2022年03月18日
下北沢Ｘ物語（4448）―下北沢芸術・文士町文化地図―
（一）昭和十三、十四年頃に世田谷代田に日本画家が多く集まっていた。「帝国新書画名鑑」から抜き出してみたところ十六名が確認できた。参集、蝟集だ、日本画家が集まる芸術村だったと言ってよい。隣接地域の北澤には三名が確認できたのみだ。どうして世田谷代田に画家がこれほどに集まってきたか。考えられることは子弟関係だ、名鑑には師匠筋の名が記録されている。「蓬春」が二人いた。日本画の大家山口蓬春はここ世田谷代田に住んでいた。居住は、昭和4年10月からで、昭和14年に祖師谷に画室を作って引っ越す。三宿の平福百穂とは懇意で奥さんは彼の門下生を娶っている。百穂の門下生と矢沢弦月の門下生がそれぞれ二人住んでいた。百穂は三宿、弦月は太子堂、弟子筋は師匠に近いということで世田谷代田に住んだ。
昭和６年に萩原朔太郎は下北沢に越してくる、が、帝都線ができてうるさくなるだろうと昭和８年、世田谷代田に転居してくる。詩人、作家としてどこに住むか、ここから芸術家のポジション取りが想起される。朔太郎の弟子三好達治は代田に住んだ。彼は、当地のことを場末と呼んでいた。当地は、田舎度、田園度が高いと言える。景観もよい。眺めがよいというのは日本画には大事な点であった。
戦後、疎開先から引き揚げてきた斎藤茂吉は世田谷代田に住んだ。
冴へかへるわれの住む代田の家の二階より
白糖のごとき富士山が見ゆ
世田谷代田は高台にある。どこからでも富士が見えた。景観という点では隣接する北澤よりもよい。日本画家が集まったのは景の魅力もあったからではないか。
代田の古老が言っていた、根津山にたたずむと向かいの尾根の上を車馬がゆっくりと進んでいく様子が見られたと。その間には菜の花畑があって得もいわれぬ景観があったと。
（二）
世田谷代田には日本画家による芸術村ができていた。論より証拠だ。
帝国新書画名鑑昭和１３年 帝国芸術院会員
〇世田谷区代田二ノ七三三 山口蓬春 四七 映丘 花鳥 文展審査員格
世田谷代田町二ノ七六三 川船水棹 五一 鞆音 花鳥 文展審査員格
〇世田谷区代田一ノ七六六 福田豊四郎 三六 龍子 人物 文展審査員格
世田谷区下代田町八十一 島田柏樹 四八 百穂 花鳥
世田谷区代田町一ノ四二二 八幡白帆 四八 百穂 人物 花鳥
世田谷区代田町二ノ八〇六 増田正宗 五四 東美 人物
世田谷区代田 二ノ七二〇 遠藤教三 四二 映丘 山水
世田谷区代田町二ノ七六三 大谷大響 三四 弦月 花鳥
世田谷区代田 二ノ八七二 宮原蕪山 三五 桂月 山水
世田谷区代田 二ノ六八一 三橋竹顕 四四 東美 凡
世田谷区代田 一ノ四一四 宮武米忠方 二七 川崎雅 東美 風景
世田谷区代田 一ノ三九五 兒島花鳳 三九 弦月 花鳥・人物
世田谷区代田 二ノ七一三 竹内喜一 三一 蓬春 風景
世田谷区代田 二ノ七三二 伊藤芳園 二十八 翠雲 花鳥
世田谷区代田 二ノ八六九 諏訪鴻明 四十 蓬春 風景 花鳥
注：〇をつけた画家は「下北沢文士町文化地図」にマークされているということ。
帝国新書画名鑑昭和１４年 帝国芸術院会員
世田谷区代田町 二ノ八九四 秀島英麿 四十三 映丘 風景
名鑑からは世田谷代田居住者は十六名抜き出すことができた。中堅、若手、ベテランがそろっている。
花鳥画を描く画家が多いというのは面白い、環境としては花であれ、鳥であれ日本画の画材は事欠かないのではないか。
（三）
世田谷代田に絵画の描き手が多くいたことは興味深い。われらの地図では代田在住の洋画家 牛島憲之、中谷泰、橋本八百二、脇田和、の旧居を記録している。洋画、日本画を交えると相当な人数になる。「下北沢芸術・文士町文化地図」に名称変更しなくてはならない。
〇お知らせ
第１７２回３月１９日（土）駒沢のダイダラボッチ伝承地を歩く
案内者 きむらけん 田園都市線駒沢大学駅改札前 １時集合
駒沢：林愛作旧邸→駒沢公園散策→衾町公園（ダイダラボッチ跡� 泡�交通公園（千年杉伝説→鶴ヶ窪公園（ダイダラボッチ跡�◆泡�下馬六丁目（ダイダラボッチ跡��）→明薬遺跡跡→三軒茶屋駅 ＊ダイダラボッチ伝説をのんびりと散歩しながら訪ねる。
明日天気が回復するとのことで実施の予定。
世田谷代田には日本画家による芸術村ができていた。論より証拠だ。
帝国新書画名鑑昭和１３年 帝国芸術院会員
〇世田谷区代田二ノ七三三 山口蓬春 四七 映丘 花鳥 文展審査員格
世田谷代田町二ノ七六三 川船水棹 五一 鞆音 花鳥 文展審査員格
〇世田谷区代田一ノ七六六 福田豊四郎 三六 龍子 人物 文展審査員格
世田谷区下代田町八十一 島田柏樹 四八 百穂 花鳥
世田谷区代田町一ノ四二二 八幡白帆 四八 百穂 人物 花鳥
世田谷区代田町二ノ八〇六 増田正宗 五四 東美 人物
世田谷区代田 二ノ七二〇 遠藤教三 四二 映丘 山水
世田谷区代田町二ノ七六三 大谷大響 三四 弦月 花鳥
世田谷区代田 二ノ八七二 宮原蕪山 三五 桂月 山水
世田谷区代田 二ノ六八一 三橋竹顕 四四 東美 凡
世田谷区代田 一ノ四一四 宮武米忠方 二七 川崎雅 東美 風景
世田谷区代田 一ノ三九五 兒島花鳳 三九 弦月 花鳥・人物
世田谷区代田 二ノ七一三 竹内喜一 三一 蓬春 風景
世田谷区代田 二ノ七三二 伊藤芳園 二十八 翠雲 花鳥
世田谷区代田 二ノ八六九 諏訪鴻明 四十 蓬春 風景 花鳥
注：〇をつけた画家は「下北沢文士町文化地図」にマークされているということ。
帝国新書画名鑑昭和１４年 帝国芸術院会員
世田谷区代田町 二ノ八九四 秀島英麿 四十三 映丘 風景
名鑑からは世田谷代田居住者は十六名抜き出すことができた。中堅、若手、ベテランがそろっている。
花鳥画を描く画家が多いというのは面白い、環境としては花であれ、鳥であれ日本画の画材は事欠かないのではないか。
（三）
世田谷代田に絵画の描き手が多くいたことは興味深い。われらの地図では代田在住の洋画家 牛島憲之、中谷泰、橋本八百二、脇田和、の旧居を記録している。洋画、日本画を交えると相当な人数になる。「下北沢芸術・文士町文化地図」に名称変更しなくてはならない。
〇お知らせ
第１７２回３月１９日（土）駒沢のダイダラボッチ伝承地を歩く
案内者 きむらけん 田園都市線駒沢大学駅改札前 １時集合
駒沢：林愛作旧邸→駒沢公園散策→衾町公園（ダイダラボッチ跡� 泡�交通公園（千年杉伝説→鶴ヶ窪公園（ダイダラボッチ跡�◆泡�下馬六丁目（ダイダラボッチ跡��）→明薬遺跡跡→三軒茶屋駅 ＊ダイダラボッチ伝説をのんびりと散歩しながら訪ねる。
明日天気が回復するとのことで実施の予定。
