2014年02月26日
下北沢X新聞(2510)〜武蔵野西郊：玉電再評価２〜
（一）
玉川電気鉄道、この電車線の敷設が物差しとなった。大正十年十一月、初めてこの電車に乗った寺田寅彦は、『寫生紀行』というエッセイで次のように記している。
世田ヶ谷といふ處が何處かしら東京附近にあるといふ事だけ知つて、それがどの方面だかは今日迄つい知らずに居たが、今此處を通つて始めて知つた。
電車線に乗ったことで世田ヶ谷というところが分かった。その奥行きや佇まいを知った。「東京の市街が何處迄も／＼續いて居るのにいつもながら驚かされた。」とも記す。電車線の敷設が宅地開発に繋がった。
今回、駒沢高射砲陣地跡を巡っての議論の過程で一つの資料が見つかった。玉電沿線の「駒沢停留場」のすぐそばの宅地開発のチラシである。かつてここに住んでおられた大槻統さんが保存しておられたものだ。そのことをここで話題にした。彼からのメールにはこうあった。
あの分譲地のチラシまで採り上げていただき有難うございます。つまらない昔のチラシでも90年も立つと何かの参考になるのだと考えさせられました。
大正末年、玉電の沿線の文化を考える上で貴重な一枚である。ビラに書かれている「文化的田園理想的住宅地」は揮っている。一帯は、荏原台の高台だ。イメージに浮かぶのが屈曲した丘の上には雑木林がみえる。北へ行くと下っている。丘上であることが実感できる場だ。
「仙緑園」は玉電駒沢電停前である。ここで降りて、北へ行くと道は傾斜し蛇崩川支流へと転がって行く、そしてまた上った所に丘がある。かつて「タンチ山」と言われたここには向井潤吉アトリエ館がある。彼は昭和八年にここにアトリエを構えたようだ。一帯は武蔵野の面影を残す雑木林が広がっていて何もなかったようだ。
ところが、「移り住んだ頃は夫人が一時、神経衰弱になるほど静かだったと言います。もっとも、戦時下、近隣に高射砲台の陣地ができ、木々が伐り倒され、菜園が開かれるなどして、様相は一変したそうです。」と。仲間の米澤さんがアトリエ館案内のホームページに記録されていると教えてくれた。
こつ然と、高射砲陣地ができて、奧さんびっくり、さぞかしびっくりしたことだろう。
（二）
「仙緑園」の話だ。居住者もこの田園に理想を追い求めたのだろう。大槻さんによるとここの区画割は広く取ってあって、「当時は土地を一軒で200〜300坪と贅沢に使用出来た」ようだ。ことから地位や名のある人が住んだようだ。大槻さんからのメールには人間の歴史が書かれていた。プライバシーといえば、プライバシーだが、かなり月日が経っているので歴史記録を優先しよう。
この土地は祖父が終の棲家とした場所でしたが小生が生まれる4年前（昭和6年）に逝去しています。家は当時にしてはガラス窓が多いい洋館風の建物でした。
祖父は1885年のハワイ官約移民第１回生（宮城県からは一人）でハワイ島（パパイコウ）で成功したようで、晩年はカナダ、台湾（精糖事業）などででの海外生活で、日露戦争後に日本に帰ってきています。祖母と祖父は見合い結婚をしますが、祖母は仕事があり数年でハワイから子供をつれて帰国しています。
祖母は日赤看護婦第2回卒業で日清、日露戦争に従軍、日露では陸軍病院船「ロセッタ丸」の婦長をしていました。
NHKドラマの「八重の桜」の新島八重とは日赤で一緒に仕事をしていたようです。
祖母は昭和18年に逝去しましたので小生は結構長い間一緒に住みました。
知られざる歴史片鱗の一齣が見えてくる。船は「ろせった丸」として有名なものだ。もともと輸送船であったものが日露戦では病院船となったようだ。
（三）
駒沢高射砲陣地発見、経済波及効果もあるかもしれない。跡地に度々足を向ける。するとここにはパン屋さんがある。「パオン」という一昨日は、調理パンを、昨日はアップルパイを買った。ここのアップルパイは格別だ。
古いパン屋であるが、ケーキにはこだわっている。当時の「文化的田園理想的住宅地」である「仙緑園」の居住者の味の欲望が今もなおこれに残っているのかもしれぬ。
しかし、現実に行ってみると面影はほとんどない。この地、特徴的なことは袋小路になっていることだ。不審者と間違えられそうで入って行きにくい。
かつては広かった敷地も区画割りされてマンションや家やらがこまごまと建っている。 田園時代は、太陽が降り注ぎ、緑が多く、品川用水の流れも綺麗だったようだ。彼のお祖母さんの話では、「水は清く鯉が泳いでいた」という。（写真は現、仙緑園）
「仙緑園」の話だ。居住者もこの田園に理想を追い求めたのだろう。大槻さんによるとここの区画割は広く取ってあって、「当時は土地を一軒で200〜300坪と贅沢に使用出来た」ようだ。ことから地位や名のある人が住んだようだ。大槻さんからのメールには人間の歴史が書かれていた。プライバシーといえば、プライバシーだが、かなり月日が経っているので歴史記録を優先しよう。
この土地は祖父が終の棲家とした場所でしたが小生が生まれる4年前（昭和6年）に逝去しています。家は当時にしてはガラス窓が多いい洋館風の建物でした。
祖父は1885年のハワイ官約移民第１回生（宮城県からは一人）でハワイ島（パパイコウ）で成功したようで、晩年はカナダ、台湾（精糖事業）などででの海外生活で、日露戦争後に日本に帰ってきています。祖母と祖父は見合い結婚をしますが、祖母は仕事があり数年でハワイから子供をつれて帰国しています。
祖母は日赤看護婦第2回卒業で日清、日露戦争に従軍、日露では陸軍病院船「ロセッタ丸」の婦長をしていました。
NHKドラマの「八重の桜」の新島八重とは日赤で一緒に仕事をしていたようです。
祖母は昭和18年に逝去しましたので小生は結構長い間一緒に住みました。
知られざる歴史片鱗の一齣が見えてくる。船は「ろせった丸」として有名なものだ。もともと輸送船であったものが日露戦では病院船となったようだ。
（三）
駒沢高射砲陣地発見、経済波及効果もあるかもしれない。跡地に度々足を向ける。するとここにはパン屋さんがある。「パオン」という一昨日は、調理パンを、昨日はアップルパイを買った。ここのアップルパイは格別だ。
古いパン屋であるが、ケーキにはこだわっている。当時の「文化的田園理想的住宅地」である「仙緑園」の居住者の味の欲望が今もなおこれに残っているのかもしれぬ。
しかし、現実に行ってみると面影はほとんどない。この地、特徴的なことは袋小路になっていることだ。不審者と間違えられそうで入って行きにくい。
かつては広かった敷地も区画割りされてマンションや家やらがこまごまと建っている。 田園時代は、太陽が降り注ぎ、緑が多く、品川用水の流れも綺麗だったようだ。彼のお祖母さんの話では、「水は清く鯉が泳いでいた」という。（写真は現、仙緑園）
