2025年07月17日
下北沢X物語(5218)―熟練・手練れの保阪正康氏講演会―

(一)時とともに戦争は風化していくがこれの第一級の伝承者は保阪正康氏である。私には想い出深い人だ。2012年に『鉛筆部隊と特攻隊』を世に出した。これを『朝日新聞』の書評欄で取り上げたのは氏である。本著が世に知られる端緒を作っていただいたと思っている。その保阪氏の講演会が昨日「せたがやイーグレットホール」で開催された。「せたがや未来の平和館10周年」を記念してのシンポジウムである。室から館になってもう十年経った、館の前は平和資料室、玉川小の一角にあった。想い出がある、家から疎開学童資料を背負って行くと松本から美術品運搬車が来ていた。係員は皆白手袋をつけていた。常々素手で資料を触っていた私は慌てて手をズボンで拭いた。著作が世に知れ渡ったことから松本博物館では特別展が開かれ、世田谷からも資料が運ばれた。昨日配られた10周年記念誌には室から発見された「満洲国皇帝溥儀から戴いた恩賜の煙草」を包んだ布のことが写真入りで紹介されていた。
保阪正康氏の講演の演題は「〜戦後80年 語り継ぐには〜」であった。戦争伝承をどうするか。せっぱ詰まった問題だ。
長年戦争について調査研究を続けてきた氏の話は、場数を踏んでおられるだけに切り口が違う。大平洋戦争だけを考えるのではなく、もっと長い歴史の上で考える必要がある。それで江戸時代のことに言及された。あの265年間は戦争がなかったと。そこにおける平和というのは何であったかとの問い掛けをされた。
またこうも言われた、今時戦争においてトピックとして上がってくるのが玉砕であり、特攻であると。こういう戦術をとったことを指導者は恥ずかしくなかったのか?
保坂氏はイギリスの戦争研究者とも話をされた。比較戦争論である。このことを通して問題を浮かび上がらせる。指導者に素養がなかったのではないかと。
「日本は中国を攻めました。しかし、英国だと全部を攻めることはしません。各地に租借地を作ってそこを拠点に活動をする。戦争というものはどういうことなのか事前によくよく考えた上で実施すべき、それらのことが指導層に欠けていたのではなかったか」
(二)

保坂氏は、戦争の記録のことを言われた。
「戦争が終わって記録を焼却したでしょう。これはひどいですね。自分たちが何をしてきたかを分からなくしてしまった。これは決してやってはいけないことですね」
全く同感である。すべてが無くなってしまったから分からない。
大平洋戦争でどのくらいの人々が犠牲になったか、記録上では310万人となっている。これはおおよその数である。実数を調べたわけではなく推定であると。
「アメリカは、日本全国の市町村に人員を派遣して戸籍簿から数を割り出しているのですよ」
初めて聞く話だ。正確な記録は納税者に報告する義務があると、確か氏は言っていた。
日本に襲来したB-29は高射砲に被弾したり、特攻機が体当たりをしたり、また事故に遭って各地に墜落している。
これの調査は米軍は徹底して調べている。ネットには「本土空襲墜落機調査」としてアップされている。全乗員の氏名記録、安否記録、どのように埋葬されたか。時には遺骨を掘り出し、本国に送っている。
日本の特攻機の末路は哀れだ、水漬く屍として今も沖縄周辺海域にそのままにされている。
(三)
記録を失うと歴史が分からなくなる。それぞれが生きた時代を正確に記録することで未来が見えてくる。しかし政府総体を含め記録というものの大事さを欠落させている。
今日、とある政党から電話があった。投票を呼びかけるものだ。
「ついこの間、テレビでは軍用飛行場に造成されている馬毛島の総工費がいくらなのかを質問している場面を見ました。すると政府側は答えられないと。こういうの間違っていますね。政府にせよ、官僚にせよ、記録観が欠如している。これでは歴史が作っていけませんね」
こんな話を三十分も聴いてくれる政党、察しがつくだろう。
この記事へのコメント
2. Posted by きむらけん 2025年07月17日 22:49
>>1 いまどき馬毛島の話、原爆の話、原発の話を聴いてくれる政党はいませんね。そうそうその政党です。
1. Posted by すぎたま 2025年07月17日 22:44
きむらけんさまこんばんは。
その政党、うちにも電話してきますよ(笑)。そろそろかと思います。また当日も「選挙に行きましたか」と、やはり電話してきます。
母がかなり高齢になりましたので、「介助車いす」で投票所まで連れて行きますが、投票所そのものは動線が今ひとつなものの、車いすのままで投票できます。
その政党、うちにも電話してきますよ(笑)。そろそろかと思います。また当日も「選挙に行きましたか」と、やはり電話してきます。
母がかなり高齢になりましたので、「介助車いす」で投票所まで連れて行きますが、投票所そのものは動線が今ひとつなものの、車いすのままで投票できます。



















