2020年05月14日
下北沢Ｘ物語（4003）―朝ドラ「エール」検索の手引き３―
（一）朝ドラ「エール」の人気は衰えない、連日当ブログへのアクセスが１００を超えている。作曲家としての人生の大半を過ごした世田谷代田への関心が深まってきているようだ。が、「エール」はテレビ小説だ、虚構を取り混ぜての物語展開がされる。NHKの関係者と話をしたことがある。古関夫妻の故郷福島や豊橋は出てくるが代田は出てこないだろうと。が、作曲家の居住環境というのは文学以上に重要だろう。居住地に降り注いでくるあらゆる音が彼の音楽に何らかの影響を与えていた。これは間違いなくあるだろう。終生代田から離れなかったこともここに一因があるはずだ。
地元の代沢国民学校の学童が浅間温泉に疎開していたときに日々歌っていたのは「若鷲の歌」だ。これのエピソードがおもしろい。歌ができたとき、土浦の海軍航空隊に行って聞かせることにした。しかし古関裕而は曲に対して自信がなかったという。常磐線でいくと利根川の長い鉄橋を渡る、この時に「単音のメロディーが浮かんだ」という。この逸話はおもしろいと思った。鉄道の鉄橋には多くの秘密がある。
「日本鉄道文学史」をまとめている。主眼としているのが鉄道の音響だ、故郷に帰っていくとき、国境を越えていくときに大概が鉄橋を渡る、大きな音がする。例えば多摩川鉄橋だ、「或る女」の主人公葉子がここを汽車に乗って渡っていく、彼女は音にぎょっとする「釣橋の鉄材が蛛手になって上を下へと飛びはね」たからだ。鉄橋を渡るとき大きな音を立てる。刺激的である。それと大概、故郷の駅に着くときに鉄橋を渡る、この音を聞くと誰もが「ああ、故郷に帰ってきた！」と懐かしさに打ち震える。
古関裕而は「若鷲の歌」に不安があった。と、利根川の鉄橋を渡る音、ガタドンデン、ガタドンデンに刺激されてメロディが浮かんだ。そのときにさっと五線譜にメロディを書いたという。これで曲は完成した。外部の音を聞いて、それがヒントになって歌ができる。作曲家とはそういうものだろう。
世田谷代田のことはテレビでは出てこない。が、居住地には多くの音がしていた。彼の家の裏手の八幡様からはいつも虎落笛が、また小鳥が「Chant du Pritemp」を毎日歌っているのが聞こえてきた。
（二）
日本の歌謡曲には独特のものがある。情念や情緒が刺激される。とくに自身が歌謡曲ファンというわけではない。しかし、ときに懐メロをテレビでやっていて聴いていると、藤圭子や都はるみの歌にしばしば涙することがある。我々国民の感性なるものがあって歌謡曲、軍歌でもそうだが歌は泣き所を攻めてくる。我々は情緒や郷愁に弱い。
だいぶ前になる、渋谷のNHK放送センターに行ったことがある。坂口安吾の文学碑を作った後だと思う、このことについてラジオ放送をするというのでスタジオに行ったことがある。ちょうどお昼時でラジオ放送が流れていた。「ひるのいこい」の音楽が流れていた。古関裕而作曲だ、この音楽を聴くと心底郷愁や哀愁が湧いてくる。日本人の民族心性、そのツボを衝いてくる作曲家である。
人の心に染みこんでくるのが歌だ。それゆえに戦時中に軍部は多くの軍歌を作詞家、作曲家に作らせた。この求めに応じて古関裕而も作っている。軍歌の一つが「愛国の花」だ、
昭和１２年ラジオの国民歌謡として作られた。作詞は福田正夫、作曲は古関裕而だ。歌はヒットして映画化された。
古関裕而は世田谷代田、福田正夫は大原に住まいしていた。大原は元は代田の一部だった。共通していることはともに富士が遠望できる地点に住んでいた。歌の冒頭は、「真白き富士のけだかさを／心の強い盾として」で始まる。両人ともに富士を眺めながら作詞し作曲したのだろうか。この歌を歌ったのが渡辺はま子だ。
このエピソードがおもしろい。渡辺はま子は当時内務省ににらまれていたという。彼女は「忘れちゃいやョ」をヒットさせていた。一番から三番まで最後に、「ねぇ、忘れちゃいやョ 忘れないでネ」というフレーズが繰り返される。これが「エロをそそる」としてレコード発禁になったという。
YouTubeで歌を視聴してみる。確かに色っぽい声だ。男はその気になるのかもしれない。が、エロをそそるかそそらないかは心の問題だ。そこに国家が介入してきて歌うなというのは権力の横暴だ。現今でも与党は多数を頼んで好き放題、国民はすっかり舐められている。平気で土足で心の中に踏み込んできていちゃもんをつける。今でもありそうなことだ。
（三）
検索で三番目に多いのがつぎである。
3. 2011-03-29 下北沢Ｘ新聞(1788)―帝国音楽学校と「下北沢風景」―
九年前のだいぶ古い記事である。
昭和２年４月に小田原急行鉄道が開通した。この年の１２月に世田谷中原駅の側に帝国音楽学校は開校した。
下北沢風景というのは画家の高須光治が描いた絵だ、ちょうど小田急が開通してしばらく経ったころの当地の風景を描いたものだ。いずれもモダンということで共通する。
（写真は、洗足池のスワンボート。これもコロナでお休み、今日の写真だ）
日本の歌謡曲には独特のものがある。情念や情緒が刺激される。とくに自身が歌謡曲ファンというわけではない。しかし、ときに懐メロをテレビでやっていて聴いていると、藤圭子や都はるみの歌にしばしば涙することがある。我々国民の感性なるものがあって歌謡曲、軍歌でもそうだが歌は泣き所を攻めてくる。我々は情緒や郷愁に弱い。
だいぶ前になる、渋谷のNHK放送センターに行ったことがある。坂口安吾の文学碑を作った後だと思う、このことについてラジオ放送をするというのでスタジオに行ったことがある。ちょうどお昼時でラジオ放送が流れていた。「ひるのいこい」の音楽が流れていた。古関裕而作曲だ、この音楽を聴くと心底郷愁や哀愁が湧いてくる。日本人の民族心性、そのツボを衝いてくる作曲家である。
人の心に染みこんでくるのが歌だ。それゆえに戦時中に軍部は多くの軍歌を作詞家、作曲家に作らせた。この求めに応じて古関裕而も作っている。軍歌の一つが「愛国の花」だ、
昭和１２年ラジオの国民歌謡として作られた。作詞は福田正夫、作曲は古関裕而だ。歌はヒットして映画化された。
古関裕而は世田谷代田、福田正夫は大原に住まいしていた。大原は元は代田の一部だった。共通していることはともに富士が遠望できる地点に住んでいた。歌の冒頭は、「真白き富士のけだかさを／心の強い盾として」で始まる。両人ともに富士を眺めながら作詞し作曲したのだろうか。この歌を歌ったのが渡辺はま子だ。
このエピソードがおもしろい。渡辺はま子は当時内務省ににらまれていたという。彼女は「忘れちゃいやョ」をヒットさせていた。一番から三番まで最後に、「ねぇ、忘れちゃいやョ 忘れないでネ」というフレーズが繰り返される。これが「エロをそそる」としてレコード発禁になったという。
YouTubeで歌を視聴してみる。確かに色っぽい声だ。男はその気になるのかもしれない。が、エロをそそるかそそらないかは心の問題だ。そこに国家が介入してきて歌うなというのは権力の横暴だ。現今でも与党は多数を頼んで好き放題、国民はすっかり舐められている。平気で土足で心の中に踏み込んできていちゃもんをつける。今でもありそうなことだ。
（三）
検索で三番目に多いのがつぎである。
3. 2011-03-29 下北沢Ｘ新聞(1788)―帝国音楽学校と「下北沢風景」―
九年前のだいぶ古い記事である。
昭和２年４月に小田原急行鉄道が開通した。この年の１２月に世田谷中原駅の側に帝国音楽学校は開校した。
下北沢風景というのは画家の高須光治が描いた絵だ、ちょうど小田急が開通してしばらく経ったころの当地の風景を描いたものだ。いずれもモダンということで共通する。
（写真は、洗足池のスワンボート。これもコロナでお休み、今日の写真だ）
