2015年07月24日
下北沢Ｘ物語（2843）〜戦火を潜り抜けた児童楽団�掘�
（一）ミドリバンドは、都市郊外の境界逸話だといえる、文化の先駆性を秘めた都鄙境の物語である。相互の関係性が希薄で、それぞれが密かに存在していた。地域を渉猟していると、それが偶然的に発見される。代沢小の学区域では文化がこっそり営まれている。つい数日前に偶然このブログに行き着いた人が、「台所詩集・花の詩集」のことをコメントしてこられた。「素晴らしい詩ばかりですね。イラストが和田誠さんと云うのも驚きでした」と。代沢小の校長室で過去のアルバムを見ていたときはらりと落ちてきたものがある。まさにこの詩集だ。六年生が作ったもので和田誠さんのイラストによる詩集で、きるきるとその詩は光っていた。この指導者は鉛筆部隊の隊長柳内達雄である。音楽部隊の隊長浜舘菊雄と互いに影響を受け合っている。
代沢国民学校の第一次疎開先は浅間温泉だ。ここで歌った学寮歌は、「代澤浅間學園の歌」だ。作詞柳内達雄、作曲浜舘菊雄の名コンビで作られた。三番では戦意高揚が歌われる。
聖戦如何に長引くとても
鬼畜米英撃ちてし止まむ
栄えの勝利に輝く日まで
我等代澤浅間學園
「鬼畜米英撃ちてし止まむ」では最高に盛り上がったと疎開学童は回顧する。第一次疎開先での学歌寮歌は勇ましい。が、昭和二十年四月、再疎開で塩尻近郊の寺にちらばる。ここでもこの二人は寮歌を作った。戦争で心が疲れたのだろう、歌は穏やかであり、平和である。
広丘郷福寺に疎開したのは鉛筆部隊だ。ここでの寮歌、「郷福寺学寮の歌」は顛末があって蘇った。が、楽器部隊が本拠地とした寺の寮歌の「真正寺学寮歌」は消えたままだ。
郷福寺の歌は、昨年思いがけずこれを歌うコンサートが寺で行われ、ソプラノ歌手がうたうこれが本堂に朗々と響き渡った。
戦後七十年、記憶がどんどん失われていく、後者の「真正学寮歌」も記録して残しておきたい。来年、第九回『戦争経験を聴く会、語る会』では「戦火を潜り抜けた児童楽団」をテーマとしたい。このときにこの寮歌を何とか復元して蘇らせたいと思っている。このことに関する新たな展開があった。
（二）
郷福寺に疎開していた学童は「真正寺寮歌」もくちずさんでいた。中でも鉛筆部隊の一人だった松本明美さんはよく覚えている。なるべく早く彼女の代沢の家を訪れ、録音をしておきたい。そう思っていた。
つい数日前、『鉛筆部隊と特攻隊』を戦後７０年を迎えるこの夏、企画として取り上げてみたいという話があった。主には第一次疎開先の千代の湯でのできごとをテーマとしたいようだ。証言者としては松本明美さんがいい。それで彼女から談話を取ることになった。松本さんには連絡をした。
「本筋とは全く無関係だけど、『真正寺学寮歌』を歌ってもらえますか?」
カメラを回すのならば彼女の歌も撮っておいてほしい。取材に協力するのでその絵を私にほしい。彼女との約束が決まった後に、先方にこちらの望みを伝えた。撮ってくれるとのこと。
ミドリバンドのＯＢなどには寮歌の復元をと呼びかけていた。浜舘先生の息子さんはうろおぼえだがなんとか譜にできないかやってみたいと。正確なメロディがあれば採譜はできると。また我等の会の川田さんもなんとかなると言っている。映像が手に入ればまちがいなく採譜はできる。
（三）
昨日、その取材関係者と会った。戦後７０年、報道各社はなんとか企画を載せたいという思いがある。この年明けに連絡があった。北海道放送（HBC）報道部からだ。
私どもの番組では、これまでも継続的に、戦争を語り継ぐという企画で、北海道に焦点をあてた取材を行ってきました。
千歳で特攻機の訓練中に亡くなった方がいるらしいということで調べていたのですが、資料が少なく行き詰っていたところで、きむらさんのブログを見つけました。
この後、これに関わる映像資料などを送った。ところが、企画がぽしゃったのか何の連絡もない。問いかけてきた以上、担当者には説明責任がある。頼むときは丁寧に言って、企画が潰れたら何の説明もなく放置する。これまで幾度となくあった、マスコミの驕りである。
今夏の戦争企画では、地域情報紙「セボネ」の来月一日発行の８月号に星野弥生さんが書いている。「世田谷の疎開児童と特攻隊の出会い」というタイトルだ。
私は、戦争関係の記録は社会の人に伝えようと思って発信してきた。誠意もって記事にしたり、番組にしたりする場合には協力は惜しまない。
新たな企画のテレビ番組も捉え方の視点は違うが『鉛筆部隊と特攻隊』を取り上げたいとのこと。ドキュメンタリー系ではなく娯楽系であるようだ。私の伝えは基本は一つ、「特攻を美化しないでほしい」と。とくに今は微妙な時期だ、若い人に伝わるのならあんな苦しい時代があったのだとは伝えてほしい、そう思う。
昨日出会ったデレクターには言ったことだ。
「戦後七十年といってこれを記念として肯定的に捉えていますが、実情は戦争経験者がどんどん居なくなっています。そういう実情や危機を訴えてほしい」
（懐かしい写真。上は、「下北沢の映画痕跡を巡る」、そのときの故松林宗恵監督と私とのツーショット。偶然出て来た。下は、２００９年５月２５日、戦争経験を聴く会、語る会で初めて郷福寺学寮の歌が蘇った場面。代沢小にて。こちらから鳴瀬さん、旭正章さんのお母さん、旭正章さん、松本明美さん）
郷福寺に疎開していた学童は「真正寺寮歌」もくちずさんでいた。中でも鉛筆部隊の一人だった松本明美さんはよく覚えている。なるべく早く彼女の代沢の家を訪れ、録音をしておきたい。そう思っていた。
つい数日前、『鉛筆部隊と特攻隊』を戦後７０年を迎えるこの夏、企画として取り上げてみたいという話があった。主には第一次疎開先の千代の湯でのできごとをテーマとしたいようだ。証言者としては松本明美さんがいい。それで彼女から談話を取ることになった。松本さんには連絡をした。
「本筋とは全く無関係だけど、『真正寺学寮歌』を歌ってもらえますか?」
カメラを回すのならば彼女の歌も撮っておいてほしい。取材に協力するのでその絵を私にほしい。彼女との約束が決まった後に、先方にこちらの望みを伝えた。撮ってくれるとのこと。
ミドリバンドのＯＢなどには寮歌の復元をと呼びかけていた。浜舘先生の息子さんはうろおぼえだがなんとか譜にできないかやってみたいと。正確なメロディがあれば採譜はできると。また我等の会の川田さんもなんとかなると言っている。映像が手に入ればまちがいなく採譜はできる。
（三）
昨日、その取材関係者と会った。戦後７０年、報道各社はなんとか企画を載せたいという思いがある。この年明けに連絡があった。北海道放送（HBC）報道部からだ。
私どもの番組では、これまでも継続的に、戦争を語り継ぐという企画で、北海道に焦点をあてた取材を行ってきました。
千歳で特攻機の訓練中に亡くなった方がいるらしいということで調べていたのですが、資料が少なく行き詰っていたところで、きむらさんのブログを見つけました。
この後、これに関わる映像資料などを送った。ところが、企画がぽしゃったのか何の連絡もない。問いかけてきた以上、担当者には説明責任がある。頼むときは丁寧に言って、企画が潰れたら何の説明もなく放置する。これまで幾度となくあった、マスコミの驕りである。
今夏の戦争企画では、地域情報紙「セボネ」の来月一日発行の８月号に星野弥生さんが書いている。「世田谷の疎開児童と特攻隊の出会い」というタイトルだ。
私は、戦争関係の記録は社会の人に伝えようと思って発信してきた。誠意もって記事にしたり、番組にしたりする場合には協力は惜しまない。
新たな企画のテレビ番組も捉え方の視点は違うが『鉛筆部隊と特攻隊』を取り上げたいとのこと。ドキュメンタリー系ではなく娯楽系であるようだ。私の伝えは基本は一つ、「特攻を美化しないでほしい」と。とくに今は微妙な時期だ、若い人に伝わるのならあんな苦しい時代があったのだとは伝えてほしい、そう思う。
昨日出会ったデレクターには言ったことだ。
「戦後七十年といってこれを記念として肯定的に捉えていますが、実情は戦争経験者がどんどん居なくなっています。そういう実情や危機を訴えてほしい」
（懐かしい写真。上は、「下北沢の映画痕跡を巡る」、そのときの故松林宗恵監督と私とのツーショット。偶然出て来た。下は、２００９年５月２５日、戦争経験を聴く会、語る会で初めて郷福寺学寮の歌が蘇った場面。代沢小にて。こちらから鳴瀬さん、旭正章さんのお母さん、旭正章さん、松本明美さん）
