３名中の１名です。
［"豪徳寺"［"駅"｜"停留所"］］
たまでんの「山下」という停留所名は、別に何の不思議もなくて、大正１５年５月開通時には、現・宮の坂にちょっと南に「豪徳寺前」という停留所があり、ここは文字通り豪徳寺の南西直近ですので、山下の場所に「豪徳寺」との停留場名をつけられる道理がありません。
一方、３年ほど遅れて開通した小田急としては、その駅名に、著名な地名などを付けたいのが、一種の人情というもので、直近の名刹である「豪徳寺」を駅名にするのも無理からぬものがある（現ＪＲ・品川駅が、港区であるうえ京急・北品川駅おり北にあり、同じく目黒駅が品川区にあるのも、同様の理由でしょう）といえます。
と、ここまでは常識的な話で…
山下停留所・豪徳寺駅の一帯は、今でも、豪徳寺さんの貸地が多いようで、小田急線の開通当時はさらにその傾向が強かったと思います。
その豪徳寺さんが、小田急線用地の買収に応じるにあたり、駅名に「豪徳寺」の名称を使用することを条件とした可能性は結構高いと思います（ちょっと、パターンはちがい、また、ウラはまだ取れてませんが、東京メトロ方南町線が作られた経過も、これに近いようです）。
