2014年02月24日
下北沢X新聞(2509)〜武蔵野西郊：玉電再評価〜
（一）
今時間に生きる私たちは、今に安閑とし、驕りもする。歴史経過の中で意義深いものであったとしてもそれを過少評価してしまう。消えてしまった路線、玉川電気鉄道は交通史論的には邪魔電、砂利電と過少評価されているが、世田谷を切り開いたパイオニア路線として高く評価する必要があると。
２月２２日、第９２回、都市物語を歩くは「世田谷線の勾配を歩く」をテーマとして下高井戸から三軒茶屋までを歩いた。最後に、三茶でお茶をして、歓談した。ここで皆で一致した結論である。
歩いてみて実感したことは玉電本線とは異なる考えで高井戸支線が敷設されていることだ。前者は旧道、大山厚木街道沿いに敷設された。古道はもともと地形を勘案して造ってある。よって敷設側は地形についてはあまり顧慮しなくてもよい。
ところが、支線、とくに上町、下高井戸間は、古道を離れての縦横ラインである。設計者は、どこをどう通るか、地形とにらめっこしてこれを敷設した。歩いていくとそのことがよく分かる。
ナビゲーターが勾配を図に落として説明していたが、このプレゼンはなかなか好かった。
「いい坂だねえ」
古道滝坂道を背に載せた線路が向こうに続いている。それを眺めみるのは楽しい。
高井戸線は地形ドラマを走っている。北沢川から烏山川へは起伏を越えていく。現今軽量車、３００系も峠越えでは唸る。
世田谷線では鉄道文学が生きている。
「カダンスがなんとも言えないね、これこそが鉄道文学の源流なんだよ」
私は訳の分からないことを言う。が、淀橋台を下るときのジョイント音は素晴らしい。都内でも屈指、鉄道音楽が演奏される場だ。
（二）
下高井戸駅で集まったときに資料を配付した。この中に土地の広告チラシの複写を一枚入れていた。これは駒沢高射砲陣地関連情報の副産物である。玉電沿線文化を考察する場合の資料となるものだ。玉電の交通史論的な評価を高めなくてはならないと思ったのはこのチラシを得てからだ。
これは高射砲陣地跡の情報を最初に提供していただいた大槻統さんから得たものである。メールにはこうあった。
小生が生まれ育った土地の分譲のチラシです。駒沢の家を整理していたら出てきましたので残しておきました。この一角は当時の『文化的田園理想住宅地』とチラシで謳っています。番地が１００６番でしたので『仙緑園』と称していました。
家を建てたのは関東大震災の翌年（1923年）と聞いていましたので、土地を買ったは震災前後かなと思います。
駒沢高射砲陣地跡の情報は、貴重な歴史事実である。が、このチラシそのものもこれに劣らない歴史記録価値がある。土地に対するどのような考えを持っていたか？玉電の沿線宅地にどのような価値を認めていたか？このことが分かるからである。
（三）
このチラシを見たときに思ったことはモダニズムである。チラシのトップには、「文化的田園理想住宅地」と謳っている。都市、居住者勤め人の心をくすぐる歌い文句だ。土地の文化が巧みに使われているところが心憎い。
「市外駒沢村大字上馬引澤字三橋 文筆設計図 縮尺六百分の一」とある。１００６番地、ゆえに『仙緑園』とした。水あり、緑あり、太陽ありである。なんと敷地北端に川が流れている。「品川用水」とある。
尾根筋を流れる、用水である。沢筋ではない、丘陵トップを流れる川である。このチラシ、眺めているだけでどきどきしてしまう。
◎高射砲関連情報
goo古地図から戦跡を探そう。
街歩きの後の、カフェでの交歓で、駒沢高射砲陣地跡のことが話題になった。これに関連して米澤邦頼さんが、川崎久地高射砲陣地跡もgoo地図にはあるとの新情報をもたらした。これについて早速別宮通孝さんが検証してくれた。彼からのメールと写真である。
おはようございます。米澤さんの言われていらっしゃった、高津区久地の高射砲陣地跡が確認できました。この陣地は、半円状西側に向けて、明らかに高射砲が設置されていたと思われます、壕状の施設が見て取れます。南武線沿線に点在する、軍需工場の防御目的かと思われます。
話し合いから別宮通孝さんからの提案があった。三軒茶屋から二子玉川までの街歩き企画である。素晴らしい。
中里色街跡、上馬うなり石、八幡山宗円寺、品川用水、品川道分岐庚申塔、駒沢高射砲陣地、（パオンのロールケーキ）仙緑園、駒沢林泉公園、駒沢給水塔、志賀直哉旧居、呑川上流水源探索、新町住宅地など……これは一回では終わらない……いや、実は、今日仙緑園をチェックした後に、高射砲陣地跡をさまよっていると、庭に異様な構造物が、見間違いかもしれないが…
下高井戸駅で集まったときに資料を配付した。この中に土地の広告チラシの複写を一枚入れていた。これは駒沢高射砲陣地関連情報の副産物である。玉電沿線文化を考察する場合の資料となるものだ。玉電の交通史論的な評価を高めなくてはならないと思ったのはこのチラシを得てからだ。
これは高射砲陣地跡の情報を最初に提供していただいた大槻統さんから得たものである。メールにはこうあった。
小生が生まれ育った土地の分譲のチラシです。駒沢の家を整理していたら出てきましたので残しておきました。この一角は当時の『文化的田園理想住宅地』とチラシで謳っています。番地が１００６番でしたので『仙緑園』と称していました。
家を建てたのは関東大震災の翌年（1923年）と聞いていましたので、土地を買ったは震災前後かなと思います。
駒沢高射砲陣地跡の情報は、貴重な歴史事実である。が、このチラシそのものもこれに劣らない歴史記録価値がある。土地に対するどのような考えを持っていたか？玉電の沿線宅地にどのような価値を認めていたか？このことが分かるからである。
（三）
このチラシを見たときに思ったことはモダニズムである。チラシのトップには、「文化的田園理想住宅地」と謳っている。都市、居住者勤め人の心をくすぐる歌い文句だ。土地の文化が巧みに使われているところが心憎い。
「市外駒沢村大字上馬引澤字三橋 文筆設計図 縮尺六百分の一」とある。１００６番地、ゆえに『仙緑園』とした。水あり、緑あり、太陽ありである。なんと敷地北端に川が流れている。「品川用水」とある。
尾根筋を流れる、用水である。沢筋ではない、丘陵トップを流れる川である。このチラシ、眺めているだけでどきどきしてしまう。
◎高射砲関連情報
goo古地図から戦跡を探そう。
街歩きの後の、カフェでの交歓で、駒沢高射砲陣地跡のことが話題になった。これに関連して米澤邦頼さんが、川崎久地高射砲陣地跡もgoo地図にはあるとの新情報をもたらした。これについて早速別宮通孝さんが検証してくれた。彼からのメールと写真である。
おはようございます。米澤さんの言われていらっしゃった、高津区久地の高射砲陣地跡が確認できました。この陣地は、半円状西側に向けて、明らかに高射砲が設置されていたと思われます、壕状の施設が見て取れます。南武線沿線に点在する、軍需工場の防御目的かと思われます。
話し合いから別宮通孝さんからの提案があった。三軒茶屋から二子玉川までの街歩き企画である。素晴らしい。
中里色街跡、上馬うなり石、八幡山宗円寺、品川用水、品川道分岐庚申塔、駒沢高射砲陣地、（パオンのロールケーキ）仙緑園、駒沢林泉公園、駒沢給水塔、志賀直哉旧居、呑川上流水源探索、新町住宅地など……これは一回では終わらない……いや、実は、今日仙緑園をチェックした後に、高射砲陣地跡をさまよっていると、庭に異様な構造物が、見間違いかもしれないが…
この記事へのコメント
1. Posted by 桜上水confidential 2014年02月25日 17:25
[下高井戸支線異考]
2000年の３月８日、営団地下鉄日比谷線が中目黒駅で脱線事故を起こし、その原因について書かれていた何かの記事に、事故現場である中目黒駅手前のカーブは、戦前、中目黒から三軒茶屋方面への鉄道敷設計画があった「名残」というニュアンスのことが書かれていた記憶があります。
長いあいだ忘れていたのですが、あるとき、地図で中目黒から三軒茶屋を目で追っていったところ、世田谷線がほぼ、その延長戦上にあることに目が行きました。世田谷線＝下高井戸支線は、その建設時に、世田谷町有志から強い誘致運動があり（勝光院線）、もともとは三軒茶屋から下高井戸へまっすぐであった計画路線を現行の世田谷、上町、宮の坂を通るルートに変更されたということがあったといいます。
なるほど、三軒茶屋から西太子堂を経て、線路はいったん北に転じるに見えて、再び、南へカーブを切り若林駅に向かいます。この北カーブをそのまま延長していくと、松蔭神社の北の烏山川を遡上、別れてほぼ山下駅の方向へ向かうのです。
下高井戸支線建設と同時期、玉電は、渋谷から延長して、天現寺線と中目黒線を建設しました。
この中目黒線建設は、件の中目黒ー三軒茶屋線の代替だったのではないでしょうか？
2000年の３月８日、営団地下鉄日比谷線が中目黒駅で脱線事故を起こし、その原因について書かれていた何かの記事に、事故現場である中目黒駅手前のカーブは、戦前、中目黒から三軒茶屋方面への鉄道敷設計画があった「名残」というニュアンスのことが書かれていた記憶があります。
長いあいだ忘れていたのですが、あるとき、地図で中目黒から三軒茶屋を目で追っていったところ、世田谷線がほぼ、その延長戦上にあることに目が行きました。世田谷線＝下高井戸支線は、その建設時に、世田谷町有志から強い誘致運動があり（勝光院線）、もともとは三軒茶屋から下高井戸へまっすぐであった計画路線を現行の世田谷、上町、宮の坂を通るルートに変更されたということがあったといいます。
なるほど、三軒茶屋から西太子堂を経て、線路はいったん北に転じるに見えて、再び、南へカーブを切り若林駅に向かいます。この北カーブをそのまま延長していくと、松蔭神社の北の烏山川を遡上、別れてほぼ山下駅の方向へ向かうのです。
下高井戸支線建設と同時期、玉電は、渋谷から延長して、天現寺線と中目黒線を建設しました。
この中目黒線建設は、件の中目黒ー三軒茶屋線の代替だったのではないでしょうか？
