2019年04月04日
下北沢X物語(3735)―戦争伝承「歌物語 鉛筆部隊と特攻隊」―

(一)毎年、戦争経験を聞く会・語る会を開いている。来月5月20日、第12回目を開催する。戦争は昭和に起こった、年号は変わり平成となり、また今度は令和となる。昭和は遠くなるばかりで忘れ去られていく。それでも多くの戦争体験者から聞いてきたのは「二度と戦争はするな!」という伝言だ。「天災は忘れたころに来る」、人災としての戦争も同じだ、「戦争は痛みを忘れた頃にまたしでかす」、彼らの伝言は伝えて行かねばならぬ。それで名を変更した「戦争経験を伝承する会」である。が、伝承は至難だ、もう現役が言い継いでいくしかない。歌や劇などだったら誰でもやれる。取り上げるのは地元の話だ、代沢小や東大原小の疎開学童が特攻隊と接触し、悲しい別れがあった。これを劇「歌物語 鉛筆部隊と特攻隊」として伝えようとするものである。
3月29日、「歌物語 鉛筆部隊と特攻隊」の打ち合わせ会をカトリック世田谷教会で開いた。この催し、昨年9月に実験的に試みた、これには「手作りオペラ」との感想が寄せられた。が、オペラというには芸術系の人がいて用いるべきだと演出の若桑さん、それで「歌劇」と思ったが、落ち着いたのは「歌物語」だ。
芸術家の彼はシビアだ、個々人が努力して演じて見せる劇、対価を取るべきだと。十数年これを行ってきてはいたが入場料を取るという発想はなかった。戦争経験を聞きに来る人からはお金はもらいにくい、考えてもこなかったことだ。
演じ手の意識の問題として、彼はこれを提起している。無料であれば無料の演技をする。が、伝達を高めるには意識も高めねばならない。入場料を取ると聞いたときに気が引き締まったことは確かだ。
「金を取って演じるのなら自分のセリフの主要部分三つは覚えなくてね」
これもきつい言葉だ、セリフは長い、「ちょっとこれは勘弁してもらいたい」と思うが。
入場料の料金については考えた。が、千円は無理だ、それで500円ということにした。
「無料というと見る方も気楽で気が向いたら来ない、が、500円でも払えばもったいないと思って人は来る」と横田豊子さん。

(二)
昨年秋に、ふと思いついて脚本を作った。ノンフィクション的に、起こった順序に場面を切り取ってきたものだ。すべてが思いつきだった。言えば無謀であった、これができたのは自分が何も知らないからだった。
イメージで台本を作っていた。が、見せるためには演技が必要だった。
「きむらさんは、原作者としていればいいんだよ」
若桑さんが言う。それはありがたいことだ。座席に座って眺めていられたら幸せだ。が、結局、ボランティアでやるためには人手が足りない。それでこちらも員数揃えで自分自身を出している。
先回の公演では、「我を表出するな」と何度も言われた。このことで言うと一昨日、胃カメラ飲んで妙なことに気づいた。
「去年と変わりはありませんね、ただ胃炎は同じですけどね……」
先生が言われた。
定年退職してからもう十数年になる。毎日が日曜日にもできた。が、それができない性分だ、文化探査活動を続けてきて毎日が張り詰めていた。
一番印象深く思い出すのは安吾文学碑建立に関してだ。とんでもなく気を使った。陳情、要請、建碑準備、解説書の執筆、碑のデザイン、セレモニーの手順など、何から何まで自分でやった。日々胃に痛みがあったほどだ。それほどでないにしても今でも気を張って自分が日々を生きているのだと知った。
脚本も自分がやるしかなかった。それでも一回公演をしたことは大きな経験となる。前回無料だったから今回は有料だというのもささやかな成長だ。
今自分が掴んでいる課題は、観客の思い入れに対してどうするかだ。劇を見て観客は感情移入してくる。その場合の焦点をどうするか、これはかなり高度な問題だ。
(三)
文化探査十五年、「ちりつも」も極まってきている。塵を積み上げてきての期間である。あれも、これもが押し寄せてきている。塵に押しつぶされる、そんな不安がある。
鉛筆部隊の田中幸子さんは、秋の公演では生出演だった、これはインパクトがあった。が、今度はどうも出られないようだ。これを補うために、昨年の映像の加工とか、電話での声の採録とかが案として出ているが……
「マチネーでやるというのも面白いのでは……」
若桑比織さん、恐ろしいことを言いはじめた。 これから5月までまた公演準備で忙しい。
(上、公演のチラシ、下、打ち合わせでの記念撮影。こどもは子役たち……舞台公演を手伝ってくださるかたを募集中だ)
〇世田谷中央図書館への寄贈
今日、鶴巻の中央図書館に『焼け残ったまち 下北沢戦後アルバム』増補版と紀要第7号『論集 下北沢の戦後』を各21冊ずつ寄贈してきた。いつも思い起こすのは「北沢川文学の小路」ができて最初に献本に行ったとき、「収蔵を検討します」との答えを得て東盛太郎さんが怒った。地域の文化が詰まったものを検討するとは何事だ「責任者を呼べ!」と。今では全く問題なく受け取ってくれる。



















