2018年12月25日

下北沢X物語(3670)−路地に揺れる燈:聖夜のまち歩き−

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(一)夜のまち歩きは初めてだ、が、昼とは違って匂いや空気が異なる。まち独特の空気のトンネルを潜っていくと刺激を受ける。ついにはカフェで「下北沢ビール」を飲みながら遅くまで文化を語った。ここには至る所に次元の穴が開いている。そう言ったのは詩人の吉増剛造だ、どうやら我らも次元の穴に入り込んだようだ、文化論は沸騰した。スタートは駅前だ、「これからまち歩きをしますが、キーワードは三つです……鉄と沢と路です。鉄は何でか?『鉄道!』、『そう土台ですね、ここでクロスした小田急線と井の頭線とが多くの価値を運んできた。文化の原動力となった……」

 我らのまち歩きは23日だ、前の日の22日に下北沢東口が落成し、始発に合わせ早朝にセレモニーがあった、それに参加した山本裕さんから聞いた。長年親しんできた北口が東口となった。

「昭和二年に開業して以来、多くの歴史を紡いできました。今日は、ローソクの点った路地を探検していきますが、ここに多くのランタンが集まった歴史的事実は覚えていてもらいたいのです……それは昭和19年8月12日です。この日数多くの提灯が集まってきました。戦争中ですから灯火管制されています。街灯は真っ暗、代沢小から、東大原小から多くの学童が駅に集結しました。先導したのが提灯なんです、北口にこれがゆらめいたのですね。電車が警笛を鳴らして出発していきます。親が火の出るような口調で我が子の名を叫びました。提灯は一層にゆらめきました……」
 
「予定時間一時間です、キーワードに基づき、歩きます。二番目は『路』といいました。いろいろの路が交差しているのがおもしろいのです、古道に新道に路地、地域特有のものです。三番目は『沢』ですね、下北沢は沢のまち、至る所にこれがある、探し当てるのは容易です、低くなっているところが沢、かつてのドブ、小川です……」


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(二)
 まず、一番目が旧東北沢2号踏切だ。
「開かずの踏切として有名でした。60分のうち開いているのは5分だったのです」
「2分間だったときもあったようです」と山本裕さん。
「そうそうこっちから向こうには容易に行けない。自分が恋慕する人が向こうに見えているのに何時までも会えない。そのことを書いた鷺沢萠の小説があります。『遮断機』はここを舞台としたものですね……」
 踏切を渡るのは難関だった、が、小田急は地下化して踏切は取り払われた。
 線路がなくなって容易に向こうに行ける、が、本当に電車は来ないのか?最初は恐る恐るここを通っていたがその感触はすっかり忘れてしまっている。

「ここにある商店街のアーチは古くからあったのですね、ほら、皆さんに渡したDr.オースティン写真のにもここが写されていますね、戦後すぐのものですが、アーチにはサンタさんが描かれていますね。クリスマスというのが早くから定着していましたね」
 近隣には米軍に接収された家屋があった。その兵士を相手にするパンパンが駅前にたむろしていた。
「写真アルバムを見ると、電柱には、『泌尿器科』という文字があちこちに見られます。性病治療の宣伝ですね、看板から往時の社会が見えてきます……」

 栄通りから一番街へ向かう。
「この通りもDr.オースティン写真に撮られていますね、ここは路が下っていますね、低い方が沢、一番街にぶつかりますがやはり川跡ですね……」

(三)
 一番街から東北沢4号踏切へ。
「思い出深い踏切です。この踏切がなかったら私は当地の文化探訪をすることはなかったと思います。やはり開かずの踏切で、十分、十五分は待たされました。目黒の自宅から中野にある学校へ自転車で通勤していてここで足止めをくらったのです。待っているのがもったいないのでまち中をぐるぐる回ったのです。何でこんなところにカマボコ兵舎があるんだ?いろんなものを見つけるのですね、路地なんか代表例です、路はくねくね曲がっていて、何かドブ臭い……おかしな町、変なまちという認識が発端になってここを調べはじめたのです、以来、十四年、かれこれ千人ぐらいの人から話を聞いてきました」
 そうこの隣の踏切は、第3号踏切だ。ここを「おばちゃんの踏切」と言っている人がいた。おばちゃんが飛び込んだ踏切だからだ。踏切では多くが轢かれた。
 大月菓子店のおばあちゃんの孫が渡ろうとしたときに身体が硬直して渡れない、「死霊が乗り移ったのでしょう」と店にきていた祈祷師、呪文を唱えたところ正気にもどったと。
(上は、まちあるきの途中、撮影は山本裕さん。下は、駅前のキャンドル)



rail777 at 18:30│Comments(1)││学術&芸術 | 都市文化

この記事へのコメント

1. Posted by きむらたかし@三田用水   2018年12月26日 17:51
[今日…]

当方のブログをチェックしてみたら…

「下北沢今昔写真+『下北沢の戦後アルバム』の正誤表と編集後記」
http://baumdorf.cocolog-nifty.com/gardengarden/2016/08/post-9fe0.html

へのアクセス数が跳ね上がっていました。

不思議に思って、ここを覗くと、1枚目の写真で、皆さん「…アルバム」を広げています。

何事も「単に聞く」だけでなく、きちんと、その「裏どり」をしようとする方々が結構多いことがわかり、安堵しました。

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