2020年05月29日
下北沢Ｘ物語（4013）―世田谷代田の著名マリンバ奏者―
朝ドラ「エール」が人気だ。その余波を当館も受けている。ドラマの舞台は東京に移った。それで自宅や近所のカフェ、そして帝国音楽学校が出てくる。現実の舞台では世田谷代田である。しかし朝ドラはテレビ小説、代田とは言わず東京のとある架空の町とされているようだ。が、視聴者は事実を知りたがる。その場所は東京のどこ？これがきっかけで検索されている。朝ドラ関係で最もアクセスが多いのは次だ。「1. 2019-11-23 下北沢Ｘ物語（3889）―朝ドラと世田谷代田と文化地図― 」Netユーザーが関心を持っているのは世田谷代田の芸術文化のようだ。今日は当地に関係する世界的に有名なマリンバ奏者を取り上げる。
その名は安倍圭子さんである。世田谷代田に移り住んできて学区の代沢小学校に通った。これがきっかけで音楽世界に入った、今では世界屈指のマリンバ奏者として知られている。私は、「ミドリ楽団物語」を書いた。この時に彼女について触れた。刊行後に彼女と何度か出会う機会があった。ただ世田谷代田時代のことは聞いていなかった。
今、朝ドラ「エール」では金子さんが通っていた帝国音楽学校のことがしばしば出てくる。現実のドラマでは音楽学校の記念公演のヒロイン役を選ぶための最終選考が行われようとしている。
この帝国音楽学校はとおの昔になくなってしまった。空襲を受けて学校は灰燼に帰してしまった。我々は帝音のあった地域を調査している。それで地元の人に往時のことを聞いてきた。が、廃校になってもう７５年経つ、その記憶は薄れつつある。それでも一つだけ印象的な証言がある。
「影響されるということはありましたね。やはり学校から楽器や歌声が聞こえてくるのです。それでそれを聞きに行ったことはあります。これに感化されたのでしょうね、音楽の方面に進んで一時でしたが藤原歌劇団にいたことがあります……」
代沢小の卒業生から聞いた話だ。
ドラマでは、選考会が行われる。一人一人が歌声を披露する。こういったときの声が外にも聞こえていて、一人の少女を夢見させたのだと、こちらは現実を考える。
（二）
昨年、１２月７日（土）に世田谷区立代沢小学校校舎落成・創立140周年記念式典が行われた。安倍圭子さんは所用があってこれには参加されなかった。が、この式典とは別に彼女のコンサートを創立１４０周年の記念として行おうという計画があった。この４月に行われるはずだった。それがコロナ騒ぎで中止となってしまった。このこともあったので近況を伺おうと昨日電話を掛けた。
「自分でも楽しみしていたのですけどね、中止になったのです。コロナ騒ぎが落ち着いたら行うことになりますね、その期日ははっきりしていません……」
彼女は今は８３歳となる。とても元気である。
一昨年３月、「安倍圭子卒寿記念演奏会」が 東京文化会館大ホールで開催され、私も招待されて行った。素晴らしいコンサートだった。
「安倍さんは帝国音楽学校のことは御存じですか？」
「いや、知りませんね」
「代田二丁目に住んでおられたのですよね。古関裕而さんの家のすぐ近くですね」
「ええ、代田二丁目ですが、古関裕而さんのお宅は知りません」
古関裕而は代田では三回転居している。安倍さんが住んでいた時は別の場所に住んでいたようだ。
「近くに長門美保歌劇団があったでしょう」
「ああ、それは覚えていますね」
これは戦後にできたもので人々の記憶には残っている。側を通ると歌声が聞こえてきたと証言する。
「近くに有名人が住んでいませんでした」
「ああ、そういえば武満徹さんは近くにおられたみたい」
「有名な話ですね、馬糞紙に鍵盤を書いたものを持っていて、それで練習をしていたと。それで近くのピアノのある家に行っては『ピアノを貸して欲しい』と言っていたと」
（三）
「小２のときに疎開から引き揚げてきて、代田に住みました。そして小３になって代沢小に通うようになりました」
お父さんは慶応卒の技官をしておられたと言う。地方に疎開していて戦争が終わって上京し世田谷代田に住んだとのこと。
小３だと８歳、代沢小学校に入ったのは昭和２０年ということになる。疎開学童本隊はこの年の１１月に長野から引き揚げてくる。
安倍圭子さんは、代沢小で戦後に発足したミドリ楽団に入団した。この楽団のデビューは聖路加病院での慰問だ。昭和２１年で彼女は小４だった。入団に際しての彼女の「後打ちリズム」テストは卓越していた。テスト者は浜館菊雄先生だった。
「これは何年生の時だったか？」
これを聞こうと今朝また電話をしたことだ。
（写真は「安倍圭子卒寿記念演奏会」プログラム）
昨年、１２月７日（土）に世田谷区立代沢小学校校舎落成・創立140周年記念式典が行われた。安倍圭子さんは所用があってこれには参加されなかった。が、この式典とは別に彼女のコンサートを創立１４０周年の記念として行おうという計画があった。この４月に行われるはずだった。それがコロナ騒ぎで中止となってしまった。このこともあったので近況を伺おうと昨日電話を掛けた。
「自分でも楽しみしていたのですけどね、中止になったのです。コロナ騒ぎが落ち着いたら行うことになりますね、その期日ははっきりしていません……」
彼女は今は８３歳となる。とても元気である。
一昨年３月、「安倍圭子卒寿記念演奏会」が 東京文化会館大ホールで開催され、私も招待されて行った。素晴らしいコンサートだった。
「安倍さんは帝国音楽学校のことは御存じですか？」
「いや、知りませんね」
「代田二丁目に住んでおられたのですよね。古関裕而さんの家のすぐ近くですね」
「ええ、代田二丁目ですが、古関裕而さんのお宅は知りません」
古関裕而は代田では三回転居している。安倍さんが住んでいた時は別の場所に住んでいたようだ。
「近くに長門美保歌劇団があったでしょう」
「ああ、それは覚えていますね」
これは戦後にできたもので人々の記憶には残っている。側を通ると歌声が聞こえてきたと証言する。
「近くに有名人が住んでいませんでした」
「ああ、そういえば武満徹さんは近くにおられたみたい」
「有名な話ですね、馬糞紙に鍵盤を書いたものを持っていて、それで練習をしていたと。それで近くのピアノのある家に行っては『ピアノを貸して欲しい』と言っていたと」
（三）
「小２のときに疎開から引き揚げてきて、代田に住みました。そして小３になって代沢小に通うようになりました」
お父さんは慶応卒の技官をしておられたと言う。地方に疎開していて戦争が終わって上京し世田谷代田に住んだとのこと。
小３だと８歳、代沢小学校に入ったのは昭和２０年ということになる。疎開学童本隊はこの年の１１月に長野から引き揚げてくる。
安倍圭子さんは、代沢小で戦後に発足したミドリ楽団に入団した。この楽団のデビューは聖路加病院での慰問だ。昭和２１年で彼女は小４だった。入団に際しての彼女の「後打ちリズム」テストは卓越していた。テスト者は浜館菊雄先生だった。
「これは何年生の時だったか？」
これを聞こうと今朝また電話をしたことだ。
（写真は「安倍圭子卒寿記念演奏会」プログラム）
