2015年07月19日
下北沢Ｘ物語（2840）〜砲兵と軍馬を偲ぶ、八度目の駒沢練兵場〜
（一）駒沢練兵場を歩く、我らの会の恒例行事だ、昨日は八度目を行った。「毎年夏に歩いています。このコースだけは定番です。これから歩きますが、駒沢練兵場、野砲兵営跡は表示などはほとんどありません。しかし、ここで多くの兵がまた馬匹が厳しい訓練をしていました。ここには三つの砲兵隊がいました。そのうち「野砲兵第一聯隊」は南方で玉砕しています。彼らの痕跡が残っていないから毎年ここを歩いて、労苦を偲ぶ。あの戦争を忘れないために行ってきました。ちょうど今年は戦後七十年、その意味もこめて歩いて行きたいと思います。案内者は世田谷道楽会の上田暁さんです…」
集合地点は、田園都市線池尻大橋駅だ。飛び入り参加が何人も出てきてやや混乱したことだ。
駒沢練兵場の四大ビューポイントを上げると、一つは現存する糧秣廠馬糧倉庫、一つは自衛隊三宿駐屯地内にある近衛野砲兵連隊記念碑と野戦重砲兵第八聯隊碑、一つは下馬「馬魂碑」、もう一つが唯一残存する野砲兵兵舎（韓国会館）だ。これらを中心に巡った。
自衛隊三宿駐屯地を果敢にアタックする。
「毎年駒沢練兵場跡を巡礼しております。向こうに見えている野砲兵の石碑を見学させてもらいませんか。去年は係官の方が行って帰るだけならということで案内していただきました、石碑をお参りするだけですが…」
「そういうことは一般に認めておりません。ここで例外を作ると他に別のことでこられた方が出て来て、それも認めなくてはならなくなりますから…」
今年行き会った門衛の当番兵はガードが固い。突撃アタックは失敗だった。去年とはどうも空気が違う、安保法案を巡ってつい最近強行採決が行われた。自衛隊が何かと話題になっている。そんなこともあって警備を厳重にしている節もあると思った。
順次巡っていき東山中学の脇の馬頭観音に差し掛かる。すぐそばは学校のグランドで子供らが野球の練習をしている。ひょんなことから破傷風の話題になった。
「私は駒場高校でしたが、予防注射行いました」
「あれとなりの目黒一中の人もやっていたと私は聞きました」
「私は三宿中学で注射やりました」
これは女性だった。後で分かったのは駒繋小の先生をされていた方だ。
「駒繋にいた中村初子先生はご存じですか？」
淺間温泉目之湯の引率教員だった。ここに武剋隊が泊まっていたことから取材をしたことがある。ところが大分前から連絡が取れなくなっている。
話はそれたが面白いことだった。戦跡巡りをしていたが自分の腕に痛みを覚えていた。練兵場や野砲兵、輜重兵がいたところには軍馬がいた。そのことから土壌に破傷風菌が残っていた。それでだいぶ後まで予防注射をしていた。その懐かしい話で盛り上がった。
（二）
「実際に歩いてみると駒沢練兵場がとても広かったことが分かりますね。でもこれは説明されないと分からないですね。誰かCGで現在と昔とが一目で分かるもの作ってくれたらいいですね」
参加者の要望だ。歩きながら人と話を交わす。
何年も通っているが当地に兵営を構えていた三つの野砲兵の細かな違いは深くは認識していなかった。近衛野砲兵は『近衛陸軍砲兵二等兵』という本があって、これでだいぶ分かっていた。他の二隊はあまり気にとめることはなかった。が、野戦重砲兵第八連隊が三宿通りに面している理由が分かった。彼らは自動車の砲兵だ。こちらに面している方が好都合だ。上田暁さんが『われらの野重八』からの引用をしている。
私たちの隣の野砲の連中と違って馬の匂いはなくガソリンの香りのする兵隊だった。そのせいか案外もてたので金はかかったが面白かった。
なるほど三宿から玉電で道玄坂で降りて丸山町あたりに行っていたのだろう。色街は行けば金がかかる。
「うちにくるのはみんな馬の匂いがするんだから、なんかね馬糞を思い出してけったくそ悪いのよ。ね、サーさんたらガソリンのにおいがするじゃない、さすが野重ね、うんもう、すぐに野獣になっちゃうんだから…」
こういうちょっとした文も面白い。
「でもね、近衛野砲兵は誇りがありましたよね。何しろ、皇居で午砲を撃っていましたからね。近衛兵のほこりですね」
（三）
今回、初めての試みを行った。終点を三軒茶屋キャロットタワーにした。この三階に市民活動コーナーがある。あらかじめここを予約しておいた。終わった後に話でもしようと。１６時から二時間ほど語り合った。若い人もいて年寄りもいる。和やかな会だった。
仙川で活動をしている和田文雄さんたちが三人で参加していた。仙川には高射砲陣地があった。その調べを彼らはしている。高射砲ネットワークが作れるねと話をしたことだ。歩く会には駒沢給水塔の新庄さんも来ていた。水路の話で盛り上がった。
「じゃあ、来年三月頃に、共催で品川用水を歩きましょうか」と私。
「うん、健さんところは人集めするノウハウ持っているからね、いいね」
市民活動どうしの交流ができている。今回は世田谷道楽会の上田暁さんが案内役だ。
まとめのところでは、かなり高度な話になった。事実をどう伝えていくかという問題だ。それぞれがどんな観点を持って聞いたり､調べたりするかという問題だ。
これについては議論になった。
「なんか研究会みたいですね」と。
一般に言われていることも突き止めると嘘であることも多い。そういう歴史事実にどう向かい合っていくか。
「私もマスコミに取材を受けることがあるのですけども最初から記事ができているのですね。そこの部分を補強するために取材に来ているに過ぎない」
まちづくりに参画している梅津政之輔さんはなかなか手厳しい。
「私は地下壕なんかけっこう行っているんですよ。ヘッドランプつけてね」
社会派のライターの室田元美さんがいう。戦争の傷跡を訪ねる壕巡りのことだ。
「へぇ、壕女っていうのかなあ？」
彼女、今回のことを記事にしたいと。ぜひしてほしい。
（四）
来月、８月１５日、世田谷公園内に「世田谷区立平和資料館」がオープンする。来年はここをコースに組み込んで第九回駒沢練兵場を歩くを実施したい。
（上、世田谷公園での記念撮影。中、下馬韓国会館。下、出かける前に自宅前で）
「実際に歩いてみると駒沢練兵場がとても広かったことが分かりますね。でもこれは説明されないと分からないですね。誰かCGで現在と昔とが一目で分かるもの作ってくれたらいいですね」
参加者の要望だ。歩きながら人と話を交わす。
何年も通っているが当地に兵営を構えていた三つの野砲兵の細かな違いは深くは認識していなかった。近衛野砲兵は『近衛陸軍砲兵二等兵』という本があって、これでだいぶ分かっていた。他の二隊はあまり気にとめることはなかった。が、野戦重砲兵第八連隊が三宿通りに面している理由が分かった。彼らは自動車の砲兵だ。こちらに面している方が好都合だ。上田暁さんが『われらの野重八』からの引用をしている。
私たちの隣の野砲の連中と違って馬の匂いはなくガソリンの香りのする兵隊だった。そのせいか案外もてたので金はかかったが面白かった。
なるほど三宿から玉電で道玄坂で降りて丸山町あたりに行っていたのだろう。色街は行けば金がかかる。
「うちにくるのはみんな馬の匂いがするんだから、なんかね馬糞を思い出してけったくそ悪いのよ。ね、サーさんたらガソリンのにおいがするじゃない、さすが野重ね、うんもう、すぐに野獣になっちゃうんだから…」
こういうちょっとした文も面白い。
「でもね、近衛野砲兵は誇りがありましたよね。何しろ、皇居で午砲を撃っていましたからね。近衛兵のほこりですね」
（三）
今回、初めての試みを行った。終点を三軒茶屋キャロットタワーにした。この三階に市民活動コーナーがある。あらかじめここを予約しておいた。終わった後に話でもしようと。１６時から二時間ほど語り合った。若い人もいて年寄りもいる。和やかな会だった。
仙川で活動をしている和田文雄さんたちが三人で参加していた。仙川には高射砲陣地があった。その調べを彼らはしている。高射砲ネットワークが作れるねと話をしたことだ。歩く会には駒沢給水塔の新庄さんも来ていた。水路の話で盛り上がった。
「じゃあ、来年三月頃に、共催で品川用水を歩きましょうか」と私。
「うん、健さんところは人集めするノウハウ持っているからね、いいね」
市民活動どうしの交流ができている。今回は世田谷道楽会の上田暁さんが案内役だ。
まとめのところでは、かなり高度な話になった。事実をどう伝えていくかという問題だ。それぞれがどんな観点を持って聞いたり､調べたりするかという問題だ。
これについては議論になった。
「なんか研究会みたいですね」と。
一般に言われていることも突き止めると嘘であることも多い。そういう歴史事実にどう向かい合っていくか。
「私もマスコミに取材を受けることがあるのですけども最初から記事ができているのですね。そこの部分を補強するために取材に来ているに過ぎない」
まちづくりに参画している梅津政之輔さんはなかなか手厳しい。
「私は地下壕なんかけっこう行っているんですよ。ヘッドランプつけてね」
社会派のライターの室田元美さんがいう。戦争の傷跡を訪ねる壕巡りのことだ。
「へぇ、壕女っていうのかなあ？」
彼女、今回のことを記事にしたいと。ぜひしてほしい。
（四）
来月、８月１５日、世田谷公園内に「世田谷区立平和資料館」がオープンする。来年はここをコースに組み込んで第九回駒沢練兵場を歩くを実施したい。
（上、世田谷公園での記念撮影。中、下馬韓国会館。下、出かける前に自宅前で）
この記事へのコメント
1. Posted by 長谷川順一 2015年09月14日 21:37
10月17・18日に行われます「烏山区民センター文化祭」出展すべく「世田谷区平和マップ」を企画・制作中です。仙川にあった高射砲陣地の場所を知りたいので和田さんをご紹介下さい。
皇居東御苑を散策されたことがございますか。「午砲台跡」石碑があります。
室田元美さんには新宿の戦跡のことで取材を受けたことがあります。
