2014年10月28日
下北沢X物語(2673)〜都鄙境の秘境探検京王線４〜
（一）
新宿の追分より、京王電車に乘る。線路をはじめは甲州街道に沿ひしが、やがて舊玉川上水に沿ふ。
大町桂月が「新武蔵野の桜」の中で書いている。大正五年に京王線に乗ったときの話だ。このときは新宿追分が起点駅だった。省線を越えて追分まで敷設したのは市電線との接続を考えていたためである。
桂月の一文は、京王線の地形上の特質を表している。この線が甲州街道や玉川上水に沿っている、つまり、淀橋台の背尾根に沿って走っているということである。が、この東西に延びる台地は南に向かってヤツデの葉状に分岐している。ここを横断して線路は敷設されていることから線路は波形状にうねっている。
京王と小田急はよく比較される。後者の京王は、上手から迫ってくる台地を多くは切り通しで抜けていることだ。
代田橋から明大前まではこの枝分かれした台地を横断していく。和田堀給水場あたりは４６、３メートル。この高さの同じ並びに神道扶桑教本部はある。給水所は、東の丸ビルの高さが意識して造られた。一方富士講の扶桑教は西の富士の眺望を意識してここに本部を設置した。かつては富士塚があったという。
淀橋台派生の台地、東松原半島から西松原半島へと京王線は敷設されている。明大前はその境界部分だ。北沢川支流が淀橋台に食い込んでいるところがここである。
現在、京王本線は、今は明大前を高架で抜けている。が、かつてはこの凹みを忠実に走っていた。新宿方から下ってきて、また今度は坂を上っていく。なぜにそれを知っているか。ここを描いた絵があって、それを見ると一目瞭然だ。
（二）
淀橋台から派生した西松原半島の基部に日本学園中学はあった。ここの同窓会が出している「戦後の青春−ぼくらの民主主義−」（日本中学同期会 昭和２１．２２同期会）は読み応えのあるものだ。「戦争に負けた後」という表題で阿部俊明さんは書いている。京王線の話が度々出てくる。
京王電車はぼくにとって、一番乗りなれた電車で、思い出も多い。小学校の遠足先は、この電車の路線内にある多摩御稜、野猿峠、高尾山だった。夏休みに泳ぎに行くのは京王多摩川、正月の明治神宮参拝や今上陛下の閲兵式拝観は西参道（初台）駅からという具合だった。
閲兵式というのは代々木練兵場で行われたものである。興味深いのが次の箇所だ。
大正天皇の皇稜、多摩御稜がある関係で畏き辺専用の御料車も製造されている。そのうちの二輛が一般乗客用に払い下げられてきたことがある。子どもの目には、それぞれの車窓の上に飾り小窓が配している以外は、一般車と変わりない。多摩川で泳いだ帰り、駅のホームに停まっていたのがこの車輛だった。発車を待っていると、斜め向かいの飾り小窓に閃光とともに雷が落ち、ガラスに円形の穴を開けた。煙が上がり、黄色い炎も見える。電車はがら空きで七八人いた乗客は無事だった。
この払い下げ説には、さっそくにきむらたかし氏からメールでの指摘があった。
「これはおそらく、京王５００形のことで、『京王』自身が雨宮に製造させた、昭和５年製の皇族専用車。ただし、結局皇族は誰も乗らなかったので、昭和１３年に３扉改造されて普通車に格下げ。」と。
（三）
たかし氏からは「桜上水、上北沢 いまむかし」という滝沢稔さんが書かれたエッセイが送られてきた。この５００形は桜上水に留置されていて、これを見に行ったという。
特に１９３１（昭和六年）開通の御稜線用に造られた皇室専用車両５００形は立派なもので、よく友達と見に行ったものです。この車両は皇室の方の、多摩御稜参拝用に造られたようですが、実際にはほとんど使われなかったようです。
払い下げ説は退けられたが、一般旅客用に転用されていたことは興味深い記録だ。
阿部俊明さんはこう締めくくっている。
戦後、天皇制とは何かを考えるようになったとき、元御料車への落雷と、代々木の練兵場で白霜にまたがる今上陛下を見たときのことを必ず思い出した。
元御料車への落雷は、御神輿のように金属製の飾り物を多様したせいに違いない。天皇家が神であれば、一度でも神の一族が乗った車輌に雷公が落ちるわけはない。白霜にまたがる軍装をした陛下は、どのように見ても人間以外のなにものでもなかった。
（「神道扶桑教」にて 穴野管長の話を聞く。富士に登る、富士講、扶桑教から戴いた写真）
この記事へのコメント
1. Posted by 桜上水confidential 2014年10月29日 11:26
[井の頭通りと環七の交差点]
先週末通りかかったところ、西側の拡幅工事が完了していました。かなり渋滞する場所だったので、改善ではありますけれど、その先の京王線踏切が開かずになってしまいましたから、深夜帰宅族以外には関係ありませんね。
井の頭通りの土地は、おそらく東京都水道局だと思います。都水道は、日本有数の不動車所有者で、今回の拡幅は、渋滞解消と、あと、和田堀給水所の改築に向け、工事車両の便を考えてのことだと思います。
給水所の建設時には、京王線からの引き込みがありましたけれど、この時代、もはや京王線には貨物輸送の余力はないですからね。
工事のロジスティックスまで、自前でできる！？
先週末通りかかったところ、西側の拡幅工事が完了していました。かなり渋滞する場所だったので、改善ではありますけれど、その先の京王線踏切が開かずになってしまいましたから、深夜帰宅族以外には関係ありませんね。
井の頭通りの土地は、おそらく東京都水道局だと思います。都水道は、日本有数の不動車所有者で、今回の拡幅は、渋滞解消と、あと、和田堀給水所の改築に向け、工事車両の便を考えてのことだと思います。
給水所の建設時には、京王線からの引き込みがありましたけれど、この時代、もはや京王線には貨物輸送の余力はないですからね。
工事のロジスティックスまで、自前でできる！？
