2019年01月05日

下北沢X物語(3677)−「猫町」英語版ツアーガイド手引き書2−

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(一)「猫町」ツアーは短い旅だ、が、新しい手法の旅だ、萩原朔太郎は通常の旅を「同一空間に於ける同一事物の移動」(『猫町』)に過ぎないと認識する。そうイタリアへ、フランスへ行っても同一空間をこっちからあっちへ移動するだけだ。「何処へ行つてみても同じやうな人間が住んで居り、同じような村や町やで」つまらない。それで詩人は新たな旅を創出した。「人が時空と因果の外に飛翔し得る唯一の瞬間、即ちあの夢と現実との境界線を巧みに利用し、主観の構成する自由な世界に遊ぶ」というものだ。「運動のための散歩の途上で、或る日偶然に」「新しい方法を発見した」という。代田北沢は路地ばかりだ、そこを行くときに見つかった。路地にこそ新しい旅への端緒が潜んでいるようだ。

 「猫町」は、旅論でもある。
  旅とは何か、家を離れてよその土地を訪ねることだ、常とは違うところへ行くことで人は新鮮な感懐を持つ、それで人は旅には憧れる、この新春になって海外旅行を誘う新聞広告が増えた、通例的には人は遠くへ行くことが旅だと思って入る。が、「旅嫌いの漂泊者」は、身近なところに、至る所に旅は落ちているという。言えば、人よ、ローマに行くことなかれ世田谷代田や下北沢に来たれということになる。

 昨年、暮れに夜の『猫町』のツアーを行った。町探検のキーワードの一つが「路」だった、この町はさまよえば分かる、新道、古道、路地が入り乱れている。普通は見分けがつかない。
「ああ、ここがいいですね、ほら道を見てくださいよ、そこはかとなく路が曲がっているでしょう、これは間違いなく古道ですね。昔の路は無理をしないのです。自然地形を利用しているからどうしても屈曲ができるのですね……」
 下北沢代沢五叉路の手前でそう説明したことだ。
「路地も多いですね、この距離も一つの魅力ですね、人が間合いをとってすれ違える。温もりのある距離ですね、だからところどころにローソクを点すと町が引き立ってくるのです。『ノエルの小径』っていいアイディアですよね」
 そうここでは路地がポイントだ、「猫町」ツアーのポイントもここにある。



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(二)
��萩原朔太郎下北沢旧居 案内人の説明

「ここに朔太郎の旧居がありました。1931年から一年間ほどここに住んでいました。井の頭線が開通してうるさくなるというので隣の世田谷代田に引っ越しました。ここに住んでいた家のことです。ご覧下さい(写真を提示する)、二階建ての和風建築ですね、この一軒を借りておりました。この辺りには詩人が多くおりました。ところが、皆、長屋とかアパートに住んでいました。ところが彼は一軒の家を丸々借りていたのです。どうしてそれができたのですか?」
「He earned a living by poetry」
「詩で生活することはきっと難しいでしょうね」
「He had a fortune」
「exactly」
 案内人のベティさんは大げさに両手を広げた。
「一軒を借りるというのは財力がないと無理ですね。ここへきたのが1931年、前の年に父親が亡くなっています。故郷の前橋では有名なお医者さんでした。多分その財産があってこういう家を借りられたのですね。未亡人も来ていましたから」

「さて、皆さん、ここへ来るときに地形がどうなっているか分かりました?」
「そう坂がありましたね、ということはここは丘上ですね、商店というかお店は坂の下の方にあります。鈴蘭通りといいました。この北側にあります。さて、質問です、朔太郎はここで暮らし始めますが、商店街へはどのようにして行ったのでしょう?、ここは表ですね、家の裏にも門がありました。どちらを使ったのでしょう」

「コチラノオモテカラデハナイデスカ?」
「そうですね、普通はそう考えます」
 以前にNHKの「おはよう日本」で下北沢を紹介する番組があった。
「朔太郎は、朝、まずここを出ますね。そして商店街へ向かいます。坂をタンタンと下りていくのです。すると煙草屋があります……」
 その煙草屋鈴蘭堂はなくなった。奥さんが言う。ちょうどここは坂下になっているのですね、すると北からも南からもお客さんが坂を転げ落ちるように煙草を買いに来られるのですよ。朔太郎さんもその一人ではなかったかと思います……。
 これを鵜呑みにしてとうとうと喋ったことがある。

「ここの表ではなくね、やはり裏手からですよね。では、そこへ向かいましょう」
 ベティさんは小旗を振って方向を示した。

(三)
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「今裏手に回ってきましたが見事な路地があったでしょう。ネコ道ですね、こういう路地が至る所にあるのですね、さてここが裏口です。彼は愛煙家です、それで朝起きて煙草を買いに行くのですね、銘柄は『敷島』です。
「シキシマハカラクチデスカ?」
「そこまではわかりません。が、ですね、昔は着物ですよね、懐にはライターが入っています。ほかにきっと何かが入っていました。ガサゴソします」
「アメチャン!」
「違います、それは手紙ですね、今みたいにスマホはありません。何事も郵便です。だから懐には葉書だとか封書が入っていましたね」
(上は、猫カフェの猫 下は下北沢朔太郎旧居裏手の路地)




rail777 at 18:30│Comments(0)││学術&芸術 | 都市文化

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