2022年03月03日
下北沢Ｘ物語（4438）―三軒茶屋と芸術文化村―
（一）時代は転変して町は変化していく、大山街道の要衝にあった三軒茶屋は最も大きな変動を受けた。近代の荒波をもろに被った町だ、まず明治になって玉川電気鉄道が開通する。つぎに大正期の震災、そして昭和期の戦災、この三つによって町は大変貌していく。各期ごとに特徴があったが、とくには戦災が大きい。町が灰燼に帰したことであらかた失われてしまった。一帯には絵画系統の文化が育っていたがほとんど残っていない。三宿にあった画塾「白田舎」の存在は大きかった。主催者は平福百穂画伯である。この三軒茶屋近辺には著名な日本画家が住まっていた。画伯が当地で絵画活動を始めたことが大きい。近隣に住む画家たち同士、また画塾生も彼等と交流があったという。一帯は一種の芸術文化村が形成されていた。しかし、焼け野原となったことで痕跡などもあらかた消えた。
大正八年九月に三宿に画塾「白田舎」を開いた。田は、痩せた畑だ、技倆の備わらない画塾生を育てあげ、才能を開花させる。自らが自らの畑、画才を耕すように仕向けたようだ。手を取り足を取りして教えることはしなかった。師は弟子にはこう言っていたと。
「上手な絵を描くよりも、下手でもよいから自分のものを描け」
「絵は技で描くものではなく、心で描くものだ」
教育論でもある、ついこの間、「邪宗門」で都立大学の高木慎介先生と出会った。環境応用化学域専攻の理系の先生だった。
「偏差値の高い学生が多くいます、しかし彼等の知識の多くが暗記によって覚えたものが多いですね、それは本当の知識ではありませんね。自らが考えて問題を解くということは不得手ですね……政治的不満を持つことはあるようです。けれどもデモに行っても無駄だと思っているようです。私は、デモに行って何かがすぐには変わらないだろうけども行くことで自分の意識が変わる、それが大事なのではないかと思っています」
「暗記的な知識の積み上げではだめなんですよ。やはり今の教育のやりかたに問題がありますね、勉強はさせられるものと思っているがそうじゃないですね、暗記することを主体としているでしょう。現今の四十人学級にも問題があります。教え込む授業しかできないでしょう。三十人ぐらいにして互いに意見を言い合って知識を獲得していく……」
同感することが多かった。
「白田舎」の熟生は四〇名ほどだという。彼等は三宿、太子堂、三軒茶屋に下宿していた。近隣に多く住む日本画家のところへは行っていたろうか。高名な画家が七八人いた。
（二）
「白田舎」で学んだ画学生は、平福百穂門下生である。
おもな門人は、吉田白流、島田白樹、藤林柴関、増田千代松、武藤夜舟、中沢恵以子、笠原冬子、梅岡玉龍、舟山三朗などである。
あきた（通巻23号） 1964年（昭和39年）4月1日発行
島田柏樹、池田喜代雄、八幡白帆、小林善、小林臨川、神庭白黎、増田千代松、真田玉真、斎藤藤四郎、石井了介
「評伝 平福百穂」（加藤昭作 短歌新聞社 ２００２年刊）
多くの画人を輩出させている。
この名の中に八幡白帆がある。世田谷代田で見つかった出征を祝す日の丸の中に、八幡白帆の名があった。世田谷代田に住んでいたようだ。
代田の家から歩いて五分とかからぬところに日本画の八幡白帆画伯が住んで居られて、父の肖像を描いた。三十号の大きさで白髭の父が、物入れついた黒い前掛けをかけて、あぐらをかいて、南蛮船や出島をえがいた長崎の絵図を眺めているという構図だ。この絵は日展に出品されたのち、山形県庁に買われて、知事室にかざられた。
「茂吉の体臭」 斎藤茂太 昭和三十九年 岩波書店
八幡白帆は我らの文士町地図に載せたい。ところが住所が分からない。が、おもしろい、画塾生として三宿で学んだ、そして塾を終えて職業作家になり、代田に住んだ。
（三）
「白田舎」近辺には、日本画家が多く住んでいたようだ。しかし、彼等がどこに住んでいたかは分からない。先だって、平福百穂美術館館長さんの小松亜希子さんと話をしていたとき、
「矢沢弦月さんは白田舎の近くに住んでおられましたよ」
調べると「世田谷区大子堂三三九」だった。太子堂富士見湯の坂を上がったところにその番地はあった。
近隣に住む画家として郷倉千靱の名がある。ネットで調べると年譜があって、大正十年に三軒茶屋に転居とあった。が、番地までは分からない。
全貌はわからないが三軒茶屋近辺に日本画家が多く住んでいた。平福百穂画伯との関係は、あるのか？理由は何だろうか。（矢沢弦月旧居近辺）
「白田舎」で学んだ画学生は、平福百穂門下生である。
おもな門人は、吉田白流、島田白樹、藤林柴関、増田千代松、武藤夜舟、中沢恵以子、笠原冬子、梅岡玉龍、舟山三朗などである。
あきた（通巻23号） 1964年（昭和39年）4月1日発行
島田柏樹、池田喜代雄、八幡白帆、小林善、小林臨川、神庭白黎、増田千代松、真田玉真、斎藤藤四郎、石井了介
「評伝 平福百穂」（加藤昭作 短歌新聞社 ２００２年刊）
多くの画人を輩出させている。
この名の中に八幡白帆がある。世田谷代田で見つかった出征を祝す日の丸の中に、八幡白帆の名があった。世田谷代田に住んでいたようだ。
代田の家から歩いて五分とかからぬところに日本画の八幡白帆画伯が住んで居られて、父の肖像を描いた。三十号の大きさで白髭の父が、物入れついた黒い前掛けをかけて、あぐらをかいて、南蛮船や出島をえがいた長崎の絵図を眺めているという構図だ。この絵は日展に出品されたのち、山形県庁に買われて、知事室にかざられた。
「茂吉の体臭」 斎藤茂太 昭和三十九年 岩波書店
八幡白帆は我らの文士町地図に載せたい。ところが住所が分からない。が、おもしろい、画塾生として三宿で学んだ、そして塾を終えて職業作家になり、代田に住んだ。
（三）
「白田舎」近辺には、日本画家が多く住んでいたようだ。しかし、彼等がどこに住んでいたかは分からない。先だって、平福百穂美術館館長さんの小松亜希子さんと話をしていたとき、
「矢沢弦月さんは白田舎の近くに住んでおられましたよ」
調べると「世田谷区大子堂三三九」だった。太子堂富士見湯の坂を上がったところにその番地はあった。
近隣に住む画家として郷倉千靱の名がある。ネットで調べると年譜があって、大正十年に三軒茶屋に転居とあった。が、番地までは分からない。
全貌はわからないが三軒茶屋近辺に日本画家が多く住んでいた。平福百穂画伯との関係は、あるのか？理由は何だろうか。（矢沢弦月旧居近辺）
