2022年09月21日

下北沢X物語(4552)―三軒茶屋の戦跡を訪ねる 3―

P1050429
(一)三軒茶屋は軍都だった、往時は三つの兵営がひしめき、各隊のラッパが入り乱れて鳴っていた。が、その痕跡はわずかだ、韓国会館の建物と馬魂碑ぐらいである。今回これが重要であることを知った。当地には近衛野砲兵連隊、第一野砲兵連隊、野戦重砲兵連隊がいた。この中で第一野砲兵連隊はレイテで全滅している。近衛野砲兵連隊、野戦重砲兵連隊の碑は建てられている。が、全滅すれば碑を建てる人もいなくなる。当地に辛うじて残った建物と碑は彼等の存在を遺すものだ。第一野砲兵連隊は意図的に冷や飯を食わされた、まずは北満のソ連国境防備に就かされ、一転昭和十九年に南方派遣を命ぜられ彼のレイテ島に征かされほぼ全滅している。冷遇の因は226事件に加わったことから来ている。

 我らは三連隊の痕跡を巡った、近衛野砲兵連隊、第一野砲兵連隊、野戦重砲兵連隊、それぞれの跡だ、各隊生死を分ける苦難があった。それでも生き残った者がいれば碑が建つ、が、皆が死ねば碑は建たない。

 三隊のうち一隊はレイテで全滅し戦後当地に碑は建っていない。それは第一野砲兵連隊である。近衛野砲兵連隊跡は昭和女子大に碑が建っている。当地には自衛隊三宿駐屯地がある。ここには立派な近衛野砲兵連隊記念碑と野戦重砲兵第八聯隊碑が建っている。弔う者がいなければ碑は建たない、悲劇である。レイテで玉砕したのは第一野砲兵連隊である。が、皮肉である。今も建物があり、馬魂碑がある、これは第一野砲兵連隊関係のものである。ゆえにこの二つの残存物は重要である。

 昭和女子大を跡にして韓国会館に行く、唯一現存する兵営である。当地に残っていた旧兵営はことごとく壊された。辛うじて残っているのが韓国会館の建物だ。
案内者の上田暁さん、当日配布した資料にこれを記述している。

 馬の鞍を作る工場だった。
 建物は洋式小屋組木造トラス瓦葺き屋根。外壁はドイツ下見張り。軒裏のモールディングに注目。
 
 〇野砲兵第一連隊の碑が日本にない事と隊長熊川大佐の敵前離脱の関連。
レイテ島リモン峠には砲一会が設けた鎮魂の碑がある。


韓国会館の現存建物は半分は使われているが、後半分は朽ちるままだ。野砲兵第一聯隊の痕跡は日本にはなにもない。保存すべきだ。
 上田さんの言う熊川大佐離脱は、当隊はリモン峠に取り残された。「12月6日には完全に孤立してしまい、連隊長熊川致長大佐以下の残兵は独断で西方山地に脱出しました」とネットにはある。
砲一会は、かろうじて残った者たちで結成されたようだ。仲間の霊を弔おうと苦心して慰霊碑を建てた。これにはこう刻まれている。

 日本陸軍最古の栄誉に輝く野砲兵第1聨隊は太平洋戦争に於いてレイテ決戦に参加し勇戦敢斗の末聨隊長以下カンギポット山麓に玉砕した
本決戦最大の激戦地リモン峠周辺第1師団の戦斗に際し聨隊主力の陣地であった此の地を砲一台と名付け碑を祀り鎮魂の祈りを捧げると共に日比親善と世界平和の礎石たらしめんとするものである

昭和57年11月建之 砲一会



P1050431
(二)
 韓国会館から馬魂碑へ。
 もともと馬魂碑は都営住宅内公園に他の記念碑などとともに静かに祀られていた。が、住宅は取り壊され、跡地には仮設校舎が建つことになった。その関係で敷地北東端に碑群は移築された。まだ完成していないことから遮蔽幕で蔽ってあって見られない。
 知り合いに頼んで当日、見られるようにと頼んであった。
 話は通じていて現場監督が碑群を見られるように遮蔽幕を外してくれた。

 馬魂碑の裏面には名が記してある。
 
 野砲兵第一連隊留守部隊長
   陸軍砲兵中佐正六位勲四等 原 捷吉
   昭和十四年十二月


 本隊は昭和11年に北部満州で国境防備についている。その留守部隊を預かっていたのが原捷吉砲兵中佐であったということだ。
「野砲兵第一連隊はレイテで全滅していますから、この馬魂碑は貴重ですね。内容としては愛馬精神のことが記されています。学校教育にも使えると思って原文と口語訳を印刷して持ってきた。有用に使ってほしい」
 私は言った。
P1050437
(三)
 「下馬兵舎時代の思い出の絵地図」は素晴らしい。何と、世田谷パブリックシアターが作っている。兵舎時代のことを関係者に聞いて作っているから驚きだ。

「おもしろい、楽しいエピソードがそこかしこにちりばめられているのですよ。一番おもしろいのが菊寮の倉庫、二階が寮になっているのです。一階は畳屋の倉庫、あるとき倉庫のおくを片付けようとしてものをのかしたところ。『なんだ!』、大きな鉄のかたまりがあった。なんと戦車なんですよ、それがごろごろ出てきたというのです。そこに行ってみましょう」
(上、韓国会館前。中、馬魂碑前 下、旧菊寮跡での記念撮影)


rail777 at 18:07│Comments(0)││学術&芸術 | 都市文化

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔    星