2016年12月24日
下北沢Ｘ物語(3184）〜歳末年末荏原都市風景〜
（一）師走、時が急ぎ足で駈けてゆく、街もまたせわしく変化していく。その変化を観察していく一人街歩きが楽しい、気の向くままに南へ北へ、すると偶然に洗足池河畔で「斜陽」という言葉に出会った。太宰治の「斜陽」これの元になった太田静子「斜陽日記」はここに住んでいた。池の最寄り駅は池上線の洗足公園駅だ、三両編成の電車が長閑に通る。ここからすぐ近いところに洗足駅がある。昨日ここは通った、田園都市株式会社が分譲した高級住宅地の先駆けだ。静寂に満ちていた。が、それは斜陽都市荏原の一端のように思えた。お爺さんが築いた地位や財産をその子孫が保持するのは今は困難だ。２００坪が１００坪になり、さらにこれも細分化されている。早くに開業した荏原南部の山の手は「斜陽」というイメージが合っている。何よりも池上線の三両編成が長閑だ。街は変化しつづけている。池上線で言えば、石川台駅、ここはよく行く。目黒の自宅前の遊歩道を下るとここに着く。小説で話題になった『ちいさいおうち』の映画は、この辺りに家はあったとしている。呑川左岸の丘上だ、多摩川や川崎の高層ビル群が望める展望のいい場所だ。が、三両編成に代表されるように一帯は閑雅だ、坂を下ると希望が丘商店街があるが、没落商店街の一つだ、シャッターを閉めた店が目立つ。
シャッター街では、自身の隣町の深沢にあるエーダン商店街が典型的だ。何十年と通っている。パン屋も豆腐屋も肉屋も、みなそろっていた。が、それがつぎつぎに店をたたんでしまって商店は数えるほどだ。散歩の折り、好んでここを通る。『方丈記』、冒頭が浮かんでくる。
昔ありし家はまれなり。或はこぞ破れてことしは造り、あるは大家ほろびて小家となる。住む人もこれにおなじ。所もかはらず、人も多かれど、いにしへ見し人は、二三十人が中に、わづかにひとりふたりなり。あしたに死し、ゆふべに生るゝならひ、たゞ水の泡にぞ似たりける
斜陽都市をまさに表している。商店どんどん廃れていく。そうだジャムカステラがおいしかったパン屋のおじさん、豆腐屋のかみさんももう見かけない。
（二）
下北沢一番街、今は無くなってしまった大月菓子店、このおばあちゃんがよく言っていた。商店街は生鮮三品で持つものだと。
「これがねぇ、どんどんなくなっていってね、肉の三吉も店を閉めちゃうんだって…」
下北沢二号踏切脇の佐川さんのところから犬のアニーハクウンはこの店に一匹でお肉を買いに来ていた。とおの昔の話だ。
確かに生鮮三品の店はどんどんなくなっていく。が、際だって増えているものがある。
一つは自転車屋だ。これがあっちにもこっちにもできている。深沢不動前にあったスーパーは無くなって、これが自転車屋になった。環七と２４６の交差点にあった酒屋はビルに建て替えた。すると酒屋は消えて自転車屋になった。
自身も何十年と自転車にこだわってきた。今はこれをきっぱりと捨てて徒歩にした。とぼとぼ、徒歩徒歩、よくもまあ歩くというほど歩く。昔の人は電車が通っていてもみなよく歩いたという。経済だからである。これで思い出すことがある。
京王線の代田橋駅のことだ。京王線の起点駅は新宿だ。まず新宿から改正橋（現初台）までは一区で運賃は四銭だ。つぎの二区、代田橋までは八銭である。この運賃境界駅は重要だ。境界ぎりぎりのところに薬屋の問屋ができる。薬屋の小僧さんは唐草模様の大きな風呂敷を背負って仕入れにくる。歩いてきたり、また、三区の端から電車で来たりした。電車の初乗り運賃が幾らなのかは大事なことだった。
自転車は経済だ。よく見かけるのは宅配便の自転車だ。排ガスも出ない、小回りがきくということで重宝されている。バイコロジーの一環でもある。が、このブームにも翳りが見えてきた。大岡山に出来た自転車屋の店先に看板があった。不況の折りゆえ空気入れの代金を百円にと。しかし、不況というよりも自転車屋の増えすぎが原因なのではと思う。その店を抜けて環七まで行くと大きな自転車屋、ここはタダである。
都立大学駅近辺も自転車屋が増えた。が、いつも通る店、「閉店セール」、「現品かぎり」とビラが張ってある。
（三）
近隣のことで言えば、碑文谷にあったスーパーダイエーが閉店した。家庭用品やら衣類やら、そして文房具もあった。会報用のB4印刷用紙もここで買っていた。重宝していただけに残念だ。が、そこに「イオンスタイル碑文谷」が開店した。カタログ様のしゃれた広告が新聞に挟まっていた。何度か行ってみたが何となくなじめない。かつては「ダイエースタイル」があってけっこう土臭かった。が、「イイオンスタイル」となってこじゃれてしまって土臭さが消えた。こちらは常日頃「サミットスタイル」、「オオゼキスタイル」のネギ臭さに馴れているゆえに戸惑いがある。
前、中国残留孤児はダイエー碑文谷店にきてこれがテレビでも話題になった。もう中国残留孤児がくることはないが、来たとしても目を惹くだろうか？と思った。
（大岡山東工大からの富士）
○会報 第１２６号 本日印刷をして事務局に届けた。印刷は紙折機とセットで借りられることを知って、はじめてこの機械で折った。今まで自分で折っていたのだが機械がやってくれる。今日は二つ折りだけだったが、これを三つ折りできるようだ。
下北沢一番街、今は無くなってしまった大月菓子店、このおばあちゃんがよく言っていた。商店街は生鮮三品で持つものだと。
「これがねぇ、どんどんなくなっていってね、肉の三吉も店を閉めちゃうんだって…」
下北沢二号踏切脇の佐川さんのところから犬のアニーハクウンはこの店に一匹でお肉を買いに来ていた。とおの昔の話だ。
確かに生鮮三品の店はどんどんなくなっていく。が、際だって増えているものがある。
一つは自転車屋だ。これがあっちにもこっちにもできている。深沢不動前にあったスーパーは無くなって、これが自転車屋になった。環七と２４６の交差点にあった酒屋はビルに建て替えた。すると酒屋は消えて自転車屋になった。
自身も何十年と自転車にこだわってきた。今はこれをきっぱりと捨てて徒歩にした。とぼとぼ、徒歩徒歩、よくもまあ歩くというほど歩く。昔の人は電車が通っていてもみなよく歩いたという。経済だからである。これで思い出すことがある。
京王線の代田橋駅のことだ。京王線の起点駅は新宿だ。まず新宿から改正橋（現初台）までは一区で運賃は四銭だ。つぎの二区、代田橋までは八銭である。この運賃境界駅は重要だ。境界ぎりぎりのところに薬屋の問屋ができる。薬屋の小僧さんは唐草模様の大きな風呂敷を背負って仕入れにくる。歩いてきたり、また、三区の端から電車で来たりした。電車の初乗り運賃が幾らなのかは大事なことだった。
自転車は経済だ。よく見かけるのは宅配便の自転車だ。排ガスも出ない、小回りがきくということで重宝されている。バイコロジーの一環でもある。が、このブームにも翳りが見えてきた。大岡山に出来た自転車屋の店先に看板があった。不況の折りゆえ空気入れの代金を百円にと。しかし、不況というよりも自転車屋の増えすぎが原因なのではと思う。その店を抜けて環七まで行くと大きな自転車屋、ここはタダである。
都立大学駅近辺も自転車屋が増えた。が、いつも通る店、「閉店セール」、「現品かぎり」とビラが張ってある。
（三）
近隣のことで言えば、碑文谷にあったスーパーダイエーが閉店した。家庭用品やら衣類やら、そして文房具もあった。会報用のB4印刷用紙もここで買っていた。重宝していただけに残念だ。が、そこに「イオンスタイル碑文谷」が開店した。カタログ様のしゃれた広告が新聞に挟まっていた。何度か行ってみたが何となくなじめない。かつては「ダイエースタイル」があってけっこう土臭かった。が、「イイオンスタイル」となってこじゃれてしまって土臭さが消えた。こちらは常日頃「サミットスタイル」、「オオゼキスタイル」のネギ臭さに馴れているゆえに戸惑いがある。
前、中国残留孤児はダイエー碑文谷店にきてこれがテレビでも話題になった。もう中国残留孤児がくることはないが、来たとしても目を惹くだろうか？と思った。
（大岡山東工大からの富士）
○会報 第１２６号 本日印刷をして事務局に届けた。印刷は紙折機とセットで借りられることを知って、はじめてこの機械で折った。今まで自分で折っていたのだが機械がやってくれる。今日は二つ折りだけだったが、これを三つ折りできるようだ。
