地形と文学
2012年10月22日
下北沢X新聞(2187)〜地形と文学:再び杜夫と茂吉を歩く〜

(一)
武蔵野の沢は読み応えがある。何度も読み返しているとこれが分かってくる。当地でコースを設定しての文学散歩は沢読みに他ならない。先週、火曜日に歩き、また土曜日にも同じコースを歩いた。当然だが、後に行った方が読みが深くなる。
「今私たちは東松原駅にいます。駅名に東とつけなくてもいいように思えますが、現在の明大前が松原駅だったことから、井の頭線が開通するに当たってこれをつけたのでしょう。でも地形からすると合っています。私たちは東松原半島の上にいます……」
東松原駅の橋上駅舎の片隅で参加者に話をした。
荏原郡北端は淀橋台という台地が西から東へと横たわっている。これから派生した半島状の丘が南に延びて北沢川になだれこんでいる。
支流の台地への食い込みが面白い。それこそが沢である。台地の皺には多くの物語が折り畳まれている。一枚一枚の沢をめくっていくと近代文学にぶつかる。
「ここの東隣りはおなじみの代田半島です。東松原半島との間には羽根木支流が流れています。丘を越すとまたもう一本川があってこの川の右岸にマンボウ・マブゼ共和国があります。西松原半島の東のり面の一角です。これからそこへ行くわけですが、皆さん、入国査証は持っていますか?……」
そう聞いたところざわめきが起こった。そんなの持っていないと。
「私は持っています。ほら」
フクロウが描かれた「マブゼ共和国 旅券」を見せた。
なんのことはない。世田谷文学館で開かれている「斎藤茂吉と『楡家の人びと』」展で配られているものだ。
種を明かしてなんだということになるが、このやりとりの中にあったのは、「おかしみ」である。つまりはユーモアだ。どうやらこの底には「DNA」が潜んでいるようだ。
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