2020年05月18日
下北沢Ｘ物語（4006）―満州平台第２３教育飛行隊２―
（一）知覧特攻平和会館の学芸員八巻聡氏から論考を戴いた。「資料紹介 猪瀬弘之少尉が遺した軍事郵便」はとても興味深いものだった。猪瀬少尉は昭和２０年４月２日、満州国平台飛行場を発って、十日後の４月１２日に鹿児島の万世飛行場から第１０２振武隊として特攻出撃している。乗機は九九式襲撃機である。一方、機種が同じ武剋隊と武揚隊は２月１０日新京での隊の編成を終えて一旦平台飛行場に戻り、ここを１４日に発ち、朝鮮半島、及び列島沿いに飛んで、松本飛行場に着いたのは２月２０日だった。約一月余りをここで過ごして出撃し武剋隊前半は３月２７日、後半は４月３日に特攻出撃する。武揚隊の出撃はもっと遅れた。これに比べると１０２振武隊は出撃までの時間が短い。先行特攻隊、後攻特攻隊の違いはあまりにも大きい。ここに戦争というものの運命を思った。
満州新京編成の特攻四隊の一つ、扶揺隊の生き残り隊員となった久貫兼資軍曹に取材したた。そのときに「特攻は最も安上がりな戦法だった」と言われた。あてがうのは中古機である。これによって艦船の一つでも沈めれば対費用効果で言えば大きな得となる。が、これによって隊員は死ぬ、酷い戦法だった。
久貫兼資さんは航養十四期生だった。戦争末期、国家は米国に攻め込まれ敗退は時間の問題だった。そういう状況の中で、ちょうど悪い時期と一致したと言える、悲運だ。
昭和１８年(1943)９月「第14期操縦生が、仙台、米子、新潟、印旛、熊本、古河、京都、岡山、都城、愛媛、長崎へ計810名（陸軍系690名、海軍系120名）が入所。」
WEB版「航空と文化」」）
各地にあった逓信省航空局航空機乗員養成所への入所だ、そして昭和１９年(1944)７月にこの第１４期生は卒業をする。パイロットの卵である、戦況と時代とが彼等の命を切望したといえる、特攻作戦の開始の時期と符合した、それで１４期生の多くが犠牲となった。
航養を卒業しても一人前の操縦士ではない、鍛錬、錬成が必要だった。それで彼等は各地の飛行学校に入所した。ところが飛行機がない、燃料もない。訓練もできない。あったのは満州奥地の飛行場である。ここには使い古しの中古機があった。
久貫兼資さん等は、仙台からすぐに満州へ渡ったようだ。大陸へ向かうのは船である。下関から関釜連絡船、興安丸で朝鮮に渡って、さらに満州までは貨車などを利用して平安鎮駅に着いている。ここには第２４飛行教育隊があった。
一方、襲撃を選んだ航養１４期生は、熊本県菊池にある第三〇教育飛行隊（西部第一〇四部隊）で訓練を行った三十名が、１２月に平台の第２３飛行教育隊に転属してくる。この中に、八巻氏が取り上げた猪瀬少尉が入っている。
（二）
論考では、猪瀬少尉が所属した第百二振武隊のことが次のように書かれている。
昭和二十年三月、天号作戦に向けて第二次編成された六十九隊のうちの一隊である。第二航空軍が編成担任となり、と号第百二隊〜百九隊の八隊が編成され、軍司令官 山田 乙三大将により第一〜八降魔隊と命名された。
第一降魔隊（と号第百二隊）、第二降魔隊（と号第百三隊）、第三降魔隊（と号第百四隊）は平台飛行場で錬成教育を行っていた第二十三教育飛行隊の教官・助教・生徒から編成された。
第一降魔隊は天野 重明少尉を隊長とする総勢十五名で飛行機は九九式襲撃機であった。
第２３教育飛行隊は「襲撃」、襲撃機での訓練が行われた。乗機は九九式襲撃機だ。先発の武剋隊、武揚隊もやはり機種はこの機だった。後続隊の第一、第二、第三も同じである。各隊１５機だと、合わせると６５機となる。本土では戦闘機は払底していたが平台飛行場には相当数の機が温存されていて、これが特攻機用に使われた。
武剋隊、武揚隊は、満州新京編成の特攻四隊のうちの二隊だ。昭和２０年２月１０日に編成を終えると翌１１日に、特攻隊の命名式が行われ、四隊共、配属は第八飛行師団となった。この隊の通称号は「誠」それで誠第三十一、誠三十二飛行隊と称された。
平台で発足した特攻三隊は、まず第二航空軍司令官山田乙三関東軍司令官によって降魔隊と名づけられた。４月２日、降魔隊として平台飛行場を出発したようだ。飛行経路について論考ではこう述べられる。
奉天→平壌→大邱→目達原飛行場（佐賀県）に前進（目達原には４月７日〜１１日まで滞在し、西往寺に宿泊）
武剋隊、武揚隊では大きな問題となったのは爆装である、特攻機用に装備変更するための機体改造である。推測だが、扶揺隊の久貫さんは奉天でこれを行っている、恐らくここで行ったものと思われる。平台を発って九州には５日で着いている。武剋隊や武揚隊は爆装に相当手間取った。降魔隊の場合には爆装に係員が慣れてきたということもあるのだろう。
（三）
降魔隊としてどこに所属して、どこから出撃するのか。これについて論考では、こう記す。
四月五日に第六航空軍の指揮下に入り第百二振武隊と名称が変わったが、隊員たちは最期まで第一降魔隊を使っていた。
振武隊は、沖縄戦における陸軍第六航空軍隷下の飛行部隊の総称である。日付からすると爆装改修期間中に配属先が決まったのだろう。
「資料紹介 猪瀬弘之少尉が遺した軍事郵便」では、具体的な手紙の文面が記録されている。目達原滞在時に両親宛に書かれたものはしっかりと思いを伝えている。覚悟を決めた人の文章である。
きっと戦艦空母を轟沈して近所の人たちを驚かせますよ。
新聞を見ていてくださいね。
第二次航空総攻撃に第一〇二振武隊は加わって万世飛行場から４月１２日に猪瀬弘之少尉は他の十名とともに特攻戦死している。新聞の見ていてほしい、切なる願いだったと思う。この言葉から思い出されたことがある、それは謎と言ってもよい。（写真は、昨年、知覧特攻平和会館に行ったときのもの）
論考では、猪瀬少尉が所属した第百二振武隊のことが次のように書かれている。
昭和二十年三月、天号作戦に向けて第二次編成された六十九隊のうちの一隊である。第二航空軍が編成担任となり、と号第百二隊〜百九隊の八隊が編成され、軍司令官 山田 乙三大将により第一〜八降魔隊と命名された。
第一降魔隊（と号第百二隊）、第二降魔隊（と号第百三隊）、第三降魔隊（と号第百四隊）は平台飛行場で錬成教育を行っていた第二十三教育飛行隊の教官・助教・生徒から編成された。
第一降魔隊は天野 重明少尉を隊長とする総勢十五名で飛行機は九九式襲撃機であった。
第２３教育飛行隊は「襲撃」、襲撃機での訓練が行われた。乗機は九九式襲撃機だ。先発の武剋隊、武揚隊もやはり機種はこの機だった。後続隊の第一、第二、第三も同じである。各隊１５機だと、合わせると６５機となる。本土では戦闘機は払底していたが平台飛行場には相当数の機が温存されていて、これが特攻機用に使われた。
武剋隊、武揚隊は、満州新京編成の特攻四隊のうちの二隊だ。昭和２０年２月１０日に編成を終えると翌１１日に、特攻隊の命名式が行われ、四隊共、配属は第八飛行師団となった。この隊の通称号は「誠」それで誠第三十一、誠三十二飛行隊と称された。
平台で発足した特攻三隊は、まず第二航空軍司令官山田乙三関東軍司令官によって降魔隊と名づけられた。４月２日、降魔隊として平台飛行場を出発したようだ。飛行経路について論考ではこう述べられる。
奉天→平壌→大邱→目達原飛行場（佐賀県）に前進（目達原には４月７日〜１１日まで滞在し、西往寺に宿泊）
武剋隊、武揚隊では大きな問題となったのは爆装である、特攻機用に装備変更するための機体改造である。推測だが、扶揺隊の久貫さんは奉天でこれを行っている、恐らくここで行ったものと思われる。平台を発って九州には５日で着いている。武剋隊や武揚隊は爆装に相当手間取った。降魔隊の場合には爆装に係員が慣れてきたということもあるのだろう。
（三）
降魔隊としてどこに所属して、どこから出撃するのか。これについて論考では、こう記す。
四月五日に第六航空軍の指揮下に入り第百二振武隊と名称が変わったが、隊員たちは最期まで第一降魔隊を使っていた。
振武隊は、沖縄戦における陸軍第六航空軍隷下の飛行部隊の総称である。日付からすると爆装改修期間中に配属先が決まったのだろう。
「資料紹介 猪瀬弘之少尉が遺した軍事郵便」では、具体的な手紙の文面が記録されている。目達原滞在時に両親宛に書かれたものはしっかりと思いを伝えている。覚悟を決めた人の文章である。
きっと戦艦空母を轟沈して近所の人たちを驚かせますよ。
新聞を見ていてくださいね。
第二次航空総攻撃に第一〇二振武隊は加わって万世飛行場から４月１２日に猪瀬弘之少尉は他の十名とともに特攻戦死している。新聞の見ていてほしい、切なる願いだったと思う。この言葉から思い出されたことがある、それは謎と言ってもよい。（写真は、昨年、知覧特攻平和会館に行ったときのもの）
