2014年10月08日
下北沢X物語(2659)〜発足十周年「北沢川文化遺産保存の会」〜
（一）
昨日、企画書を提出した。冒頭には次のように記した。
私たち、北沢川文化遺産保存の会は貴社が立地する地域の文化を掘り起こしている。発足は２００４年１２月である。間もなく十周年を迎える。この間、多くの活動成果をあげてきた。特には北沢川緑道に文学碑を建立し、地域に居住した文学者の事跡を目に見える形で記録してきたことだ。一つ目は坂口安吾文学碑、二つ目は萩原朔太郎の唯一の生活痕跡を記したものとしての鉄塔由来碑、三つ目は�垳�利一文学顕彰碑である。この度、十年の活動の総括をするものとして四つ目に当たる、「三好達治文学顕彰碑」を建てることにした。
貴社とは、東邦薬品株式会社を指す。昨日、この企画書を巡る打ち合わせがあった。目黒の自宅から代沢の本社までは歩いて行った。６３分掛かった。
いつもは、下６１北沢タウンホール行きのバスでいく。が、天気もいい、何時もの荏原逍遙を考えればなんのこともない。歩行（かち）に価値を見出して楽しむことにする。
この下北沢までのルートは私には懐かしい。中野区にある学校まで自転車で通っていた道である。あそこの坂、あの鉄塔、すべて皆懐かしい。
会の発足は、この自転車通勤が発端となって始まった。
「ほら、交番前の小田急の東北沢４号踏切ではいつも引っ掛かって、待たされたのです。その間に街を観察していて気づいたことをブログで書くようになったのです…」
足で漕いで、キーボードに指で触れる。これを経て会は発足していくことになる。
地元に住んでいた東盛太郎さんからこのブログコメントに応答があった。ネットでのやりとりを通して、実際に会うようになった。「邪宗門」で彼と会ったことがきっかけで「会を作ろう」ということになった。
（二）
今になって考えると自転車での行き来が重要だった。足が地形を覚えこんだことだ。もう夢中だった。�垳�利一旧居、萩原朔太郎旧居、懸命になって自転車で走っては探した。
今回、十周年を迎え、三好達治文学顕彰碑を建てることにした。この旧居探しも大変だった。その経緯はみなこのブログに綴られている。
分かってみると何のことはない。自転車通勤で何時も通っていた小路にひっそりとあった。詩人のポジションである。
今回、碑を建てるに当たっては、紀要をまとめている。タイトルは、「代田小路の微傾斜文学論」である。そこはかとなく下っていく代田小路にこそ秘密はあった。
彼の最終詩集は、『百たびののち』である。この代田小路の寓居でのくらしぶりがこれには幾つも幾つも載っている。
紀要を書くに当たっては、改めて代田生活を調べてみた。彼の場合、誰もが『測量船』の詩を想起する。ところが、この代田時代の作品は、彼詩人が、一つの詩境に達したものであると高く評価されている。
大岡信は、それを「艶」と評価している。
人間の性的エネルギーではなく、むしろ自然界の、樹木や岩石の精のごときものの、眼に見えない変身、経歴が、艶という形をとつて人間の言葉のうちに姿をあらわすのだ。
『三好達治論補遺』本の手帳「三好達治追悼号」一九六四年六月）
枯淡の中に感じられるエロスだ、「中世の歌論や能楽論でいわれているそれに近いもの」と大岡は言う。世田谷代田隠棲生活に見出された達治の詩境だと、自分では思った。
（三）
この世田谷代田で、なぜ日本を代表する二人の抒情詩人が住んだのか、なぜここを終焉の地としたのか、日本近代文学史の大きな謎だ。
「代田小路の微傾斜文学論」も大詰めを迎えている。地形文学論である、文学研究ではなく、物語だ。
「人の書かないことを書け」、これは下北沢文士町巡りで教わった。それで、大胆に打って出た。第十章の最終章の見出しである。萩原朔太郎と三好達治は、代田サラダボールをアンテナにして、宇宙から照射される電波をキャッチしていた！
世田谷代田パラボラアンテナ論（終章）
（写真は若林の懐かしい道、鉄塔は駒沢線５６号）
〇道吉剛氏のテレビ出演
「三好達治文学顕彰碑」は、道吉剛氏がデザインをされている。１０月１０日、体育の日にテレビ出演される。オリンピックのデザインに深く関わっておられる。
ＮＨＫＢＳ１ 10月10日（金）
午後9時〜9時50分
「1964から2020へ オリンピックをデザインした男たち」
〇注記
ブログ表題タイトルを１０月１日から「下北沢Ｘ新聞」から、「下北沢Ｘ物語」に変更した。もともとは「物語」であった。「新聞」に変えたのは、最新という意味があった。しかし、文化発掘は、最新でなくともよい。このところの傾向にしても物語発掘となっている。もとにもどしたことだ。Ｘは、鉄道交差と未知とをかけたものである。
今になって考えると自転車での行き来が重要だった。足が地形を覚えこんだことだ。もう夢中だった。�垳�利一旧居、萩原朔太郎旧居、懸命になって自転車で走っては探した。
今回、十周年を迎え、三好達治文学顕彰碑を建てることにした。この旧居探しも大変だった。その経緯はみなこのブログに綴られている。
分かってみると何のことはない。自転車通勤で何時も通っていた小路にひっそりとあった。詩人のポジションである。
今回、碑を建てるに当たっては、紀要をまとめている。タイトルは、「代田小路の微傾斜文学論」である。そこはかとなく下っていく代田小路にこそ秘密はあった。
彼の最終詩集は、『百たびののち』である。この代田小路の寓居でのくらしぶりがこれには幾つも幾つも載っている。
紀要を書くに当たっては、改めて代田生活を調べてみた。彼の場合、誰もが『測量船』の詩を想起する。ところが、この代田時代の作品は、彼詩人が、一つの詩境に達したものであると高く評価されている。
大岡信は、それを「艶」と評価している。
人間の性的エネルギーではなく、むしろ自然界の、樹木や岩石の精のごときものの、眼に見えない変身、経歴が、艶という形をとつて人間の言葉のうちに姿をあらわすのだ。
『三好達治論補遺』本の手帳「三好達治追悼号」一九六四年六月）
枯淡の中に感じられるエロスだ、「中世の歌論や能楽論でいわれているそれに近いもの」と大岡は言う。世田谷代田隠棲生活に見出された達治の詩境だと、自分では思った。
（三）
この世田谷代田で、なぜ日本を代表する二人の抒情詩人が住んだのか、なぜここを終焉の地としたのか、日本近代文学史の大きな謎だ。
「代田小路の微傾斜文学論」も大詰めを迎えている。地形文学論である、文学研究ではなく、物語だ。
「人の書かないことを書け」、これは下北沢文士町巡りで教わった。それで、大胆に打って出た。第十章の最終章の見出しである。萩原朔太郎と三好達治は、代田サラダボールをアンテナにして、宇宙から照射される電波をキャッチしていた！
世田谷代田パラボラアンテナ論（終章）
（写真は若林の懐かしい道、鉄塔は駒沢線５６号）
〇道吉剛氏のテレビ出演
「三好達治文学顕彰碑」は、道吉剛氏がデザインをされている。１０月１０日、体育の日にテレビ出演される。オリンピックのデザインに深く関わっておられる。
ＮＨＫＢＳ１ 10月10日（金）
午後9時〜9時50分
「1964から2020へ オリンピックをデザインした男たち」
〇注記
ブログ表題タイトルを１０月１日から「下北沢Ｘ新聞」から、「下北沢Ｘ物語」に変更した。もともとは「物語」であった。「新聞」に変えたのは、最新という意味があった。しかし、文化発掘は、最新でなくともよい。このところの傾向にしても物語発掘となっている。もとにもどしたことだ。Ｘは、鉄道交差と未知とをかけたものである。
