2019年01月04日
下北沢Ｘ物語(3676)−「猫町」英語版ツアーガイド手引き書−
（一）年が明けて我らの活動は１５年目に入った。時を経て来ると振り返りができる。何をなしてきたのか？言えることは「地域の知的資源の発掘」だったことだ。文学碑四基の建立、文化地図の発行、ネットでの発信はまさにこれだった。これらを通して、文化人が当地域に密集して住んでいることを知った。あらゆるジャンルに跨がる。中でも詩歌人が多いことは大きな特徴だ。傑出しているのは萩原朔太郎の存在だ。今も熱く彼を信奉している人がいて当地は、聖地と考えられている。吉増剛造は、「下北沢裂くべし、下北沢不吉、下、北、沢、不吉な文字の一行だ」（『黄金詩編』）と謳う。朔太郎が当地一帯を徘徊していたことが強く意識されている。詩人が書いた「猫町」は言わばバイブルだ、この物語とびっきりおもしろい。地域を越えたグローバルなものだ、それで前から外国人向けの「猫町」ツアーをと言ってきた。それでガイドによって翻訳化されることを念頭に、ツアーガイド手引き書をまとめてみた。
『猫町』は、萩原朔太郎が描いた短編小説だ、詩人の清岡卓行は日本文学ベストワン小説に推挙している。（萩原朔太郎『猫町』詩論）際だっていることは、「主人公の意識の屈折がストーリー」となっている点だ。朔太郎自身、旅への期待をなくしていて、「私は私自身の独特な方法による、不思議な旅行ばかり」（『猫町』）をするようになっていた。この作品が書かれたのは１９３６年（昭和１０）、世田谷代田在住時である。朔太郎は医師から散歩を奨められ「毎日家から十四、五町（三十分から一時間位）附近を散歩してゐた」、ゆえに想定されるコースは代田や下北沢である。一帯の路地町を迷いながら歩くツアーは、異国人も興味を持つはずだ。それで外国人向けの『Cat Town Walk』を提唱してきた。
（二）
・Welcome Cat Town
�＿舎迷�東口駅前（出発地点）
皆さん、キャットタウンにようこそ。萩原朔太郎は日本では口語自由詩の生みの親で「日本近代詩の父」と言われています。彼は晩年にこの下北沢、そして隣の代田に住みました。そのときに「散文詩風の小説」と自ら言う『猫町』という短編小説を書いています。彼自身自らを「永遠の漂泊者」と述べています、実際、彼自身このあたりとひっそりこっそりと歩き回っていました。この小説が書かれたのは１９６３年です。世田谷代田居住時代です、そのときに医師から散歩を奨められたことで毎日自宅から一時間ぐらいのところを散歩しました。それは「不思議な旅行」です、彼はそれを、「あの夢と現実の境界線を巧みに利用し、主観の構成する自由な世界に遊ぶ」と述べています。つまりはこの辺りの路地町を散歩しながら不思議な旅を続けました。おもしろいのは現実のまちに材料を得て、それを空想の糧にしていることです。
萩原朔太郎を信奉している現代詩人に吉増剛造がいます。彼はこの下北沢には至る所に「次元の穴」が開いていると言います。それは朔太郎面影痕跡に他なりません。一帯の路地の陰とかにぽっかりとそれが空いているのです。そこが空想世界への入り口です、ひょろっと猫が現れるかもしれません。彼の詩で「猫」は重要です。
彼の詩の代表作に「月に吠える」があります、ここに収められている「猫」はこう英訳されています。
Two black cat
On a sedductive naighto roof.
From the pointed tip ofu one cat's tail
Threadlike and hazy,a crescento moon.
"Owaa Konban wa."
"Owaa Konban wa."
"Ogyaa ogyaa."
"Owaaa The owner of shis house is sick"
梅花女子大学文化表現学部紀要 2, 1-28, 2005-12-25 佐野 仁志
「香水に浸した剃刀」萩原朔太郎の「純情小曲集」と「月に吠える」から選んだ作品の英訳38篇
まず、屋根の上の二匹の猫の描写、「ぴんとたてた尻尾の先から、／糸のやうなみかづきがかすんでゐる」は、猫を描いて見事ですね。そして、猫の感知能力の高さは素晴らしい、二匹の猫は屋根上で愛情を交わす、辺りに響いた音波聴診器は家の所有者にも響くのでしょう。それをたちまちに感知して、主人は病気だと診断します。恐らく精神を病んでいるのではないでしょうか。
『猫町』を書いた詩人自らも鋭敏です、探知・感知能力に優れています。まず彼が住んでいた家が下北沢にあります。地形上のどんなところにあるのか、路地がどのようにはりめぐらされているか、それをぜひ観察したいものです。
萩原朔太郎は空間を自由に行き来します。例えば詩集『青猫』では同名の詩が書かれています。
ああ このおほきな都会の夜にねむれるものは
ただ一匹の青い猫のかげだ
かなしい人類の歴史を語る猫のかげだ
昼であっても夜を空想し、まちの天空に一匹の青い猫を想像するのです。すると猫の影があらわれ「にゃんにょんにゃん」と悲しい人類の歴史を語り出すでしょう。
（三）
ツアーでは、二つの配布物を配る。
「下北沢文士町文化地図、第七版」「焼け残ったまち 下北沢戦後アルバム」
この地図を見ながら歩いて行く。
〇コース 駅前広場→南中通り→みたけ通り→萩原朔太郎下北沢旧居。
��萩原朔太郎下北沢旧居
さて、みなさん、ここに彼は、１９３１年に越してきて住みました。
「What kind of impression did you have?」
（写真は、大井町の太郎と花子像、詩人はここに一時住んだ。そのことからこれは建てられた。下北沢駅前広場には何もないそうだが青猫をモチーフとした像があってもいいのでは）
〇注 文中、「月に吠える」、「青猫」は「萩原朔太郎 日本詩人全集１４ 新潮社
昭和４１年」に拠った。
・Welcome Cat Town
�＿舎迷�東口駅前（出発地点）
皆さん、キャットタウンにようこそ。萩原朔太郎は日本では口語自由詩の生みの親で「日本近代詩の父」と言われています。彼は晩年にこの下北沢、そして隣の代田に住みました。そのときに「散文詩風の小説」と自ら言う『猫町』という短編小説を書いています。彼自身自らを「永遠の漂泊者」と述べています、実際、彼自身このあたりとひっそりこっそりと歩き回っていました。この小説が書かれたのは１９６３年です。世田谷代田居住時代です、そのときに医師から散歩を奨められたことで毎日自宅から一時間ぐらいのところを散歩しました。それは「不思議な旅行」です、彼はそれを、「あの夢と現実の境界線を巧みに利用し、主観の構成する自由な世界に遊ぶ」と述べています。つまりはこの辺りの路地町を散歩しながら不思議な旅を続けました。おもしろいのは現実のまちに材料を得て、それを空想の糧にしていることです。
萩原朔太郎を信奉している現代詩人に吉増剛造がいます。彼はこの下北沢には至る所に「次元の穴」が開いていると言います。それは朔太郎面影痕跡に他なりません。一帯の路地の陰とかにぽっかりとそれが空いているのです。そこが空想世界への入り口です、ひょろっと猫が現れるかもしれません。彼の詩で「猫」は重要です。
彼の詩の代表作に「月に吠える」があります、ここに収められている「猫」はこう英訳されています。
Two black cat
On a sedductive naighto roof.
From the pointed tip ofu one cat's tail
Threadlike and hazy,a crescento moon.
"Owaa Konban wa."
"Owaa Konban wa."
"Ogyaa ogyaa."
"Owaaa The owner of shis house is sick"
梅花女子大学文化表現学部紀要 2, 1-28, 2005-12-25 佐野 仁志
「香水に浸した剃刀」萩原朔太郎の「純情小曲集」と「月に吠える」から選んだ作品の英訳38篇
まず、屋根の上の二匹の猫の描写、「ぴんとたてた尻尾の先から、／糸のやうなみかづきがかすんでゐる」は、猫を描いて見事ですね。そして、猫の感知能力の高さは素晴らしい、二匹の猫は屋根上で愛情を交わす、辺りに響いた音波聴診器は家の所有者にも響くのでしょう。それをたちまちに感知して、主人は病気だと診断します。恐らく精神を病んでいるのではないでしょうか。
『猫町』を書いた詩人自らも鋭敏です、探知・感知能力に優れています。まず彼が住んでいた家が下北沢にあります。地形上のどんなところにあるのか、路地がどのようにはりめぐらされているか、それをぜひ観察したいものです。
萩原朔太郎は空間を自由に行き来します。例えば詩集『青猫』では同名の詩が書かれています。
ああ このおほきな都会の夜にねむれるものは
ただ一匹の青い猫のかげだ
かなしい人類の歴史を語る猫のかげだ
昼であっても夜を空想し、まちの天空に一匹の青い猫を想像するのです。すると猫の影があらわれ「にゃんにょんにゃん」と悲しい人類の歴史を語り出すでしょう。
（三）
ツアーでは、二つの配布物を配る。
「下北沢文士町文化地図、第七版」「焼け残ったまち 下北沢戦後アルバム」
この地図を見ながら歩いて行く。
〇コース 駅前広場→南中通り→みたけ通り→萩原朔太郎下北沢旧居。
��萩原朔太郎下北沢旧居
さて、みなさん、ここに彼は、１９３１年に越してきて住みました。
「What kind of impression did you have?」
（写真は、大井町の太郎と花子像、詩人はここに一時住んだ。そのことからこれは建てられた。下北沢駅前広場には何もないそうだが青猫をモチーフとした像があってもいいのでは）
〇注 文中、「月に吠える」、「青猫」は「萩原朔太郎 日本詩人全集１４ 新潮社
昭和４１年」に拠った。
